産業動向(平成11年7月)

平成11年7月


産業動向の推移

産業動向の推移イメージ


概況

我が国産業の最近の動向について次のような特徴がみられる。

(1)最近の産業動向は、多くの業種が低調または不振であるものの、総じてみれば、このところやや改善している。これは、各種の政策効果の浸透もあり、国内販売に持ち直しの動きがみられ、素材型産業でも在庫調整が進み、生産が低水準ながらおおむね横ばいで推移しているからである。

(2)製造業をみると、

素材型産業では、紙・パルプは横ばい状況が続き、化学(石油化学)は低調に推移し、鉄鋼は不振が続いている。

加工組立型産業では、半導体が低調から横ばい状況となった。コンピュータ関連機器、家電は横ばい状況が続き、工作機械、通信機器、自動車は低調に推移している。建設機械は不振から低調となった。産業機械は不振が続いている。

(3)非製造業をみると、

情報サービスは堅調に推移し、旅行、外食、電力は横ばい状況が続いている。建設・住宅、リース、広告は低調に推移し、国内貨物は不振が続いている。

鉄鋼は不振が続いている。これは、普通鋼鋼材の国内受注が総じて低調に推移していること等により、粗鋼生産の減少が続いており、また国内在庫も在庫調整にはやや進展がみられているものの、過剰感が依然として残っているからである。

化学(石油化学)は低調に推移している。これは、エチレン及び汎用樹脂についてみると、生産は主に輸出増を映じて増加となっており、国内出荷はおおむね前年並みとなっているものの、依然として低い水準であるからである。

紙・パルプは、横ばい状況が続いている。これは、生産は板紙が低調に推移し、紙で持ち直しの兆しがみられるなか、出荷も底固い動きとなっており、また在庫で過剰感が薄れてきているからである。

一般機械では、産業機械は不振が続いている。これは、受注が外需に動きはみられたものの、内需の不振により引き続き低迷しているからである。工作機械は低調に推移している。これは、内需の大幅減に加え外需も前年割れが続き、前年が高水準であったこともあって、受注が大幅な減少となったからである。建設機械は不振から低調となった。これは、出荷について、公共工事の増加の影響により、内需に持ち直しの兆しがみられるからである。

産業用電気機械・電子部品では、半導体集積回路は、これまでの低調な状況から改善し横ばい状況となった。これは、パソコン向け製品等が堅調に推移しているためである。コンピュータ関連機器は、横ばいで推移している。これは、ウェイトの大きいパソコンが堅調であるものの、その他の製品は低調であるからである。通信機器は、低調に推移している。これは、通信インフラの設備投資が総じて低調であるからである。

家電は横ばい状況が続いている。これは、国内出荷(台数ベース)は総じて底固く推移しており、生産も、全体としては横ばいで推移しているからである。

自動車は低調に推移している。これは、国内販売(新車新規登録・届出台数)がこのところおおむね横ばいで推移しているものの、完成車輸出が前年割れとなり、生産が低調に推移しているからである。

建設・住宅は低調に推移している。これは、公共工事着工が堅調に推移し、住宅着工は持ち直してきているものの、民間工事や非居住用建築の大幅な減少により、建設業大手50社の受注額や建築着工床面積は再び減少傾向となっているからである。

運輸・旅行では、国内貨物輸送は、不振が続いている。これは、特別積合せトラック等に荷動きがみられるものの、多くの輸送形態が減少しているからである。

旅行関連は、横ばいで推移している。これは、商品価格の低下に加えて、GWで個人旅行者数は増加したものの団体旅行者数が減少したこと等により、取扱高が減少したからである。

情報サービスは堅調に推移している。これは、主力の受注ソフトウェアの売上高が、堅調に推移しているからである。

外食は横ばい状況が続いている。これは、既存店ベースでは、売上高、利用客数が前年割れを続けているものの、全店ベースでは店舗数が増加傾向にあり、売上高、利用客数も前年比増で推移しているからである。

リースは低調に推移している。これは、リース契約額が、設備投資の冷え込みを映じて引き続き減少しているからである。

電力は横ばい状況が続いている。これは、大口電力が生産活動の停滞状況を映じて17か月連続で前年実績を下回ったものの、民生用電力が底固く推移しているからである。

広告は低調に推移している。これは、企業の広告費削減の動きを映じて、売上高の減少傾向が続いているからである。


1.鉄鋼

鉄鋼は不振が続いている。これは、普通鋼鋼材の国内受注が総じて低調に推移していること等により、粗鋼生産の減少が続いており、また国内在庫も在庫調整にはやや進展がみられているものの、過剰感が依然として残っているからである。

  • 普通鋼鋼材の国内出荷(前年同月比)は、4月8.7%減、5月5.3%減と低調に推移している。
     これを受注面からみると、普通鋼鋼材の国内受注は、3月3.5%減、4月4.6%減と低調に推移している。
     用途別にみると、建設向けは、土木用が公共工事向けに増加が続いており、建築用でも住宅向けが増加に転じているものの、ウェイトの高い建築用の非住宅向けが低調に推移していることから、全体では、3月0.5%増の後、4月1.5%減となり、基調としては前年をやや下回る動きとなっている。
     製造業向けは、一部に動きがみられているものの、全体では3月1.9%減、4月6.0%減と低調に推移している。内訳別では、ウェイトの高い自動車用は、軽乗用車等一部には動きがみられているものの、全体では低調に推移している。また、その他の用途では、電気機械用でこのところ持ち直しの兆しがみられるものの、ほとんどの用途で前年を下回っている。
     こうした状況のなか、国内在庫は、4月538万トン(前年同月比5.0%減)、5月552万トン(同5.5%減)と前年を下回る水準が続いており、在庫調整にはやや進展がみられているものの、過剰感は依然として残っている。
  • 鉄鋼の輸出入(全鉄鋼ベース、前年同月比)をみると、輸出数量は、銑鉄、半製品等で大幅な増加が続いていることから、4月11.3%増と増加に転じ、5月も2.6%増となった。
     これを仕向け先別にみると、米国向けは、アンチ・ダンピング提訴の影響から、大幅な減少が続いている。一方、韓国、アセアン向けは景気が回復しつつあること等を背景に大幅な増加が続いている。
     輸出船積平均単価は、銑鉄、半製品等の増加により、円ベース、ドルベースともに低下傾向にある。
     輸入数量は、4月6.6%減の後、5月0.3%増となったものの、国内需要の低迷が長引いていることから、基調としては減少傾向にある。
  • 粗鋼の生産は、4月741万トン(前年同月比3.0%減)、5月778万トン(同2.4%減)となり、減少幅は縮小しているものの、依然として減産基調にある。
  • 鋼材の市況をみると、条鋼類では、在庫調整の進展等により、H形鋼、棒鋼ともにこのところ底入れ感が窺われる。鋼板類では、冷延薄板、厚鋼板ともに横ばい状況にある。

2.化学(石油化学)

化学(石油化学)は低調に推移している。これは、エチレン及び汎用樹脂についてみると、生産は主に輸出増を映じて増加となっており、国内出荷はおおむね前年並みとなっているものの、依然として低い水準であるからである。

  • 石油化学製品の基礎原料であるエチレンの生産は、主にアジア向け輸出が増加したことにより、5月630千トン(前年同月比4.4%増)、6月600千トン(速報、前年同月比11.2%増)となった。汎用樹脂の生産についても、主に輸出増を映じて、増加傾向となっている。
     在庫水準については、改善されつつあるものの、やや過剰感が残る。
  • 汎用樹脂の国内出荷については、おおむね前年並みとなっているものの、ここ数年と比較すると依然として低い水準である。主要樹脂別にみると、低密度ポリエチレンは主力のフィルム向けを中心として増加となった。高密度ポリエチレンは主力のフィルム向けが減少したが、全体ではほぼ前年並みとなった。塩化ビニルについては、公共工事関連需要により減少幅が縮小している。汎用樹脂最大の需要を有するポリプロピレンは、工業部品向けが増加となり、全体でも微増となった。ポリスチレンは、雑貨向けを中心に増加となった。
  • 汎用樹脂の輸出は、ポリスチレンは減少となっているものの、ポリエチレン等は中国をはじめとしたアジア向け輸出を中心に増加傾向となっている。
     汎用樹脂の東南アジア市況については、需要が回復してきたこと等から底固く推移していたが、直近では韓国、台湾での定修の終了等により弱含みとなっている。

3.紙・パルプ

紙・パルプは、横ばい状況が続いている。これは、生産は板紙が低調に推移し、紙で持ち直しの兆しがみられるなか、出荷も底固い動きとなっており、また在庫で過剰感が薄れてきているからである。

  • 紙の生産(前年同月比)は、4月0.3%減の後、5月1.1%増となり、このところ持ち直しの兆しがみられる。出荷は、販促用のチラシ向け等で堅調に推移したことから、4月3.8%増、5月3.1%増と底固い動きとなっている。一方、在庫は総じて減少傾向にあり、過剰感が薄れてきている。
     紙の生産を品目別にみると、新聞巻取紙は底固い動きとなっている。印刷・情報用紙では、塗工紙で堅調に推移していること等から、持ち直しの兆しがみられる。非塗工類は、需要の減少を背景に低調に推移しているものの、上級紙では持ち直しの兆しがみられる。塗工紙は、微塗工紙、塗工紙ともに堅調に推移している。情報用紙は、複写用紙では減少が続いているものの、ウェイトの高いPPC用紙が堅調に推移しており、全体でも持ち直しの兆しがみられる。
     衛生用紙は、市況対策に進展がみられており、生産にも持ち直しの兆しがみられる。
  • 板紙の生産(前年同月比)は、4月0.4%減、5月1.2%減と低調に推移している。出荷は、加工食品、青果物向け等に動きがみられ、4月8.9%増、5月5.7%増と底固い動きとなっている。こうした状況のなか、在庫は、総じて減少傾向にあり、過剰感が薄れてきている。
     板紙の生産を品目別にみると、段ボール原紙は、基調としては低調に推移している。
  • パルプの生産(前年同月比)は、紙の需要が回復してきていることから、4月0.3%減の後、5月1.0%増と増加に転じ、持ち直しの兆しがみられる。
  • 紙、板紙の輸出入(数量ベース、前年同月比)をみると、輸出は、中国向け等が堅調に推移していることから、4月17.6%増、5月32.9%増と、増加傾向にある。
     一方、輸入は、4月前年並みとなった後、5月10.3%減となり、板紙では増加が続いているものの、全体の基調としては減少傾向にある。
  • 紙の市況をみると、紙は横ばい状況にある。板紙は、採算意識の高まり等から、このところ上昇している。

4.一般機械

産業機械は不振が続いている。これは、受注が外需に動きはみられたものの、内需の不振により引き続き低迷しているからである。工作機械は低調に推移している。これは、内需の大幅減に加え外需も前年割れが続き、前年が高水準であったこともあって、受注が大幅な減少となったからである。建設機械は不振から低調となった。これは、出荷について、公共工事の増加の影響により、内需に持ち直しの兆しがみられるからである。

  • 一般機械の生産(季調済前月比)は、4月4.2%減、5月1.1%減(速報)と、減少傾向が緩やかになってきている。増加した機種は、17機種中、4月には4機種、5月には10機種(速報)となった。
     機械受注(原動機・産業機械・工作機械・半導体製造装置のみ、金額ベース、前年同月比)をみると、4月9.8%減の後、5月は原動機の増加により8.4%増となった。
     輸出入の動向(事務用機器を除く・円ベース、前年同月比)をみると、輸出は4月0.5%減、5月17.0%減と減少が続いている。輸入も4月6.6%減、5月12.1%減と減少が続いている。
  • 産業機械は不振が続いている。産業機械の受注(日本産業機械工業会調べ、金額ベース、前年同月比)は、4月25.6%減、5月1.3%増となった。需要者別にみると、内需は官公需向け水質汚濁防止装置等に動きがみられたものの、製造業向けでは大幅減が続き、非製造業向けでも減少となったことから、引き続き低迷している。外需は、5月にはアジア向けと北米向けで大型受注があったため、前年比を大幅に上回った。
  • 工作機械は低調に推移している。工作機械の受注(日本工作機械工業会調べ、金額ベース、前年同月比)は、4月29.4%減、5月34.1%減と、前年が高水準であったこともあり、大幅な減少となっている。需要者別にみると、内需は、官公需・学校向けに動きがあったものの、全体では大幅減が続いている。外需は、アジア向けは増加しているものの、ウェイトの高い北米向けで減少が続いており、依然として前年を下回っている。
  • 建設機械は不振から低調となった。建設機械の出荷(日本建設機械工業会調べ、本体・金額ベース、前年同月比)は、4月10.5%減、5月4.4%減とマイナス幅が縮小傾向にある。需要者別にみると、内需は、4月8.3%減の後、公共工事の増加の影響により持ち直しの兆しがみられ、5月は8機種で増加し3.0%増となった。外需は、欧州向けが好調なものの、北米・中南米向けが大幅な減少となり、4月0.6%増の後、5月は14.1%減となった。

5.産業用電気機械・電子部品

半導体集積回路は、これまでの低調な状況から改善し横ばい状況となった。これは、パソコン向け製品等が堅調に推移しているためである。コンピュータ関連機器は、横ばいで推移している。これは、ウェイトの大きいパソコンが堅調であるものの、その他の製品は低調であるからである。通信機器は、低調に推移している。これは、通信インフラの設備投資が総じて低調であるからである。

  • 半導体集積回路は、これまでの低調な状況から改善し横ばい状況となった。パソコン向けの製品等が堅調なことから、出荷額(前年同月比)は、3月6.6%増、4月8.5%増と増加しており、在庫率は、4月0.77に下落している。なお、DRAMの価格は軟調に推移している。
  • コンピュータ関連機器は、横ばいで推移している。ウェイトの大きいパソコンが堅調なものの、その他の製品は低調であることから、生産額(前年同月比)は、3月1.5%増の後、4月9.0%減と一進一退の状況で推移している。パソコンは、個人向けが堅調であること等から、3月15.3%増、4月6.1%増と堅調な動きとなっている。周辺機器は、4月3.7%減、5月11.1%減(速報)と低調な動きが続いている。
  • 通信機器は、低調に推移している。通信インフラの設備投資は総じて低調であることから、生産額(前年同月比)は、3月は5.9%増となったものの、4月2.2%減となり、基調としては減少傾向にある。内訳をみると、通信インフラ関連では、ISDN、デジタル専用線に関連する搬送装置は3月は14.5%増となったものの、4月は8.4%減と減少しており、電子交換機は4月29.2%減、5月27.6%減(速報)となり、低調に推移している。また、携帯電話は、3月29.2%増、4月41.4%増と、好調に推移している。

6.家庭電器

家電は横ばい状況が続いている。これは、国内出荷(台数ベース)は総じて底固く推移しており、生産も、全体としては横ばいで推移しているからである。

  • 家電の国内出荷(台数ベース)は、総じて底固い荷動きとなっている。
     AV家電をみると、総じて前年を下回っているが、基調としては底固い荷動きとなっている。品目別では、カラーテレビが、このところ新製品効果が薄れつつあり、4月は前年を上回ったものの、5月は前年を下回った。VTRは、前年ワールドカップ需要の反動もあり、直近も含め前年を下回っている。ビデオカメラは、春先の需要の先食いの反動もあり前年を下回っている。CDプレーヤ(MDプレーヤを含む)は、伸び率が鈍化しているものの、引き続き高水準で推移している。
     白物家電をみると、買い替え需要や住宅着工の持ち直しの効果が見られるものの、全体として前年を下回っている。品目別では、冷蔵庫は4、5月と前年を下回ったが、大型を中心に直近では前年を上回っている。洗濯機は、このところ前年を下回る水準で推移している。電子レンジは前年並みの水準で推移している。エアコンは在庫調整から出荷を抑制する動きがみられ4、5月と前年を下回った。なお、6月は梅雨入り後も比較的天候に恵まれたこともあり、前年を大きく上回っている。
  • 家電の輸出(台数ベース)は減少傾向が続いている。カラーテレビは、4月は前年をやや上回ったが、5月は香港向けを中心に減少した。VTRは、高水準の前年の反動もあり、アメリカや香港向けを中心に前年を大きく下回った。CDプレーヤは、メキシコ向けが増加したが、アメリカや香港向けが減少したことから、全体では減少を続けている。
  • 家電の輸入(台数ベース)は増加傾向にある。カラーテレビはマレーシア、中国、タイを中心に大幅に増加した。VTRは4、5月ともマレーシアを中心に大幅増となった。
  • 家電の生産額(前年同月比)は、このところAV家電がやや減少傾向にあるものの、白物家電が持ち直してきており、全体では3月4.5%増、4月0.3%減とほぼ横ばいで推移している。

7.自動車

自動車は低調に推移している。これは、国内販売(新車新規登録・届出台数)がこのところおおむね横ばいで推移しているものの、完成車輸出が前年割れとなり、生産が低調に推移しているからである。

  • 自動車全体の国内販売(新車新規登録・届出台数、前年同月比)は、5月前年並み、6月0.6%増とこのところおおむね横ばいで推移している。なお、ここ数年と比較すると水準は依然として低い。車種別にみると、普通乗用車、小型乗用車は低調に推移している。普通トラックは依然として前年割れが続いている。小型トラックは大幅な落ち込みが続いている。軽乗用車は好調に推移しており、軽トラックは新規格車の効果から増加傾向にある。
     輸入車販売では、新型車等の増加により5月0.2%減の後、6月15.8%増となった。
  • 自動車の輸出(完成車台数ベース、前年同月比)は、4月11.1%減、5月8.6%減と前年割れとなった。仕向地別にみると、主力の北米向けは堅調に推移しているものの、欧州向けは前年割れとなった。その他の地域では、アジア向けは持ち直しつつあるものの、中東向け、南米向けは大幅な前年割れが続いており、中米向けはこのところ減少している。
     自動車部品の輸出(日本自動車工業会々員11社分、ドルベース)は、海外生産用のアジア向けで持ち直しの動きにあることから、4月4.0%増、5月5.9%増となった。
  • 自動車の生産(完成車台数ベース、前年同月比)は、4月6.5%減、5月2.4%減と依然として低調に推移している。車種別にみると、普通乗用車は輸出の増加から底固く推移している。小型乗用車、普通トラック、小型トラックは国内販売の低迷や輸出の減少等から前年割れが続いている。軽乗用車は前年を大幅に上回る水準で推移し、軽トラックは新規格車の効果から増加傾向にある。

8.建設・住宅

建設・住宅は低調に推移している。これは、公共工事着工が堅調に推移し、住宅着工は持ち直してきているものの、民間工事や非居住用建築の大幅な減少により、建設業大手50社の受注額や建築着工床面積は再び減少傾向となっているからである。

[建設]

  • 建設業大手50社の受注額(前年同月比)は、3月増加となったものの、4月15.1%減、5月11.3%減となり、再び減少傾向となっている。受注の約6割を占める民間工事をみると、4月26.5%減、5月には19.7%減となり、再び大幅な減少となった。民間工事の内訳をみると、製造業向けは、主力の化学、電気機械をはじめ、他の業種でも落ち込み、全体でも大幅な減少が続いている。ウェイトのより大きい非製造業向けは、3月には増加となったものの、全体としては低調に推移している。受注の約3割を占める官公庁工事は、国、地方共に増加となっているものの、大規模な受注が一段落したため、増加幅は縮小している。海外工事は、減少傾向が続いていたが、アジアの景気が回復しつつあることもあり、減少幅は縮小している。
     施工高は、3月9.1%減、4月12.6%減となった。また、未消化工事高は、29か月連続で減少となった。
     また、地方大手建設業者470社の受注額(前年同月比)は、4月6.6%増の後、民間の減少幅が拡大したため、5月0.8%減となった。
  • 建築の着工状況(床面積)をみると、2月以降減少幅が縮小し、4月2.0%増となったものの、5月は非居住用の大幅な減少により6.7%減となった。内訳をみると、着工床面積の6割近くを占める民間居住用建築等では、3か月連続して増加となっているものの、民間非居住用建築のうち鉱工業用で大幅減が続き、4月増加となった商業用でも5月は大幅な減少となった。
  • 公共工事着工(総工事費評価額)は、補正予算の効果等により、国を中心として増加となった結果、4月31.9%増、5月2.6%増となり、4~5月累計では17.2%増と堅調に推移している。

民間土木工事着工は、4月30.5%減、5月9.0%減となった。

[住宅]

  • 住宅着工(戸数)は、4月1.1%増と2か月連続して増加した後、5月0.9%減となったものの、5月の年率換算値では123万戸とほぼ前年同期の水準にまで回復しており、持ち直してきている。利用関係別でみると、持家は回復傾向にあるものの、貸家、分譲については引き続き減少傾向となっている。
     住宅金融公庫の99年度第1回融資申込は前年度比5.7%増となったが、98年度第3回、第4回に比べ増加幅は縮小した。
  • 戸建住宅産業の最近の動きについては、構造別の着工戸数は、ウェイトの約半分を占める木造は回復傾向にあるが、非木造については鉄骨造を除き減少が続いている。建築単価については、1平方メートル当たりの工事費予定額では、木造はほぼ前年並で推移しているものの、非木造増の単価が高くなり、全体でもやや高くなっている。1戸あたりの面積については、利用関係別ではややばらつきがあるものの、全体では緩やかな増加傾向にある。
  • マンション産業の最近の動きについては、全体の着工は、4月15.8%減、5月17.9%減と15か月連続で減少となっている。圏別にみると、近畿圏は5月に15か月振りの増加となったものの、首都圏の減少幅が拡大した。一方、新規契約率(首都圏)については、金利先高感及び減税等の理由により、4月76.9%、5月80.6%と6か月連続で70%を超えており、好調である。また、在庫についても6か月連続で減少しており、9千戸を下回る低い水準が続いている。

9.運輸・旅行

国内貨物輸送は、不振が続いている。これは、特別積合せトラック等に荷動きがみられるものの、多くの輸送形態が減少しているからである。

旅行関連は、横ばいで推移している。これは、商品価格の低下に加えて、GWで個人旅行者数は増加したものの団体旅行者数が減少したこと等により、取扱高が減少したからである。

  • 国内貨物輸送は、不振が続いている。これは、特別積合せトラック等に荷動きがみられるものの、低水準にある国内生産活動等を映じて、多くの輸送形態が減少しているからである。
     内訳をみると、一般トラック(前年同月比:トンベース)は、土木関連で荷動きが一部にみられるものの、3月4.1%減、4月4.0%減と減少している。特別積合せトラックは、3月1.9%増、4月2.2%増(速報)と、消費財等の増加から持ち直しの動きがみられ、宅配貨物も増加傾向にある。内航海運(貨物船)は、不振となっている。JR貨物は、不振が続いている。航空貨物は、4月5.1%増、5月0.2%減(速報)と、一進一退の動きとなっている。
  • 国際貨物輸送は、改善の動きがみられる。航空貨物については、アジア発の荷動きの回復等から、貨物トン数(全国ベース)でみると、輸出は、4月11.2%増、5月11.0%増、輸入は、4月17.2%増、5月15.1%増となった。外航海運の貨物トン数は、輸出は4月10.2%増、5月7.3%増となった。輸入は4月2.4%減、5月0.5%増となった。
  • 旅行関連は、横ばいで推移している。商品価格の低下に加えて、GWで個人旅行者数は増加したものの団体旅行者数が減少したこと等により、大手旅行会社(鉄道旅客協会加盟13社)の取扱額(前年同月比)は、4月0.6%減、5月4.6%減となった。内訳をみると、国内旅行は4月1.6%減、5月4.3%減となり、海外旅行は4月0.7%増、5月5.7%減となった。主要旅客輸送機関の実績(人数ベース、前年同月比)をみると、JR旅客は、定期外は4月1.8%減となり、航空(3社)は国内線は4月1.7%増、5月4.6%増(速報)、国際線は4月9.1%増、5月12.2%増(速報)と増加傾向にある。

10.情報サービス

情報サービスは堅調に推移している。これは、主力の受注ソフトウェアの売上高が、堅調に推移しているからである。

  • 情報サービス業売上高(前年同月比)は、4月4.8%増の後、5月6.6%減となったものの、約6割を占める主力の受注ソフトウェアが堅調であることから、全体でも堅調に推移している。
  • 業務種類別にみると、
    • 受注ソフトウェアは、4月4.4%増の後、5月は前年高水準の反動もあり13.2%減となったものの、官公庁、金融業向け等が引き続き好調なことから堅調に推移している。
    • ソフトウェアプロダクトは、4月0.9%増、5月7.7%減となった。
    • 計算事務等情報処理は、金融業、流通業向け等の需要増から4月6.3%増、5月5.6%増となった。
    • システム等管理運営受託は、金融業、製造業等のアウトソーシングの需要増により、4月8.3%増、5月6.3%増と好調に推移している。
  • 雇用状況は、高等技術者は不足感が続いているものの、全体的には不足感は緩和している。

11.外食

外食は横ばい状況が続いている。これは、既存店ベースでは、売上高、利用客数が前年割れを続けているものの、全店ベースでは店舗数が増加傾向にあり、売上高、利用客数も前年比増で推移しているからである。

  • 大手外食企業が加盟している(社)日本フードサービス協会の調査により、全店ベース(前年同月比)の状況をみると、売上高は4月3.3%増、5月1.5%増となった。これは、客単価が下落傾向にあるものの、店舗数が4月4.4%増、5月3.6%増と引き続き増加傾向にあり、合わせて利用客数が4月5.3%増、5月3.3%増といずれも前年比増で推移しているからである。直近も同様の傾向で推移している。
     なお、既存店ベース(前年同月比)でみると、利用客数は、4月が週末の天候不順の影響もあり1.4%減、5月は連休期間の休日増が利用客数を伸ばしたが、中旬以降落ち込み、全体で2.4%減となった。また、客単価は消費者の低価格指向や店舗側の低価格設定等により引き続き下落傾向にあり、この結果、売上高は4月2.9%減、5月3.8%減と前年割れを続けている。
  • 業態別の売上高(全店ベース)をみると、ファーストフードはほぼ前年並みで推移しているが、このところ競合の激しい持ち帰り米飯の分野が減少している。ファミリーレストランは、販促効果から前年を上回っており、既存店ベースでも減少幅が縮小している。一方、パブレストラン・居酒屋は、伸びが鈍化しており5月はやや前年を下回った。

12.リース

リースは低調に推移している。これは、リース契約額が、設備投資の冷え込みを映じて引き続き減少しているからである。

  • リースは低調に推移している。リース契約額(リース事業協会調べ、前年同月比)は、4月4.4%減、5月7.5%減と引き続き減少している。土木建設機械、医療機器に動きが見られたものの、設備投資の冷え込みを映じて、主力の情報関連機器が低調であることに加え、産業機械、工作機械等で減少が続いている。
  • 物件別の最近の動向をみると、
     契約額の約4割を占める情報関連機器は、4月3.2%減、5月3.0%減と低調に推移している。
     商業・サービス業用機械・設備は、4月4.5%減、5月4.7%減となった。商業用機械・設備、サービス業用機械・設備ともに前年水準を下回っている。
     事務用機器は、4月10.6%減、5月26.5%減と大幅な減少となった。
     産業機械は、設備投資の冷え込みを映じて、4月4.9%減、5月17.1%減と減少が続いている。
     工作機械は、設備投資の冷え込みを映じて、4月36.4%減、5月33.1%減と大幅減が続いている。
     土木建設機械は、4月2.1%減の後、公共工事の増加の影響もあって、5月は34.5%増となった。
     自動車は、4月2.0%増の後、5月は9.0%減となった。
  • リース料率は、低い水準で推移している。

13. 電力

電力は横ばい状況が続いている。これは、大口電力が生産活動の停滞状況を映じて17か月連続で前年実績を下回ったものの、民生用電力が底固く推移しているからである。

  • 電力需要(9社計、前年同期(月)比)は、4月1.3%増、5月1.8%減となった。これは、大口電力が生産活動の停滞状況を映じて17か月連続で前年実績を下回ったものの、民生用電力(電灯、業務用電力)が底固く推移しているからである。
     用途別にみると、家庭用電灯需要は5月は1.4%増と低い伸びとなった。これは、4月中旬から5月上旬の気温が前年に比べて低めとなったことから、冷房需要が減少したためである。業務用電力も同じ理由で、5月には2.0%減と前年割れとなった。また、小口電力のうち、低圧電力についても同じ理由で前年実績割れとなり、高圧電力Aは、生産活動の停滞状況を映じて、前年実績割れが続いている。大口電力も生産活動の停滞状況を映じて、17か月連続の前年実績割れとなった。
     4~5月期について地域別にみると、関東、東海、北陸、近畿の4地域が前年実績を下回った。
  • 大口電力需要を自家発電を含め業種別にみると、5月はパルプ・紙、セメントが前年比プラスになったものの、それ以外の業種は前年実績割れとなっており、生産活動の停滞状況を裏付ける形となっている。鉄鋼は、粗鋼生産が前年実績を下回ったことから、18か月連続して前年割れとなった。化学は、苛性ソーダ等の生産が低迷していることから2か月連続の前年割れとなった。パルプ・紙は、5月には0.2%増と3か月振りにプラスとなった。セメントは、21か月振りにプラスとなった。電気機械は、家電製品等の生産調整等により、7か月連続の前年割れとなった。輸送用機械は、自動車生産の低迷等により2か月連続の前年割れとなった。非鉄は、アルミニューム圧延品の生産減等により、14か月連続の前年割れとなった。
     地域別にみると、5月は東北のみがプラスとなった。

14.広告

広告は低調に推移している。これは、企業の広告費削減の動きを映じて、売上高の減少傾向が続いているからである。

  • 広告は低調に推移している。主要10社の売上高(前年同月比)をみると、企業の広告費削減の動きを映じて、4月0.3%減の後、5月は新聞、テレビが減少し、1.9%減となった。
     媒体別では、ウェイトの大きいテレビが、機動的に運用できるスポットで下げ止まりの兆しがみられ、4月に1.3%増と13か月ぶりにプラスになったものの、5月は料金単価の低下もあり、3.8%減と再び減少している。雑誌は、主要広告業種の化粧品・トイレタリーは減少が続いているものの、情報・通信、食品等が好調で増加している。新聞は、3月、4月と増加したものの、5月は自動車・関連品、飲料・嗜好品等の大幅減により減少となっている。4媒体以外は、折り込みチラシ等が好調で増加となった。
  • 広告量(前年同月比)の動向をみると、テレビはテレビスポットが4か月連続で増加しているものの、テレビ番組で98年3月から15か月連続の減少が続いている。新聞は、案内広告で依然低調な動きが続いており、カラー広告、全面広告も3月、4月と増加したものの、5月には減少となった。
     出稿業種別にみると、金融・保険が金融自由化の進展もあって外資系金融機関の活発な広告展開を中心にテレビ、雑誌で依然好調に推移している。また、携帯電話等が好調な情報・通信、減税の影響で不動産・住宅設備、ドリンク剤のコンビニ解禁を受けて薬品・医療用品が、テレビスポットを中心に大幅に増加している。一方、これまで好調であった飲料・嗜好品は昨年5月が酒税法改正の影響で好調だった反動もあって新聞で大きく減少している。軽自動車は好調なものの、他の車種が振るわない自動車・関連品はテレビスポット、新聞で大幅に減少している。化粧品・トイレタリー、家電・AV機器も減少が続いている。