昭和46年

年次経済報告

内外均衡達成への道

昭和46年7月30日

経済企画庁


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第1部 昭和45年度の日本経済

第1章 昭和45年度経済の推移と主要特徴

(45年度経済の特徴)

以上のように,昭和45年度の日本経済は,景気基調の点でも,重要な変化が表面化した。45年度の経済成長率(実質,速報)は5年ぶりに,10%をわずかながらも下回つた。この成長率は年度としては決して低い成長率ではないが,年度の上期,下期別にみれば,下期の成長率は少なからず減速している。昨年の夏ごろ以降,最近まで経済は景気後退局面にあつたといよう。長期好況が終了して,景気後退局面への基調転換が起こつたことは,昭和45年度の経済動向の第1の特徴であつた。

第2の特徴は,景気後退のなかの消費者物価高である。45年度の消費者物価指数(全国)は,前年度比7.3%と近年にない高い上昇率を示した。これには,天候不順など一時的要因による生鮮食料品の値上がりもあるが,長期好況の過程で所得,賃金の上昇テンポが著しく加速したことが,消費者物価の値上がりにはね返つている面が大きい。そういつた意味では,消費者物価の上昇は,長期好況の落とし子であるともいえよう。

第3の特徴は,国際収支の大幅な黒字がつづいていることである。45年度の国際収支は総合で前年度にひきつづき約20億ドルの黒字となり,外貨準備高も年度末には約55億ドルに達した。外貨準備高はこの6月末には約76億ドルに増大している。このような国際収支の大幅黒字には,国際競争力が強化されている一方で,輸出促進・輸入抑制のための諸制度等が残存していること,世界インフレのもとで海外需要が強いこと,国内景気後退の影響で輸入が伸び悩み輸出圧力が強まつたこと,外人証券投資が増大したことなど,多くの構造的循環的要因が重なりあつて働いている。

第1表 45年度主要経済指標とその動き

これらの特徴からみても,日本経済をとりまいている現実はきわめて複雑である。景気後退からの脱却,消費者物価の安定,国際収支均衡の達成という3つの課題を同時に達成していくことには,諸種の困難もつきまとうが,日本経済はいま,内外均衡実現のためにあらゆる努力をつくし,新たな繁栄への路線を確立すべき時期に直面しているといわなければならない。そしてこの問題への対処のいかんが,最初に述べた内外局面の摩擦をなくしながら,日本の経済と社会が新たな発展をなしていく道にも,直接,間接につながつているわけである。

以下,本報告の第1部各章では,45年度の日本経済の歩みと問題点について,景気,国際収支,物価を中心に,より詳細に分析しよう。


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