昭和51年

年次経済報告

新たな発展への基礎がため

昭和51年8月10日

経済企画庁


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第1章 昭和50年度経済の推移と特色

第5節 経済の現局面の評価

51年1~3月期に急速な景気回復の進展がみられたあと,4~5月以降の回復テンポはそれまでに比べればやや鈍化してきている。1~3月期の回復が著しく早いテンポであつたこと(実質GNPの1~3月期の増加率は年率で15%弱にも達するスピード)を考えれば,それが鈍化するのもいわば当然のことであるともいえよう。現に,1~3月期に急増した輸出,さらには回復傾向を示していた労働需給などかなり多くの景気指標において,4~6月期には上昇ないし改善が一服するというかたちがあらわれている。しかし,今回の回復過程で大きく出遅れた民間設備投資に持直しの気配がみられるのをはじめ,内需は総じて底固さを加えてきており,また,著しく落込んでいた企業の収益もこのところ急ピッチで改善が進んでくるなど,従来の景気回復過程でみられた動きが出そろつてきており,景気は着実な回復過程をたどつているといえよう。企業経営面にあつても,なお業種別に明暗の差はかなり残されているとはいえ,総じて明るさが増してきている。経済全体の需給の微妙な変化のみならず,企業の先行きに対する見通しが反映されるとされる商品市況をみても,昨年11月中旬を底に上伸基調を続けていることは,以上のことを裏づけるものといえよう。

今回のこのような回復の進展においては,従来みられなかつた側面があることに留意する必要がある。そのひとつは,すでにみたような,原油価格高騰によるデフレ効果が,今年度は急速に減衰してきているとみられることである。このようなかたちをとつて総需要の追加的引下げがなくなつてくるという効果は,例えば公共投資の追加というかたちでの需要追加とは異なり,企業や家計がいわば直接自覚するという性質に乏しいものであるだけに,とくに見逃してはならぬところである。もうひとつは,第2章でみるように,世界の景気が,一部の国を除いて各国がかなり足並みをそろえて,しかも相互促進的なかたちで急速に回復してきていることである。このようような条件の下では,需要全体が予想以上に加速的に拡大する可能性も少なくないことは否定しえないであろう。こうした点を十分考慮しつつ,今進みつつある景気の回復を,インフレーションを回避しつつ息の長い持続的な上昇に導いていくことが当面の大きな課題である。


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