昭和38年

年次経済報告

先進国への道

経済企画庁


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昭和37年度の日本経済

交通・通信

通信

増加する郵便利用とその施設

郵便需要

 昭和37年度の郵便はおおむね順調に推移し、内国通常郵便物についてみると、約78億通で、前年度比6.6%の増加となった。

 有料普通通常郵便物(年賀、選挙を除く。)について利用構成をみると、36年6月の料金改定の影響が顕著に現れ、料金がすえ置かれた第一種郵便物は、一般的増加の他、第五種扱いから第一種扱いに移行したものも加わって36年度に比べ18.6%の著増を示し、また第二種郵便物も6.0%と順調な伸びであったのに対し、その大部分が値上げの対象となった第三種以下の郵便物は、0.7%の減少となり、その結果、全体に占める割合は36年度の44.1%から更に低下して41.4%となった。

 小包郵便物は109百万個で10.4%の増加となり、前年度料金改定後の利用減をカバーした。

 次に外国郵便物(引き受け)は通常郵便では、伸び率が大幅に低下し、5.6万通、前年度比2.0%増(36年度伸び率13.0%増)に留まり、内容的には航空便の大幅増加に対して船便は大きく減少している。

郵便施設の現状と機械化

 郵便需要は、ここ数年引き受け総数において年率6~9%の増加を示し、37年度は戦前に比し1.6倍となっているが、郵便施設にあっては、改善整備すべきものが少なくなく、あるいはようやく戦前水準に達したに過ぎないもの、あるいは戦前水準にすら達しないものもみられる( 第5-8表 )。従って、これら諸施設の改善に努めると共に要員の確保を図りつつある。更に郵便物の増大に伴う生産性の向上及び作業条件の改善などを図る目的から、作業方法の改善、用具の改良、機械の導入などが行われつつある。特に、郵便作業の機械化についてみると、郵便物の激増に加えて、大型郵便物の増加のはなはだしい大都会を中心に、38年3月末現在、切手、はがきの自動販売機など窓口事務の改善に資するもの約200台、ベルトコンベア、シュートなど局内運搬作業関係約1,400台、その他の局内作業では自動押印機、自動把束機など約1,700合弁設置され、この他機械化の主力ともいうべき区分関係では、京都中央郵便局に自動区分機(書状用1基、小包用2基)などが稼働している。

第5-8表 郵便事業主要指数

国内電気通信

 37年度中の電話通話度数については、市内(ダイヤル即時市外通話を含む)234億度(前年度比12%増)、市外(交換手接続市外通話のみ)10.3億度(前年度比3%増)と増加したが、伸び率としてはやや鈍化した。

 37年9月30日には電話料金の改正が行われた。この改正は従来行われてきた一律的な料率の変更とは異なり、全体としての料金水準はそのままとし、近年の都市の発展、行政区域の合併による社会生活圏の拡大に対処するため、また全国ダイヤル即時化を推進することを目的として、準市内通話制度、距離別時間差法料金の採用等による料金体系の全面的な合理化であった。料金改正の結果を電電公社の月別事業収入からみると、景気調整の影響を受けて全般的な減収を示している中で、特に料金改正後の減収が目だっている。

 電話の需給関係については、依然としてひっ迫している。37年度中の電話増設数は63万(前年度52万)で、前年度末積滞数97万と年度間新規申し込み数68万(前年度63万)とを加えた増設対象需要数165万(前年度149万)のうちのわずか38%を満たしたに過ぎず、37年度末積滞はついに100万の大台を突破して102万となった。37年度末における電話加入数は478万となった。

 市外通話の即時化については、産業の地方分散、社会生活テンポのスピードアップ化傾向等から、ますますその要求が高まっている。このため、37年度中においては、延べ308万キロの市外回線が増設され、年度末市外回線総延長は、1,118万キロ(前年度比38%増)に達し、即時化率(全市外回線数のうち即時回線数の占める割合)は、76.2%(前年度68.2%)、即時通話区間数は15.8千区間(前年度6.9千区間)となった。長距離市外通話のダイヤル即時化については、料金改正、市外番号の全国統一化によりその準備が進められ、37年度中には、東京─名古屋、東京─大阪間の一部等の重要な区間が実施され、市外通話の最終目標である全国ダイヤル即時化への歩みが逐次進められている。

 次に電信のうち、電報通数については年度間9,037万通(前年度比3%減)で、数年来横ばいの傾向にあるが、一方企業内及び企業間の電信通信量は急激に増大している。すなわち電信専用線は37年度末には6.3千回線(前年度比28%増)となり、また加入電信の通信量は822万度(前年度比61%増)、加入数は5,230加入(前年度比37%地)と増加した。また通常の情報通信の他に、電子計算機によるデータ集中処理のため、大量の経営資料伝送の必要が生じており、このためデータ伝送用高品質専用線の準備が進められている。

 次に我が国の国内電気通信の国際的な水準についてみると、例えば電話普及率(人口100人当たりの電話機数)を36年度末で比較すれば、我が国のそれは6.73で、電話機50万個以上保有27国ヶ国中19位である。また自動化率(全電話機中、自動式電話機の占める割合)は73%で同じく22位となっている。特に我が国のごとく膨大な積滞をかかえ、電話加入権が売買の対象になっているがごとき現象は、世界中にその例がない。市外通話についても、欧米諸国においてはほとんど全部が即時化されているのに反し、我が国においては即時でつながる範囲はまだまだ限られている。

 このように立ち遅れた状態を改善すべく、37年8月電電公社では、38年度を初年度とする総額1兆7,875億円に達する電信電話拡充第3次5ヶ年計画を発表した。しかしこのように大規模な計画が完了してもなおかつ約75万の積滞を残し、市外電話即時化率は約90%に留まる見込みである。

 次に有線放送電話は、38年3月末現在、設備数は2,616施設(前年度比4%増)、加入者数は約200万で17%増となった。また、その効用の拡大のため、強く要望されていた公衆電気通信系との接続については36年度以降調査研究を続けた結果、市内接続通話あるいは限定された地城内において、市外接続通話を行いうることとし、正式接続のための手続きを進めている。

国際電熱通信

 37年度の施設面についてみると、加入電信について9地域、電話について6地域が新たに加えられ、通信回線は33回線の増加をみた他、従来、政府機関、航空会社等に対してのみ提供されてきた国際通信回線の賃貸サービスが37年10月以降、一般商事会社に対しても行われることとなり、37年度中、対米電信回線、上回線が貸与された。

 通信量についてみると、電報については、年度間総数433万通で36年度に比し1.6万通の減となり、景気調整の影響がみられる。電話は、総度数21万度で14%の著増を示した。この高い増勢には、需要の大宗を占める北アメリカ州との通話の好調な伸び、回線増設のあった韓国を始め香港、台湾等アジア州との通話の大幅な増加が大きく寄与している。加入電信は、前年度比20%増の64.9万通となったが、一般商社に対する専用回線の貸与開始によって相当量の加入電信が専用回線に移行したことも一因となって前年度までの大幅な伸び率には及ばなかった。

 次に太平洋横断ケーブルは明年7月完成をめどとして着々その敷設計画が進められており、完成後は日米間通信が飛躍的に向上するばかりでなく、世界通信幹線網の一環ともなり、その結果我が国は極東アジアにおける通信センターとして世界通信に大きく寄与することになろう。

 また、人工衛星を利用する衛星通信については、37年11月日米間に衛星通情実験に関する取り決めが成立しNASA(米航空宇宙局)によって打ち上げられるすべての通信衛星を実験の対象とし、技術的に可能な範囲内で協力実験することになり、郵政省電波研究所及び国際電信電話株式会社によって地上設備の建設が進められている。

放送及び無線通信

 無線局総数は、38年3月末現在前年度に比し、15%増加して141,575局となった。

 放送関係では、放送局は38年3月末現在、ラジオ403局(前年度比4%増)、テレビ332局(同68%増)となり、ラジオはほとんど全国の世帯、総合テレビは84%、教育テレビは74%の世帯が、それぞれ放送を享受することができるようになった。

 次に、テレビの普及状況を見ると放送局の増加によるカバレッジの拡大に伴いNHKの受信契約者は前年度に比し29%増の1,338万世帯となり、普及率は64.8%となった。一方、ラジオについては37年4月1日、受信契約体系が変更され、ラジオ、テレビ両放送についての受信契約(甲種契約)と、ラジオのみの受信契約(乙種契約)とになり、統計面においては510万世帯(46%減)、普及率24.8%となった。


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