昭和44年

年次経済報告

豊かさへの挑戦

昭和44年7月15日

経済企画庁


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第1部 昭和43年度の景気動向

3. 息の長い景気上昇のための課題

(1) ひきつづき景気は上昇

当庁の景気動向指数によれば,このところ総合指標,先行指標いずれも50%ラインの上にあり,景気がいぜん上昇基調にあることを物語つている( 第69図 )。また,当庁試算の景気警告指標も43年1~3月期以降ひきつづき中立信号(景気政策にとくに変更の必要性のないことを示す信号)を示している( 第70図 )。

国内経済の動きをみると,鉱工業生産(季節修正値,3ヵ月移動平均)は前月比で,44年1月0.3%増,2月0.3%増,3月2.2%増,4月1.1%増と増勢がつづいている。また鉱工業出荷(除船舶,季節修正値,3ヵ月移動平均)も1月0.6%増,2月1.4%増,3月2.0%増,4月1.9%増と好調な伸びを示している。その結果製品在庫率指数(船舶出荷を除く)も2月以降落着いた動きとなつている。このような生産,出荷の好調の背景には需要の堅調な伸びがある。まず,個人消費についてみると,百貨店売上高の前年同期比は3~5月で17.4%増と堅調な伸びを示している。また設備投資の先行きを示す機械受注額(船舶を除く民需,季節修正値)は前月比で3月2.4%減少したあと4月2.7%増,5月6.9%増と増勢に転じ,建設工事受注額(民需,季節修正値,3ヵ月移動平均)も2月2.2%増,3月12.9%増のあと4月8.1%増(速報を含む)と高い増勢を持続している。

このような動きに加え,欧州向けの鉄鋼輸出の盛況や非鉄など海外相場の上昇から卸売物価はこのところ強含みに推移し,労働力需給も求人倍率(季節修正値)でみると,3月1.19,4月1.21,5月1.26とひつ迫した状態をつづけている。

一方,国際収支は好調で,輸出入を季節修正した総合収支は44年1~3月期月平均207百万ドル,4月180百万ドル,5月328百万ドルと大幅な黒字を持続している。このような国際収支の好調は貿易収支の大幅な黒字と外国資本の流入によるものである。輸出通関額(季節修正値,3ヵ月移動平均)は前月比で2月3.7%増,3月1.4%増,4月2.4%増と好調をつづけ,市場別にはアメリカ,東南アジア向けがやや鈍化してきたが,ラテンアメリカ向け,先進一次産品国向けなどが好調であり,品目別には繊維・同製品,金属・同製品,機械などがひきつづ順調に伸びている。

もつとも輸出信用状接受額(李節修正値)は年初来毎月ほぼ10億ドル程度で停滞ぎみに推移しており,今後の動向には注目を要しよう。他方,輸入通関額(季節修正値,3ヵ月移動平均)は,2月0.2%減,3月1.7%減のあと4月は1.1%の増加となつた。これは,生産の根強い増勢を反映して金属原料,原粗油,コークス用炭などの素原材料や機械などが増加したためである。


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