昭和49年

年次経済報告

成長経済を超えて

昭和49年8月9日

経済企画庁


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第1部 昭和48年度の日本経済

1. 供給制約下の景気変動

(1) 名目と実質の乖離

48年度経済は,名目成長率では23%,実質成長率では5.4%であつた。両者がこのように乖離したのは,戦後インフレ期を除けば例のないことであつた。そのメカニズムはどのようなものであつたか。

まず,実質成長率の需要パターンを前年度と比較すると,寄与度で上昇しているのは民間投資と輸入等だけである( 第I-1-2図 )。前年度は,消費,民間投資,政府支出を中心にいろいろな需要項目の寄与度が増加したが,48年度になると,民間投資だけが増大してその他の需要項目の実質的な伸びは低下し,輸入等が大きくなつている。これは,需要超過が拡大して需要増が物価上昇に吸収されて未実現におわり,一方では,輸入による供給の対応が強まり,また民間投資が刺激されたことを示している。

民間投資の増加は生産を誘発し,47年10~12月から次第に鉱工業生産増加の主役となつていつた( 第I-1-3図 )。これは,前回の景気上昇期と近似しているが,民間投資が他の需要を圧して生産増加の大宗を占め,また民間投資のなかで在庫投資が減少していくというパターンは,今回の著しい特徴であつた。これは,経済拡大のなかで供給力が限界にぶつかり,民間設備投資が誘発される一方,在庫投資の意図しなかつた減少が生じたことによる。


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