昭和45年

年次経済報告

日本経済の新しい次元

昭和45年7月17日

経済企画庁


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第2部 日本経済の新しい次元

第3章 高福祉経済への前進

経済活動の窮極的目標は,国民福祉の向上である。

1960年代のわが国経済の大きな福祉目標であつた国民の所得水準の上昇という課題は,急速な経済成長のなかでしだいに達成されてきた。しかし,その過程ですでに述べたような物価の上昇が生じ,また,住宅など生活環境施設の立遅れが目だつようになり,近年では,公害の激化が国民生活に深刻な影響をあたえつつある。

経済活動は,生活にとつて不足しているものを供給していくためのものである。生活水準の低い段階では所得の向上が主要な目的となる。しかし今日のわが国では,社会資本や自然など人間をとりまく環境が相対的に劣悪化し,不足している状態に変つてきている。

70年代の日本経済の課題は,こうした諸問題を解決し,国民の新しい欲求に応えた,より高次,より多元的な福祉を実現していくことである。そのためには,経済成長のしかたやなかみも変つてこなければならない。経済規模の拡大に重点をおいた成長の時代から,今や日本経済は高福祉をきずきあげるための成長の時代を迎えている。本章では,こうした観点から,国民生活・産業構造,労働力や土地利用,財政金融の各側面について,その現状とかかえる問題点,そして豊かで住みよい日本経済を建設していくための課題を検討してみよう。


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