月例経済報告(平成11年1月)

平成11年1月19日

経済企画庁調査局

概観

我が国経済:需要面をみると、個人消費は、値ごろ感のある商品を中心に一部に下げ止まりの動きがみられるものの全体としては低調である。これは、収入が減少していることに加え、消費者の財布のひもが依然として固いからである。住宅建設は、マンションの不振もあって低水準が続いている。設備投資は、大幅に減少している。中小企業の減少が著しく、大企業も製造業を中心に減少傾向にある。公共投資は、着工の伸びはこのところやや鈍化しているが、上半期への前倒しが過去最高のペースで行われたこともあり、事業の実施が進んでいる。

産業面をみると、鉱工業生産は、減少傾向が緩やかになってきたが、最終需要が低調なために、低い水準にある。在庫は前年を下回る水準にまで減少してきた。しかし、在庫率が依然高水準であり過剰感は強い。企業収益は、全体として減少している。また、企業の業況判断は、厳しい状況が続いている。

雇用情勢は、更に厳しくなっている。雇用者数の減少テンポは緩やかになってきたが、勤め先や事業の都合による失業者が増加して、完全失業率はこれまでにない高さに上昇した。

輸出は、アジア向けに下げ止まりの兆しがみられるものの、欧米向けの伸びが鈍化しているため、全体としては横ばい状態となっている。輸入は、おおむね横ばい状態となっている。国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、おおむね横ばいとなっている。対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、12月月初の122円台から上昇し、1月月央には一時110円台となった。

物価の動向をみると、国内卸売物価は、内外の需給の緩み等から、弱含みで推移している。また、消費者物価は、基調として安定している。なお、量販店を中心に値引きなどの動きがみられる。

最近の金融情勢をみると、短期金利は、12月から1月月央にかけておおむね横ばいで推移した。長期金利は、12月は大幅に上昇した後、1月月央にかけて低下した。株式相場は、12月から1月月央にかけて下落した。マネーサプライ(M2+CD)は、11月は前年同月比4.4%増となった。また、民間金融機関の貸出が低調なことから、企業は貸出態度に対する懸念を持っており、手元流動性確保に向けての動きを続けている。

海外経済:主要国の経済動向をみると、アメリカでは、景気は拡大しているものの、先行きにやや不透明感がみられる。実質GDPは、98年4~6月期前期比年率1.8%増の後、7~9月期は同3.7%増となった。個人消費、住宅投資は増加している。設備投資の伸びはマイナスとなった。鉱工業生産(総合)の伸びは鈍化している。雇用は拡大しているものの、製造業等では輸出減の影響もあり減少している。物価は安定している。10月の財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、前月から縮小したものの、依然として高水準にある。12月の長期金利(30年物国債)は、月下旬にやや上下したものの、ほぼ横ばいで推移した。株価(ダウ平均)は、月前半は総じて下落したが、後半は総じて上昇した。

西ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気は拡大しているものの、そのテンポに鈍化懸念がみられる。フランスでは、景気拡大のテンポは緩やかになってきており、イギリスでは、景気は減速しつつある。鉱工業生産は、ドイツ、フランスでは拡大テンポが緩やかになってきており、イギリスでは減少傾向にある。失業率は、ドイツでは低下傾向にあったが12月にはやや上昇した。フランスでは高水準ながらもやや低下しており、イギリスでは低水準で推移している。物価は、安定している。98年12月31日には1ユーロ=約1.17ドルの参照レートが設定され、99年1月1日に単一通貨ユーロが誕生した。

東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポはこのところやや高まっているが、輸出は減少傾向にある。物価は下落している。韓国では、景気は後退している。失業率はこのところほぼ横ばいで推移している。物価の騰勢は鈍化している。貿易収支は、輸入減少により大幅な黒字が続いている。

国際金融市場の98年12月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、総じて減価した。

国際商品市況の98年12月の動きをみると、上旬は下落基調で推移したものの、中旬にイラク情勢緊迫を背景に一時上昇した。原油スポット価格(北海ブレント)は、上旬は総じてやや弱含んだが、中旬以降は英米軍によるイラク空爆などからやや強含んだ。


我が国経済の最近の動向をみると、個人消費は、値ごろ感のある商品を中心に一部に下げ止まりの動きがみられるものの全体としては低調である。これは、収入が減少していることに加え、消費者の財布のひもが依然として固いからである。住宅建設は、マンションの不振もあって低水準が続いている。設備投資は、大幅に減少している。中小企業の減少が著しく、大企業も製造業を中心に減少傾向にある。公共投資は、着工の伸びはこのところやや鈍化しているが、上半期への前倒しが過去最高のペースで行われたこともあり、事業の実施が進んでいる。

輸出は、アジア向けに下げ止まりの兆しがみられるものの、欧米向けの伸びが鈍化しているため、全体としては横ばい状態となっている。

生産は、減少傾向が緩やかになってきたが、最終需要が低調なために、低い水準にある。在庫は前年を下回る水準にまで減少してきた。しかし、在庫率が依然高水準であり過剰感は強い。

雇用情勢は、更に厳しくなっている。雇用者数の減少テンポは緩やかになってきたが、勤め先や事業の都合による失業者が増加して、完全失業率はこれまでにない高さに上昇した。

また、民間金融機関の貸出が低調なことから、企業は貸出態度に対する懸念を持っており、手元流動性確保に向けての動きを続けている。

こうした中、長期金利の急速な上昇などもあって、経済の先行きに対する不透明感は依然として強い。

以上のように、景気は低迷状態が長引き、極めて厳しい状況にあるものの、一層の悪化を示す動きと幾分かの改善を示す動きとが入り混じり、変化の胎動も感じられる。

このような厳しい経済状況の下、政府は、緊急経済対策を始めとする諸施策を強力に推進する。税制については、個人所得課税及び法人所得課税の恒久的な減税や、住宅借入金等に係る税額控除制度の改組(住宅ローン減税の実施)、情報通信機器の即時償却制度の創設等、国・地方あわせて9兆円超の減税を実施することとした。

なお、1月18日に平成11年度の実質経済成長率を0.5%程度と見込んだ「平成11年度の経済見通しと経済運営の基本的態度」を閣議決定し、同日、81兆8,601億円(前年度当初比5.4%増)の平成11年度一般会計予算を閣議決定した。また、12月23日に経済戦略会議は、「日本経済再生への戦略」を発表した。

1.国内需要:個人消費は、値ごろ感のある商品を中心に一部に下げ止まりの動きがみられるものの全体としては低調

個人消費は、値ごろ感のある商品を中心に一部に下げ止まりの動きがみられるものの全体としては低調である。これは、収入が減少していることに加え、消費者の財布のひもが依然として固いからである。

家計調査でみると、実質消費支出(全世帯)は前年同月比で10月1.0%減の後、11月は1.3%増(前月比1.4%増)となった。世帯別の動きをみると、勤労者世帯で前年同月比 2.0%増、勤労者以外の世帯では同0.1%増となった。形態別にみると、財・サービス共に増加となった。なお、消費水準指数は全世帯で前年同月比1.5%増、勤労者世帯では同2.0%増となった。また、農家世帯(農業経営統計調査)の実質現金消費支出は前年同月比で10月3.9%減となった。小売売上面からみると、小売業販売額は前年同月比で10月5.5%減の後、11月は2.9%減(前月比1.5%増)となった。全国百貨店販売額(店舗調整済)は前年同月比で10月4.6%減の後、11月2.3%減となった。チェーンストア売上高(店舗調整後)は、前年同月比で10月2.3%減の後、11月0.5%増となった。一方、耐久消費財の販売をみると、乗用車(軽を含む)新車新規登録・届出台数は、前年同月比で12月は8.5%減となった。また、家電小売金額(日本電気大型店協会)は、前年同月比で11月は11.3%増となった。レジャー面を大手旅行業者13社取扱金額でみると、11月は前年同月比で国内旅行が0.0%減、海外旅行は7.2%減となった。

賃金の動向を毎月勤労統計でみると、現金給与総額は、事業所規模5人以上では前年同月比で10月0.1%減の後、11月は0.1%増(事業所規模30人以上では同0.4%増)となり、うち所定外給与は、11月は同9.2%減(事業所規模30人以上では同9.7%減)となった。実質賃金は、前年同月比で10月0.3%減の後、11月は0.7%減(事業所規模30人以上では同0.5%減)となった。なお、平成10年の民間主要企業の年末一時金妥結額(労働省調べ)は前年比1.83%減(前年は同2.8%増)となった。

住宅建設は、マンションの不振もあって低水準が続いている。

新設住宅着工をみると、総戸数(季節調整値)は、前月比で10月1.7%増(前年同月比12.9%減)となった後、11月は7.8%減(前年同月比16.0%減)の8万9千戸(年率107万戸)となった。11月の着工床面積(季節調整値)は、前月比5.2%減(前年同月比13.0%減)となった。11月の戸数の動きを利用関係別にみると、持家は前月比0.4%減(前年同月比1.4%減)、貸家は同13.1%減(同17.3%減)、分譲住宅は同0.4%増(同28.6%減)となっている。

設備投資は、大幅に減少している。中小企業の減少が著しく、大企業も製造業を中心に減少傾向にある。

日本銀行「企業短期経済観測調査」(12月調査)により設備投資の動向をみると、主要企業の10年度設備投資計画は、製造業で前年度比7.7%減(9月調査比3.0%下方修正)非製造業で同0.2%増(同1.0%上方修正)となっており、全産業では同2.6%減(同0.4%下方修正)となった。また、中堅企業では、製造業で前年度比11.8%減(9月調査比1.7%下方修正)、非製造業で同9.5%減(同2.4%上方修正)となり、中小企業では製造業で同18.1%減(同2.6%上方修正)、非製造業で同13.7%減(同2.7%上方修正)となっている。

なお、10年7~9月期の設備投資を、大蔵省「法人企業統計季報」(全産業)でみると前年同期比で12.0%減(うち製造業6.6%減、非製造業14.9%減)となった。

先行指標の動きをみると、当庁「機械受注統計調査」によれば、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、前月比で9月は9.2%増(前年同月比14.5%減)の後、10月は12.5%減(同26.1%減)となり、基調は減少傾向となっている。

民間からの建設工事受注額(50社、非住宅)をみると、11月は前月比7.6%増(前年同月比18.8%減)となったが、このところ弱い動きとなっている。内訳をみると、製造業は前月比6.9%減(前年同月比53.8%減)、非製造業は同11.9%増(同6.6%減)となった。

公的需要関連指標をみると、公共投資は、着工の伸びはこのところやや鈍化しているが、上半期への前倒しが過去最高のペースで行われたこともあり、事業の実施が進んでいる。

公共工事着工総工事費は、前年同月比で10月13.3%増の後、11月は7.2%減となった。公共工事請負金額は、前年同月比で10月22.6%増の後、11月は1.5%減となった。官公庁からの建設工事受注額(50社)は、前年同月比で10月2.9%増の後、11月は14.7%減となった。

2.生産雇用:更に厳しくなっている雇用情勢

鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産・出荷は、減少傾向が緩やかになってきたが、最終需要が低調なために、低い水準にある。在庫は前年を下回る水準にまで減少してきた。しかし、在庫率が依然高水準であり過剰感は強い。

鉱工業生産は、前月比で10月1.1%減の後、11月(速報)は、化学、石油・石炭製品が増加したものの、輸送機械、一般機械等が減少したことから、2.0%減となった。また製造工業生産予測指数は、前月比で12月は化学、鉄鋼等により0.3%増の後、1月は機械、軽工業等により1.3%増となっている。鉱工業出荷は、前月比で10月1.3%減の後、11月(速報)は、建設財が増加したものの、資本財、生産財等が減少したことから、2.2%減となった。鉱工業生産者製品在庫は、前月比で10月0.5%減の後、11月(速報)は、化学、非鉄金属等が増加したものの、輸送機械、一般機械等が減少したことから、0.8%減となった。また、11月(速報)の鉱工業生産者製品在庫率指数は111.9と前月を0.5ポイント上回った。

主な業種について最近の動きをみると、輸送機械では、生産、在庫ともに11月は減少した。一般機械では、生産は2か月連続で減少し、在庫は5か月連続で減少した。化学では、生産は2か月連続で増加し、在庫は11月は増加した。

雇用情勢は、更に厳しくなっている。雇用者数の減少テンポは緩やかになってきたが、勤め先や事業の都合による失業者が増加して、完全失業率はこれまでにない高さに上昇した。

労働力需給をみると、有効求人倍率(季節調整値)は、10月0.48倍の後、11月0.47倍となった。新規求人倍率(季節調整値)は、10月0.86倍の後、11月0.85倍となった。雇用者数は、減少テンポが緩やかになってきた。総務庁「労働力調査」による雇用者数は、11月は前年同月比0.4%減(前年同月差19万人減)となった。常用雇用(事業所規模5人以上)は、10月前年同月比0.4%減(季節調整済前月比0.1%減)の後、11月は同0.6%減(同0.2%増)となり(事業所規模30人以上では前年同月比0.6%減)、産業別には製造業では同2.4%減となった。11月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差13万人増の302万人、完全失業率(同)は、10月4.3%の後、11月4.4%となった。所定外労働時間(製造業)は、事業所規模5人以上では10月前年同月比14.1%減(季節調整済前月比0.9%増)の後、11月は同 15.9%減(同2.7%減) となっている(事業所規模30人以上では前年同月比16.7%減)。

前記「企業短期経済観測調査」(全国企業、12月調査)をみると、企業の雇用人員判断は、過剰感に高まりがみられる。

企業の動向をみると、企業収益は、全体として減少している。また、企業の業況判断は、厳しい状態が続いている。

前記「企業短期経済観測調査」(12月調査)によると、主要企業(全産業)では、10年度上期の経常利益は前年同期比23.0%の減益(除く電力・ガスでは同23.9%の減益)の後、10年度下期には同12.9%の減益(除く電力・ガスでは同12.8%の減益)が見込まれている。産業別にみると、製造業では10年度上期に前年同期比28.7%の減益の後、10年度下期には同16.3%の減益が見込まれている。また、非製造業(除く電力・ガス)では10年度上期に前年同期比13.7%の減益の後、10年度下期には同5.5%の減益が見込まれている。売上高経常利益率は、製造業では10年度上期に3.13%になった後、10年度下期は3.04%と見込まれている。また、非製造業(除く電力・ガス)では10年度上期に1.55%となった後、10年度下期は1.40%と見込まれている。こうしたなかで、企業の業況判断をみると、製造業、非製造業ともに「悪い」超幅が拡大した。

また、中小企業の動向を同調査(全国企業)でみると、製造業では、経常利益は10年度上期には前年同期比67.6%の減益の後、10年度下期には同35.0%の減益が見込まれている。また、非製造業では、10年度上期に前年同期比19.3%の減益の後、10年度下期には同11.8%の減益が見込まれている。こうしたなかで、企業の業況判断をみると、製造業では「悪い」超幅が拡大し、非製造業では「悪い」超幅が縮小した。

企業倒産の状況をみると、件数は、前年の水準を下回ってきた。

銀行取引停止処分者件数は、11月は945件で前年同月比8.2%減となった。業種別に件数の前年同月比をみると、建設業で13.8%、製造業で9.4%の減少となった。

3.国際収支:貿易・サービス収支の黒字は、おおむね横ばい

輸出は、アジア向けに下げ止まりの兆しがみられるものの、欧米向けの伸びが鈍化しているため、全体としては横ばい状態となっている。

通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、前月比で10月2.4%増の後、11月は8.8%減(前年同月比7.1%減)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、一般機械、電気機器等が減少した。同じく地域別にみると、アメリカ、アジア等が減少した。

輸入は、おおむね横ばい状態となっている。

通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で10月3.7%減の後、11月4.8%増(前年同月比3.0%増)となった。この動きを品目別(金額ベース)にみると、食料品、原料品等が増加した。同じく地域別にみると、EU、アジア等が増加した。

通関収支差(季節調整値)は、10月に1兆4,545億円の黒字の後、11月は8,886億円の黒字となった。

国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、おおむね横ばいとなっている。

10月(速報)の貿易・サービス収支(季節調整値)は、前月に比べ、貿易収支の黒字幅が拡大したものの、サービス収支の赤字幅が拡大したため、その黒字幅は縮小し、8,210億円となった。また、経常収支(季節調整値) は、経常移転収支の赤字幅が縮小したものの、貿易・サービス収支の黒字幅が縮小し、所得収支の黒字幅が縮小したため、その黒字幅は縮小し、1兆4,618億円となった。投資収支(原数値)は、5,620億円の赤字となり、資本収支(原数値)は、6,079億円の赤字となった。

12月末の外貨準備高は、前月比13億ドル増加して2,159億ドルとなった。

外国為替市場における対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、12月月初の122円台から上昇し、1月月央には一時110円台となった。一方、対マルク相場(インターバンク17時時点) は、12月月初の72円台から上昇し、1月月央には一時65円台となった。(なお、平成11月1月1日よりマルク相場は対ユーロ固定レートとなった。(1ユーロ=1.95583マルク))

4.物価:国内卸売物価は、弱含みで推移

国内卸売物価は、内外の需給の緩み等から、弱含みで推移している。

12月の国内卸売物価は、加工食品(たばこ)等が上昇した一方、電気機器(電子機器用変成器)等が下落したことから、前月比保合い(前年同月比2.2%の下落)となった。また、前記「企業短期経済観測調査」(主要企業、12月調査)によると、製品需給バランスは緩んだ状態が続いている。輸出物価は、契約通貨ベースで下落したことに加え、円高から円ベースでは前月比1.8%の下落(前年同月比9.5%の下落)となった。輸入物価は、契約通貨ベースで下落したことに加え、円高から円ベースでは前月比2.4%の下落(前年同月比14.9%の下落)となった。この結果、総合卸売物価は、前月比0.4%の下落(前年同月比4.4%の下落)となった。

企業向けサービス価格は、11月は前年同月比0.8%の下落(前月比0.1%の下落)となった。

商品市況(月末対比)は木材等は上昇したものの、非鉄等の下落により12月は下落した。12月の動きを品目別にみると、杉小幅板等は上昇したものの、銅地金等が下落した。

消費者物価は、基調として安定している。なお、量販店を中心に値引きなどの動きがみられる。

全国の生鮮食品を除く総合は、前年同月比で10月0.4%の下落の後、11月は一般生鮮商品が下落から上昇に転じたこと等により0.3%の下落(前月比保合い)となった。なお、総合は、前年同月比で10月0.2%の上昇の後、11月は0.8%の上昇(前月比0.1%の下落)となった。

東京都区部の動きでみると、生鮮食品を除く総合は、前年同月比で11月0.2%の下落の後、12月(中旬速報値)は外食が下落から保合いとなったこと等により0.1%の下落(前月比保合い)となった。なお、総合は、前年同月比で11月1.0%の上昇の後、12月(中旬速報値)は0.7%の上昇(前月比0.4%の下落)となった。

5.金融財政:11年度予算を閣議決定

政府は平成11年1月18日、81兆8,601億円(前年度当初比5.4%増)の平成11年度一般会計予算を閣議決定した。

最近の金融情勢をみると、短期金利は、12月から1月月央にかけておおむね横ばいで推移した。長期金利は、12月は大幅に上昇した後、1月月央にかけて低下した。株式相場は、12月から1月月央にかけて下落した。マネーサプライ(M2+CD)は、11月は前年同月比 4.4%増となった。

短期金融市場をみると、オーバーナイトレート、2、3か月物ともに、12月から1月月央にかけておおむね横ばいで推移した。

公社債市場をみると、国債流通利回りは、12月は大幅に上昇した後、1月月央にかけて低下した。

国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、11月は短期は 0.012%ポイント上昇し、長期は 0.046%ポイント低下したことから、総合では前月比で 0.015%ポイント上昇し 1.870%となった。

マネーサプライ(M2+CD)の月中平均残高を前年同月比でみると、11月(速報)は  4.4%増となった。また、広義流動性でみると、11月(速報)は3.2%増となった。

企業金融の動向をみると、金融機関の貸出平残(全国銀行)は、12月(速報)は前年同月比 4.7%減となった。12月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債が 200億円となった。また、12月の国内公募事業債の起債実績は1兆475億円となった。

前記「企業短期経済観測調査」(全国企業、12月調査)によると、資金繰り判断は「苦しい」超が続いており、金融機関の貸出態度も「厳しい」超が続いている。

民間金融機関の貸出が低調なことから、企業は貸出態度に対する懸念を持っており、手元流動性確保に向けての動きを続けている。

株式市場をみると、日経平均株価は、12月から1月月央にかけて下落した。

6.海外経済:ユーロ誕生

主要国の経済動向をみると、アメリカでは、景気は拡大しているものの、先行きにやや不透明感がみられる。実質GDPは、98年4~6月期前期比年率1.8%増の後、7~9月期は同3.7%増となった。個人消費、住宅投資は増加している。設備投資の伸びはマイナスとなった。鉱工業生産(総合)の伸びは鈍化している。雇用は拡大しているものの、製造業等では輸出減の影響もあり減少している。雇用者数(非農業事業所)は11月前月差25.1万人増の後、12月は同37.8万人増となった。失業率は12月4.3%となった。物価は安定している。11月の消費者物価は前年同月比1.5%の上昇、生産者物価(完成財総合)は同0.7%の低下となった。10月の財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、前月から縮小したものの、依然として高水準にある。12月の長期金利(30年物国債)は、月下旬にやや上下したものの、ほぼ横ばいで推移した。株価(ダウ平均)は、月前半は総じて下落したが、後半は総じて上昇した。

西ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気は拡大しているものの、そのテンポに鈍化懸念がみられる。フランスでは、景気拡大のテンポは緩やかになってきており、イギリスでは、景気は減速しつつある。98年7~9月期の実質GDPは、ドイツ前期比年率3.5%増、フランス同2.1%増、イギリス同1.6%増(確報値、市場価格)となった。鉱工業生産は、ドイツ、フランスでは拡大テンポが緩やかになってきており、イギリスでは減少傾向にある(鉱工業生産は、ドイツ11月前月比2.3%減、フランス10月同0.8%増、イギリス11月同0.1%減)。失業率は、ドイツでは低下傾向にあったが12月にはやや上昇した。フランスでは高水準ながらもやや低下しており、イギリスでは低水準で推移している(失業率は、ドイツ12月10.8%、フランス11月11.5%、イギリス11月4.6%)。物価は、安定している(11月の消費者物価上昇率は、ドイツ前年同月比0.7%、フランス同0.3%、イギリス同3.0%)。98年12月31日には1ユーロ=約1.17ドルの参照レートが設定され、99年1月1日に単一通貨ユーロが誕生した。

東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポはこのところやや高まっているが、輸出は減少傾向にある。物価は下落している。韓国では、景気は後退している。失業率はこのところほぼ横ばいで推移している。物価の騰勢は鈍化している。貿易収支は、輸入減少により大幅な黒字が続いている。

国際金融市場の98年12月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、総じて減価した(モルガン銀行発表の米ドル名目実効相場指数(1990年=100)12月31日105.9、11月末比2.4%の減価)。内訳をみると、12月31日現在、対円では11月末比7.9%減価、対マルクでは同1.5%減価した。

国際商品市況の98年12月の動きをみると、上旬は下落基調で推移したものの、中旬にイラク情勢緊迫を背景に一時上昇した。原油スポット価格(北海ブレント)は、上旬は総じてやや弱含んだが、中旬以降は英米軍によるイラク空爆などからやや強含んだ。