昭和32年

年次経済報告

速すぎた拡大とその反省

経済企画庁


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総説

投資景気の展開

テンポの速過ぎた経済拡大

 昭和31年度の経済拡大のテンポは万人の予想を上回った。年度当初の政府見通しによれば、同年の国民所得は前年度に対して4.3%、鉱工業生産は7.2%伸びると想定されていたが、実際には前者は13.9%、後者は24.3%の成長率を達成した。また 第1図 に見るように、5ヶ年計画の想定成長率に比べても、国民所得、消費等の伸びは2倍以上、生産、輸出は3倍、輸入は5倍、投資は8倍の拡大テンポを示している。30年度においても、国民所得の成長率は11%であった。しかし、この2年続きの経済繁栄をもたらした原動力は、30年度の輸出(為替受取額で対前年3割増)から31年度の民間投資(6割増)に転換している。忘れてならないのは輸出が31年度においても2割の増加を示したことである。つまり二年続きの好況という舞台において、輸出は第一幕の主役をつとめたが、第二幕においても舞台から退いたのではなく、脇役には回ったけれども重要な役割を演じたのであった。もし31年の輸出がこれほどの増大を示さなかったならば、国際収支の悪化から日本経済の拡大スピードはもっと早く訂正されなければならなかったろう。輸出の増大が続いたのも、一つには世界景気が投資ブームを持続したためであった。しかるに、我が国の経済拡大のテンポは世界景気を上回って、生産、輸出、国民所得の拡大率を主要諸国のそれと比べてみれば、 第2図 に示す通り56年の世界において我が国のスピードは第一位を占めている。このような経済拡大が日本経済の諸部面に何らかの影響をもたらさないはずはない。

第1図 計画を上回った拡大テンポ

第2図 1956年における経済拡大率の国際比較


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