月例経済報告(平成10年4月)

平成10年4月10日

経済企画庁調査局

概観

我が国経済:需要面をみると、個人消費は、家計の経済の先行きに対する不透明感もあって、低調な動きが続いている。住宅建設は、このところおおむね横ばいで推移しているものの、依然その水準は低い。設備投資は、頭打ち傾向が顕著になっている。

9年10~12月期(速報)の実質国内総生産は、前期比 0.2%減(年率 0.7%減)となり、うち内需寄与度はマイナス 0.8%となった。

産業面をみると、最終需要が停滞していることを背景に、在庫は高水準にあり、鉱工業生産は、このところ減少している。企業収益は、全体として減少している。また、企業の業況判断は、一層厳しさが増している。

雇用情勢をみると、完全失業率が既往最高となるなど厳しさが増している。

輸出は、アジア向けが減少していることから、このところ伸びが鈍化している。輸入は、おおむね横ばいで推移している。国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、増加傾向にある。対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、3月は、月初の 125円台から下落し 132円台となった。

物価の動向をみると、国内卸売物価は、内外の需給の緩み等から、弱含みで推移している。また、消費者物価は、安定している。

最近の金融情勢をみると、短期金利は、3月はおおむね横ばいで推移した。長期金利は、3月はやや低下した後、月末にはやや上昇した。株式相場は、3月はおおむね横ばいで推移した。マネーサプライ(M2+CD)は、2月は前年同月比 4.8%増となった。

海外経済:主要国の経済動向をみると、アメリカでは、景気は拡大している。実質GDPは、97年7~9月期前期比年率 3.1%増の後、10~12月期は同 3.7%増となった。個人消費、設備投資、住宅投資は増加している。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は拡大している。物価は安定している。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、このところ拡大している。3月の長期金利(30年物国債)は、やや上下しつつほぼ横ばいで推移した。3月の株価(ダウ平均)は、総じて上昇し、下旬には最高値を更新した。

西ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気は回復しており、フランスでは、景気が拡大している。イギリスでは、景気拡大のテンポはこのところ緩やかになってきている。鉱工業生産は、ドイツ、フランスでは拡大しており、イギリスでは鈍化している。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準で推移しているが、イギリスでは低下している。物価は、ドイツ、フランスでは安定しており、イギリスではこのところ安定してきている。なお欧州委員会は、3月25日、EU加盟15か国のうち11か国を99年1月に開始される通貨統合への当初参加国に推薦した。

東アジアをみると、中国では、景気は拡大している。物価は、安定している。貿易収支は、大幅な黒字が続いている。韓国では、景気は後退している。失業率は、上昇している。物価は、高騰している。貿易収支黒字は、大幅に拡大している。

国際金融市場の3月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、増価した。

国際商品市況の3月の動きをみると、全体では初旬から中旬にかけては弱含みで推移した後、下旬にかけては強含みで推移した。3月の原油スポット価格(北海ブレント)は、全体では弱含みでの推移となり、11ドル台に下落したが、下旬にかけて主要産油国の減産表明によりやや強含んだ。


我が国経済の最近の動向をみると、輸出は、アジア向けが減少していることから、このところ伸びが鈍化している。設備投資は、頭打ち傾向が顕著になっている。個人消費は、家計の経済の先行きに対する不透明感もあって、低調な動きが続いている。住宅建設は、このところおおむね横ばいで推移しているものの、依然その水準は低い。このように最終需要が停滞していることを背景に、在庫は高水準にあり、生産はこのところ減少している。雇用情勢をみると、完全失業率が既往最高となるなど厳しさが増している。また、民間金融機関において貸出態度に慎重さがみられる。以上のように、昨年来厳しさを増した家計や企業の景況感が実体経済全般にまで影響を及ぼしており、景気は停滞し、一層厳しさを増している。

政府としては、このような厳しい経済の現況に対応し、我が国経済及び経済運営に対する内外の信頼を回復するに必要かつ十分な規模の総合経済対策を策定することとしている。

1.国内需要:設備投資は、頭打ち傾向が顕著

実質国内総生産(平成2年基準、速報)の動向をみると、9年7~9月期前期比 0.8%増(年率 3.2%増)の後、9年10~12月期は同 0.2%減(同 0.7%減)となった。内外需別にみると、国内需要の寄与度はマイナス 0.8%となり、財貨・サービスの純輸出の寄与度はプラス 0.6%となった。需要項目別にみると、民間最終消費支出は前期比 0.9%減、民間企業設備投資は同 0.6%増、民間住宅は同 4.2%減となった。また、財貨・サービスの輸出は前期比 3.1%増、財貨・サービスの輸入は同 1.3%減となった。

個人消費は、家計の経済の先行きに対する不透明感もあって、低調な動きが続いている。

家計調査でみると、実質消費支出(全世帯)は前年同月比で1月 4.0%減の後、2月は4.5%減(前月比 0.1%減)となった。世帯別の動きをみると、勤労者世帯で前年同月比4.3%減、勤労者以外の世帯では同 5.0%減となった。形態別にみると、商品、サービスともに減少となった。なお、消費水準指数は全世帯で前年同月比 4.4%減、勤労者世帯では同 4.1%減となった。また、農家世帯(農業経営統計調査)の実質現金消費支出は前年同月比で11月 3.2%減となった。小売売上面からみると、小売業販売額は前年同月比で1月 2.9%減の後、2月は 7.1%減(前月比 2.7%減)となった。全国百貨店販売額(店舗調整済)は前年同月比で1月 2.0%減の後、2月 5.4%減となった。チェーンストア売上高(店舗調整後)は、前年同月比で1月 4.6%減の後、2月 5.0%減となった。一方、耐久消費財の販売をみると、乗用車(軽を含む)新車新規登録・届出台数は、前年同月比で3月は19.4%減となった。また、家電小売金額は、前年同月比で2月は 9.5%減となった。レジャー面を大手旅行業者13社取扱金額でみると、2月は前年同月比で国内旅行が 2.6%減、海外旅行は 9.7%減となった。

賃金の動向を毎月勤労統計でみると、現金給与総額は、事業所規模5人以上では前年同月比で1月 0.8%減の後、2月(速報)は 0.0%(事業所規模30人以上では同 0.1%減)となり、うち所定外給与は、2月(速報)は同 4.2%減(事業所規模30人以上では同 4.6%減)となった。実質賃金は、前年同月比で1月 2.7%減の後、2月(速報)は 1.9%減(事業所規模30人以上では同 2.0%減)となった。なお、平成9年年末賞与は、前年比 0.1%減(前年は同 1.7%増)となった。

住宅建設は、このところおおむね横ばいで推移しているものの、依然その水準は低い。

新設住宅着工をみると、総戸数(季節調整値)は、前月比で1月 1.1%増(前年同月比16.3%減)となった後、2月は 1.8%増(前年同月比13.6%減)の11万1千戸(年率 133万戸)となった。2月の着工床面積(季節調整値)は、前月比 0.5%減(前年同月比19.0%減)となった。2月の戸数の動きを利用関係別にみると、持家は前月比 4.3%減(前年同月比26.7%減)、貸家は同 5.8%増(同 7.4%減)、分譲住宅は同 4.6%減(同 2.8%減)となっている。

設備投資は、頭打ち傾向が顕著になっている。

日本銀行「企業短期経済観測調査」(3月調査)により設備投資の動向をみると、主要企業の9年度設備投資計画は、製造業で前年度比 9.1%増(12月調査比 0.8%下方修正)、非製造業で同 1.4%減(同 2.5%下方修正)となっており、全産業では同 2.0%増(同 1.9%下方修正)となった。また、中堅企業では、製造業で前年度比 0.7%減(12月調査比 2.5%下方修正)、非製造業で同 8.9%減(同 1.8%下方修正)となり、中小企業では製造業で同 4.6%増(同 2.0%下方修正)、非製造業で同11.7%減(同 0.7%上方修正)となっている。

なお、9年10~12月期の設備投資を、大蔵省「法人企業統計季報」(全産業)でみると前年同期比で 3.5%増(うち製造業 8.5%増、非製造業 1.4%増)となった。

先行指標の動きをみると、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、前月比で12月は 1.7%減(前年同月比 8.9%減)の後、1月は13.8%増(同 4.7%減)となり、全体として弱含みで推移している。民間からの建設工事受注額(50社、非住宅)をみると、おおむね横ばいで推移しており、前月比で1月 0.0%増の後、2月は 0.1%増(前年同月比 3.8%増)となった。内訳をみると、製造業は前月比17.1%減(前年同月比18.3%増)、非製造業は同 4.0%増(同 0.1%減)となった。

公的需要関連指標をみると、公共投資については、着工総工事費は、前年同月比で12月4.8%増の後、1月は19.0%減となった。公共工事請負金額は、前年同月比で1月 0.1%増の後、2月は 4.2%増となった。官公庁からの建設工事受注額(50社)は、前年同月比で1月29.8%減の後、2月は 6.1%減となった。実質公的固定資本形成は、9年7~9月期に前期比 1.2%増の後、9年10~12月期は同 1.8%減となった。また、実質政府最終消費支出は、9年7~9月期に前期比 0.7%増の後、9年10~12月期は同 1.4%増となった。

2 生産雇用:完全失業率が既往最高となるなど厳しさが増す雇用情勢

鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、在庫は高水準にあり、生産・出荷は、このところ減少している。

鉱工業生産は、前月比で1月 2.9%増の後、2月(速報)は、金属製品が増加したものの、電気機械、一般機械等が減少したことから、 3.3%減となった。また製造工業生産予測指数は、前月比で3月は機械、鉄鋼により 2.5%減の後、4月は機械、鉄鋼等により2.5%減となっている。鉱工業出荷は、前月比で1月 3.4%増の後、2月(速報)は、生産財、資本財等が減少したことから、 3.6%減となった。鉱工業生産者製品在庫は、前月比で1月 0.1%増の後、2月(速報)は、金属製品、化学等が減少したものの、輸送機械、鉄鋼等が増加したことから、 0.5%増となった。また、2月(速報)の鉱工業生産者製品在庫率指数は 127.0と前月を 5.4ポイント上回った。

主な業種について最近の動きをみると、電気機械では、生産は2月は減少し、在庫は2か月連続で増加した。一般機械では、生産は2月は減少し、在庫は3か月連続で増加した。化学では、生産、在庫ともに2月は減少した。

雇用情勢をみると、完全失業率が既往最高となるなど厳しさが増している。

労働力需給をみると、有効求人倍率(季節調整値)は、1月0.64倍の後、2月0.61倍となった。新規求人倍率(季節調整値)は、1月1.06倍の後、2月1.00倍となった。雇用者数は、伸びが鈍化している。総務庁「労働力調査」による雇用者数は、2月は前年同月比0.1%減(前年同月差4万人減)となった。常用雇用(事業所規模5人以上)は、1月前年同月比 0.7%増(季節調整済前月比 0.0%)の後、2月(速報)は同 0.6%増(同 0.0%)となり(事業所規模30人以上では前年同月比 0.0%)、産業別には製造業では同 0.6%減となった。2月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差6万人増の 244万人、完全失業率(同)は、1月 3.5%の後、2月 3.6%となった。所定外労働時間(製造業)は、事業所規模5人以上では1月前年同月比 6.4%減(季節調整済前月比 0.3%減)の後、2月(速報)は同10.3%減(同 5.8%減) となっている(事業所規模30人以上では前年同月比 9.9%減)。

前記「企業短期経済観測調査」(全国企業、3月調査)をみると、企業の雇用人員判断は、製造業、非製造業ともに過剰感に高まりがみられる。

企業の動向をみると、企業収益は、全体として減少している。また、企業の業況判断は、一層厳しさが増している。

前記「企業短期経済観測調査」(3月調査)によると、主要企業(全産業)では、9年度下期の経常利益は前年同期比15.1%の減益(除く電力・ガスでは同16.6%の減益)の後、10年度上期には同11.4%の減益(除く電力・ガスでは同10.2%の減益)が見込まれている。産業別にみると、製造業では9年度下期に前年同期比19.7%の減益の後、10年度上期には同11.9%の減益が見込まれている。また、非製造業(除く電力・ガス)では9年度下期に前年同期比 8.9%の減益の後、10年度上期には同 6.8%の減益が見込まれている。売上高経常利益率は、製造業では9年度下期に3.58%になった後、10年度上期は3.66%と見込まれている。また、非製造業(除く電力・ガス)では9年度下期に1.38%となった後、10年度上期は1.52%と見込まれている。こうしたなかで、企業の業況判断をみると、製造業、非製造業ともに「悪い」超幅が拡大した。

また、中小企業の動向を同調査(全国企業)でみると、製造業では、経常利益は9年度下期には前年同期比35.2%の減益の後、10年度上期には同10.4%の減益が見込まれている。また非製造業では、9年度下期に前年同期比12.9%の減益の後、10年度上期には同 5.2%の増益が見込まれている。こうしたなかで、企業の業況判断をみると、製造業、非製造業ともに「悪い」超幅が拡大した。

企業倒産の状況をみると、件数は、このところ前年の水準を大きく上回る傾向にある。銀行取引停止処分者件数は、2月は 1,087件で前年同月比18.0%増となった。業種別に件数の前年同月比をみると、卸売業で44.9%、小売業で29.4%の増加となった。

3.国際収支:輸出は、アジア向けが減少していることから、このところ伸びが鈍化

輸出は、アジア向けが減少していることから、このところ伸びが鈍化している。

通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、前月比で1月 3.1%増の後、2月は 3.6%減(前年同月比 2.9%増)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、輸送用機器、精密機器等が増加した。同じく地域別にみると、アジアは減少しているが、アメリカ、EU等が増加した。

輸入は、おおむね横ばいで推移している。

通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で1月 4.6%増の後、2月は12.5%減(前年同月比 6.0%減)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、鉱物性燃料、原料品等は減少したが、製品類(繊維製品)、食料品等は増加した。同じく地域別にみると、中東、アジア等が減少したが、EU等は増加した。

通関収支差(季節調整値)は、1月に1兆 798億円の黒字の後、2月は1兆 1,555億円の黒字となった。

国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、増加傾向にある。

1月(速報)の貿易・サービス収支(季節調整値)は、前月に比べ、貿易収支の黒字幅が拡大し、サービス収支の赤字幅が縮小したため、その黒字幅は拡大し、 6,026億円となった。また、経常収支(季節調整値) は、貿易・サービス収支の黒字幅が拡大し、経常移転収支の赤字幅が縮小したものの、所得収支の黒字幅が縮小したため、その黒字幅は縮小し、1兆 501億円となった。投資収支(原数値)は、 7,446億円の赤字となり、資本収支(原数値)は、 8,324億円の赤字となった。

3月末の外貨準備高は、前月比 4.5億ドル増加して 2,235.9億ドルとなった。

外国為替市場における対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、3月は、月初の 125円台から下落し 132円台となった。一方、対マルク相場(インターバンク17時時点) は、3月は、月初の69円台から下落し72円台となった。

4.物価:国内卸売物価は、弱含みで推移

国内卸売物価は、内外の需給の緩み等から、弱含みで推移している。

3月の国内卸売物価は、非鉄金属(銅地金)等が上昇したものの、石油・石炭製品(燃料油)等が下落したことから、前月比 0.4%の下落(前年同月比 0.1%の下落)となった。また、前記「企業短期経済観測調査」(主要企業、3月調査)によると、製品需給バランスは緩和傾向にある。輸出物価は、契約通貨ベースで下落したものの、円安から円ベースでは前月比 0.7%の上昇(前年同月比 0.8%の下落)となった。輸入物価は、契約通貨ベースで下落したことから、円ベースでは前月比 0.8%の下落(前年同月比 8.2%の下落)となった。この結果、総合卸売物価は、前月比 0.3%の下落(前年同月比 1.1%の下落)となった。

企業向けサービス価格は、2月は前年同月比 1.6%の上昇(前月比 0.1%の上昇)となった。

商品市況(月末対比)は、非鉄等は上昇したものの、石油等の下落により3月は下落した。3月の動きを品目別にみると、鉛地金は上昇したものの、C重油等が下落した。

消費者物価は、安定している。

全国の生鮮食品を除く総合は、前年同月比で1月 2.0%の上昇の後、2月は公共料金(広義)の上昇幅の縮小等により 1.8%の上昇(前月比 0.3%の下落)となった。なお、総合は、前年同月比で1月 1.8%の上昇の後、2月は 1.9%の上昇(前月比 0.1%の下落)となった。

東京都区部の動きでみると、生鮮食品を除く総合は、前年同月比で2月 1.7%の上昇の後、3月(中旬速報値)は持家の帰属家賃の上昇幅の拡大等の一方、外食の上昇幅の縮小等があり 1.7%の上昇(前月比 0.2%の上昇)となった。なお、総合は、前年同月比で2月 2.0%の上昇の後、3月(中旬速報値)は 2.3%の上昇(前月比 0.4%の上昇)となった。

5.金融財政:長期金利は、やや低下した後、月末にはやや上昇

最近の金融情勢をみると、短期金利は、3月はおおむね横ばいで推移した。長期金利は、3月はやや低下した後、月末にはやや上昇した。株式相場は、3月はおおむね横ばいで推移した。マネーサプライ(M2+CD)は、2月は前年同月比 4.8%増となった。

短期金融市場をみると、オーバーナイトレートは、3月はおおむね横ばいで推移した。2、3か月物は、3月は低下した。なお、日銀は市場安定のため、潤沢な資金供給を行った。

公社債市場をみると、国債流通利回りは、3月はやや低下した後、月末にはやや上昇した。なお、国債指標銘柄流通利回り(東証終値)は3月25日に 1.490%となり、史上最低を更新した。

国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、2月は短期は 0.019%上昇し、長期は0.060%下落したことから、総合では前月比で 0.008%上昇し 1.898%となった。

マネーサプライ(M2+CD)の月中平均残高を前年同月比でみると、2月(速報)は 4.8%増となった。また、広義流動性でみると、2月(速報)は 3.1%増となった。

企業金融の動向をみると、金融機関の貸出平残(全国銀行)は、2月(速報)は前年同月比 0.6%減となった。3月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債がゼロとなった。また、3月の国内公募事業債の起債実績は1兆 625億円となった。

前記「企業短期経済観測調査」(主要企業、3月調査)によると、資金繰り判断は「苦しい」超に転じ、金融機関の貸出態度は大幅な「厳しい」超となった。また、手元流動性はやや上昇している。

民間金融機関において貸出態度に慎重さがみられる。

株式市場をみると、日経平均株価は、3月はおおむね横ばいで推移した。

6.海外経済:欧州委員会、11か国を通貨統合への当初参加国に推薦

主要国の経済動向をみると、アメリカでは、景気は拡大している。実質GDPは、97年7~9月期前期比年率 3.1%増の後、10~12月期は同 3.7%増となった。個人消費、設備投資、住宅投資は増加している。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は拡大している。雇用者数(非農業事業所)は2月前月差25.2万人増の後、3月は同 3.6万人減となった。失業率は3月 4.7%となった。物価は安定している。2月の消費者物価は前月比 0.1%の上昇、2月の生産者物価(完成財総合)は同 0.1%の下落となった。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、このところ拡大している。3月の長期金利(30年物国債)は、やや上下しつつほぼ横ばいで推移した。3月の株価(ダウ平均)は、総じて上昇し、下旬には最高値を更新した。

西ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気は回復しており、フランスでは、景気は拡大している。イギリスでは、景気拡大のテンポはこのところ緩やかになってきている。10~12月期の実質GDPは、ドイツ前期比年率 1.1%増、フランス同 3.1%増(速報値)、イギリス同 2.5%増となった。鉱工業生産は、ドイツ、フランスでは拡大しており、イギリスでは鈍化している(鉱工業生産は、ドイツ1月前月比 2.5%増、フランス同 0.9%減、イギリス2月同 0.5%減)。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準で推移しているが、イギリスでは低下している(2月の失業率は、ドイツ11.5%、フランス12.1%、イギリス4.9%)。物価は、ドイツ、フランスでは安定しており、イギリスではこのところ安定してきている(2月の消費者物価上昇率は、ドイツ前年同月比 1.1%、フランス同 0.7%、イギリス同 3.4%)。なお欧州委員会は、3月25日、EU加盟15か国のうち11か国を99年1月に開始される通貨統合への当初参加国に推薦した。

東アジアをみると、中国では、景気は拡大している。物価は、安定している。貿易収支は、大幅な黒字が続いている。韓国では、景気は後退している。失業率は、上昇している。物価は、高騰している。貿易収支黒字は、大幅に拡大している。

国際金融市場の3月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、増価した(モルガン銀行発表の米ドル名目実効相場指数(1990年= 100)3月31日 111.3、2月末比 2.0%の増価)。内訳をみると、3月31日現在、対円では2月末比 5.7%増価、対マルクでは同 1.8%増価した。

国際商品市況の3月の動きをみると、全体では初旬から中旬にかけて弱含みで推移した後、下旬にかけては強含みで推移した。3月の原油スポット価格(北海ブレント)は、全体では弱含みでの推移となり、11ドル台に下落したが、下旬にかけて主要産油国の減産表明によりやや強含んだ。