昭和46年

年次経済報告

内外均衡達成への道

昭和46年7月30日

経済企画庁


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第2部 経済成長25年の成果と課題

「年次経済報告」(いわゆる「経済白書」)が昭和22年にはじめて発表されてから,今年でちようど25回目を数えることになる。思えば,四半世紀前,わが国は荒廃した敗戦の焦土に立つて,経済の復興と自立の方途を模索し,飢えに悩む国民生活を再建するために,非常な困難と戦つていた。第1回の経済報告は,財政も,企業も,家計も赤字をつづけ,物資が極度に欠乏した経済のもとで高進するインフレの緊急事態を明らかにし,危局打開のための国民の協力を求めた。

その後の日本経済の成長の過程はきわめて変化にみちたものであつたが,主要な変化のいくつかの時期を摘録すると,おおよそ次の通りであろう。第1は,日本経済が縮小再生産を脱却して拡大に向かい,かつ,戦後新たに固定為替レートを設定して貿易再開に向かつた昭和23,24年ごろの時期である。第2は,わが国が講和独立によつて国際社会に復帰し,経済力も戦前水準に回復して,量的な経済復興を終了した昭和27,28年ごろの時期である。第3は,国際競争力の強化と工業力の先進国へのキャッチ・アップを目ざして,技術革新が本格化しはじめた昭和31,32年ごろの時期である。第4は,高度成長が本格化するもとで,労働力不足基調への転換が起こり,賃金面での二重構造が解消に向かう一方,消費者物価の騰勢が強まりはじめた昭和35~36年ごろの時期である。そして,第5は,国際収支の大幅黒字のもとで新たな内外均衡のあり方が問われている現在の時期である。この時期にはまた公害問題の高まりもあつて,豊かな経済社会実現のための経済成長の方向が問題とされている。

この間,本経済報告は日本経済の発展と歩みをもとにしてきたが,ここで,日本経済が到達した現在の発展段階を検討し,25年の成長の経験と成果をひとくぎりとして,つぎの新たな繁栄を指向するためになにを考えなければならないかを吟味しよう。


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