昭和37年

年次経済報告

景気循環の変ぼう

経済企画庁


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総説

序言

 3年続きの高成長の終着点として国際収支の悪化に当面した日本経済は、金融引き締めから景気調整の道を歩まざるをえなくなった。昭和361年9月にとられた景気調整策は、10ヶ月を経た現在経済の各部門に浸透しつつあるが、いままでのところそれほど大きな痛手を与えることなく推移している。景気調整策の浸透は32年の引き締め時にくらべかなりの期間を要したが、輸出の好転と輸入の沈静によって国際収支の先行きにはかなり明るさがみえてきた。

 しかしながら日本経済の直面している課題は国際収支の下期均衡によってすべてが解決されるわけではない。消費者物価の安定、産業関連施設の立ち遅れの是正などの構造的諸問題に加えて、貿易自由化の進展に対処し、世界経済の再編成など新しい事態への即応という命題もある。

 さらには景気調整の遅れが、今後の日本経済に若千の問題を投げかけている面もある。それは、今回の景気調整期の特徴からみて、今後の景気動向が従来の景気変動とは異なる動きを示す可能性を示唆しているからである。戦後の回復期を終了し、景気循環の波を経験しはじめてから約10年の年月をへたが、日本経済の高度成長と経済構造の急速な変化が、景気循環の型にもある種の変ぼうを与えたとみられ、それがまた今後の経済動向に大きな影響をもっと考えられる。

 本報告書においては、今回の景気調整で、なぜ過去2回と異なって緩やかな景気転換が起きたのかを解明し、景気循環の変ぼうがいかなる意味を持つのかを過去10年の景気循環をあとづけることによって分析し、今後の経済動向の判断に資するものとしたい。


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