昭和42年

年次経済報告

能率と福祉の向上

経済企画庁


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第1部 昭和41年度の日本経済

4. 国際収支の均衡

(2) 輸入の増勢

景気が上昇過程に入ると,生産が増加し輸入も増大に向かつた(前掲 第20図 )。そのうえ,輸入価格が値上がりし,輸入素原材料の在庫投資や製品原材料の輸入が増加した。こうした輸入の増勢は41年後半になるといつそうつよまつたが,42年に入るとこの動きはやや落着いてきた。輸入価格の値上がりが一服し,輸入素原材料の在庫投資も増加テンポが鈍つてきたからである。

41年度のこうした動きを前回の38年度と比較してみると,輸入総額の増加幅はほぼ同程度であるが,輸入価格の値上がりと素原材料在庫投資による一時的増加額は,前回(3億4,400万ドル)に対して今回(1億3,000万ドル)は小さい( 第21図 )。もつとも今回は,需給ギヤツプの解消から需要超過傾向がつよく,鉄鋼・非鉄金属など製品原材料の輸入が3億1,400万ドルと前回の2億4,100万ドルを7,300万ドル上回つたが,これを含めても偶然的,あるいは一時的要因は前回の約7割にとどまつている。

第22図 輸入素原材料消費比率の推移

こうした要因を除くと輸入の増勢基調は根づよい。まず第1は,素原材料消費の増加である。素原材料の消費原単位は技術進歩で年々低下傾向にあるから,鉱業生産より輸入素原材料消費の伸びが大きくなるというわけではない。しかし,素原材料の輸入依存率は上昇傾向にあるし,需給ギヤツプが解消して素原材料と関係が深い生産財の生産の伸びも高まつているので,前回にくらべると増加基調は根強い( 第22図 )。

第2は,機械輸入の増加である。もつとも,30年代前半のように金属加工機械などが設備投資の台頭につれてふえだしたというのではない。設備投資によつてどれだけ輸入が必要かを示す,いわゆる設備投資の輸入誘発係数を試算してみると,41年では1,000億円の投資について108億円の輸入で総需要1,000億円に対する輸入112億円より小さい。機械輸入の内容をみると,電子計算機などの事務用機械・半導体等・通信機器類・原子炉など新しい技術進歩にそつた機械装置が増加している。

第14表 貿易外収支の推移(収支尻)

第15表 長期資本収支の推移

第3は,農産物・木材・消費財などの増加である。所得水準の上昇に伴つて消費財や食料品に対するし好の多様化がすすみ,農産物や木材の国内供給が追いつかず,それらの輸入が傾向的に増加している。

したがつて,一時的要因の解消により増加のテンポは弱まるとしても,景気の上昇過程で輸入は今後も増加を続けていくことは間違いない。


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