月例経済報告(平成11年3月)

平成11年3月16日

経済企画庁調査局

概観

我が国経済: 需要面をみると、個人消費は、下げ止まりつつあるものの、水準はまだ低い。これは収入が低迷しているからである。住宅建設は、低水準で推移している。ただし、販売や受注が一部で回復してきたことを背景に、持ち直しの兆しがみられる。設備投資は、大幅な減少が続いている。中小企業の減少が著しく、大企業も製造業を中心に減少傾向にある。公共投資は、補正予算などの効果により、堅調な動きとなっている。

10年10~12月期(速報)の実質国内総生産は、前期比0.8%減(年率3.2%減)となり、うち内需寄与度はマイナス0.5%となった。

産業面をみると、鉱工業生産は、最終需要が低調なため低い水準にあるものの、このところ下げ止まりつつある。一方、在庫の調整が進み、在庫率は前年を下回る水準にまで低下してきた。企業収益は、全体として減少している。また、企業の業況判断は、下げ止まりの兆しがみられるものの厳しい状態が続いている。企業倒産件数は、信用保証制度の拡充の効果などから大幅に減少してきた。

雇用情勢は、依然として厳しい。雇用者数は下げ止まりの兆しがあるものの、完全失業率はこれまでの最高水準で推移している。

輸出は、このところやや減少している。輸入は、おおむね横ばい状態となっている。国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、おおむね横ばいとなっている。対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、2月月初の115円台から一時112円台まで上昇したが、その後下落し、下旬から3月上旬にかけて、119円台から123円台で推移した。

物価の動向をみると、国内卸売物価は、内外の需給の緩み等から、弱含みで推移している。また、消費者物価は、安定している。

最近の金融情勢をみると、短期金利は、2月は2月12日に日本銀行が金融市場調節方針を緩和したことを受け大幅に低下し、3月上旬にかけてさらに低下した。長期金利は、2月は月初に上昇した後、3月上旬にかけて大幅に低下した。株式相場は、2月は一進一退で推移した後、3月上旬は大幅に上昇した。マネーサプライ(M2+CD)は、1月(速報)は前年同月比3.6%増となった。また、民間金融機関の貸出が低調なことから、企業は貸出態度に対する懸念を持っている。

海外経済:主要国の経済動向をみると、アメリカでは、先行きにやや不透明感がみられるものの、景気は拡大を続けている。実質GDPは、98年7~9月期前期比年率3.7%増の後、10~12月期は同6.1%増(速報値)となった。個人消費、住宅投資、設備投資は増加している。鉱工業生産(総合)の伸びは鈍化している。雇用は拡大しているものの、製造業等では輸出減の影響もあり減少している。物価は安定している。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、依然として高水準にある。2月の長期金利(30年物国債)は、総じてほぼ上昇基調で推移した。株価(ダウ平均)は、総じてほぼ横ばいで推移した。

西ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気拡大のテンポは鈍化しており、フランスでは、景気拡大のテンポは緩やかになってきている。イギリスでは、景気は減速しつつある。鉱工業生産は、ドイツ、フランスでは拡大テンポが緩やかになっており、イギリスでは製造業を中心に減少している。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準ながらもやや低下しており、イギリスでは横ばいで推移している。物価は、安定している。

東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポはこのところやや高まっているが、輸出は減少傾向にある。物価は下落している。韓国では、景気に底入れの兆しがみられるものの、失業率は高水準で推移している。物価は落ち着きを取り戻している。貿易収支黒字はこのところやや減少している。

国際金融市場の2月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、上旬はやや減価する場面があったが、その後は月半ば以降に増価するなど、全体として増価基調で推移した。

国際商品市況の2月の動きをみると、月初はやや強含んだが、その後は下落基調で推移し、月末には23年半ぶりの安値まで下落した。原油スポット価格(北海ブレント)は、上旬は弱含んだが、その後下旬にかけて持ち直した。


我が国経済の最近の動向をみると、個人消費は、下げ止まりつつあるものの、水準はまだ低い。これは収入が低迷しているからである。住宅建設は、低水準で推移している。ただし、販売や受注が一部で回復してきたことを背景に、持ち直しの兆しがみられる。設備投資は、大幅な減少が続いている。中小企業の減少が著しく、大企業も製造業を中心に減少傾向にある。公共投資は、補正予算などの効果により、堅調な動きとなっている。輸出は、このところやや減少している。

生産は、最終需要が低調なため低い水準にあるものの、このところ下げ止まりつつある。一方、在庫の調整が進み、在庫率は前年を下回る水準にまで低下してきた。

雇用情勢は、依然として厳しい。雇用者数は下げ止まりの兆しがあるものの、完全失業率はこれまでの最高水準で推移している。

民間金融機関の貸出が低調なことから、企業は貸出態度に対する懸念を持っているが、信用保証制度の拡充の効果などから、企業倒産は大幅に減少した。一方、金融システム安定化策の進展を反映して、流動性に対する金融市場での警戒感は薄れてきた。こうした中、金融政策の変更などを背景に、長短金利が大幅に低下した。

以上のように、景気は、民間需要が低調なため依然として極めて厳しい状況にあるが、各種の政策効果に下支えされて、このところ下げ止まりつつある。

このような厳しい経済状況の下、政府は、緊急経済対策を始めとする諸施策を強力に推進する。また、2月26日に経済戦略会議は、「日本経済再生への戦略」を答申した。

1.国内需要:個人消費は、下げ止まりつつあるものの、水準はまだ低い

実質国内総生産(平成2年基準、速報)の動向をみると、10年7~9月期前期比0.3%減(年率1.2%減)の後、10年10~12月期は同0.8%減(同3.2%減)となった。内外需別にみると、国内需要の寄与度はマイナス0.5%となり、財貨・サービスの純輸出の寄与度はマイナス0.3%となった。需要項目別にみると、民間最終消費支出は前期比0.1%減、民間企業設備投資は同5.7%減、民間住宅は同7.0%減となった。また、財貨・サービスの輸出は前期比3.4%減、財貨・サービスの輸入は同1.5%減となった。

個人消費は、下げ止まりつつあるものの、水準はまだ低い。これは収入が低迷しているからである。

家計調査でみると、実質消費支出(全世帯)は前年同月比で12月0.6%減の後、1月は1.4%増(前月比2.2%増)となった。世帯別の動きをみると、勤労者世帯で前年同月比 2.6%増、勤労者以外の世帯では同0.7%減となった。形態別にみると、財・サービス共に増加となった。なお、消費水準指数は全世帯で前年同月比1.9%増、勤労者世帯では同2.6%増となった。また、農家世帯(農業経営統計調査)の実質現金消費支出は前年同月比で12月2.8%減となった。小売売上面からみると、小売業販売額は前年同月比で12月4.4%減の後、1月は5.6%減(前月比0.1%増)となった。全国百貨店販売額(店舗調整済)は前年同月比で12月5.8%減の後、1月2.0%減となった。チェーンストア売上高(店舗調整後)は、前年同月比で12月2.2%減の後、1月4.2%減となった。一方、耐久消費財の販売をみると、乗用車(軽を含む)新車新規登録・届出台数は、前年同月比で2月は3.8%増となった。また、家電小売金額(日本電気大型店協会)は、前年同月比で1月は8.8%増となった。レジャー面を大手旅行業者13社取扱金額でみると、1月は前年同月比で国内旅行が2.3%減、海外旅行は9.0%減となった。

賃金の動向を毎月勤労統計でみると、現金給与総額は、事業所規模5人以上では前年同月比で12月4.2%減の後、1月(速報)は2.0%減(事業所規模30人以上では同1.9%減)となり、うち所定外給与は、1月(速報)は同6.7%減(事業所規模30人以上では同6.8%減)となった。実質賃金は、前年同月比で12月4.7%減の後、1月(速報)は2.3%減(事業所規模30人以上では同2.2%減)となった。なお、11~1月合算の特別給与(速報)は、前年同期比6.9%減(前年は同0.6%減)となった。

住宅建設は、低水準で推移している。ただし、販売や受注が一部で回復してきたことを背景に、持ち直しの兆しがみられる。

新設住宅着工をみると、総戸数(季節調整値)は、前月比で12月5.6%増(前年同月比10.8%減)となった後、1月は0.7%増(前年同月比11.2%減)の9万6千戸(年率116万戸)となった。1月の着工床面積(季節調整値)は、前月比1.3%減(前年同月比11.4%減)となった。1月の戸数の動きを利用関係別にみると、持家は前月比5.3%減(前年同月比8.7%減)、貸家は同2.7%増(同9.7%減)、分譲住宅は同2.0%増(同17.1%減)となっている。

設備投資は、大幅な減少が続いている。中小企業の減少が著しく、大企業も製造業を中心に減少傾向にある。

当庁「法人企業動向調査」(10年12月調査)により設備投資の動向をみると、全産業の設備投資は、前期比で10年7~9月期(実績)2.5%減(うち製造業1.2%増、非製造業4.0%減)の後、10年10~12月期(実績見込み)は 6.5%減(同8.1%減、同5.4%減)となっている。また、11年1~3月期(計画)は、前年同期比で 12.9%減(うち製造業16.3%減、非製造業10.9%減)と見込まれている。年間計画では、前年度比で9年度(実績)0.6%増(うち製造業7.6%増、非製造業2.8%減)の後、10年度(計画)は6.3%減(同7.0%減、同5.8%減)となっている。

なお、10年10~12月の設備投資を、大蔵省「法人企業統計季報」(全産業)でみると前年同期比で18.7%減(うち製造業15.9%減、非製造業20.0%減)となった。

先行指標の動きをみると、当庁「機械受注統計調査」によれば、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、前月比で12月は3.1%減(前年同期比14.3%減)の後、1月は1.7%減 (同22.9%減)となり、基調は減少傾向となっている。

民間からの建設工事受注額(50社、非住宅)をみると、弱い動きとなっており、1月は前月比12.5%減(前年同月比24.7%減)となった。内訳をみると、製造業は前月比0.6%増(前年同月比47.9%減)、非製造業は同17.0%減(同15.5%減)となった。

公的需要関連指標をみると、公共投資は、補正予算などの効果により、堅調な動きとなっている。

公共工事着工総工事費は、前年同月比で12月16.7%減の後、1月は13.9%増となった。公共工事請負金額は、前年同月比で1月0.0%増の後、2月は38.8%増となった。官公庁からの建設工事受注額(50社)は、前年同月比で12月7.7%減の後、1月は20.0%増となった。実質公的固定資本形成は、10年7~9月期に前期比3.7%増の後、10年10~12月期は同10.6%増となった。また、実質政府最終消費支出は、10年7~9月期に前期比0.8%増の後、10年10~12月期は同0.6%減となった。

2.生産雇用:生産は、このところ下げ止まりつつある

鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産・出荷は、最終需要が低調なため低い水準にあるものの、このところ下げ止まりつつある。一方、在庫の調整が進み、在庫率は前年を下回る水準にまで低下してきた。

鉱工業生産は、前月比で12月1.3%増の後、1月(速報)は、輸送機械、金属製品等が減少したものの、電気機械、一般機械等が増加したことから、0.8%増となった。また製造工業生産予測指数は、前月比で2月は機械、化学等により0.7%増の後、3月は機械、軽工業等により0.4%増となっている。鉱工業出荷は、前月比で12月1.8%増の後、1月(速報)は、資本財が減少したものの、生産財、非耐久消費財等が増加したことから、1.2%増となった。鉱工業生産者製品在庫は、前月比で12月1.8%減の後、1月(速報)は、石油・石炭製品、非鉄金属等が増加したものの、輸送機械、繊維等が減少したことから、1.7%減となった。また、1月(速報)の鉱工業生産者製品在庫率指数は104.3と前月を3.1ポイント下回った。

主な業種について最近の動きをみると、電気機械では、生産は1月は増加し、在庫は6か月連続で減少した。輸送機械では、生産は1月は減少し、在庫は3か月連続で減少した。化学では、生産は4か月連続で増加し、在庫は3か月連続で増加した。

第3次産業活動の動向をみると、10~12月期は前期比0.2%減と5四半期連続で減少し、低調に推移している。

雇用情勢は、依然として厳しい。雇用者数は下げ止まりの兆しがあるものの、完全失業率はこれまでの最高水準で推移している。

労働力需給をみると、有効求人倍率(季節調整値)は、12月0.47倍の後、1月0.49倍となった。新規求人倍率(季節調整値)は、12月0.87倍の後、1月0.91倍となった。雇用者数は、下げ止まりの兆しがある。総務庁「労働力調査」による雇用者数は、1月は前年同月比0.7%減(前年同月差40万人減)となった。常用雇用(事業所規模5人以上)は、12月前年同月比0.4%減(季節調整済前月比0.0%)の後、1月(速報)は同0.4%減(同0.0%)となり(事業所規模30人以上では前年同月比0.9%減)、産業別には製造業では同2.4%減となった。1月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差3万人増の301万人、完全失業率(同)は、12月4.4%の後、1月4.4%となった。所定外労働時間(製造業)は、事業所規模5人以上では12月前年同月比14.0%減(季節調整済前月比0.5%増)の後、1月(速報)は同 11.0%減(同3.2%増) となっている(事業所規模30人以上では前年同月比12.6%減)。

また、労働省「労働経済動向調査」(2月調査)によると、「残業規制」等の雇用調整を実施する事業所割合は、10~12月期は引き続き上昇した。

企業の動向をみると、企業収益は、全体として減少している。また、企業の業況判断は、下げ止まりの兆しがみられるものの厳しい状態が続いている。

大企業の動向を前記「法人企業動向調査」(12月調査、季節調整値)でみると、10年10~12月期の売上高、経常利益の判断(ともに「増加」-「減少」)は、それぞれ▲29、▲31と、いずれも「減少」が「増加」を上回った。また、10年10~12月期の企業経営者の景気判断(業界景気の判断、「上昇」-「下降」)は▲38と「下降」が「上昇」を上回った。

また、中小企業の動向を中小企業金融公庫「中小企業動向調査」(12月調査、季節調整 値)でみると、売上げD.I.(「増加」-「減少」)は、10年10~12月期は「減少」超幅が拡大し、純益率D.I.(「上昇」-「低下」)は、「低下」超幅が拡大した。業況判断D.I.(「好転」-「悪化」)は、10年10~12月期は「悪化」超幅が縮小した。

企業倒産の状況をみると、件数は、信用保証制度の拡充の効果などから大幅に減少してきた。

銀行取引停止処分者件数は、1月は599件で前年同月比40.5%減となった。業種別に件数の前年同月比をみると、卸売業で49.6%、製造業で42.2%の減少となった。

3.国際収支:輸出は、このところやや減少

輸出は、このところやや減少している。

通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、前月比で11月4.9%減、12月1.5%増の後、1月は6.0%増(前年同月比1.2%減)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、一般機械、電気機器等が減少した。同じく地域別にみると、アメリカ、アジア等が減少した。

輸入は、おおむね横ばい状態となっている。

通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で12月1.9%減の後、1月4.3%増(前年同月比2.2%減)となった。この動きを品目別(金額ベース)にみると、食料品が増加した。同じく地域別にみると、アメリカ等が増加した。

通関収支差(季節調整値)は、12月に1兆787億円の黒字の後、1月は1兆3,239億円の黒字となった。

国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、おおむね横ばいとなっている。

1月(速報)の貿易・サービス収支(季節調整値)は、前月に比べ、サービス収支の赤字幅が拡大したものの、貿易収支の黒字幅が拡大したため、その黒字幅は拡大し、1兆191億円となった。また、経常収支(季節調整値) は、所得収支の黒字幅が縮小したものの、貿易・サービス収支の黒字幅が拡大し、経常移転収支の赤字幅が縮小したため、その黒字幅は拡大し、1兆3,859億円となった。投資収支(原数値)は、5,185億円の黒字となり、資本収支(原数値)は、4,607億円の黒字となった。

2月末の外貨準備高は、前月比7億ドル減少して2,215億ドルとなった。

外国為替市場における対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、2月月初の115円台から一時112円台まで上昇したが、その後下落し、下旬から3月上旬にかけて、119円台から123円台で推移した。一方、対ユーロ円相場(インターバンク17時時点) は、2月月初の131円台から一時127円台まで上昇したが、その後下落し、下旬から3月上旬にかけて、130円台から134円台で推移した。

4.物価:国内卸売物価は、弱含みで推移

国内卸売物価は、内外の需給の緩み等から、弱含みで推移している。

2月の国内卸売物価は、食料用農畜水産物(鶏卵)等が上昇したものの、石油・石炭製品(C重油)等が下落したことから、前月比0.1%の下落(前年同月比2.1%の下落)となった。輸出物価は、契約通貨ベースで下落したものの、円安から円ベースでは前月比1.7%の上昇(前年同月比7.6%の下落)となった。輸入物価は、契約通貨ベースで下落したものの、円安から円ベースでは前月比1.2%の上昇(前年同月比11.8%の下落)となった。この結果、総合卸売物価は、前月比0.2%の上昇(前年同月比3.8%の下落)となった。

企業向けサービス価格は、1月は前年同月比0.9%の下落(前月比0.2%の下落)となった。

商品市況(月末対比)は非鉄等は上昇したものの、鋼材等の下落により2月は下落した。2月の動きを品目別にみると、亜鉛地金等は上昇したものの、棒鋼等が下落した。

消費者物価は、安定している。

全国の生鮮食品を除く総合は、前年同月比で12月0.3%の下落の後、1月は繊維製品が下落から上昇に転じたこと等により0.1%の下落(前月比0.4%の下落)となった。なお、総合は、前年同月比で12月0.6%の上昇の後、1月は0.2%の上昇(前月比0.5%の下落)となった。

東京都区部の動きでみると、生鮮食品を除く総合は、前年同月比で1月0.1%の下落の後、2月(中旬速報値)は公共料金(広義)の下落幅の縮小等の一方、繊維製品が上昇から下落に転じたこと等により0.1%の下落(前月比0.2%の下落)となった。なお、総合は、前年同月比で1月0.1%の上昇の後、2月(中旬速報値)は0.2%の下落(前月比0.4%の下落)となった。

5.金融財政:短期金利は、大幅に低下

最近の金融情勢をみると、短期金利は、2月は2月12日に日本銀行が金融市場調節方針を緩和したことを受け大幅に低下し、3月上旬にかけてさらに低下した。長期金利は、2月は月初に上昇した後、3月上旬にかけて大幅に低下した。株式相場は、2月は一進一退で推移した後、3月上旬は大幅に上昇した。マネーサプライ(M2+CD)は、1月は前年同月比 3.6%増となった。

短期金融市場をみると、オーバーナイトレート、2、3か月物ともに、2月は2月12日に日本銀行が金融市場調節方針を緩和したことを受け大幅に低下し、3月上旬にかけてさらに低下した。

公社債市場をみると、国債流通利回りは、2月は月初に上昇した後、3月上旬にかけて大幅に低下した。

国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、1月は短期は 0.013%ポイント低下し、長期は 0.089%ポイント上昇したことから、総合では前月比で 0.012%ポイント低下し1.877%となった。

マネーサプライ(M2+CD)の月中平均残高を前年同月比でみると、1月(速報)は  3.6%増となった。また、広義流動性でみると、1月(速報)は3.1%増となった。

企業金融の動向をみると、金融機関の貸出平残(全国銀行)は、2月(速報)は前年同月比4.3%減(貸出債権流動化・償却要因等調整後1.3%減)となった。2月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債が 500億円となった。また、2月の国内公募事業債の起債実績は4,920億円となった。

また、民間金融機関の貸出が低調なことから、企業は貸出態度に対する懸念を持っている。

株式市場をみると、日経平均株価は、2月は一進一退で推移した後、3月上旬は大幅に上昇した。

6.海外経済:韓国、景気底入れの兆し

主要国の経済動向をみると、アメリカでは、先行きにやや不透明感がみられるものの、景気は拡大を続けている。実質GDPは、98年7~9月期前期比年率3.7%増の後、10~12月期は同6.1%増(速報値)となった。個人消費、住宅投資、設備投資は増加している。鉱工業生産(総合)の伸びは鈍化している。雇用は拡大しているものの、製造業等では輸出減の影響もあり減少している。雇用者数(非農業事業所)は1月前月差21.7万人増の後、2月は同27.5万人増となった。失業率は2月4.4%となった。物価は安定している。1月の消費者物価は前年同月比1.7%の上昇、生産者物価(完成財総合)は同0.9%の上昇となった。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、依然として高水準にある。2月の長期金利(30年物国債)は、総じてほぼ上昇基調で推移した。株価(ダウ平均)は、総じてほぼ横ばいで推移した。

西ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気拡大のテンポは鈍化しており、フランスでは、景気拡大のテンポは緩やかになってきている。イギリスでは、景気は減速しつつある。98年10~12月期の実質GDPは、ドイツ前期比年率1.5%減、フランス同2.9%増(速報値)、イギリス同0.7%増(改定値)となった。鉱工業生産は、ドイツ、フランスでは拡大テンポが緩やかになっており、イギリスでは製造業を中心に減少している(鉱工業生産は、ドイツ12月前月比0.6%増、フランス同1.6%減、イギリス1月同0.5%減)。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準ながらもやや低下しており、イギリスでは横ばいで推移している(失業率は、ドイツ2月10.5%、フランス1月11.4%、イギリス1月4.6%)。物価は、安定している(1月の消費者物価上昇率は、ドイツ前年同月比0.2%、フランス同0.2%、イギリス同2.4%)。

東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポはこのところやや高まっているが、輸出は減少傾向にある。物価は下落している。韓国では、景気に底入れの兆しがみられるものの、失業率は高水準で推移している。物価は落ち着きを取り戻している。貿易収支黒字はこのところやや減少している。

国際金融市場の2月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、上旬はやや減価する場面があったが、その後は月半ば以降に増価するなど、全体として増価基調で推移した(モルガン銀行発表の米ドル名目実効相場指数(1990年=100)2月26日現在108.7、1月末比1.8%の増価)。内訳をみると、2月26日現在、対円では1月末比2.3%増価、対ユーロでは同2.9%増価した。

国際商品市況の2月の動きをみると、月初はやや強含んだが、その後は下落基調で推移し、月末には23年半ぶりの安値まで下落した。原油スポット価格(北海ブレント)は、上旬は弱含んだが、その後下旬にかけて持ち直した。