昭和37年

年次経済報告

景気循環の変ぼう

経済企画庁


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昭和36年度の日本経済

労働

労働生産性と賃金コストの状況

 36年度の製造業労働生産性は35年度を上回る大幅な向上を示し、4~12月の前年同期比では12.6%の上昇であった。もっとも、36年に入ってからの推移を季節修正してみると、1~3月をピークに上昇テンポは鈍ってきている。36年度の生産性上昇率が高かったのは、新鋭設備が漸次稼動に入っていること、コスト面の制約から高水準操業が維持されていること、その結果として量産効果が発揮されていることなどのためである。産業別には操業度低下を反映した石油石炭製品、ゴム、皮革などの上昇率の鈍化のみられた産業もあったが、輸送機械(30.3%)、電気機械(16.1%)鉄鋼(14.2%)などを中心に高い上昇率が維持された。

 一方、賃金は、前述したように著しい上昇を示した結果、製造業全体としては4~12月で前年同期に対し0.7%の賃金コストの増大をもたらした。このような事態は前回の景気後退期である33年に生産性の低下によって生じた以外にはみられなかったことである。生産性が著しい向上をみながら、賃金がこれを上回る上昇を示したという点で注目される。産業別にみても、軽工業で生産性上昇率の低い食料や繊維などは前年に引き続き賃金コストの上昇がみられた。一方、比較的生産性上昇率の高かった重工業については機械や金属製品などで賃金コストの増大がみられたが、鉄鋼、輸送機械、電気機械などは低下傾向が続いている。

 その他、日用品、雑貨関係の労働集約的産業では、前年度に引き続き賃金コストのかなりの増大がみられた。たとえば生産が停滞し、生産性が低下した金属洋食器、万年筆、がん具などは賃金コストの上昇が2割を上回り、また鉛筆、マッチ、陶磁器、楽器、漆器などいずれも5~10%前後の上昇をみている。

第10-10図 生産性と賃金

第10-11表 生産性、賃金、賃金コストの対前年度変化


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