昭和45年

年次経済報告

日本経済の新しい次元

昭和45年7月17日

経済企画庁


[目次] [年次リスト]

5. 交通・通信

(1) 国内交通

(一) 輸送概況

a 貨物 昭和44年度の国内貨物輸送は,前年度にひきつづいての活発な経済活動を反映して,依然として順調な伸びを示した( 第5-1表 参照)。

また,輸送合理化の要請に対応して,カーフェリー,物資別適合輸送,コンテナ輸送等が一層促進されている。

第5-1表 国内輸送実績

輸送量を機関別にみると,従来伸びの大きかつたトラックが伸び率においては依然として一番高いが,昨年度の伸びより鈍化した。これは農畜水産品,鉄鋼,機械,石油製品の輸送は好調に推移したが,輸送量で高いウエイトを占める砂利・砂・石材が近年,毎年20%以上の伸びを示していたのに対し,横ばいへと大幅にとどまつたためと思われる。

内航海運は大宗貨物である石油製品やセメント,鉄鋼などが伸びたが輸送距離が短縮したため輸送の伸び率は横ばいとなつた。

国鉄の輸送量は昨年度の横ばいから,石炭,砂利を中心とする鉱産品,林産品などは減少したものの石油,鉄鋼,自動車,飼料,コンテナ積貨物等が増加し,全体としてわずかではあるが上向きを示した。

b 旅客 44年度の国内旅客輸送はこの数年にわたる個人消費支出の伸びに対応して昨年度同様着実な伸びを示した( 第5-1表 参照)。なかでも自家用乗用車の伸びは依然として著しく高いのが目立つている。

これを輸送機関別にみると,国鉄輸送量の伸び率は昨年度が横ばいであつたのに対し,44年5月の旅客運賃の引上げの影響等もあつて,44年度は若干低下している。とりわけ定期が昨年度の減少にひきつづいて44年度も減少したのは,旅客運賃の引上げや,地方において自家用バス,自家用乗用車へ転移したこと,大都市地域における地下鉄の整備等の理由が考えられよう。普通旅客では伸び率は鈍化したものの,前年度にひきつづき,優等列車利用客が増大し,ローカル旅客は減少するとの利用パターンの変化がみられる。輸送量の約2割を占める東海道新幹線は,7月まではおおむね順調に推移してきたが,8月以降は,東名高速道路開通の影響等もあつて,伸びが鈍化し年度平均で8.5%増にとどまつた。

一方,私鉄輸送量は大きなシエアーを占める大都市地域の人口の増大,新たな遠隔住宅地の開発等の影響もあつて咋年度より若干伸びている。

バスにおいては,乗合バスは昨年度同様低迷状態にあるが,自家用バスは年々そのシエアーを高めつつ,高い伸び率を示している。

乗用車は,自家用は依然として好調に伸びているが,営業用は大都市の道路交通の混雑激化の影響等もあつて伸びは停滞した。

自家用乗用車台数の増加率は33%であり,依然として著しい伸び率を示している。しかし,トラックも含め,自動車については,事故の激増,排気ガス等が益々大きな社会問題となつてきており,今後,これらに対する対策がきわめて重要な政策課題となろう。

航空は,消費水準の高度化を反映して,幹線,ローカル線とも昨年度より一層高い伸び率を示した。

(二) 交通関係社会資本の現状

わが国の交通関係社会資本の投資額は 昭和30年以降かなりの伸びを示している。しかしながら,交通関係社会資本ストック(Kg)と国民総生産(V)あるいは民間企業設備(Kp)との比率をみると,年々低くなつていること及び輸送量の伸びにくらべて資本ストックの伸びがはるかに下まわつていることなどからわが国の交通関係社会資本の整備はまだきわめて不十分なものであるといえよう( 第5-2図 , 第5-3図 )。このことは,道路,港湾において特に著しい。すなわら,昭和30年度を基準にした場合,道路は43年度においてストックが4.0倍であるのに対し,貨物輸送量は13.5倍,旅客輸送量は7.2倍にも達し,また港湾においてはストックの2.4倍に対して港湾取扱貨物量は5.3倍にもなつている。

第5-2図 交通関係社会資本の推移

第5-3図 交通関係社会資本と輸送量の比較

このような,社会資本整備と輸送量との著しいかい離は各輸送部門において種々の外部不経済,あるいはサービス水準の低下をひきおこしており,またその状況は,これまでのところほとんど改善なれていない( 第5-4表 )。例えば道路輸送においては,都市内の交通渋滞あるいは幹線道路の交通混雑は年々悪化している。また,交通事故も自動車輸送量の増加とともに増大し,昭和44年には72万件に達した。港湾における滞船率や1隻当り平均待ち時間も,港湾取扱貨物屋の増加により改善の兆しをみせていない。また,鉄道における通勤ラッシュ時一時間当り混雑度も若干緩和はされているが利用者の望むサービス水準にはほど遠い状態である。さらに,空港においても,輸送量の増大により,混雑状況は,年々ひどくなつている。

第5-4表 効率阻害状況の推移

本年5月閣議決定された新経済社会発展計画においては,近年における急速な経済成長に伴い,昭和50年度には昭和43年度にくらべ旅客,貨物輸送量はそれぞれ1.8倍,2.0倍と見込まれており,今後の交通関係施設整備の重点を,現在各所に発生している交通混雑などのあい路の打開と長期的視点にたつた広域的,体系的な国土の新骨格の建設におき,次のような目標をたてている。

1 高速自動車国道,新幹線鉄道,大都市圏港湾ならびに基幹空港など主要幹線交通網の体系的整備。

2 一般国道,拠点港湾,主要空港の整備ならびに幹線鉄道の輸送力の増強。

3 大都市圏における通勤,通学輸送の混雑緩和のため,地下鉄を中心とした鉄道の新線建設,線路増設,郊外線の都心乗入れの促進。

4 都市高速道路,環状道路をはじめとする幹線道路の整備,流通施設の再配置などの促進により路面交通の円滑化をはかる。

発展計画における部門別投資額は, 第5-5表 のとおりである。

第5-5表 交通関係社会資本の投資額

(2) 国際交通

(一) 貨  物

44年の世界の海運市況をみると,不定期船市況,油送船市況とも前半は年末に引き続き下降気味で,スエズ運河閉鎖前の1967年5月に次ぐ安値を記録したが,後半は回復を示し,特に油送船市況は5月末の中東紛争激化による送油混乱とナイジェリア内乱による油積み出しの減少,さらに寒波による石油需要の増大などにより,1年半ぶりの高騰となつた。しかし,年間平均では不定期船運賃指数は,前年(123.8)を下まわる117.5,油送船運賃指数も前年の103.8から87.1へ低下した( 第5-6図 )。

第5-6図 世界海運市況の推移

44年のわが国の貿易量をみると,輸出は36百万トン(対前年比18.2%増)で。前年の伸び率(同22.0%増)を下まわったものの,高い伸びを示し,輸入は388百万トン(同17.3%増)で前年(同16.0%増)をやや上まわる伸びを示した。一方,ロイド統計によると,44年6月末の世界商船船腹量(100総トン以上)は21,160万総トンで,日本はこのうち2,399万総トン(全体の11.3%)を占め,リベリアに次ぐ世界第2の商船保有国となつた。また,わが国の外航船腹量(3,000総トン以上)は,44年度末で2,004万総トンに達し,前年度末に比べ242万総トンの増加となったが,増加率は昭和40年度末の24.2%を頂点として,年々減少の傾向にあり,44年度には,不経済船の売船等が活発であつたため,対前年比13.8%増(43年度は18.3%増)にとどまった。また,邦船の積み取り比率は輸出は前年の36.4%から39.8%へ,輸入は前年の47.7%から48.1%へと推移した。

新経済社会発展計画によれば,50年度のわが国の貿易量は,43年度に比べて2.7倍近くになるものと見込まれており,海外資源の安定的確保や,輸出入物資の円滑な輸送を確保するなどの観点から今後とも,わが国外航船腹の拡充を進めることなどの重要性が提言されている。

国際海上コンテナ輸送についてみると,43年9月に日本~加州航路にわが国初のコンテナ船が就航して以来44年10月には,日本~豪州航路がコンテナ化され,45年5月には,日本~シャトル・バンクーバー航路にわが国のコンテナ船が就航する。さらに,欧州航路,ニューヨーク航路のコンテナ化が計画されていると同時に,外国企業によるコンテナ船投入も活発になることが予想されており,いよいよ本格的なコンテナ船時代を迎えたと言えよう。今後コンテナ輸送のメリットを最大限に発揮させるため陸上輸送との連携を強化して,海陸一貫輸送体制を整備するとともに,その結節点である港湾における近代的荷役体制の確立が必要とされている。

なお,航空貨物は,その量はわずかであるが(輸出・入計44年度98千トン)その伸び率においては,対前年度比38.7%増といちじるしいものがある。

(二) 旅  客

44年のわが国への来訪外客数は,対前年比17.3%増の60.9万人と前年の伸び(8.9%増)を大幅に上まわつた。これは,商用等の旅客の伸びが,対前年比16%増とほぼ前年並み(同18%増)であつたのに対し観光客の伸びが,対前年比24%増と前年(同6%増)を大きく上まわつたことによるものである。地域別では,南米,北米,ヨーロッパからの来訪者は,前年に比べそれぞれ47%,23%,25%と著増した。一方,アジア地域からの来訪者は,対前年比5%増にとどまつた。出国日本人数(沖縄への旅行者を除く)は,49.3万人で対前年比43.5%増(前年同28.4%増)と末だかつてない高い伸びをみせた。これは,所得水準の向上,海外渡航制限の緩和措置が44年においても続けてとられたこと,国民の海外への関心の高まりなどが拍車をかけたものと思われる。

44年の世界(ICAO加盟諸国)の国際定期航空の輸送人キロは,対前年比16.5%増と前年の伸び(10.6%増)を上まわつた。これに対し,わが国の国際定期航空は対前年比30.6%増の55億人キロと世界の伸びを大きく上まわる伸びを示し,世界におけるシエアは4.1%(世界第7位)となつた。路線別では,各線とも順調な伸びをみせた。日本発着の国際線の総便数に占める本邦航空会社の便数のシエアは,44年4月の34.5%から45年4月の3.6%へと低下した。また,44年度の東京国際空港における日航機利用状況をみると,外国人は前年度の26.3%から26.5%へ,日本人は54.2%から53.6%へ合計35.6%から36.5%へと推移した。

44年3月には世界で初めて日本に対し,シベリアの上空が開放され,従来ソ連機のチヤーターによる日・ソ共同運航という形で行なわれてきた東京~モスクワ間,日本側企業による自主運航が実現した。一方,米国航空企業の太平洋への大量進出をもたらすいわゆる「パシフィクケース」については,北部太平洋線,中部太平洋線とも複数の米国航空企業による運航が行なわれることになつたが,44年9月の日米航空交渉の結果わが国は,大圏コースによるニューヨーク路線及びサイパン経由グアム路線を獲得した。

(3) 国内通信

(一) 概  況

44年度の国内通信の概況は 第5-7図 のとおりである。通常郵便物は109億通,対前年度比6.5%増と前年度の増加率3.6%を大きくうわまわり,ようやく41年の料金改定以来の停滞をぬけたかにみえる。その内容は,主として人口で利用されている別後納郵便物は通常郵便物の34%をしめておりその対前年度比は11.8%増(前年同期9.2%増)と高いのびを示したが,別後納をのぞいた郵便物は3.9%増(前年同期1.2%増)であつた。通常郵便物の種別では普通通常郵便物の第1種が8.1%増(前年同期4.5%増)と大きく増加している。第1種のうち定形郵便物の比率は87%でほぼ一定している。また小包郵便物はに7.6%とほぼ前年なみの伸びをしめている。

また,新経済社会発展計画では,郵便の利用は今後も着実に増加し,昭和50年には,昭和43年にくらべて1.3倍になるものとみこまれている。

郵便事業は,人力に大幅に依存するところから,近年の労働力需給の窮迫にともない,人件費を主とするコストの上昇,労働力の確保の面で大きな問題をかかえている。これに対処して作業の省力化をはかるため,近代化,合理化施策がすすめられ,局内作業についてはすでに郵便番号自動読取区分機の開発,導入,機械化局の建設などによる省力化が行なわれているが,今後は配達など外務部門の合理的運営が問題となろう。機械設備の近代化と関連して行なわれている郵便番号の記載率は43年度末の63.5%から44年度末75.2%に向上している。

このうち,別後納郵便物の記載率は,44年度末66.4%(前年同期50.3%)であり別後納を除いた郵便物の記載率,44年度末80.2%(前年同期71.0%)にくらべてひくくなつている。

第5-7図 国内通信(指数)の推移

郵便事業の財政は41年の料金改定以来,郵便の利用の伸びが鈍化したのに対し,コストは上昇して,収支差額が減少傾向にあつたが,45年度予算では歳出超過となつている。

郵便事業の経営を根本的に改善する方策として43年10月郵政審議会に「郵政事業の経営形態を公社化することの是非」について諮問し,郵政審議会は特別委員会を設け検討した結果,44年10月「郵政事業の経営形態を公社化することは,これを機として経営の合理化,国民に対するサービスの向上を推進するという真剣な決意をもつてあらゆる努力が傾注されるならば,その効果をあげるに役立つ方策として採用に値するものと認める」と答申した。

第5-8表 引受郵便物数表

公衆電気通信サービスについては,加入電話の利用回数は対前年度に引続き活発な経済活動,電話加入数の増加等により順調な伸びを示した。

加入電信の利用度数は,対前年度比21.0%増,電報の利用通数は対前年度比1.4%減であつた。電報の利用通数は,電話など他の通信手段の普及発展,利用の増大に伴ない,38年をピークとして年々下降し,44年度の国民1人あたりの利用通数は年間わずか0.7通となつた。その利用内容も,業務用電報と慶弔電報が大部分を占め,死亡,危篤等の緊急内容のものはわずか3%に過ぎない。

通信回線と電子計算機を接続して行なうデータ通信は情報化の進展に伴ない銀行業務,販売・在庫管理をはじめ,各種情報の処理,加工手段として著しい伸びを示している。44年度末のデータ通信システム数は126システムで前年度にくらべ49システム増加した( 第5-9図 参照)。このうち,電電公社が専用線を提供し,自営の電子計算機を使用したシステムは122システム,電電公社の直営システム(個別データ通信サービス)は4システムである。

第5-9図 データ通信システム数の推移

また,これを通信回線の速度別にみると 第5-10図 のとおりである。

各速度の回線とも,順調な伸びを示しているが,最近は,情報処理の高度化,多様化に伴ない中高速の200ビット/秒,1,200ビット/秒(ビット/秒はデータ信号速度の単位で1秒間に伝送する情報の単位数をあらわす)の伸びが目立ち,44年8月からはさらに高速な2,400ビット/秒の回線がサービス開始され,電子計算機相互間の大量情報伝送用として利用されている。

第5-10図 データ通信システムの速度別通信回線数の推移

加入データ通信サービスは,情報処理の需要にこたえるために,不特定多数の企業や個人が電電公社の設置したデータ通信システムを利用できるようにするもので,45年度に販売・在庫管理,科学技術計算,電話計算サービスが東京で,販売・在庫管理,科学技術計算サービスが大阪でサービス開始される予定である。

データ通信の普及に伴ない,任意の相手との情報流通の必要性など電気通信の新しい需要に対応した利用制度を検討する必要が生じ,44年10月郵政審議会に「データ通信のための通信回線の利用制度について」諮問し,同審議会は,44年11月,企業グループ等を対象とする「データ通信回線網サービス」,情報検索業務,計算業務を対象とする「データ通信回線サービス」を設けることが適当であると答申した。なお,利用者から要望の強かつた加入電話網を利用したデータ通信については検討課題となつたが,両サービスにより,情報処理用の通信回線の利用制限は大幅に緩和されることになり,その実現が望まれている。

短縮ダイヤルサービスは,44年5月,東京,大阪,名古屋で開始され押しボタンダイヤル電話機は44年末で約9,000個か架設された。また,公衆電話の3分打切り制は,45年1月末より東京,大阪を始め,全国主要都市から実施され,44年度末現在31%が切替えられ,45年度中には完全実施される予定である。

新規サービスとしては,映像伝送サービスは45年3月外務省の旅券申請業務用としてサービス開始し,一部金融機関においても帳票閲覧,会議用として利用されている。また,高速模写伝送サービスは45年5月,地方公共団体において住民票,印鑑証明書用としてサービス開始した。これらの新規サービスは,電話ケーブル心線を使用して廉価に広帯域通信サービスを提供するものであるが,情報化の進展に伴ない,テレビ電話,ファクシミリ等の画像通信,データ通信等通信回線を利用した各種情報の伝達処理の需要は急速に増加している。これらの要望に対し,多様化,高度化する各種通信サービスを大量に,高品質に提供するため,電話網,データ網,画像網の各通信網相互を高度な交換,処理機能をもつ電子交換機によつて結合し,相互接続,端末施設の共用,交換機能の共用など,経済的かつ効率的に対処する総合通信網構想が進められている。すでに電子交換機はDEX-2号交換機が牛込電話局に設置され,44年12月から一部加入者を対象として,運用試験が開始された。

放送については,NHK,民間放送ともテレビ放送網の拡充が推進された。テレビ放送では民間UHF局の拡充にともないUHFの利用が促進され,全テレビ局のうちUHFテレビ局の割合は43年度末の38.5%から44年度末47.8%になった。ラジオ放送ではNHKの超短波放送(FM放送)の拡充とならんで民間の超短波放送が開始された。

また,44年度中に製造されたテレビ受像機は,UHFテレビ放送の普及を反映して,カラーテレビで82.6%,白黒テレビは53.4%がオールチャンネルテレビとなつている(電子機械工業会調べ)。

放送のマスメディアとしての機能に着目して放送により大学教育を社会に開放するという放送大学の問題について44年10月放送大学問題懇談会が設けられ,同懇談会は44年11月放送大学の設立を積極的に推進すべきであるという意見書を提出した。

NHKの放送網はテレビ放送については44年度中に総合テレビ局184局,教育テレビ局186局が開設され,44年度末でそれぞれ987局となり,全国総世帯数の96.5%をカバーしている。ラジオ放送については,第1放送が99.7%,第2放送が98.6%をカバーしている。またFM放送網は44年度中に19局が開設され,44年度末で249局となり,全国総世帯数の89%をカバーしている。

各放送網の1日平均放送時間は総合テレビ18時間,教育テレビ18時間,ラジオ第1放送19時間,第2放送18時間30分,FM放送は18時間となつており,うちカラー番組時間は総合テレビ11時間30分,教育テレビ2時間20分である。44年度末のNHK受信契約数は普通契約1809万件,カラー契約400万件で普通契約は前年より減少しだが,カラー契約は前年の2.4倍と急増した。

民間放送事業者は43年度末73社から44年度末90社となつた。内訳はラジオ単営13社,テレビ単営42社,テレビラジオ兼営35社で,超短波放送2社,UHFテレビ15社が増加している。テレビ放送についてはUHFテレビ親局は31社に達し,殆んどの県でUHFを含めて2社が放送しており,主要都府県では3ないし5社が放送している。超短波ラジオ放送については45年3月現在2社が超短波放送の特質をいかしたステレオ放送を主とした放送をしている。

共同聴視施設(CATV)は,従来,山間部の難視聴対策として増加してきたが最近大都市においても高層建築物等による難視聴地域が多くなるにともない脚光をあび共同聴視施設を運営する財団法人として45年1月「東京ケーブルビジョン」,45年5月「京阪神ケーブルビジョン」が設立された。これらの財団法人にはNHK,民間放送,新聞など多様な業界が参加しており,共同聴視施設の将来への期待の強さをものがたつている。共同聴視施設は,テレビジョン再送信業務だけでなく自主放送をはじめとする多様な電気通信に利用できる可能性をもつているので,その秩序ある発展を促進する施策の実施が望まれる。

(二) 通信施設の現状

国内通信施設は,郵便については44年度末郵便局数は20,510局(簡易郵便局3,318局を含む)である。うち集配局5,691局である。輸送施設として44年11月から東名間に東名高速道路を利用した自動車便が開設された。

郵便番号自動読取区分機は中央郵便局等大局に配置され44年度末で33台になつた。自動選別取揃押印機は44年度末で27台になつた。

公衆電気通信施設については,44年度は5,970億円の建設投資を行なつて一般加入電話は164万加入(うち事務用電話は53万加入,住宅用電話は111万加入),事業所集団電話は2万加入,地域集団電話は30万加入,公衆電話は4万個を増設した。その結果,44年度末の一般加入電話数は1,301万加入に達し,加入電話普及率は人口100人あたり13.6個となつた。また国際的にみると44年1月1日現在有線放送電話機を含めた電話機総数では,アメリカについで世界第2位であるが,普及率は依然として第12位にとどまつた。しかし,電話機総数の対前年増加率は12.7%でギリシャの15.4%に次いで世界第2位であり,これはアメリカの約2.5倍の増加率である。

住宅電話の普及率(地域集団電話を含む)は100人あたり6.1個で,全加入電話に占める比率は45%に向上した。これは5年前の21.6%にくらべ,約2倍の伸びを示している。しかし,44年度末の集団電話を除いた一般加入電話の積滞数は285万件で前年度より34万件増加した。特に新規申込数が198万件と44年度の架設数164万件を大幅に上回つたため,需要充足率は37%と依然として横ばい状態を続け需給状況はいつこうに改善されていない。

市外電話回線は約9万回線増設され,44年度末回線数は59万回線となつた。また,自動電話局は約400局建設された。その結果,市内ダイヤル化率は95.0%,市外ダイヤル化率は89.1%に向上した。

加入電信は7千加入増加し,35千加入となつた。また,サービス実施都市は22都市増加して349都市となつた。

専用線は市内専用線18千回線,市外専用線1.4千回線増設され,44年度末現在それぞれ162千回線,21.5千回線となつた。

無線局(放送局を除く)は44年度末601,333局(前年度末より100,068局17.8%増)となつた。内訳は固定局11,979局,陸上移動業務の局171,615局,海上移動業務の局33,558局,航空移動業務の局1,161局,その他383,120局である。放送局は3,599局(前年度末より661局22.5%増)で内訳はテレビ局2,882局,ラジオ局717局である。

共同聴視施設は44年度末7,544施設である。

(4) 国際通信

(一) 概  況

44年度の国際電気通信の発着度数は加入電信2,847千度(対前年度比46.9%増),電話1,573千度(対前年度比26.3%増),電報5,944千度(対前年度比3.6%増),通常郵便物217,361千通(対前年度比9.3%増),小包郵便物3,437千個(対前年度比7.3%増)といずれも増加しており,前年につづいて加入電信と電話の伸びが著るしい。加入電信は44年8月,交換の自動化が開始され,44年度末で全通信量の7割強が自動化されている。

NHK海外向け短波放送は,23ケ国語,18方向,1日延べ36.5時間が行なわれた。

(二) 通信施設の現状

国際電気通信施設は44年7月に日欧間の通信幹線として日本海ケーブルが開通し,ついで,44年8月からインド洋のインテルサット3号衛星経由で欧州,中近東,アジアとの衛星通信が開始された。これらの施設拡充にともない44年度末には海底ケーブル465回線(前年同期392回線),衛星通信368回線(前年同期71回線),短波159回線(前年同期276回線)となり,衛星通信回線は前年のほぼ5倍と急増して,海底ケーブルとならぶ国際通信施設の根幹となつた。

第5-11図 サービス別回線数(国際)

また,広帯域通信施設の拡充により多様な通信の利用が可能となり,ことに44年7月のアポロ11号月着陸のテレビ中継は衛星通信網の大きな成果であつた。

サービス別にみると,加入電信358回線,電話230回線,電信56回線,専用電信241回線,専用電話106回線で電信を除いていずれも30%以上の伸びを示した( 第5-11図 ),対地別では米州むけ303回線,アジア向け368回線,ヨーロッパ向け187回線,大洋州向け89回線,アフリカ向け8回線で,米州,ヨーロッパ向けが増加している。

世界衛星通信網の形成を推進してきた世界商業通信衛星組織(インテルサット)の恒久化のための政府間会議は45年2月から3月にかけて開催され,組織の再編成等の問題について討議したが,参加各国の最終的合意にはいたらなかつた。

次の政府間会議は45年後半開催が予定されている。


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