月例経済報告(平成10年8月)

平成10年8月11日

経済企画庁調査局

概観

我が国経済:需要面をみると、個人消費は低調である。これは、実質賃金が減少しており、消費者の財布のひもが依然として固いからである。住宅建設も、低水準が続いている。

設備投資は、動きが鈍い。

産業面をみると、最終需要が弱いことを背景に、鉱工業生産は、減少傾向にある。在庫は2か月連続で減少しているものの、依然高水準である。企業収益は、全体として減少している。また、企業の業況判断は、中小企業を中心に一層厳しさが増している。

雇用情勢は、更に厳しくなっている。雇用者数が減少し、非自発的な離職者の増加を中心に完全失業率がこれまでにない高さに上昇した。

輸出は、アジア向けが減少しているため、欧米向けは好調だが、全体としてはやや減少傾向である。輸入は、減少傾向である。国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、増加傾向にある。対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、7月は、月初の 138 円台から 143円台まで下落した。

物価の動向をみると、国内卸売物価は、内外の需給の緩み等から、弱含みで推移している。また、消費者物価は、安定している。

最近の金融情勢をみると、短期金利は、7月は月初にやや低下した後、おおむね横ばいで推移した。長期金利は、7月はおおむね横ばいで推移した。株式相場は、7月は月初に上昇した後、一進一退で推移した。マネーサプライ(M2+CD)は、6月は前年同月比 3.5 %増となった。

海外経済:主要国の経済動向をみると、アメリカでは、景気は拡大している。ただし、一時的な減速要因から、実質GDPは、1~3月期前期比年率 5.5%増の後、4~6月期は同 1.4%となった。個人消費、設備投資、住宅投資は増加している。鉱工業生産(総合)はこのところ伸びに鈍化がみられる。雇用は拡大している。物価は安定している。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、拡大している。7月の長期金利(30年物国債)は、総じてやや上昇した。7月の株価(ダウ平均)は、月前半上昇したが、後半は下落した。

西ヨーロッパをみると、ドイツ、フランスでは、景気は拡大している。イギリスでは、景気拡大のテンポは緩やかになっている。鉱工業生産は、ドイツ、フランスでは拡大しており、イギリスでは鈍化している。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準ながらもやや低下している。イギリスでは低水準で推移している。物価は、ドイツ、フランスでは安定しており、イギリスでは上昇の兆しがみられる。

東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポは鈍化している。物価は、下落している。貿易収支黒字は、輸入の鈍化から依然大幅である。韓国では、景気は後退している。失業率は、大幅に上昇している。物価は、騰勢は鈍化している。貿易収支黒字は、輸入減少により大幅な黒字が続いている。

国際金融市場の7月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、やや増価した。

国際商品市況の7月の動きをみると、弱含みの推移となった。原油スポット価格(北海ブレント)は、石油産出国の追加減産合意を受けて、やや強含みの推移となった。


我が国経済の最近の動向をみると、個人消費は低調である。これは、実質賃金が減少しており、消費者の財布のひもが依然として固いからである。住宅建設も、低水準が続いている。

設備投資は、動きが鈍い。

輸出は、アジア向けが減少しているため、欧米向けは好調だが、全体としてはやや減少傾向である。

このように最終需要が弱いことを背景に、生産は減少傾向にある。在庫は2か月連続で減少しているものの、依然高水準である。

雇用情勢は更に厳しくなっている。雇用者数が減少し、非自発的な離職者の増加を中心に完全失業率がこれまでにない高さに上昇した。また、民間金融機関は貸出に慎重な態度を変えていない。

以上のように、家計や企業のマインドが慎重になっていることなどから、最終需要が弱くなっている。この影響が、生産・雇用面にも広まっている。要するに、景気は低迷状態が長引き、はなはだ厳しい状況にある。

このような厳しい経済の現況に対応し、まず政府は、「総合経済対策」の実施に全力を挙げることとしている。あわせて、金融再生トータルプランの早期実現を目指し、所要の法案を国会に提出した。

その上で、一刻も早い景気回復を図るため、平成11年度に向け切れ目なく施策を実行できるように、事業規模で10兆円を超える第2次補正予算を編成する。また、税制について、6兆円を相当程度上回る恒久的な減税を実施する。

これらが早い時期から家計や企業のマインドの喚起に役立つものと期待している。

1.国内需要:個人消費は低調

個人消費は、低調である。これは、実質賃金が減少しており、消費者の財布のひもが依然として固いからである。

家計調査でみると、実質消費支出(全世帯)は前年同月比で5月 0.6%減の後、6月は1.0%減(前月比0.6%増)となった。世帯別の動きをみると、勤労者世帯で前年同月比1.5%増、勤労者以外の世帯では同5.4%減となった。形態別にみると、耐久財等は増加、サービスは減少となった。

なお、消費水準指数は全世帯で前年同月比0.5%減、勤労者世帯では同1.9%増となった。また、農家世帯(農業経営統計調査)の実質現金消費支出は前年同月比で5月0.6%減となった。小売売上面からみると、小売業販売額は前年同月比で5月2.0%減の後、6月は3.7%減(前月比2.5%減)となった。全国百貨店販売額(店舗調整済)は前年同月比で5月0.7%減の後、6月5.0%減となった。チェーンストア売上高(店舗調整後)は、前年同月比で5月0.9%増の後、6月2.0%減となった。一方、耐久消費財の販売をみると、乗用車(軽を含む)新車新規登録・届出台数は、前年同月比で7月は2.5%減となった。また、家電小売金額は、前年同月比で6月は3.2%増となった。レジャー面を大手旅行業者13社取扱金額でみると、6月は前年同月比で国内旅行が3.1%減、海外旅行は6.5%減となった。

当庁「消費動向調査」(6月調査)によると、消費者態度指数は、3月に前期差1.9ポイント上昇の後、6月には同2.1ポイントの低下となった。

賃金の動向を毎月勤労統計でみると、現金給与総額は、事業所規模5人以上では前年同月比で5月0.7%減の後、6月(速報)は1.0%減(事業所規模30人以上では同1.0%減)となり、うち所定外給与は、6月(速報)は同9.2%減(事業所規模30人以上では同9.9%減)となった。実質賃金は、前年同月比で5月1.3%減の後、6月(速報)は0.9%減(事業所規模30人以上では同1.0%減)となった。

住宅建設は、低水準が続いている。

新設住宅着工をみると、総戸数(季節調整値)は、前月比で5月1.1%増(前年同月比17.0%減)となった後、6月は3.1%減(前年同月比11.7%減)の10万1千戸(年率121万戸)となった。6月の着工床面積(季節調整値)は、前月比4.7%減(前年同月比11.3%減)となった。6月の戸数の動きを利用関係別にみると、持家は前月比0.4%減(前年同月比5.6%減)、貸家は同0.0%増(同12.2%減)、分譲住宅は同8.3%減(同17.9%減)となっている。

設備投資は、動きが鈍い。

日本銀行「企業短期経済観測調査」(6月調査)により設備投資の動向をみると、主要企業の10年度設備投資計画は、製造業で前年度比2.6%減(3月調査比2.2%上方修正)非製造業で同0.6%減(同0.2%下方修正)となっており、全産業では同1.3%減(同0.6%上方修正)となった。また、中堅企業では、製造業で前年度比9.4%減(3月調査比1.6%上方修正)、非製造業で同14.2%減(同0.4%上方修正)となり、中小企業では製造業で同21.7%減(同4.8%上方修正)、非製造業で同17.9%減(同3.2%上方修正)となっている。

なお、10年1~3月期の設備投資を、大蔵省「法人企業統計季報」(全産業)でみると前年同期比で5.8%減(うち製造業4.8%増、非製造業10.8%減)となった。

先行指標の動きをみると、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、前月比で5月は4.0%減(前年同月比28.6%減)の後、6月は5.6%増(同18.6%減)となり、基調は減少傾向となっている。

なお、当庁「機械受注調査(見通し)」によれば、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、7~9月期(見通し)は前期比で2.1%減(前年同期比22.1%減)と見込まれている。

民間からの建設工事受注額(50社、非住宅)をみると、6月は前月比29.6%増(前年同月比11.3%増)となったが、このところ弱含み傾向となっている。内訳をみると、製造業は前月比1.0%増(前年同月比23.9%減)、非製造業は同38.0%増(同22.9%増)となった。

公的需要関連指標をみると、公共投資については、前倒し執行が促進されているものの、10年度当初予算額や9年度補正予算における積み増し額が前年度に比べて大きく減少していることもあって、着工総工事費は前年を下回る水準で推移している。

公共工事着工総工事費は、前年同月比で5月31.6%減の後、6月は7.5%減となった。公共工事請負金額は、前年同月比で5月24.4%減の後、6月は0.8%増となった。官公庁からの建設工事受注額(50社)は、前年同月比で5月15.0%減の後、6月は14.6%減となった。

2.生産雇用:更に厳しくなっている雇用情勢

鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産・出荷は、減少傾向にある。在庫は2か月連続で減少しているものの、依然高水準である。

鉱工業生産は、前月比で5月2.0%減の後、6月(速報)は、繊維、パルプ・紙・紙加工品が減少したものの、輸送機械、電気機械等が増加したことから、1.3%増となった。また製造工業生産予測指数は、前月比で7月は化学、軽工業等により0.1%増の後、8月は機械等により0.4%減となっている。鉱工業出荷は、前月比で5月0.1%減の後、6月(速報)は、耐久消費財が減少したものの、生産財、非耐久消費財等が増加したことから、0.7%増となった。鉱工業生産者製品在庫は、前月比で5月1.7%減の後、6月(速報)は、輸送機械、一般機械等が増加したものの、鉄鋼、窯業・土石製品等が減少したことから、0.5%減となった。また、6月(速報)の鉱工業生産者製品在庫率指数は110.8と前月を3.6ポイント下回った。

主な業種について最近の動きをみると、輸送機械では、生産、在庫ともに6月は増加した。電気機械では、生産は6月は増加し、在庫は2か月連続で減少した。鉄鋼では、生産は6月は増加し、在庫は4か月連続で減少した。

雇用情勢は、更に厳しくなっている。雇用者数が減少し、非自発的な離職者の増加を中心に完全失業率がこれまでにない高さに上昇した。

労働力需給をみると、有効求人倍率(季節調整値)は、5月0.53倍の後、6月0.51倍となった。新規求人倍率(季節調整値)は、5月0.92倍の後、6月0.86倍となった。雇用者数は、減少している。総務庁「労働力調査」による雇用者数は、6月は前年同月比0.8%減(前年同月差44万人減)となった。常用雇用(事業所規模5人以上)は、5月前年同月比0.1%増(季節調整済前月比0.0%)の後、6月(速報)は同0.1%増(同0.0%)となり(事業所規模30人以上では前年同月比0.2%減)、産業別には製造業では同1.3%減となった。6月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差7万人増の289万人、完全失業率(同)は、5月4.1%の後、6月4.3%となった。所定外労働時間(製造業)は、事業所規模5人以上では5月前年同月比18.3%減(季節調整済前月比0.7%減)の後、6月(速報)は同18.9%減(同1.8%減)となっている(事業所規模30人以上では前年同月比18.7%減)。

企業の動向をみると、企業収益は、全体として減少している。また、企業の業況判断は、中小企業を中心に一層厳しさが増している。

前記「企業短期経済観測調査」(6月調査)によると、主要企業(全産業)では、9年度下期の経常利益は前年同期比16.4%の減益(除く電力・ガスでは同18.2%の減益)の後、10年度上期には同21.4%の減益(除く電力・ガスでは同21.2%の減益)が見込まれている。産業別にみると、製造業では9年度下期に前年同期比21.7%の減益の後、10年度上期には同23.8%の減益が見込まれている。また、非製造業(除く電力・ガス)では9年度下期に前年同期比9.8%の減益の後、10年度上期には同15.5%の減益が見込まれている。売上高経常利益率は、製造業では9年度下期に3.54%になった後、10年度上期は3.24%と見込まれている。また、非製造業(除く電力・ガス)では9年度下期に1.39%となった後、10年度上期は1.43%と見込まれている。こうしたなかで、企業の業況判断をみると、製造業では「悪い」超幅が拡大し、非製造業では「悪い」超幅が縮小した。

また、中小企業の動向を中小企業金融公庫「中小企業動向調査」(6月調査、季節調整値)でみると、売上げD.I.(「増加」-「減少」)は、10年4~6月期は「減少」超幅が拡大し、純益率D.I.(「上昇」-「低下」)は、「低下」超幅が拡大した。業況判断D.I.(「好転」-「悪化」)は、10年4~6月期は「悪化」超幅が拡大した。

企業倒産の状況をみると、件数は、前年水準を大きく上回る傾向で推移している。

銀行取引停止処分者件数は、6月は1,156件で前年同月比22.8%増となった。業種別に件数の前年同月比をみると、サービス業で6.8%の減少となる一方、製造業で40.7%、建設業で30.9%の増加となった。

3.国際収支:輸出はやや減少傾向

輸出は、アジア向けが減少しているため、欧米向けは好調だが、全体としてはやや減少傾向である。

通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、前月比で5月0.7%減の後、6月は1.6%減(前年同月比1.0%減)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、精密機器、繊維等が減少した。同じく地域別にみると、アジア等が減少した。

輸入は、減少傾向である。

通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で5月7.6%減の後、6月は9.8%増(前年同月比2.9%減)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、製品類(金属・同製品)、鉱物性燃料等が減少した。同じく地域別にみると、アジア、EU等が減少した。通関収支差(季節調整値)は、5月に1兆5,754億円の黒字の後、6月は1兆511億円の黒字となった。

国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、増加傾向にある。

5月(速報)の貿易・サービス収支(季節調整値)は、前月に比べ、貿易収支の黒字幅が拡大したことに加え、サービス収支の赤字幅は縮小したため、その黒字幅は拡大し、1兆919億円となった。また、経常収支(季節調整値)は、貿易・サービス収支の黒字幅が拡大したことに加え、所得収支の黒字幅が拡大し、経常移転収支の赤字幅も縮小したため、その黒字幅は拡大し、1兆5,003億円となった。投資収支(原数値)は、1兆6,977億円の赤字となり、資本収支(原数値)は、1兆7,301億円の赤字となった。

7月末の外貨準備高は、前月比16億ドル増加して2,075億ドルとなった。

外国為替市場における対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、7月は、月初の138円台から143円台まで下落した。一方、対マルク相場(インターバンク17時時点)は、7月は、月初の76円台から80円台まで下落した。

4.物価:国内卸売物価は弱含みで推移

国内卸売物価は、内外の需給の緩み等から、弱含みで推移している。

6月の国内卸売物価は、加工食品(清涼飲料類)等が上昇した一方、電気機器(カーオーディオ)等が下落したことから、前月比保合い(前年同月比2.1%の下落)となった。輸出物価は、契約通貨ベースで下落したものの、円安から円ベースでは前月比2.6%の上昇(前年同月比10.4%の上昇)となった。輸入物価は、契約通貨ベースで下落したものの、円安から円ベースでは前月比2.3%の上昇(前年同月比2.0%の上昇)となった。この結果、総合卸売物価は、前月比0.5%の上昇(前年同月比0.3%の下落)となった。

7月上中旬の動きを前旬比でみると、国内卸売物価は上旬、中旬ともに保合い、輸出物価は上旬が0.4%の下落、中旬が0.6%の上昇、輸入物価は上旬が0.9%の下落、中旬が0.4%の上昇、総合卸売物価は上旬が0.1%の下落、中旬が0.1%の上昇となっている。

企業向けサービス価格は、6月は前年同月比0.2%の下落(前月比0.1%の上昇)となった。

商品市況(月末対比)は非鉄等は上昇したものの、鋼材等の下落により7月は下落した。7月の動きを品目別にみると、亜鉛地金等は上昇したものの、薄鋼鈑等が下落した。

消費者物価は、安定している。

全国の生鮮食品を除く総合は、前年同月比で5月保合いの後、6月は繊維製品の上昇幅の拡大等の一方、公共料金(広義)の上昇幅の縮小等があり保合い(前月比0.1%の下落)となった。なお、総合は、前年同月比で5月0.5%の上昇の後、6月は0.1%の上昇(前月比0.4%の下落)となった。

東京都区部の動きでみると、生鮮食品を除く総合は、前年同月比で6月0.3%の上昇の後、7月(中旬速報値)は外食の下落幅の拡大等により0.1%の上昇(前月比0.4%の下落)となった。なお、総合は、前年同月比で6月0.4%の上昇の後、7月(中旬速報値)は保合い(前月比0.8%の下落)となった。

5.金融財政:株式相場は、月初に上昇した後、一進一退で推移

最近の金融情勢をみると、短期金利は、7月は月初にやや低下した後、おおむね横ばいで推移した。長期金利は、7月はおおむね横ばいで推移した。株式相場は、7月は月初に上昇した後、一進一退で推移した。マネーサプライ(M2+CD)は、6月は前年同月比3.5%増となった。

短期金融市場をみると、オーバーナイトレートは、7月はおおむね横ばいで推移した。2、3か月物は、7月は月初にやや低下した後、おおむね横ばいで推移した。

公社債市場をみると、国債流通利回りは、7月はおおむね横ばいで推移した。

国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、6月は短期は0.045%ポイント上昇し、長期は0.125%ポイント低下したことから、総合では前月比で0.003%ポイント上昇し1.855%となった。

マネーサプライ(M2+CD)の月中平均残高を前年同月比でみると、6月(速報)は3.5%増となった。また、広義流動性でみると、6月(速報)は3.2%増となった。

企業金融の動向をみると、金融機関の貸出平残(全国銀行)は、6月(速報)は前年同月比2.3%減となった。7月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債がゼロとなった。また、7月の国内公募事業債の起債実績は1兆130億円となった。

民間金融機関は貸出に慎重な態度を変えていない。

株式市場をみると、日経平均株価は、7月は月初に上昇した後、一進一退で推移した。

6.海外経済:アメリカの景気は拡大しており、減速要因は一時的

主要国の経済動向をみると、アメリカでは、景気は拡大している。ただし、一時的な減速要因から、実質GDPは、1~3月期前期比年率5.5%の後、4~6月期は同1.4%増(暫定値)となった。個人消費、設備投資、住宅投資は増加している。鉱工業生産(総合)はこのところ伸びに鈍化がみられる。雇用は拡大している。雇用者数(非農業事業所)は5月前月差30.9万人増の後、6月は同20.5万人増となった。失業率は6月4.5%となった。物価は安定している。6月の消費者物価は前月比0.1%の上昇、生産者物価(完成財総合)は同0.1%の低下となった。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、拡大している。7月の長期金利(30年物国債)は、総じてやや上昇した。7月の株価(ダウ平均)は、月前半上昇したが、後半は下落した。

西ヨーロッパをみると、ドイツ、フランスでは、景気は拡大している。イギリスでは、景気拡大のテンポは緩やかになっている。実質GDPは、ドイツ1~3月期前期比年率3.9%増、フランス同2.3%増、イギリス4~6月期同2.1%増(速報値)となった。鉱工業生産は、ドイツ、フランスでは拡大しており、イギリスでは鈍化している(5月の鉱工業生産は、ドイツ前月比1.0%増、フランス同0.6%増、イギリス同1.2%減)。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準ながらもやや低下している。イギリスでは低水準で推移している(6月の失業率は、ドイツ11.0%、フランス11.8%、イギリス4.8%)。物価は、ドイツ、フランスでは安定しており、イギリスでは上昇の兆しがみられる(6月の消費者物価上昇率は、ドイツ前年同月比1.2%、フランス同1.0%、イギリス同3.7%)。

東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポは鈍化している。物価は、下落している。貿易収支黒字は、輸入の鈍化から依然大幅である。韓国では、景気は後退している。失業率は、大幅に上昇している。物価は、騰勢は鈍化している。貿易収支黒字は、輸入減少により大幅な黒字が続いている。

国際金融市場の7月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、増価した(モルガン銀行発表の米ドル名目実効相場指数(1990年=100)7月31日114.9、6月末比1.6%の増価)。内訳をみると、7月31日現在、対円では6月末比4.1%増価、対マルクでは同1.8%減価した。

国際商品市況の7月の動きをみると、弱含みの推移となった。原油スポット価格(北海ブレント)は、石油産出国の追加減産合意を受けて、やや強含みの推移となった。