昭和30年

年次経済報告

 

経済企画庁


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財政

昭和29年度財政収支の動向

 昭和29年度中の財政資金対民間収支の実積は、 第61表 にみるように1,900億円の散布超過で、前年度951億円の引揚超過に対してその間2,851億円の大幅な開きを示している。

第61表 財政資金対民間収支概要

 しかし、前年度においては外為会計が国際収支の逆調を反映して約1,300億円の大幅な引揚要因であったのに対して、29年度では別口外為貸の返済による引揚要因を差し引いても国際収支の好転から743億円の散超であった。また指定預金も前年度においては秋からの金融引締政策の一環として485億円引き揚げられたのに対し、29年度では預金残高が少なくかつその預け先が中小金融機関であったことから38億円の引き揚げに過ぎなかった。これらの事情を考慮して、この両者と調整項目を除いた狭義の財政収支でみると1,165億円の散超で、前年度を約450億円上回った。

 そこで狭義の財政収支について散超原因を検討してみよう。まず、(1)一般会計の支出では、28年度からのズレ込みが多くこれが出納整理期間中の支出(831億円)及び繰越となったため防衛関係費、防衛庁費、公共事業費等を中心に支出が増大し、前年度を約700億円上回った。他方、収入では税収は比較的好調であったが、専売収入が売上げの不振等から前年度を400億円方下回ったので、収支尻としては435億円の揚超に過ぎず、前年度に比較して約1,000億円の引揚減少となった。(2)特別会計等では郵便局が旧軍人恩給の支払促進から大幅な散超ではあったほかは、運用部、公庫などはほぼ前年度並みの散超であったが、輸入食糧の買入減少を反映した食管及び国鉄、保険、産投などが前年度と異なって揚超増または散超減となったので全体としては前年度を約480億円下回る1,600億円の散超であった。

 要するに29年度中の財政資金対民間収支の主たる散超要因は、一般会計の前年度からのズレ込みを主因とする支出増と輸出の好調を反映した外為会計の散超であったといえよう。

第47図 財政資金対民間収支の推移

第62表 昭和29年度一般会計支出状況


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