昭和43年

年次経済報告

国際化のなかの日本経済

昭和43年7月23日

経済企画庁


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はじめに

昭和43年度は日本経済にとつて,二重の意味をもつている。

短期的な観点からいえば,予想をこえた42年の景気拡大を「調整」する年であり,長期的・構造的な点からみれば,労働力不足化傾向と国際化がいつそう進展する明治100年にあたつている。今年度の経済報告は,この二重の意味を明らかにしようとしたものである。この2つは密接不可分のものであるが,ここでは便宜的に2部に分けて分析した。

第1部では,大型経済が実現した過程とその調整の問題をとりあげている。その焦点は,設備投資の盛り上がりと国際収支の悪化であるが,とくに予想をこえた拡大の原因とその結果とられた景気調整策実施後の動きに分析の重点をおいた。その際,過去の調整とくらべながら,今回の特徴を明らかにし,今後の景気政策のための教訓をひき出すことに努めた。

以上のように,42年度経済では景気調整の問題が最大関心事であつたが,同時に,その動きのなかに,日本経済が新たに解決すべき長期的ないくつかの課題があらわれていることを見逃すことはできない。

日本経済は,昭和39年にほぼ全面的な貿易の自由化を行ない,IMF八条国への移行やOECD加盟などをみたが,その後こうした国際化はいつそう進展し(ケネディ・ラウンド妥結,資本自由化の実施,特恵問題の進展,SDR創設の合意等々),同時に,わが国自体の世界に占める経済的地位もいちだんと向上し,その世界に対する影響力も強まつてきた。一方,わが国内部では,労働力不足がいつそう激しくなつてきている。こうした内外情勢の変化がわが国の国際収支や産業構造などに大きい変化を及ぼすことは間違いない。

第2部では,そうした点をふまえて「国際化の進展と日本経済」という問題を取り上げ,(1)国際化が,貿易や産業に与えてきた,またこれから与えようとする衝撃と効果を分析するとともに,(2)新らしい事態に対処して産業の発展と国民生活の向上を図るための諸条件を明らかにし,(3)とくに,財政・金融,物価などの各面で,経済社会の発展を妨げている制度・慣行の硬直化現象に注目した。こうした国際化がすすむ日本経済の究極目標が国民福祉の向上にあるべきことはいうまでもないが,それは同時に,世界経済の繁栄と各国民の幸福に資すべきものである。そのことによつて,はじめて明冶100年の意味が生きてくると思われる。


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