月例経済報告(平成11年6月)

平成11年6月8日

経済企画庁調査局

概観

我が国経済:需要面をみると、個人消費は、春先の弱さからはやや持ち直しているものの、収入が低迷しているため、低調に推移している。住宅建設は、持ち直してきている。設備投資は、大幅な減少が続いている。中小企業の減少が著しく、大企業も製造業を中心に減少傾向にある。公共投資は、補正予算などの効果が本格化し、堅調な動きとなっている。

産業面をみると、在庫は、調整が進み、在庫率は前年を下回る水準にまで低下してきた。こうした中、鉱工業生産は、最終需要の動きを反映して、低い水準にあるものの、おおむね横ばいで推移している。企業収益は、全体として減少している。また、企業の業況判断は、厳しい状態にあるが改善の動きがみられる。企業倒産件数は、信用保証制度の拡充の効果などから前年の水準を大幅に下回っている。

雇用情勢は、厳しさを増している。雇用者数が減少し、勤め先や事業の都合による失業者が増加して、完全失業率はこれまでの最高水準で推移している。

輸出は、おおむね横ばい状態となっている。輸入は、緩やかな増加の動きがみられる。国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、おおむね横ばいとなっている。対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、5月は月初の120円台から124円台に下落したが、月末には121円台に上昇した。

物価の動向をみると、国内卸売物価は、内外の需給の緩み等から、弱含みで推移している。また、消費者物価は、安定している。

最近の金融情勢をみると、短期金利は、5月はやや低下した。長期金利は、5月はおおむね横ばいで推移した。株式相場は、5月は大幅に下落した。マネーサプライ(M+CD)は、4月は前年同月比3.9%増となった。また、民間金融機関の貸出は依然低調であるが、企業金融のひっ迫感はやや緩和している。

海外経済:主要国の経済動向をみると、アメリカでは、先行きにやや不透明感がみられるものの、景気は拡大を続けている。実質GDPは、98年10~12月期前期比年率6.0%増の後、1~3月期は同4.1%増(速報値)となった。個人消費、設備投資、住宅投資は増加している。ただし、住宅着工件数はこのところ減少している。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は拡大しているものの、製造業等では輸出減の影響もあり減少している。物価は総じて安定している。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、拡大している。連邦準備制度は、5月18日の連邦公開市場委員会(FOMC)において、金融政策姿勢をそれまでの「中立」から「引締め」方向へ転換したことを発表した。5月の長期金利(30年物国債)は、総じて上昇した。株価(ダウ平均)は、前半にやや上昇したものの、後半に下落した。

西ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気拡大のテンポは鈍化しており、フランスでは、景気拡大のテンポは緩やかになってきている。イギリスでは、景気は減速している。鉱工業生産は、フランスでは伸びが鈍化しており、ドイツ、イギリスでは減少している。失業率は、ドイツでは、これまで低下してきたが、4月にはやや上昇した。フランスでは高水準ながらもやや低下しており、イギリスでは低水準で推移している。物価は、安定している。

東アジアをみると、中国では、景気は拡大しているが、輸出は減少している。韓国では、景気は既に底入れし、回復局面へ入ったとみられる。

国際金融市場の5月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、やや増価基調で推移した。

国際商品市況の5月の動きをみると、CRB商品先物指数は、月初にやや強含んだが、総じて下落基調で推移し、月末にはほぼ2か月ぶりとなる186ポイント台まで下落した。原油スポット価格(北海ブレント)は、上旬から中旬にかけて下落した後、下旬に反発した。


我が国経済の最近の動向をみると、個人消費は、春先の弱さからはやや持ち直しているものの、収入が低迷しているため、低調に推移している。住宅建設は、持ち直してきている。設備投資は、大幅な減少が続いている。中小企業の減少が著しく、大企業も製造業を中心に減少傾向にある。公共投資は、補正予算などの効果が本格化し、堅調な動きとなっている。輸出は、おおむね横ばい状態となっている。

在庫は、調整が進み、在庫率は前年を下回る水準にまで低下してきた。こうした中、生産は、最終需要の動きを反映して、低い水準にあるものの、おおむね横ばいで推移している。

雇用情勢は、厳しさを増している。雇用者数が減少し、勤め先や事業の都合による失業者が増加して、完全失業率はこれまでの最高水準で推移している。

民間金融機関の貸出は依然低調であるが、企業金融のひっ迫感はやや緩和している。また、信用保証制度の拡充の効果などから、企業倒産は前年の水準を大幅に下回っている。

以上のように、景気は、民間需要の回復力が弱く依然として極めて厳しい状況にあるが、各種の政策効果に下支えされて下げ止まり、おおむね横ばいで推移している。

このような厳しい経済状況の下、政府は、緊急経済対策を始めとする諸施策を強力に推進する。

1.国内需要:個人消費は、低調に推移

個人消費は、春先の弱さからはやや持ち直しているものの、収入が低迷しているため、低調に推移している。

家計調査でみると、実質消費支出(全世帯)は前年同月比で3月1.9%減の後、4月は0.7%減(前月比0.7%減)となった。世帯別の動きをみると、勤労者世帯で前年同月比 2.1%減、勤労者以外の世帯では同2.6%増となった。形態別にみると、耐久財は減少、サービス等は増加となった。なお、消費水準指数は全世帯で前年同月比0.2%減、勤労者世帯では同2.0%減となった。また、農家世帯(農業経営統計調査)の実質現金消費支出は前年同月比で3月5.3%減となった。小売売上面からみると、小売業販売額は前年同月比で3月3.9%減の後、4月は1.8%減(前月比1.5%増)となった。全国百貨店販売額(店舗調整済)は前年同月比で3月7.5%減の後、4月3.4%減となった。チェーンストア売上高(店舗調整後)は、前年同月比で3月8.0%減の後、4月5.3%減となった。一方、耐久消費財の販売をみると、乗用車(軽を含む)新車新規登録・届出台数は、前年同月比で5月は5.3%増となった。また、家電小売金額(日本電気大型店協会)は、前年同月比で4月は12.5%増となった。レジャー面を大手旅行業者13社取扱金額でみると、4月は前年同月比で国内旅行が1.6%減、海外旅行は0.7%増となった。

賃金の動向を毎月勤労統計でみると、現金給与総額は、事業所規模5人以上では前年同月比で3月0.5%減の後、4月(速報)は0.1%減(事業所規模30人以上では同0.2%増)となり、うち所定外給与は、4月(速報)は同1.1%減(事業所規模30人以上では同1.0%減)となった。実質賃金は、前年同月比で3月0.1%減の後、4月(速報)は0.0%(事業所規模30人以上では同0.5%増)となった。

住宅建設は、持ち直してきている。

新設住宅着工をみると、総戸数(季節調整値)は、前月比で3月8.8%増(前年同月比0.0%増)となった後、4月は3.5%減(前年同月比1.1%増)の10万4千戸(年率125万戸)となった。4月の着工床面積(季節調整値)は、前月比5.8%減(前年同月比5.5%増)となった。4月の戸数の動きを利用関係別にみると、持家は前月比9.0%減(前年同月比12.5%増)、貸家は同5.9%増(同4.6%減)、分譲住宅は同3.9%減(同6.8%減)となっている。

設備投資は、大幅な減少が続いている。中小企業の減少が著しく、大企業も製造業を中心に減少傾向にある。

当庁「法人企業動向調査」(11年3月調査)により設備投資の動向をみると、全産業の設備投資は、前期比で10年10~12月期(実績)0.7%減(うち製造業1.0%減、非製造業0.3%減)の後、11年1~3月期(実績見込み)は 9.0%減(同8.9%減、同9.9%減)となっている。年度計画では、前年度比で10年度(実績見込み)6.2%減(うち製造業7.0%減、非製造業5.8%減)の後、11年度(計画)は12.8%減(同14.8%減、同11.8%減)となっている。

なお、10年10~12月の設備投資を、大蔵省「法人企業統計季報」(全産業)でみると前年同期比で18.7%減(うち製造業15.9%減、非製造業20.0%減)となった。

先行指標の動きをみると、当庁「機械受注統計調査」によれば、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、前月比で2月は4.5%増(前年同月比8.9%減)の後、3月は2.4%増 (同13.6%減)となり、基調は減少傾向となっている。

なお、4~6月期(見通し)の機械受注(船舶・電力を除く民需)は、前期比で11.3%減(前年同期比14.2%減)と見込まれている。

民間からの建設工事受注額(50社、非住宅)をみると、このところやや増加していたが、4月は前月比41.3%減(前年同月比29.0%減)となった。内訳をみると、製造業は前月比40.1%減(前年同月比37.6%減)、非製造業は同41.8%減(同26.9%減)となった。

公的需要関連指標をみると、公共投資は、補正予算などの効果が本格化し、堅調な動きとなっている。

公共工事着工総工事費は、前年同月比で2月33.5%増の後、3月は19.5%増となった。公共工事請負金額は、前年同月比で3月89.0%増の後、4月は12.2%減となった。官公庁からの建設工事受注額(50社)は、前年同月比で3月27.7%増の後、4月は58.8%増となった。

2.生産雇用:生産は、おおむね横ばいで推移

鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、在庫は、調整が進み、在庫率は前年を下回る水準にまで低下してきた。こうした中、生産・出荷は、最終需要の動きを反映して、低い水準にあるものの、おおむね横ばいで推移している。

鉱工業生産は、前月比で3月2.7%増の後、4月(速報)は、化学、石油・石炭製品が増加したものの、輸送機械、電気機械が減少したことから、2.7%減となった。また製造工業生産予測指数は、前月比で5月は電気機械、輸送機械等により1.2%増の後、6月は輸送機械、一般機械等により0.2%増となっている。鉱工業出荷は、前月比で3月3.6%増の後、4月(速報)は、資本財、生産財等が減少したことから、4.3%減となった。鉱工業生産者製品在庫は、前月比で3月1.0%減の後、4月(速報)は、電気機械、一般機械等が増加したものの、輸送機械、化学等が減少したことから、0.4%減となった。また、4月(速報)の鉱工業生産者製品在庫率指数は105.6と前月を1.6ポイント上回った。

主な業種について最近の動きをみると、電気機械では、生産は4月は減少し、在庫は増加した。輸送機械では、生産は4月は減少し、在庫は減少した。化学では、生産は2か月連続で増加し、在庫は2か月連続で減少した。

第3次産業の動向を通商産業省「第3次産業活動指数」(3月調査、季節調整値)でみると、4か月連続上昇の後、3月は前月比0.0%となった。

雇用情勢は、厳しさを増している。雇用者数が減少し、勤め先や事業の都合による失業者が増加して、完全失業率はこれまでの最高水準で推移している。

労働力需給をみると、有効求人倍率(季節調整値)は、3月0.49倍の後、4月0.48倍となった。新規求人倍率(季節調整値)は、3月0.88倍の後、4月0.90倍となった。雇用者数は、減少している。総務庁「労働力調査」による雇用者数は、4月は前年同月比0.7%減(前年同月差39万人減)となった。常用雇用(事業所規模5人以上)は、3月前年同月比0.1%減(季節調整済前月比0.1%増)の後、4月(速報)は同0.3%増(同0.2%増)となり(事業所規模30人以上では前年同月比0.1%減)、産業別には製造業では同1.8%減となった。4月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差1万人増の326万人、完全失業率(同)は、3月4.8%の後、4月4.8%となった。所定外労働時間(製造業)は、事業所規模5人以上では3月前年同月比4.7%減(季節調整済前月比1.1%増)の後、4月(速報)は同4.7%減(同2.3%減) となっている(事業所規模30人以上では前年同月比5.7%減)。

また、労働省「労働経済動向調査」(5月調査)によると、「残業規制」等の雇用調整を実施する事業所割合は、1月~3月期は引き続き上昇した。

企業の動向をみると、企業収益は、全体として減少している。また、企業の業況判断は、厳しい状態にあるが改善の動きがみられる。

大企業の動向を前記「法人企業動向調査」(3月調査、季節調整値)でみると、11年1~3月期の売上高、経常利益の判断(ともに「増加」-「減少」)は、それぞれ▲18、▲21と、いずれも「減少」が「増加」を上回った。また、11年1~3月期の企業経営者の景気判断(業界景気の判断、「上昇」-「下降」)は▲27と「下降」が「上昇」を上回った。

また、中小企業の動向を中小企業金融公庫「中小企業動向調査」(3月調査、季節調整 値)でみると、売上げD.I.(「増加」-「減少」)は、11年1~3月期は「減少」超幅が縮小し、純益率D.I.(「上昇」-「低下」)は、「低下」超幅が縮小した。業況判断D.I.(「好転」-「悪化」)は、11年1~3月期は「悪化」超幅が縮小した。

企業倒産の状況をみると、件数は、信用保証制度の拡充の効果などから前年の水準を大幅に下回っている。

銀行取引停止処分者件数は、4月は802件で前年同月比35.2%減となった。業種別に件数の前年同月比をみると、製造業で38.1%、建設業で30.3%の減少となった。

3.国際収支:輸出は、おおむね横ばい状態

輸出は、おおむね横ばい状態となっている。

通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、前月比で3月5.4%増の後、4月は0.4%増(前年同月比2.3%減)となった。この動きを品目別(金額ベース)にみると、電気機器、化学製品等が増加した。同じく地域別にみると、アメリカ、アジア等が増加した。

輸入は、緩やかな増加の動きがみられる。

通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で3月4.7%減の後、4月2.4%増(前年同月比10.5%増)なった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、製品類(機械機器)等が増加した。同じく地域別にみると、アジア、アメリカ等が増加した。

通関収支差(季節調整値)は、3月に1兆1,032億円の黒字の後、4月は1兆522億円の黒字となった。

国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、おおむね横ばいとなっている。

3月(速報)の貿易・サービス収支(季節調整値)は、前月に比べ、貿易収支の黒字幅が拡大し、サービス収支の赤字幅が縮小したため、その黒字幅は拡大し、8,452億円となった。また、経常収支(季節調整値)は、貿易・サービス収支の黒字幅が拡大したものの、所得収支の黒字幅が縮小し、経常移転収支の赤字幅が拡大したため、その黒字幅は縮小し、9,122億円となった。投資収支(原数値)は、2,684億円の赤字となり、資本収支(原数値)は、9,401億円の赤字となった。

5月末の外貨準備高は、前月比6億ドル増加して2,237億ドルとなった。

外国為替市場における対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、5月は月初の120円台から124円台に下落したが、月末には121円台に上昇した。一方、対ユーロ円相場(インターバンク17時時点)は、5月は月初の130円台から129円台に上昇した後,132円台まで下落し、下旬にかけて126円台まで上昇した。

4.物価:国内卸売物価は、弱含みで推移

国内卸売物価は、内外の需給の緩み等から、弱含みで推移している。

4月の国内卸売物価は、石油・石炭製品(燃料油)等が上昇したものの、電力・都市ガス・水道(大口電力)等が下落したことから、前月比 0.3%の下落(前年同月比1.9%の下落)となった。輸出物価は、契約通貨ベースで上昇したことから、円ベースでは前月比0.1%の上昇(前年同月比8.3%の下落)となった。輸入物価は、契約通貨ベースで上昇したことから、円ベースでは前月比0.9%の上昇(前年同月比9.9%の下落)となった。この結果、総合卸売物価は、前月比0.1%の下落(前年同月比3.5%の下落)となった。

5月上中旬の動きを前旬比でみると、国内卸売物価は上旬が0.2%の上昇、中旬が0.1%の下落、輸出物価は上旬が0.6%の上昇、中旬が0.9%の上昇、輸入物価は上旬が1.0%の上昇、中旬が0.8%の上昇、総合卸売物価は上旬が0.3%の上昇、中旬が0.1%の上昇となっている。

企業向けサービス価格は、4月は前年同月比1.3%の下落(前月比0.2%の下落)となった。

商品市況(月末対比)は非鉄等は下落したものの、石油等の上昇により5月は上昇した。5月の動きを品目別にみると、銅地金等は下落したものの、灯油等が上昇した。

消費者物価は、安定している。

全国の生鮮食品を除く総合は、前年同月比で3月0.1%の下落の後、4月は持家の帰属家賃が保合いから上昇となったこと等の一方、個人サービスが上昇から下落に転じたこと等により0.1%の下落(前月比0.3%の上昇)となった。なお、総合は、前年同月比で3月0.4%の下落の後、4月は0.1%の下落(前月比0.5%の上昇)となった。

東京都区部の動きでみると、生鮮食品を除く総合は、前年同月比で4月0.2%の下落の後、5月(中旬速報値)は、一般食料工業製品の上昇幅の拡大等の一方、繊維製品の下落幅の拡大等により0.2%の下落(前月比0.1%の上昇)となった。なお、総合は、前年同月比で4月0.2%の下落の後、5月(中旬速報値)は0.6%の下落(前月比保合い)となった。

5.金融財政:株式相場は、大幅に下落

最近の金融情勢をみると、短期金利は、5月はやや低下した。長期金利は、5月はおおむね横ばいで推移した。株式相場は、5月は大幅に下落した。M+CDは、4月は前年同月比3.9%増となった。

短期金融市場をみると、オーバーナイトレートは、5月は横ばいで推移した。2、3か月物は、5月はやや低下した。

公社債市場をみると、国債利回りは、5月はおおむね横ばいで推移した。

国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、4月は短期は 0.033%ポイント上昇し、長期は 0.053%ポイント上昇したことから、総合では前月比で0.001%ポイント低下し 1.745%となった。

マネーサプライをみると、M+CD(月中平均残高)は、4月(速報)は前年同月比 3.9%増となった。また、広義流動性は、4月(速報)は同 4.2%増となった。

企業金融の動向をみると、金融機関(全国銀行)の貸出(月中平均残高)は、4月(速報)は前年同月比5.2%減(貸出債権流動化・償却要因等調整後 0.8%減)となった。5月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債がゼロとなった。また、国内公募事業債の起債実績は7,305億円となった。

また、民間金融機関の貸出は依然低調であるが、企業金融のひっ迫感はやや緩和している。

株式市場をみると、日経平均株価は、5月は大幅に下落した。

6.海外経済:韓国、1~3月期に5四半期ぶりのプラス成長

主要国の経済動向をみると、アメリカでは、先行きにやや不透明感がみられるものの、景気は拡大を続けている。実質GDPは、98年10~12月期前期比年率6.0%増の後、1~3月期は同4.1%増(速報値)となった。個人消費、設備投資、住宅投資は増加している。ただし、住宅着工件数はこのところ減少している。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は拡大しているものの、製造業等では輸出減の影響もあり減少している。雇用者数(非農業事業所)は3月前月差0.7万人増の後、4月は同23.4万人増となった。失業率は4月4.3%となった。物価は総じて安定している。4月の消費者物価は前年同月比2.3%の上昇、生産者物価(完成財総合)は同1.1%の上昇となった。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、拡大している。連邦準備制度は、5月18日の連邦公開市場委員会(FOMC)において、金融政策姿勢をそれまでの「中立」から「引締め」方向へ転換したことを発表した。5月の長期金利(30年物国債)は、総じて上昇した。株価(ダウ平均)は、前半にやや上昇したものの、後半に下落した。

西ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気拡大のテンポは鈍化しており、フランスでは、景気拡大のテンポは緩やかになってきている。イギリスでは、景気は減速している。実質GDPは、ドイツ98年10~12月期前期比年率0.6%減、フランス99年1~3月期同1.4%増(速報値)、イギリス同0.1%減(改定値)となった。鉱工業生産は、フランスでは伸びが鈍化しており、ドイツ、イギリスでは減少している(3月の鉱工業生産は、ドイツ前月比0.1%増、フランス同0.8%増、イギリス同0.2%増)。失業率は、ドイツでは、これまで低下してきたが、4月にはやや上昇した。フランスでは高水準ながらもやや低下しており、イギリスでは低水準で推移している(4月の失業率は、ドイツ10.6%、フランス11.4%、イギリス4.5%)。物価は、安定している(4月の消費者物価上昇率は、ドイツ前年同月比0.7%、フランス同0.4%、イギリス同1.6%)。

東アジアをみると、中国では、景気は拡大しているが、輸出は減少している。物価は下落している。韓国では、景気は既に底入れし、回復局面へ入ったとみられる。1~3月期の実質GDP成長率は、5四半期ぶりに前年同期比プラスとなった。失業率は高水準ながらやや低下している。輸入は増加に転じている。

国際金融市場の5月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、やや増価基調で推移した (モルガン銀行発表の米ドル名目実効相場指数(1990年=100)5月28日現在110.6、4月末比1.3%の増価)。内訳をみると、5月28日現在、対円では4月末比1.8%増価、対ユーロでは同1.5%増価した。

国際商品市況の5月の動きをみると、CRB商品先物指数は、月初にやや強含んだが、総じて下落基調で推移し、月末にはほぼ2か月ぶりとなる186ポイント台まで下落した。原油スポット価格(北海ブレント)は、上旬から中旬にかけて下落した後、下旬に反発した。