昭和45年

年次経済報告

日本経済の新しい次元

昭和45年7月17日

経済企画庁


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第2部 日本経済の新しい次元

第1章 日本経済の国際的転換

3. 国際的な資本交流の高まり

(1) わが国資本取引の特色とその変化

国際的な資本交流は,近年目だつた高まりを示している。 第99表 は,資本交流の中心となる長期資本について,その国際的な流れを示したものであるが,1960年頃に比べて最近の資本移動は著しく増大しており,とくにアメリカの資本流出,EEC各国の域内資本交流の高まりが目だつている。

一方,貿易収支の黒字幅が拡大傾向を強めているなかでわが国の長期資本収支は,従来の流入超過から流出超過へと転換しつつある。

このように,わが国も国際的資本交流の高まりのなかで,資本面における国際化を推進しつつあるが,その内容を検討してみると,なお立遅れがみられることは否めない。

第100表 民間長期資本の国際的交流(収支尻)

第101表 先進諸国の民間長期資本収支(1967年)

まず,長期資本の流入面についてみると,これは主として借款(構成比28.5%,1969年以下同じ),証券投資(同54.0%),外債(同14.8%)によつて大部分が占められており,直接投資については5.3%となお低水準である。

資本移動の自由化については,わが国の対応はどうであろうか。対内投資の中でも対内直接投資については,昭和42年以来わが国経済の国際化を一層推進し,また長期的にみてわが国経済発展に資するため第1次,第2次の自由化措置がとられた。その結果204業種について直接投資が自由化されるに至つたが,さらに本年秋までに第3次の自由化を行ない,残余のかなりの部分についても来年度末までに自由化を進めることとしている。

一方,流出面では延払輸出信用が44.8%を占めており,対外直接投資は13.5%とウエイトも小さい。

第102図 地域別業種別海外投資の構成比

次に各国の資本流出額を国民総生産との比率でみると流出総額ではわが国は高い水準にあるが,対外直接投資はとくに低く,主要国中最も低水準にある( 第101表 )。その累計額(認可ベース)をとつてみても,43年度末で,20億ドル弱にすぎず国民総生産との比率も1.3%と,アメリカの7.5%はもとより,西ドイツの2.5%に比べてもその規模はまだまだ小さい。

今後わが国が高度先進国と脱皮していくためには,輸出だけではなく資本面での取引をも重視していく方向へ向わねばならない。そのためには,わが国の円滑な国際化を可能とする方向で資本の流出入両面においてできる限り自由化を進めていく必要がある。

(2) 海外投資と海外進出企業

現在のわが国の海外投資を地域別にみると,最近年に至つて先進国への投資が高まつているとはいえ,残高では開発途上国の比重が大きい( 第102図 )。一方先進国への投資ではアメリカがきわめて大きなウエイトを占めている。この点先進地域間での直接投資が主流を占める欧米諸因とは対照的である。海外投資は貿易面など相手国との経済的結合度を反映するところも多いが,今後は世界的視野に立つて企業が活躍していくことが予想され,そのための新たな環境を整備することが必要となつてこよう。また,そのことは資本の自由円滑な移動という点からも望ましいものと思われる。

次に業種別にみると,全体としては,製造業,鉱業・農林業,商業等第3次産業の割合はほぼ同じであるが,先進地域では商業等第3次産業の比重が,また開発途上地域では製造業,鉱業・農林業の比重が高くなつている。しかし,これを投資件数(1951~68年度累計)でみると,事業の性質上1件あたりの投資規模が異なることもあつて,商業等第3次産業の割合は約6割,製造業では約3割,鉱業・農林業では約1割となつている。

以上のような特色をもつたわが国の海外投資を地域別に貿易規模との比較をみると, 第103表 のように,先進地域では北アメリカが,開発途上地域では中南米,中近東が大きな値を示している。一方,東南アジア,アフリカでは投資額にくらべ輸出規模が相対的に大きい。こうした違いは,輸出,輸入,投資における各地域との結びつきの程度や投資の業種内容などの違いを反映したものである。たとえば,中近東,大洋州においては,投資額に比べ輸入が大きいが,これは,これら地域からの石油,鉄鉱石など原材料の輸入が巨額にのぼつているためである。

欧米先進国の例をみると資本取引における直接投資のウエイトは漸次高まつており,とくに,自動車など製造業の伸びは著しい。また,欧米先進国では,輸出促進的な色彩は概してうすい。輸出と海外生産との関係を自動車についてみると早くから海外投資を積極的に行なつてきたアメリカではビッグ・スリーの総生産台数に占める海外生産の比率は,28%(1968年)に達しており,輸出も海外生産分に依存する傾向にある。一方,わが国は,まだ輸出重視の段階にあるが,今後は市場,労働力の面でも有利な海外生産を目的とした投資も活発化するであろう。

(3) 金融取引等の国際化

国際金融取引はユーロダラー市場の発展にもみられるごとく年を追つて拡大しつつある。このような金融取引の国際化という点からみた場合,わが国には次のような特色がある。

第1にわが国では国際資本取引について現在種々の制限が残されている。このうち短期資本取引に関する規制は,OECDの資本移動の自由化に関するコード上も自由化を求められているものではないが,同コードの対象となる取引についてみるとOECD加盟の先進諸国の中で,わが国は自由化の留保が多い方に属している( 第104表 )。こうした事情もあつて,わが国ではマネーフロー表からみても 第105表 のように,国際金融取引のウエイトは欧米諸国に比べて低くなつている。

第2に,金融取引の担い手である金融機関についてみても,わが国では輸出入業務に付随する金融業務についてはかなり充実してきているものの,これ以外の分野での国際金融取引,なかんづく対外投融資活動は比較的少なく,今後伸びてゆく分野であろう。とくに,今後わが国企業が商品輸出から直接投資の比重を高めてゆく方向へ向かうことが予想され,これに対応して資金面,情報面などにおける国際的活動の一層の拡充が要請されてこよう。なお,このような金融取引の国際化の進展にあたつては,それが同時に撹乱的な短期資本の移動など,国内経済にとつて好ましくない事態を招来することも考えられ,この面への慎重な配慮も必要といえよう。


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