昭和39年

年次経済報告

開放体制下の日本経済

経済企画庁


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昭和38年度の日本経済

財政

39年度予算─開放体制への移行

 景気回復から上昇へと予想を上回る拡大を遂げてきた38年度の我が国経済は、後半に入って国際収支の悪化をはじめ、金融、物価の動きからも景気の先行きに懸念を深めたため、12月の預金準備率の引き上げを皮切りに再度引締政策への転換を余儀なくされ、目下景気安定化への努力が払われつつある。他面、39年春にはIMF8条国移行、次いでOECD加盟が実現し、我が国経済はいよいよ本格的な開放体制下の厳しい道を歩むこととなった。

 こうした情勢のなかで、39年度予算は、我が国経済の安定的成長と質的強化をめざして、健全均衡主義を堅持し、財政が景気刺激要因となることを厳に避けつつ、将来にわたる国力発展の基盤の充実と国民負担の軽減を図ることを基本方針としている。

 一般会計予算規模は3兆2,554億円で、前年度当初予算より14.2%、4,054億円増加している。もっとも39年度には国立学校特別会計など二つの特別会計が新設されたので、これを調整したところでも前年度当初予算に対して15.1%、4,309億円の増加に留まる。また、特別会計を含めた歳出予算純計は5兆8,382億円で、前年度当初予算より13.3%、6,882億円増大している。

 財政投融資計画は1兆3,402億円で、前年度当初計画より20.8%、2,305億円の増加であった。

 地方財政計画は3兆1,381億円で、前年度計画より19.2%、5,045億円増大した。

 39年度財政では、まず、中小所得者の負担軽減、企業の体質強化のための企業課税の軽減・地方税負担の不均衡是正の3点をねらいとした平年度2,238億円の大幅減税(地方税を含む。)を実施して国民負担の軽減合理化を図ると共に、歳出面では経済各部門の均衡とれた発展に資するため、農林漁業、中小企業の近代化、社会保障の充実、社会資本の整備をはじめ、輸出の振興、文教の刷新などを推進することにしている。

 このような財政規模の拡大に伴って、政府の販貨サービス購入は、前年度実績見込みを11.2%上回る5兆2,800億円と見込まれ、国民総支出見込みの21.9%を占めるものとされた。また、経済成長に対しては25.0%と前年度実績見込み程度の寄与率を持つとみられている。

 さて、今後の経済運営にとって、我が国経済に内在する成長ポテンシャルを巧みに誘導顕示して、引き続き高い成長を維持していくことが基本的目標であることには変わりはないが、開放体制下に入って安定性の確保が一段と重要な課題となってきたことも否定できない。そうした場合、財政部門においては引き続き経済の成長に合わせて国民生活や産業活動の基盤の整備強化、所得格差や地域経済力の不均衡の是正など財政固有の役割を積極的に推進し、予算の効率的使用に一層配慮を加えると共に、財政活動の経済に与える影響力がますます大きくなってくる以上、財政の運用面にあっては、他の経済政策と有機的な関連を保ち、経済情勢の推移に即応できる弾力性を高めることによって、我が国経済の安定成長の確保に努めていかなければならないと考えられる。


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