昭和53年

年次経済報告

構造転換を進めつつある日本経済

昭和53年8月11日

経済企画庁


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はじめに

昭和52年度の我が国の実質経済成長率は5.5%となり,50年春以降の景気回復過程の3年目に当たる。しかし,53年に入って景気に明るさの拡大がみられるものの,52年度全体としては,景気の回復感は浸透せず,業種間の業況の跛行性が目立ち,雇用情勢は依然厳しいといった情勢が続いており,経済は決して満足すべき状況ではなかった。

他方,我が国の経常収支の黒字は期を追って拡大し,それが海外からの批判の的になるとともに,円相場の急激かつ大幅な上昇は,その過程において先行き見通しの不確かさを高めた。

今回の年次経済報告は,このような52年度経済の特徴的現象の要因と意味を考えることになるが,これらを理解するためには,さらに,環境の変化に対応する日本の産業的特質,あるいは資源配分の特徴といった側面を看過しえないように思われる。

いずれにせよ,我が国経済は石油危機という戦後最大の衝撃を受け,それへの対応に苦闘しているところであるが,未踏の事態であるため先行きは不透明であり,経済の足取りも不確かなものにならざるをえなかった。しかし,その過程を経済にとって重要な分野につき分析することは,経済の現局面を適確に把握するためにも必要だし,今後の足取りをより確実にするための貴重な教訓を得ることにもなろう。本報告書は,当然に52年度の経済を主題にするものであるが,そのような問題意識から,石油危機後の経済過程の中に位置づけながら考えようとするものである。


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