昭和48年

年次経済報告

インフレなき福祉をめざして

昭和48年8月10日

経済企画庁


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第5章 インフレなき福祉をめざして

4. むすび

わが国経済社会の質的変貌にともなつて,経済政策の性格や手段も時代の要請に応えられるように変わつていかなければならない。福祉社会建設1年の経験は,新しい政策体系の用意がいかに重要であるかを教えている。もちろん,それにはダイナミックな経済についての適確な認識と,変化を先取りする政策の機動性がもとめられるのはいうまでもない。福祉経済は,資源配分の流れを国民福祉向上に傾斜させようとするものであり,またその目的にそうように市場機構を補完しなければならないから,従来にもまして政治と行政の責任は重い。もつとも市場機構に政策が介入するには自ら限界があり,自由競争のメリットを阻害してはならない。

企業も,市場機構さえうまく働けば社会的厚生の最大化が保障されるとは限らないことを認識して,その社会的責任がきわめて大きいことを十分に理解すべきである。

また,増大する公共的サービス供給が多くの受益者を対象とし,その消費にあたつては多くの受益者が差別なく享受できるという性格が強いことを考慮すれば,その供給をふやすための方途については,受益者が合理的な負担を担わなければならないであろう。もちろんそれには所得再分配機能も考慮しなければならないが,公共的サービスの供給には全国民的な理解がなによりも前提となる。

こうした福祉経済の確立が1日でもおくれるならば,それだけ日本経済の困難は強まることになろう。将来の日本経済は決して戦後経済の延長線上にはない。また新しい経済を貫く基本理念が社会的正義の実現にあることを自覚すべきである。歴史的ともいえる一大転換期の様々な問題をわれわれは勇気と英知と相互理解をもつて解決していかなければならない。

さらにわが国経済の国際化は,世界における日本の地位の飛躍的向上によつて新しい時代を迎えており,懸案の対外均衡が実現すれば,そうした国際化の前進が保障されることにもなろう。こうしたなかで,今後の日本経済は,流動する国際経済におけるわが国の使命をさぐり,また,潮の満ちるようにやつてくる世界的インフレーションと闘う決意と国際的協調への努力を強めるとともに,新しく登場した資源,食糧問題や複雑かつ深刻化する環境問題を合理的に解決するための新しい経済構造を創造するという大きな課題に直面している。

決意をあらたにして,インフレーションの脅威を克服し,新しい発展への道を切り開かなければならないときである。


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