昭和40年

年次経済報告

安定成長への課題

経済企画庁


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昭和40年度年次経済報告

昭和39年度の日本経済

景気調整の進行

 昭和39年度は、景気調整の年であった。それは、38年末に国際収支の赤字が大きくなり外貨が減り始めたので、38年12月から39年の3月へかけて、預金準備率の引き上げ、新窓口規制、公定歩合の2厘引き上げなどによって経済の拡大を抑えたからである。引き締め後の生産や貿易収支の動きをみると、 第2図 の通りである。生産は、引き締めてから後も増え続けたが、12月からあとは低下し、40年4、5月にはかなり大幅な減少をみせた。国際収支は、引き締め後非常に早くよくなった。6月には貿易収支が、7月には経常収支が黒字(季節修正済)になり、40年に入ってから貿易収支の黒字幅は一段と大きくなり、月平均受超額は40年1~3月は112百万ドル、4~6月は128百万ドルとなった。このように、国際収支バランスの回復という引き締めの目標を達成することができたので、12月に預金準備率を引き下げ、40年の1月、4月には、公定歩合を1厘ずつ引き下げて、引き締めを解除し、6月には景気対策の一環としてさらに1厘引き下げが行われた。

第2図 国際収支と鉱工業生産

 引き締めはこれまでも、昭和28年、32年、36年と何回も行われたが、それらはみな、国際収支の赤字がひどくなったため、その均衡回復の手段としてとられたものであり、引き締めを行うといつも割合に早く国際収支バランスが改善した。昭和39年度の引き締めも、こうした点では同じ性格のものであった。しかし、景気調整の進行過程では次のような特色がみられた。

 第1は、上期と下期とで、引き締めの影響が非常に違ったことである。引き締め後その影響が現れるまでにタイムラグがあるのは、いつもみられることであるが、いろいろの経済指標を上・下両期について比べてみると、 第3表 の通りで、上期中は拡大が続き、下期になると、急に引き締めの影響が強くなってきていることがわかる。

第3表 主要指標の変化率

 第2は、生産や物価の落ち込みは、これまでの引き締めの時よりも軽く、国民総生産はかなり増えているのに、倒産の増大や、企業収益の悪化など、企業が受けた影響が大きかったことである。

 第3は、国際収支は、上期中によくなったのに、国内景気は、下期から40年の初めにかけてかえって悪化し、式締めを解除してからあとも景気回復がみられない点である。輸出が前年度に比べ26%も増えて経常収支の黒字が続きながら、景気は沈滞するという、これまでにない状態が現れた。

 こうした、上期と下期、国民総生産と企業経営、国際均衡と国内均衡との明暗の対照が激しかったのは、なぜだろうか。生産が増えている間に、国際収支バランスを改善することができたのは、日本経済の力が強まっているためであろうか。あるいは、国際収支はよくなっても、企業利潤が減り、景気回復がみられないのは、経済の内部に何か大きな不均衡があり、深刻な問題をかかえているからであろうか。

第3図 引締め後の各指標の推移


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