< 昭和３４年度版経済白書 >

速やかな景気回復と今後の課題

経済企画庁
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経済白書の発表に当って

　日本経済は、昨年秋以降急速に立ち直り、今や順調な数量景気を展開するに至っております。

　今回発表した白書においては、この景気回復の過程とその要因を明らかにするとともに、さらに今後日本経済が安定した成長を持続するためには、この際経済構造の近代化を推進することが必須条件であることを強調し、とくに、産業基盤の整備、中小企業の近代化、社会保障の充実、雇用の質の向上、農工間、地域間の所得格差の是正などを今後の重要課題として指摘しております。

　昨年末の西欧諸国の通貨交換性回復を契機とする為替貿易自由化の潮流に対応しつつ、世界経済におけるわが国の地位を高め、国際競争力を強化するためにも、これらの経済の体質改善は強く要請されるのであります。

　今回の景気循環の過程を顧みて、日本経済が、種々の困難を克服して目ざましい成長を遂げつつある根底には、日本国民の創意と努力が大きな原動力として働いており、これは今後の日本経済の発展を約束するものであるとの感を深くするものであります。同時にまた、この日本経済の実力が国際的に高く評価され、外資導入その他の点において協力のあったことも留意すべきでありまして、今后ますます、海外経済と協調する必要を痛感する次第であります。

　今や、世界経済は、全般的に明るさを加えつつあり、日本経済も新しい発展の段階を迎えようとしております。この時に当り、政府としては、長期的な観点から日本経済の安定的な成長を確保するため、長期経済計画を策定し、国民生活の向上をはかってゆく所存であります。つきましては、今後とも国民各位の創意と努力に期待し、一そうの御協力を切に願うものであります。

昭和３４年７月２１日 管野 和太郎 ( 経済企画庁長官 )