昭和52年

年次経済報告

安定成長への適応を進める日本経済

昭和52年8月9日

経済企画庁


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第II部 均衡回復への道

第4章 変容する産業構造

戦後の日本経済の高度成長は同時に激しい構造変化の過程でもあった。生産及び就業構造のなかで,第一次産業の比重は低下し,これにかわって第二次産業,第三次産業の比重が高まった。高度成長経済の特徴は,第二次産業における工業の飛躍的発展,とりわけ重化学工業部門の生産力の増大と重化学工業化率の上昇に象徴される。

世界経済の中でわが国の工業生産は,造船,テレビ,ラジオ,カメラ,ミシンなどでは第1位,鉄鋼,石油化学,合繊,自動車などでは第2位の地位を占め,工業全体ではわが国の比重は,OECD(20か国)のうち,13.1%(1976年)と,西ドイツ(同12.6%)を超え,アメリカ(同43.2%)に続いている。

しかしながら,戦後一貫して工業生産の飛躍的拡大を進め,産業構造の重化学工業への傾斜を強めてきた日本経済は,昭和40年代後半以降,それをとりまく外的条件の変化に直面した。すなわち,対外面ではアメリカの新経済政策(いわゆるニクソン・ショック),スミソニアン合意(円切上げ),変動相場制への移行,石油価格の高騰,さらに開発途上国の工業化の進展による海外市場での競合と輸入品の増加であった。また対内的には,国民ニーズは単なる物的要求から福祉の充実,生活環境の保全などへ移り,加えて48,49年の激しいインフレーションの進行は,国民の消費態度を変えた。

すでに第I部でみたように,現局面は高度成長から安定成長への移行という減速過程と,インフレーション鎮静化のための総需要抑制策後の回復力の弱さが重なりあっているが,こうした内外諸条件の変化のなかで,わが国の産業構造は漸次変容し始めている。

本章では,これまでの高度成長の下で形成された産業構造がどのように変化を示し始めてきているのか,その変容過程と問題点を工業,農漁業,第三次産業について以下概観してみたい。


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