昭和51年

年次経済報告

新たな発展への基礎がため

昭和51年8月10日

経済企画庁


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第2章 世界景気の回復とわが国輸出の増加

1930年代以来最も長くかつ最も深刻であつた世界不況も,ようやく終止符をうち,景気回復は着実に進行している。

しかし,今回の先進国の景気回復には時間を要した。それは石油危機による世界的なデフレ効果が尾を引いていたこととその影響もあり世界貿易が縮小していたこと,という2つの状況からの回復であつたためである。こうしたなかでは,やはり経済大国アメリカが景気回復の先端をきり,その波及もあり他の先進国の景気回復が進んだ。すなわち,アメリカはこの2つの点(デフレ効果自体も小さく,輸出依存度も低い)において,他の先進国より有利な条件をもつていたからである。アメリカの景気回復に次いで日本,西ドイツ,フランスなど先進国中心に世界景気は回復の道を歩んでいる。

一方,わが国経済も,第1章で述べたように,50年1~3月期に底をうつたものの,国内最終需要の伸びが弱かつたことに加え,従来の回復局面では牽引車の一つとしての役割を果たしていた輸出が世界貿易が縮小する中で減少しつづけたことにより,その回復テンポは鈍かつた。しかし,世界景気が回復に向かうと間もなく,日本の輸出も急速な伸びを示し,やはり今回もまた輸出が景気回復を先導した。さらに,従来と異なり,輸出以外の国内最終需要とくに民間設備投資が弱い状況下,わが国の今回の景気回復における輸出の果した役割は,大きかつた。

本章では,まず,世界経済が深刻な不況からいかに立直り,どういう経路で回復していつたかをみる。次にそのなかで日本の輸出が増加していつた要因を考え,さらに輸出増加の役割がいかに大きなものであつたかを生産及び企業収益への影響という観点からみる。また,今回の回復過程ではこれまで輸入の伸びが弱い。その結果経常収支で著しい改善を示したが,その原因を探るとともにわが国の国際収支の改善について考えてみよう。


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