昭和39年

年次経済報告

開放体制下の日本経済

経済企画庁


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昭和38年度の日本経済

交通・通信

通信

 経済活動の活発化、生活水準の向上等を反映して、通信需要は予想以上の伸びを示し、通信施設の整備拡充が急がれている。

第6-9図 部門別通信量の推移(指数)

郵便

 内国郵便は37年度に引き続き着実な伸びを示し、通常郵便物は85億通(前年度比8.0%増)、小包郵便物は1.2億個(同8.0%増)に達した。

 通常郵便物については、第1種は36年6月の料金改訂により第5種扱いから第1種扱いに移行した郵便物の増加も加わって、9.9%増と依然として高い伸び率を示した。また、37年度は横ばい状態だった第5種も、ダイレクトメール、株式関係郵便物などを中心とする企業通信の激増を反映して、9.5%増と著しい増加をみせ、大型化の傾向と相まって郵便局舎の狭あい化に拍車をかけている。なお、第2種は5.8%増、第3種は1.8%増と、37年度の伸び率をやや下回った。

 37年度は伸び率が低下した外国郵便も38年度は大幅に増加し、通常郵便物は6,000万通(前年度比6.8%増)、小包郵便物は150万個(同10.4%増)に達した。通常郵便物については、航空便が7.6%増、船便が5.2%増となっており、航空使の増加が著しく、全体に占める割合は、航空便が66.5%(前年度66.0%)、船便が33.5%(同34.0%)となっている。

 我が国の郵便物数は、アメリカ、イギリス、西ドイツに続いて、フランスと世界第4位を競っているが、1人当たりの郵便物数は78.1通で、アメリカの347.9通、イギリスの202.4通、西ドイツの156.7通、フランスの171.8通(1961年の統計による)に比べて、利用度は世界第15位となお低く、今後も、経済の成長に伴って、増加の一途をたどっていくことと思われる。

 戦中、戦後の投資不足により老朽化し、郵便物の激増と大型化により狭あい化した郵便局舎その他の施設の改善のため、36年度から5年の間に、普通郵便局舎307局、17.9万坪を新増築することが計画されているが、38年度までには、総計167億円の設備投資により、92局、8.7万坪が完成したのみで、この計画達成のためには、39、40両年度において建設を急がなければならない状態である。

 郵便物の処理は人力に依存する度合いが極めて高く、郵便物数に見合った要員の確保が不可欠であり、38年度の郵便事業定員は、37年度より4,749名増の101,267名となったが、職員特に大都市の郵便外務員の採用難は年と共にその傾向を強めてきており、要員の確保には処遇の改善が重要な問題となっている。また、郵便物数は季節変動がはなはだしく、夏期、年末首等における郵便物の激増には臨時職員の大量雇用を持って対処しているが、求人難のため、必要人員の確保は次第に困難の度を増してきており、将来に問題を投げかけている。

 郵便事業合理化の一環として、郵便局内作業機械化の実施と実用化試験は着実に進められているが、今後予想される郵便物の激増と労働需給のひっ迫に対処するためには、機械化になお一層の努力を傾注していくことが必要であろう。

国内電気通信

電話

 38年度中の電話利用状況についてみると、市内通話度数(ダイヤル即時市外通話を含む)274億度(前年度比13%増)、市外通話度数(交換手接続市外通話のみ)10.4億度(同1%増)となったが、伸び率としては前年度に引き続き鈍化している。

 電電公社の電信電話拡充第3次5ヶ年計画が38年度にスタートし、計画期間中の加入電話増設予定500万のうち38年度分70万(前年度63万)を増設して、38年度末電話加入数は548万(前年度末478万)となった。しかしながら、38年度中の新規申し込み数は当初予定数77万をはるかに上回る106万(前年度68万)を数え、37年度末積滞数102万と合わせて、増設対象需要数は208万(前年度165万)の多きに達した。このため需要の34%(前年度38%)が充足されたのみで、38年度末の積滞数は138万(年度当初予想数113万)となって、電話の需給関係はひっ迫の度を深めている。また、公衆電話については、38年度中に27千個(前年度26千個)が増設されて、38年度末195千個(前年度末168千個)となった。

 市外通話の即時化については、社会生活圏の拡大、経済活動テンポのスピードアップ化に呼応して、38年度中に延338万キロの市外回線が増設され、年度末市外回線総延長は、1,456万キロ(前年度比30%増)となり、即時通話区間数は3万2百区間(同91%増)、即時化率(全市外回線数のうち即時回線数の占める割合)は80.2%(前年度末76.2%)となった。

 長距離市外通話のダイヤル即時化については、37年度中に実施された東京対名古屋相互間のダイヤル即時化に引き続き、38年度には、東京、大阪、京都、神戸の主要都市相互間のダイヤル即時化が完了した。

 また、38年度中に、県庁所在地46都市のうち、東京から、25都市、大阪から15都市のダイヤル即時化が実施された。

 以上のような電話サービス向上のための基礎設備として、140局の自動式電話局が新設または旧方式から切り替えられた結果、38年度末の自動化率(全加入数中自動式局加入数の占める割合による場合)は79.2%(前年度末75.4%)となった。

 電信電話拡充整備のため38年度中に2,556億円にのぼる設備投資が行われたが、住宅用電話の増加に伴う1加入当たり収入の低下などのため、38年度の電話事業収入は前年度に引き続き伸びなやみ、予定収入3,395億円を31億円下回ることとなった。

 なお、オリンピック東京大会の関連通信施設については34年度以来準備が進められてきたが、電話局建設等の基礎設備は38年度中にその大部分の工事が完成した。

 次に我が国の電話の国際的水準について、37年度の数字によって比較すると、電話機数は735万個となって37年度中に西ドイツを抜き、アメリカ、イギリスに次いで第3位に上がった。しかし、我が国の場合、電話普及率(人口100人当たりの電話機数)は7.72で、電話機50万個以上を保有する27ヶ国中第19位であり、第1位アメリカ43.05、第2位スウェーデン40.28とは大きく差がついている。また自動化率(全電話機中自動式電話機の占める割合による場合)についてみると、第1位スイス、オランダ100%、第3位西ドイツ99.8%、第4位アメリカ98.1%に比して76.3%で、同じく27ヶ国中第21位となっている。

 都市別比較についても、電話機数ではニューヨーク、シカゴに次いで第3位を占める東京、第14位の大阪が、普及率では電話機数50万以上の主要25都市中それぞれ第24位、第25位という状態である。

 これら電話サービス水準のバロメーターともいえる普及率、自動化率の低さともあわせて、需給関係のひっ迫は、今後の急ピッチな設備拡充の要を痛感させるものがある。

第6-10図 電話需要増加と供給(指数)

電信

 電報通数については、9,461万通(前年度比5%増)と最近10年位の間目立った増減はみせていないが、経済活動、企業経営管理事務の高速化の流れを反映して、市外電信専用線は4,976回線(同17%増)、加入電信は7,356加入(同41%増)と急速な増加を示している。特に加入電信の通信量は、1,273万度(同55%増)と時代の要求を反映して増加している。このような傾向に対処するため、加入電信の取り扱い都市数を37年度末の66都市から85都市に拡張するなど急ピッチの増設が行われた。

 なお、電子計算機の導入による各企業内の経営資料の処理集中化、大量化の傾向に伴って、現在これらデータ伝送に使用中の電信回線の限界をはるかに上回る高速性が要求されており、データ伝送用高品質専用線実現の計画が進められている。

有線放送電話

 有線放送電話は農山漁村における需要がある程度充足されたこと、国の補助金の支給が打ち切られたことなども原因してか、その伸びはやや鈍化したが、38年度末には施設数は2,649(前年度比1.3%増)、加入数は約220万(同11.3%増)に達し、39年1月からは、一定の条件のもとに、電電公社の加入電話との通話が行われるようになり、準公衆電気通信的性格を強めてきた。

 1施設当たりの加入数は、33年3月には421であったものが、39年3月には834となり、大規模化の傾向を示してきていると共に、自動交換方式の出現、公衆電気通信設備との接続のための設備の高規格化など、技術的向上が顕著である。なお、その加入数が電電公社の電話加入数の約40%に相当することは注目に値する。

国際電気通信

 貿易の伸長を反映して国際公衆電気通信は順調な伸びを示した。国際電報は465万通(前年度比7.4%増)、国際加入電信は79.6万度(同22.6%増)、国際電話は26.1万度(同14.4%増)となっており、その伸び率は電話に比較して電報が低く、加入電信が非常に高いのが目立つが、これは加入電信が記録性という点で電報に代わりうる性格を有すると共に、電報に比べて料金が割安であること、事務の機械化に好都合であること等の利点を有するため、企業の通信需要が次第に電報から加入電信に移ってきていることによる。なお、加入電信の加入数は1,680(前年度比11.7%増)となっている。

 通信施設の整備拡充のため、38年度においては83億円の設備投資が行われたが、そのうち57億円は日米間海底ケーブル(太平洋横断海底同軸ケーブル)の建設に、7億円は宇宙通信の研究に投じられたものである。

 日米間海底ケーブルは37年2月に建設が開始され、39年6月に完成した。このケーブルの開通により電話128回線(電信であればその約20倍)をえることができ、安定した良質の通信が確保され、しかも、日米間のみならず、日欧間即時通話も可能となったので、今後増加する通信需要を十分に賄うと共に、新たな通信需要を喚起し、我が国経済の発展に寄与することができるであろう。

 対外通信回線は、38年度においては、22回線増設されて総計290回線(電信102回線、加入電信89回線、電話51回線、その他48回線)となっているが、東京オリンピックによる通信需要の増加については、必要に応じさらに若干の臨時回線の設置が予定されている。

放送及び無線通信

放送

 日本放送協会および一般放送事業者の両者とも、38年度においては、テレビジョン放送局の建設が進み、その放送網の拡大が著しかった。

 日本放送協会によって行われている放送の分野では、放送局その他の放送施設の建設整備のため194億円の設備投資が行われ、ラジオ放送局は17局、テレビジョンが314局となり、ラジオ第1は全国世帯数の99.7%、ラジオ第2は98.1%、総合テレビジョンは87.0%、教育テレビジョンは86.0%が受信できるようになった。

 放送受信契約甲(ラジオとテレビジョン)がl,566万世帯(前年度比17.1%増)、契約乙(ラジオのみ)が370万世帯(同27.4%減)で、普及率は、前者が75.9%、後者が17.9%となっており、テレビジョン受信世帯の普及の伸びが著しい。

 一般放送事業者によって行われている放送の分野では、ラジオ放送局は10局、テレビジョン放送局は37局増加して、放送実施中の局は、ラジオが135局、テレビジョンが158局となり、ラジオは全国世帯数の約96%、テレビジョンは約83%が受信できるようになった。また、ラジオでは放送時間の58.2%、テレビジョンでは81.1%が商業番組の放送にあてられており、38年においてこれに投じられた広告料は総額1,070億円(前年比24.0%増)に達している。

無線通信

 無線通信は戦後急激な伸びを示してきているが、38年度においては、無線局数は196,400局(前年度比35.2%増)に達した。このうち、1,800局は公衆電気通信事業用、2,800局は放送事業用、31,000局はアマチュア無線用、74,500局は市民ラジオ用であるが、残りの86,300局は産業、交通、治安等国民生活の各分野において、公衆電気通信施設やその他の有線電気通信施設ではまかなうことができない通信需要にこたえて重要な役割を演じている。

 これらの無線局は、鉄道、陸運、海運、航空等の事業では、安全の保持、運行・操車・配車の能率化を、漁業では安全の保持、操業の能率化を、電力事業では発送電施設の保守、発電・給電の適正化を図る目的などに用いられて経営の合理化に寄与する等、その大部分は経済活動と密接な関係を有するもので、その激増は経済のめざましい成長を反映しているものといえよう。

 旺盛な無線通信需要に対して割り当て可能な周波数はますますひっ迫してきており、周波数の効率的使用、新周波数帯の開拓、新通信方式の採用、通信技術の開発等が急務となっているが、その一環として、人工衛星による宇宙通信は関係機関によって着々と実験が進められ、38年度においては、日米間テレビジョン中継実験の成功をみた。


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