産業動向(平成12年1月)

平成12年1月


産業動向の推移

産業動向の推移イメージ


概況

我が国産業の最近の動向について次のような特徴がみられる。

(1)最近の産業動向は、情報通信関連製品の旺盛な需要に牽引され、また各種の政策効果やアジア経済の回復及びこれらの波及効果により、半導体が堅調から好調となり、国内貨物とリースが低調から横ばい状況となった。他方、家電は、海外生産シフトの進展等もあって生産額が減少し、横ばいから低調となった。業種毎の動きにばらつきがあるものの、総じてみれば緩やかな改善が続いている。

(2)製造業をみると、

素材型産業では、紙・パルプは堅調に推移し、鉄鋼及び化学(石油化学)は横ばい状況が続いている。

加工組立型産業では、半導体は堅調から好調となり、コンピュータ関連機器、通信機器、自動車は横ばい状況が続き、家電は横ばいから低調となった。また、工作機械、建設機械は低調に推移しており、産業機械は不振が続いている。

(3)非製造業をみると、

情報サービス、電力は堅調に推移している。国内貨物、リースは低調から横ばい状況となり、旅行、外食、広告は横ばい状況が続いている。また、建設・住宅は低調に推移している。

鉄鋼は横ばい状況が続いている。これは、普通鋼鋼材の国内出荷が緩やかに持ち直してきているなか、粗鋼生産がアジア向け輸出の増加等を背景に増加傾向にあり、また国内在庫ではこれまでの減少傾向がやや緩やかになっているからである。

化学(石油化学)は横ばい状況が続いている。これは、エチレン及び汎用樹脂についてみると、生産はおおむね増加傾向にあり、国内出荷はおおむね前年を上回る水準で推移しているものの、輸出については減少となる樹脂もあるからである。

紙・パルプは、堅調に推移している。これは、生産、出荷が堅調に推移しており、また在庫をみると、在庫率がほぼ適正水準となっているからである。

一般機械では、産業機械は不振が続いている。これは、受注について、官公需向けが減少基調に転じ、総じて低迷しているからである。工作機械は低調に推移している。これは、受注について、民間設備投資に一部動きがみられたものの、依然として前年割れが続いているからである。建設機械は低調に推移している。これは、出荷について、内需は前年水準に近づいたものの、外需は総じて減少が続いているからである。

産業用電気機械・電子部品では、半導体集積回路は、堅調から好調となった。これは、パソコン、携帯電話向けを中心とした製品が好調に推移しているからである。コンピュータ関連機器は、横ばい状況が続いている。これは、周辺装置等が低調に推移しているものの、ウェイトの大きいパソコンが好調に推移しているからである。通信機器は、横ばい状況が続いている。これは、携帯電話が好調に推移しているものの、通信インフラの設備投資が低調であるからである。

家電は横ばい状況から低調となった。これは、国内出荷(台数ベース)は総じて底固く推移しているものの、海外生産シフトの進展等もあって、生産額がこのところ減少傾向にあるからである。

自動車は横ばい状況が続いている。これは、国内販売(新車新規登録・届出台数)がおおむね横ばいで推移し、完成車輸出が3か月連続で前年を上回ったことから、生産に引き続き持ち直しの動きがみられるからである。

建設・住宅は低調に推移している。これは、住宅の中でもマンションの着工は堅調であるものの、公共工事については着工が低調に推移し、事業の実施も前年を下回ってきており、民間工事や非居住用建築についても、一部に動きがみられるが、減少基調にあるからである。

運輸・旅行では、国内貨物輸送は、低調から改善し横ばい状況となった。これは、大宗を占める一般トラックが、生産関連貨物、建設関連貨物等に荷動きがみられることにより、このところ下げ止まっているからである。

旅行関連は、横ばい状況が続いている。これは、個人旅行者数に動きがみられるものの、団体旅行者数の減少や商品価格の低下等により、取扱高が一進一退で推移しているからである。

情報サービスは堅調に推移している。これは、主力の受注ソフトウェアの売上高が、堅調に推移しているからである。

外食は横ばい状況が続いている。これは、既存店ベースでは、売上高、利用客数が前年割れを続けているものの、全店ベースでは店舗数が増加傾向にあり、売上高、利用客数も前年比増で推移しているからである。

リースは低調から改善し横ばい状況となった。これは、リース契約額が、情報関連機器を中心として増加しているからである。

電力は堅調に推移している。これは、民生用電力が気温等の影響により、11月は前年割れとなったものの、大口電力等の産業用電力が堅調な伸びとなったからである。

広告は横ばい状況が続いている。これは、テレビを中心に売上高に持ち直しの動きが続いているからである。


1.鉄鋼

鉄鋼は横ばい状況が続いている。これは、普通鋼鋼材の国内出荷が緩やかに持ち直してきているなか、粗鋼生産がアジア向け輸出の増加等を背景に増加傾向にあり、また国内在庫ではこれまでの減少傾向がやや緩やかになっているからである。

  •  普通鋼鋼材の国内出荷(前年同月比)は、10月3.4%増、11月3.2%増と、大幅に減少した前年をやや上回る動きが続いており、緩やかに持ち直してきている。
     これを受注面からみると、普通鋼鋼材の国内受注は、9月3.1%減の後、10月3.0%増と一進一退の動きとなっているものの、基調としては緩やかに持ち直してきている。なお、11月は5.8%増となった。
     用途別にみると、建設向けは、9月4.2%増、10月3.7%増と増勢がやや鈍化しているものの、底固い動きとなっている。なお、11月は8.7%増となった。内訳別では、土木用はウェイトの高い公共工事向けで増勢が鈍化していることから、一進一退の動きとなっている。また建築用は住宅向けで二ケタ増が続いていること等から増加が続いている。
     製造業向けは、9月7.6%減の後、10月2.5%増と一進一退の動きとなっているものの、基調としては緩やかに持ち直してきている。なお、11月は2.8%増となった。内訳別では、ウェイトの高い自動車用は、軽自動車や普通乗用車向けに引き続き動きがみられており、全体でも持ち直してきている。また、その他の用途では、造船用は低調に推移しており、また電気機械用は減少が続いている。
     こうした状況のなか、国内在庫は、10月529万トン、11月530万トンとこれまでの減少傾向がやや緩やかになっており、また在庫率は前月比でほぼ横ばい状況となっている。
  •  鉄鋼の輸出入(全鉄鋼ベース、前年同月比)をみると、輸出数量は、半製品や鋼板類の大幅増から、10月7.1%増、11月15.7%増と増加が続いている。
     これを仕向け先別にみると、米国向けは、アンチ・ダンピング提訴の影響から、大幅な減少が続いている。一方、韓国、アセアン向けは景気が回復傾向にあることから、鋼板類を中心に大幅な増加が続いている。
     輸出船積平均単価は、ドルベースでは、国際市況が改善してきていることから上昇しつつあるものの、円ベースでは円高の影響等からやや低下している。
     輸入数量は、10月3.1%減の後、11月15.4%増となったものの、基調としては低水準で推移している。
  •  粗鋼の生産は、10月875万トン(前年同月比9.9%増)、11月844万トン(同12.6%増)となり、アジア向け輸出の増加等を背景に増加傾向にある。なお、12月は850万トン(速報、同15.6%増)となった。
  •  鋼材の市況をみると、条鋼類では、棒鋼、H形鋼はほぼ横ばい状況にある。また鋼板類では、冷延薄板は横ばい状況にあり、厚鋼板は低下している。

2.化学(石油化学)

化学(石油化学)は横ばい状況が続いている。これは、エチレン及び汎用樹脂についてみると、生産はおおむね増加傾向にあり、国内出荷はおおむね前年を上回る水準で推移しているものの、輸出については減少となる樹脂もあるからである。

  •  石油化学製品の基礎原料であるエチレンの生産は、主にアジア向け輸出が増加したことにより、11月680千トン(前年同月比11.1%増)、12月698千トン(速報、前年同月比2.8%増)となった。汎用樹脂の生産についても、ポリスチレンを除き、おおむね国内需要の持ち直しを映じて増加傾向となっている。
     在庫水準については、直近では季節的な特性からやや増加している。
  •  汎用樹脂の国内出荷については、ここ数年と比較すると低い水準であるものの、おおむね前年を上回る水準で推移している。主要樹脂別にみると、低密度ポリエチレンは、主力のフィルム向けやその他も増加となり、全体でも増加となった。高密度ポリエチレンは、中空成形等で増加し、全体でも微増となった。汎用樹脂最大の需要を有するポリプロピレンは、主力の自動車工業向け等の工業部品向けが微増となった結果、全体でも微増となった。ポリスチレンは、8月以降減少していたが、11月以降、包装用等の需要が回復し増加となった。塩化ビニルについては、住宅関連需要により増加となった。
  •  汎用樹脂の輸出については、依然として高い水準であるものの、低密度ポリエチレンが減少となるなど、樹脂毎にばらつきがみられる。
     汎用樹脂の東南アジア市況については、原油及びナフサ価格の上昇等から、上昇を続けていたが、11月以降、先安感を見込んだ中国の買い控え等があり、軟化傾向にある。

3.紙・パルプ

紙・パルプは、堅調に推移している。これは、生産、出荷が堅調に推移しており、また在庫をみると、在庫率がほぼ適正水準となっているからである。

  •  紙の生産(前年同月比)は、10月3.6%増、11月4.9%増となり、堅調に推移している。出荷は、販促用のチラシ向け等で堅調に推移していることから、10月2.3%増、11月5.3%増と堅調に推移している。一方、在庫は総じて減少傾向にあり、在庫率もほぼ適正水準となっている。
     紙の生産を品目別にみると、新聞巻取紙は底固い動きとなっている。印刷・情報用紙では、塗工紙で好調に推移していること等から、全体でも堅調に推移している。非塗工類は、上級紙が増加傾向にあることから、全体でも持ち直している。塗工紙は、微塗工紙、塗工紙ともに好調に推移している。情報用紙は、ウェイトの高いPPC用紙が堅調に推移していること等から、全体でも底固い動きとなっている。
     衛生用紙は、需要が回復してきていることから、堅調に推移している。
  •  板紙の生産(前年同月比)は、10月3.8%増、11月4.3%増と堅調に推移している。出荷は、飲料向け、加工食品向けで引き続き動きがみられていることから、10月2.8%増、11月7.4%増と堅調に推移している。こうした状況のなか、在庫は総じて減少傾向にあり、在庫率もほぼ適正水準となっている。
     板紙の生産を品目別にみると、段ボール原紙は堅調に推移している。
  •  パルプの生産(前年同月比)は、紙の需要が堅調に推移していることから、10月2.7%増、11月3.2%増と持ち直している。
  •  紙、板紙の輸出入(数量ベース、前年同月比)をみると、輸出は、中国向け等が堅調に推移していることから、10月14.5%増、11月19.2%増となり、引き続き増加傾向にある。
     一方、輸入は、10月7.5%減の後、11月22.1%増となったものの、全体の基調としては減少傾向にある。
  •  紙の市況をみると、紙はこのところやや上昇しており、板紙は横ばい状況にある。

4.一般機械

産業機械は不振が続いている。これは、受注について、官公需向けが減少基調に転じ、総じて低迷しているからである。工作機械は低調に推移している。これは、受注について、民間設備投資に一部動きがみられたものの、依然として前年割れが続いているからである。建設機械は低調に推移している。これは、出荷について、内需は前年水準に近づいたものの、外需は総じて減少が続いているからである。

  •  一般機械の生産(季調済前月比)は、10月1.5%減、11月2.3%増(速報)と、一進一退で推移している。増加した機種は、17機種中、10月には3機種、11月には12機種(速報)となった。
     機械受注(原動機・産業機械・工作機械・半導体製造装置のみ、金額ベース、前年同月比)をみると、半導体製造装置の大幅な増加が続いていることから、10月12.3%増、11月14.6%増となった。
     輸出入の動向(事務用機器を除く・円ベース、前年同月比)をみると、輸出は10月6.3%減の後、11月5.8%増となった。輸入も10月6.7%減の後、11月11.7%増となった。
  •  産業機械は不振が続いている。産業機械の受注(日本産業機械工業会調べ、金額ベース、前年同月比)は、10月19.3%減の後、11月8.1%増となった。需要者別にみると、内需は官公需向けが減少基調に転じ、10月30.6%減となった後、製造業では一般機械向け、電気機械向け等が増加し、非製造業では電力業向けが増加したことから、11月は8.5%増となった。外需は、アジア向けのプラスチック加工機械や風水力機械の増加等によって、10月57.8%増、11月6.1%増となった。
  •  工作機械は低調に推移している。工作機械の受注(日本工作機械工業会調べ、金額ベース、前年同月比)は、10月3.1%減、11月10.7%減と、これまでに比べマイナス幅は縮小しているものの、減少が続いている。なお、12月(速報)は、2.0%減(内需8.8%増、外需10.5%減)となっている。需要者別にみると、内需は、10月は自動車向けをはじめ、民間設備投資に動きがみられたことから16.3%増と21か月振りの増加となったものの、11月は自動車向けが減少となり、5.7%減と再び減少に転じた。外需は、ウェイトの高い北米向けと欧州向けで減少が続いており、依然として前年を下回っている。
  •  建設機械は低調に推移している。建設機械の出荷(日本建設機械工業会調べ、本体・金額ベース、前年同月比)は、10月8.2%減、11月6.1%減となった。需要者別にみると、内需は、10月2.0%減の後、掘削機械が増加に転じ、建設用クレーンも30か月振りの増加となったことから、11月は0.5%減と前年水準に近づいた。外需は、アジア向けは大幅な増加が続いているものの、北米・中南米向けは大幅な減少が続き、10月20.8%減、11月18.6%減となった。

5.産業用電気機械・電子部品

半導体集積回路は、堅調から好調となった。これは、パソコン、携帯電話向けを中心とした製品が好調に推移しているからである。コンピュータ関連機器は、横ばい状況が続いている。これは、周辺装置等が低調に推移しているものの、ウェイトの大きいパソコンが好調に推移しているからである。通信機器は、横ばい状況が続いている。これは、携帯電話が好調に推移しているものの、通信インフラの設備投資が低調であるからである。

  •  半導体集積回路は、堅調から好調となった。パソコン、携帯電話向けを中心とした製品が好調なことから、出荷額(前年同月比)は、9月16.5%増、10月21.4%増と増加しており、在庫率は、10月0.62に低下している。また、DRAMの価格は、年末の需要期が終了したこと等から、直近はやや値を下げているものの、引き続き高い水準にある。
  •  コンピュータ関連機器は、横ばい状況が続いている。周辺装置等が低調に推移していることから、生産額(前年同月比)は、9月8.4%減、10月13.1%減となったものの、ウェイトの大きいパソコンが、直近を含め好調に推移していることから、総じてみれば横ばいとなっている。パソコンは、9月5.9%減の後、10月2.6%増と個人向けを中心に好調に推移している。周辺装置は、10月17.1%減、11月6.7%減(速報)と低調な動きが続いている。
  •  通信機器は、横ばい状況が続いている。生産額(前年同月比)は、9月5.6%減の後、10月7.9%増となり、総じてみれば横ばい状況が続いている。内訳をみると、通信インフラ関連では、搬送装置が、9月30.3%増、10月24.2%増と、このところ増加傾向にあるものの、電子交換機が10月11.4%減、11月1.8%減(速報)となり、総じてみれば低調な推移となっている。携帯電話は、9月は、新機種投入を控え、2.6%減となったものの、10月は、35.9%増と再び大幅な増加となり、引き続き好調に推移している。

6.家庭電器

家電は横ばい状況から低調となった。これは、国内出荷(台数ベース)は総じて底固く推移しているものの、海外生産シフトの進展等もあって、生産額がこのところ減少傾向にあるからである。

  •  家電の国内出荷(台数ベース)は、総じて底固く推移している。
     AV家電をみると、品目ごとにばらつきがあるものの、総じて底固く推移している。品目別では、カラーテレビは平面ブラウン管型を中心に底固く推移している。VTRは前年を下回っているが、直近では減少幅が縮小している。ビデオカメラは前年高水準の反動から前年割れとなった。CDプレーヤ(MDプレーヤを含む)は10月は前年を下回ったが11月は再び大幅増となった。また、MDラジカセは引き続き堅調に推移している。その他の品目では、DVD等のデジタル製品が大幅に増加している。
     白物家電をみると、買い替え需要もあり総じて底固く推移している。品目別では、冷蔵庫は400リットル以上の大型が大幅に増加しており、全体でも底固く推移している。洗濯機、電子レンジは前年並み、エアコンは前年をやや上回る水準で推移している。
  •  家電の輸出(台数ベース)は基調としては減少傾向が続いている。カラーテレビは、10月は減少したものの、11月は香港向けを中心に大幅に増加した。VTRは、アメリカ向けを中心に大幅に減少している。CDプレーヤは、アメリカ向けを中心に減少している。
  •  家電の輸入(台数ベース)は、基調としては増加傾向が続いている。カラーテレビは、マレーシアや中国の増加から引き続き増加している。VTRはマレーシアがやや減少したが、全体では一進一退の動きとなっている。
  •  家電の生産額(前年同月比)は、ビデオカメラやDVD等のデジタル製品が増加しているものの、海外生産シフトの進展等もあって多くの製品が減少を続けており、全体では、9月7.9%減、10月10.8%減と、このところ減少傾向にある。

7.自動車

自動車は横ばい状況が続いている。これは、国内販売(新車新規登録・届出台数)がおおむね横ばいで推移し、完成車輸出が3か月連続で前年を上回ったことから、生産に引き続き持ち直しの動きがみられるからである。

  •  自動車全体の国内販売(新車新規登録・届出台数、前年同月比)は、11月1.2%減、12月0.6%減とおおむね横ばいで推移している。車種別にみると、普通乗用車はモデルチェンジをした車が好調であることから、3か月連続で前年を上回っている。小型乗用車は一部の新型車が好調なものの、全体では低調に推移している。普通トラック、小型トラックは低迷している。軽乗用車は高水準で推移しているものの、新規格車の投入から1年を経過したことから、このところ前年を下回っている。軽トラックは堅調に推移している。
     輸入車販売では、11月5.2%減、12月10.2%増と一進一退となっている。
  •  自動車の輸出(完成車台数ベース、前年同月比)は、10月7.3%増、11月1.7%増と3か月連続で前年を上回った。仕向地別にみると、主力の北米向けは好調なものの、欧州向けは一進一退となっている。その他の地域では、アジア向けは増加しているものの、中東向け、中南米向けは低迷している。
     自動車部品の輸出(日本自動車工業会々員11社分、ドルベース)は、海外生産用、OEM用とも増加していることから、10月18.1%増、11月29.1%増となった。
  •  自動車の生産(完成車台数ベース、前年同月比)は、10月に前年の反動等から10.3%減となった後、11月3.0%増となり引き続き持ち直しの動きがみられる。車種別にみると、普通乗用車は輸出の増加やモデルチェンジの効果から増加している。小型乗用車は国内販売の低調から前年割れが続いている。普通トラックは国内販売の低迷や輸出の減少から大幅な前年割れが続いている。軽乗用車は10月が前年の反動から大幅な前年割れとなったが、11月がおおむね前年並みとなり、高水準で推移している。軽トラックは堅調に推移している。

8.建設・住宅

建設・住宅は低調に推移している。これは、住宅の中でもマンションの着工は堅調であるものの、公共工事については着工が低調に推移し、事業の実施も前年を下回ってきており、民間工事や非居住用建築についても、一部に動きがみられるが、減少基調にあるからである。

[建設]

  •  建設業大手50社の受注額(前年同月比)は、10月18.1%減の後、11月2.4%増となったものの、減少基調が続いている。受注の約6割を占める民間工事をみると、10月6.6%減の後、11月3.9%増となった。民間工事の内訳をみると、製造業向けは、主力の電気機械がこのところ増加となっているのに加え、11月には大型工事のあった化学等が増加となったことから、全体でも20か月振りに増加となり、一部に動きがみられるものの、減少基調にある。ウェイトのより大きい非製造業向けは、マンションを中心とした不動産業等は増加したものの、全体では減少となった。受注の約3割を占める官公庁工事については、6か月連続で減少となった。海外工事は、減少が続いていたが、11月には6か月振りに増加となった。
     施工高は、9月6.4%減、10月12.5%減となった。また、未消化工事高は、35か月連続で減少となった。
     また、地方大手建設業者470社の受注額(前年同月比)は、10月6.8%減、11月2.2%減となった。
  •  建築の着工状況(床面積)をみると、10月2.6%減の後、11月は、居住用、非居住用ともに増加となったことから、7.6%増となった。内訳をみると、着工床面積の6割近くを占める民間居住用建築では、10月3.4%増、11月12.9%増と、増加が続いている。民間非居住用建築については、減少が続いていたが、11月は商業用が大幅な増加となったことから、全体でも増加となった。
  •  公共工事着工(総工事費評価額)は、10月23.2%減、11月19.0%減となった結果、4~11月累計では8.6%減となり、着工は低調に推移し、事業の実施も前年を下回ってきた。これは、都道府県等の地方の機関が減少したことに加え、9月以降は国の機関も減少したためである。
     民間土木工事着工は、10月16.6%減、11月14.4%減となった。

[住宅]

  •  住宅着工(戸数)は、10月0.6%減の後、11月8.1%増となり、一進一退の動きとなっている。また、11月の年率換算値は118万戸となった。利用関係別でみると、分譲のうちマンションの着工は堅調であるものの、持家の着工は伸びが縮小している。
  •  戸建住宅産業の最近の動きについては、構造別の着工戸数は、ウェイトの約半分を占める木造は直近では増加傾向に鈍化がみられるものの、非木造については、鉄骨鉄筋コンクリート造を中心に増加となった。建築単価については、1平方メートル当たりの工事費予定額では、木造はほぼ前年並で推移しており、非木造は直近ではやや低くなっている。1戸あたりの面積については、利用関係別ではややばらつきがあるが、おおむね緩やかな増加傾向にある。
  •  マンション産業の最近の動きについては、全体の着工は、10月40.8%増、11月60.5%増と、大幅な増加が続いている。圏別にみると、三大都市圏ともにおおむね増加が続いている。なお、新規契約率(首都圏)については、金利先高感及び減税等の理由により、10月81.3%、11月73.6%と12か月連続で70%を超えており、引き続き好調である。また、在庫については、前月に比べると若干増加しており、11月は9,153戸となったものの、低い水準を保っている。

9.運輸・旅行

国内貨物輸送は、低調から改善し横ばい状況となった。これは、大宗を占める一般トラックが、生産関連貨物、建設関連貨物等に荷動きがみられることにより、このところ下げ止まっているからである。

旅行関連は、横ばい状況が続いている。これは、個人旅行者数に動きがみられるものの、団体旅行者数の減少や商品価格の低下等により、取扱高が一進一退で推移しているからである。

  •  国内貨物輸送は、低調から改善し横ばい状況となった。内訳をみると、一般トラック(前年同月比:トンベース)は、生産関連貨物、建設関連貨物等に荷動きがみられることにより、9月0.7%減、10月0.2%減と、ほぼ前年並の水準となり、このところ下げ止まっている。特別積合せトラックは、9月2.1%増、10月1.3%増とこのところ消費財を中心に増加しており、宅配貨物は増加が続いている。内航海運(貨物船)は、8月4.5%増の後、9月3.4%減となり、一進一退の動きが続いている。JR貨物は、10月6.1%減、11月2.4%減(速報)となり、このところ減少幅は縮小しているものの、依然不振が続いている。航空貨物は、10月3.8%増、11月4.4%増(速報)と増加が続いている。
  •  国際貨物輸送は、アジア経済の回復等により、このところ増加している。航空貨物は、貨物トン数(全国ベース)でみると、輸出は、10月17.3%増、11月15.8%増、輸入は、10月22.4%増、11月21.3%増となった。外航海運の貨物トン数は、輸出は10月11.4%増、11月13.3%増となり、輸入は10月2.7%増、11月8.2%増となった。
  •  旅行関連は、横ばい状況が続いている。大手旅行会社(鉄道旅客協会加盟13社)の取扱額(前年同月比)は、団体旅行の持ち直し等により、10月は1.4%増となったものの、11月は2.6%減と再び減少した。内訳をみると、国内旅行は10月1.8%減、11月3.5%減となり、海外旅行は10月8.7%増、11月0.4%減となった。主要旅客輸送機関の実績(人数ベース、前年同月比)をみると、JR旅客は、定期外は10月0.3%増となった。航空(3社)は、国内線は10月6.4%増、11月1.3%増(速報)、国際線は10月15.5%増、11月11.1%増(速報)と増加が続いている。

10.情報サービス

情報サービスは堅調に推移している。これは、主力の受注ソフトウェアの売上高が、堅調に推移しているからである。

  •  情報サービス業売上高(前年同月比)は、10月6.6%増、11月4.4%増となり、約6割を占める主力の受注ソフトウェアが堅調であることから、全体でも堅調に推移している。
  •  業務種類別にみると、
    • 受注ソフトウェアは、金融業、通信業向け等の需要増により、10月12.1%増、11月7.8%増と堅調に推移している。
    • ソフトウェアプロダクトは、10月1.7%減、11月0.5%減となった。
    • 計算事務等情報処理は、10月0.1%増の後、金融業、流通業向け等の減少から11月3.5%減となった。
    • システム等管理運営受託は、金融業、製造業等のアウトソーシングの需要増により、10月12.6%増、11月8.8%増と好調に推移している。
  •  雇用状況は、高等技術者や新たなニーズに対応できる技術者は不足感が続いているものの、全体的には不足感は緩和している。

11.外食

外食は横ばい状況が続いている。これは、既存店ベースでは、売上高、利用客数が前年割れを続けているものの、全店ベースでは店舗数が増加傾向にあり、売上高、利用客数も前年比増で推移しているからである。

  •  大手外食企業が加盟している(社)日本フードサービス協会の調査により、全店ベース(前年同月比)の状況をみると、売上高は10月2.4%増、11月0.4%増となった。これは、客単価が下落傾向にあるものの、店舗数が10月3.9%増、11月4.9%増と引き続き増加傾向にあり、合わせて利用客数が10月4.4%増、11月2.4%増といずれも前年比増で推移しているからである。直近も同様の傾向で推移している。
     なお、既存店ベース(前年同月比)でみると、利用客数は、10月0.5%減と減少幅が縮小した後、11月は前年より休日が少なかったことや、新規出店増に伴う店舗間の競合から4.7%減と減少幅が拡大した。客単価は、メニューの充実等から単価が向上した企業もみられるが、全体としては消費者の低価格指向や店舗側の低価格設定等により引き続き下落傾向にある。この結果、売上高は10月2.3%減、11月6.4%減と前年割れを続けている。
  •  業態別の売上高(全店ベース)をみると、ファーストフードはこのところ前年をやや下回っている。和風や麺類が伸びている一方で、持ち帰り米飯・寿司の分野が大きく落ち込んでおり、業態別にばらつきがみられる。ファミリーレストランは、和風、中華の分野が店舗数の増加から売上げを伸ばしており、全体では前年をやや上回っている。パブレストラン・居酒屋は、特に居酒屋の分野で店舗数、利用客数、売上げとも大きく伸ばしている。

12.リース

リースは低調から改善し横ばい状況となった。これは、リース契約額が、情報関連機器を中心として増加しているからである。

  •  リースは低調から改善し横ばい状況となった。リース契約額(リース事業協会調べ、前年同月比)は、10月2.2%増、11月8.5%増となった。設備投資の冷え込みを映じて、全体的に低水準で推移する中、10月以降は、主力の情報関連機器をはじめ、多くの物件で前年比増となった。なお、新規設備投資の動きもみられるものの、多くは更新需要やリースバック取引による増加となっている。
  •  物件別の最近の動向をみると、
     契約額の約4割を占める情報関連機器は、10月0.6%増の後、コンピュータの更新需要を中心とした電算機器の増加に加え、情報・通信業の設備投資に牽引された通信機器の増加がみられ、11月も11.7%増と増加が続いた。
     商業・サービス業用機械・設備は、商業用店舗設備の減少等により、10月2.3%減、11月1.3%減となった。
     事務用機器は、10月0.8%減となった後、複写機の更新需要による増加等から、11月は5.8%増となった。
     産業機械は、既存設備のリースバック取引により半導体製造装置が増加したこと等から、10月15.6%増、11月4.6%増と増加が続いた。
     工作機械は、既存設備のリースバック取引により半導体関連部品の製造機械が増加したこと等から、10月23.5%増、11月10.3%増と増加が続いた。
     土木建設機械は、景気低迷による、買取からリースへの需要のシフトもあって、10月17.9%増、11月56.4%増と増加基調が続いている。
     自動車は、10月3.3%減の後、11月7.8%増となった。
     医療機器は、ハイテク・高額化によるリース需要の増加等を背景に、10月1.2%増、11月10.0%増と増加基調が続いている。
  •  リース料率は、低い水準で推移している。

13.電力

電力は堅調に推移している。これは、民生用電力が気温等の影響により、11月は前年割れとなったものの、大口電力等の産業用電力が堅調な伸びとなったからである。

  •  電力需要(9社計、前年同期(月)比)は、10月4.0%増の後、11月は0.7%増と低い伸びとなった。これは、大口電力は堅調な伸びとなったものの、民生用電力(電灯、業務用電力)が気温等の影響により、前年割れとなったからである。
     用途別にみると、家庭用電灯需要は11月は1.9%減となった。これは、10月の気温が低めに推移したため、冷房需要が減少したことと、検針期間が短かったためである。業務用電力も気温の影響により、11月は1.3%増と低い伸びとなった。小口電力のうち、低圧電力については電灯と同じ理由で大きな減少となったが、高圧電力Aは8月から4か月連続の増加となった。大口電力は11月は3.3%増と、8月以降4か月連続の増加となった。なお、3.3%の増加は、平成9年9月の4.7%増以来26か月振りの増加幅である。
     10~11月期について地域別にみると、全地域で前年実績を上回った。
  •  大口電力需要を自家発電を含め業種別にみると、11月はセメント以外の全ての主要業種が増加となった。鉄鋼は、粗鋼生産の増加により、5か月連続の増加となった。化学は、エチレンや汎用樹脂の生産増により、4か月連続の増加となった。パルプ・紙は、生産が堅調なことから7か月連続の増加となった。セメントは、10月には5か月振りに増加に転じたものの、生産の低迷傾向は変わらず、11月には再び前年割れとなった。電気機械は、パソコンや携帯電話の生産が好調なこと等から、6か月連続の増加となった。輸送用機械は、11月は増加となったものの、このところ一進一退の動きとなっている。非鉄は、アルミニューム圧延品や伸銅品の生産が堅調なことを映じて、昨年央以来増加基調で推移している。
     地域別にみると、11月は北海道を除いた全地域で増加となった。

14.広告

広告は横ばい状況が続いている。これは、テレビを中心に売上高に持ち直しの動きが続いているからである。

  •  広告は横ばい状況が続いている。主要10社の売上高(前年同月比)をみると、テレビを中心に持ち直しの動きが続き10月1.3%増の後、11月はラジオを除く全ての媒体が増加となり6.4%増となった。
     媒体別では、ウェイトの大きいテレビが、7月から増加基調にあり11月は2.9%増となった。新聞は、情報・通信、金融・保険等の増加により、雑誌は低迷を続けていた主要広告業種の化粧品・トイレタリーに動きがみられそれぞれ増加となった。4媒体以外も屋外広告等の増加により増加となった。
  •  広告量(前年同月比)の動向をみると、テレビはテレビスポットが10か月連続で増加を続けている。また、低迷を続けていたテレビ番組も11月は減少しているものの、10月に20か月振りに増加となるなど持ち直しの兆しがみられる。新聞は、カラー広告、全面広告がこのところ堅調に推移しており、低迷を続けていた案内広告も持ち直してきている。
     出稿業種別にみると、金融・保険が証券会社、保険会社を中心に、情報・通信がパソコンや携帯電話を中心に、それぞれ11月は全ての媒体で増加となるなど引き続き好調に推移している。薬品・医療用品がドリンク剤を中心に増加を続けており、化粧品・トイレタリーも全媒体で増加となった。また、これまで低迷を続けていた自動車・関連品が、テレビスポットで12か月振りに増加となるなど一部に動きがみられる。一方、これまで好調であった飲料・嗜好品はこのところ低調に推移している。