昭和30年

年次経済報告

 

経済企画庁


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交通・通信

通信

 昭和29年度通信活動の実積は附表に示す通りであるが、電話加入者は20万の増加をみ、年度末加入者累計197万に達した。これを電話使用度数からみると市内通話にあっては、ほぼ昨年並みの約85億度(推定)であり、市外通話は57千万度と昨年に比し約10%増加した。電報通数は昨年度の91%に当たる83百万通に減じた。一方国際通信の面では電話は28年度の189千度に対して185千度と減少し、駐留軍などの利用による対アメリカの通信の比率が減じて東南アジア方面の貿易通信が増えているのが目立ち、電報通数は国内電報と同じように昨年度の343万通から338万通と減少した。

 29年度電気通信界の大きな動きをみると、4月に初めて東京大阪間にマイクロウエーブによる電話50回線がつくられ、引き続き同区間の増設、さらに東京-仙台、大阪-福岡と延長されつつあるが、ようやく大都市間の即時通話、大都市と周辺都市の自動即時化などの第一歩を踏み出した年といえる。また電力開発、鉄道、行政などの事業遂行のための専用通信施設が一般公衆通信と並行して前年度に引き続き膨張した事も目立った。また各企業体などの専用テレタイプ施設の拡張も著しく、このことは本年度電報通数減少の一因ともみられる。このような通信施設の拡張にもかかわらず、我が国電話機一個当たり年間使用度数は、諸外国例えば米国、西欧諸国などが千回前後であるのに比べ約3500回という極めて高い率を示し、電話加入申込に応じきれない供給不足は依然40万を数えている。このような状態のなかにあって一電話加入者当たりの通話度数、及び収入の傾向がこの年始めて下向きに転じてきたことは注目されてよい( 第56表 参照)。このことはもちろん緊縮経済の影響を示したものであるが、一面において上述のようにサービス向上に伴う現象でもあろう。すなわち市外通話では特急通話の割合が減じて普通通話のそれがいままでにないほど増えたこと、今後は市内通話も利用度の低い周辺地帯へとサービスの範囲が移行して、この傾向はさらに強まるであろうことを考えると、我が国通信事業(関連工業も含めて)は戦後の復興と増設を唯一の目標として歩んできた時期を終えて、総合的見地にたって企業として合理的な運営の方針をたてるとともに、先進諸外国の間にあって技術の早急な進展を考えねばならぬ時期にきたといえよう。

第56表 電話一加入当たり指標

 また、内国通常郵便物の増加状況をみると料金の高い特殊扱いの伸びは普通扱いほど伸びなかったが、いずれも前年度よりそれぞれ2%及び15%の増加を示し、戦前水準に比し総数で96%となった。しかしながら国民一人当たりの利用状況についてみると戦前に比しまだ相当低く、国民消費水準の現状から考えても今後なお進展する余地はあろう。一方外国郵便物数も戦後逐年増加し29年度に至って戦前水準を11%上回った。

第45図 国内通信諸指数の推移


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