産業動向(平成10年11月)

平成10年11月


産業動向の推移

産業動向の推移イメージ


概況

我が国産業の最近の動向について次のような特徴がみられる。

(1)最近の我が国産業をみると、ほとんどの業種で低調または不振が続いており、極めて厳しい状況にある。これは、個人消費が依然低調であることや、企業の設備投資が大幅に減少していること等を映じて、在庫の過剰感が依然強く、生産調整の動きが続いており、国内販売の低迷が続いているからである。

(2)製造業をみると、

素材型産業では、紙・パルプは低調に推移しており、鉄鋼、化学(石油化学)は不振が続いている。

加工組立型産業では、工作機械が受注の減少幅がこのところ拡大していることから、横ばい状態から低調になった。半導体、コンピュータ関連機器、通信機器、家電、自動車は低調に推移しており、産業機械、建設機械は不振が続いている。

(3)非製造業を見ると、

情報サービスが主力の受注ソフトウエアの売上高の伸びがこのところ鈍化していることから、好調から堅調になった。電力は横ばい状態が続いており、旅行、リース、広告は低調に推移し、建設・住宅、国内貨物は不振が続いている。


鉄鋼は不振が続いている。これは、国内需要の低迷が長引いていることにより普通鋼鋼材の国内受注が低調に推移し、粗鋼の減産、普通鋼鋼材の在庫調整が続いているからである。

化学(石油化学)は不振が続いている。これは、需要減を映じて基礎原料であるエチレンの生産や汎用樹脂で減産の動きが続いており、国内出荷が減少傾向にあるからである。

紙・パルプは低調に推移している。これは需要の減少を背景に出荷が低調であり、在庫が高水準であるなか、生産面においても、紙で一部の用紙を除き生産調整が続き、また板紙も低調に推移しているからである。

一般機械では、産業機械は不振が続いている。これは、受注が内外需の不振により低迷しているからである。工作機械は低調となった。これは、内需の大幅減により、このところ受注の減少幅が拡大しているからである。建設機械は不振が続いている。これは、出荷が建築需要の落ち込みを映じて引き続き低迷しているからである。

産業用電気機械・電子部品では、半導体集積回路は低調に推移している。これは、法人需要等が低迷しているため、出荷額が減少傾向にあるからである。コンピュータ関連機器は低調に推移している。これは、法人需要等が低迷しているため、生産額が減少傾向にあるからである。通信機器は低調に推移している。これは、通信インフラの整備の一巡により、生産額が減少傾向にあるからである。

家電は、下げ止まり感があるものの、依然として低調な推移となっている。これは、国内出荷(台数ベース)と輸出は、総じて底固い推移となっているが、生産額については、下げ止まり感があるものの、依然として低調な推移となっているからである。

自動車は低調に推移している。これは、完成車輸出が底固いものの、国内販売が低調なため、生産が低調に推移しているからである。

建設・住宅は不振が続いている。これは、公共工事着工が大幅増加となったものの、建設業大手50社の受注額や住宅着工戸数が、引き続き減少傾向にあるからである。

運輸・旅行は、国内貨物輸送は不振が続いている。これは、国内生産活動及び消費活動の低迷を映じて、すべての輸送形態が減少傾向となっているからである。

旅行関連は低調に推移している。これは、団体旅行の落ち込み等のため、大手旅行会社の取扱額が減少傾向で推移しているからである。

情報サービスは堅調である。これは、主力の受注ソフトウェアの売上高が引き続き前年を上回っているものの、伸びがこのところ鈍化しているからである。

リースは低調に推移している。これは、企業の設備投資意欲の減退を映じて、リース契約額が、主力の情報関連機器を始めほとんどの物件で前年を下回り、減少傾向が続いているからである。

電力は横ばい状態が続いている。これは電灯と業務用電力は好調な伸びとなったものの、大口電力が生産活動の停滞状況を映じて9か月連続で前年実績を下回ったからである。

広告は低調に推移している。これは、企業の広告費削減の動きを映じて、売上高の減少が続いているからである。


1.鉄鋼

鉄鋼は不振が続いている。これは、国内需要の低迷が長引いていることにより普通鋼鋼材の国内受注が低調に推移し、粗鋼の減産、普通鋼鋼材の在庫調整が続いているからである。

  • 普通鋼鋼材の国内出荷(前年同月比)は、8月18.7%減、9月9.8%減と低調に推移している。
    これを受注面からみると、普通鋼鋼材の国内受注は、7月18.0%減、8月14.4%減と低調に推移している。
    用途別にみると、建設向けは、建築用が依然として低調であり、また土木用も前年を下回る動きとなったことから、7月13.8%減、8月11.3%減となった。
    製造業向けは、7月16.8%減、8月14.2%減と、低迷状態にある。内訳別では、ウェイトの高い自動車用は、乗用車生産台数の減少を背景に大幅減となり、低調に推移している。また、その他の用途でもほとんどの用途で前年を大きく下回っている。
    こうした状況のなか、国内在庫は、8月581万トン(前年同月比3.4%増)、9月5
    67万トン(同0.5%増)と、前年を上回る水準が続いている。
  • 鉄鋼の輸出入(全鉄鋼ベース、前年同月比)をみると、輸出数量はメーカー各社の積極的な輸出努力を反映して、8月34.0%増、9月24.2%増となった。
    これを仕向け先別にみると、米国、EU向けは8、9月ともに三ケタ増が続くなど、好調な動きとなったが、直近では、米国向けはメーカー各社の輸出姿勢の抑制から増勢に歯止めがかかっている。一方、韓国、アセアン向けは経済情勢の影響などから、低調に推移している。
    輸出船積平均単価は、国際市況の軟化などにより、円、ドルベースともに低下傾向にある。
    輸入数量は、国内需要の低迷が長引いていることなどから、一段と減少し、8月50.3%減、9月52.4%減となった。
  • 粗鋼の生産は、減産が続き、8月774万トン(前年同月比11.0%減)、9月777万トン(同8.9%減)となった。
  • 鋼材の市況をみると、条鋼類では、H形鋼は採算意識の高まりから、持ち直しの兆しが窺われる。また、棒鋼は需要の低迷が長引いていることなどから、さらに低下傾向にある。鋼板類では、輸入が減少したものの、それ以上に需要が低迷していることから、冷延薄板、厚鋼板ともに低下傾向にある。

2.化学(石油化学)

化学(石油化学)は不振が続いている。これは、需要減を映じて基礎原料であるエチレンや汎用樹脂で減産の動きが続いており、国内出荷が減少傾向にあるからである。

  • 石油化学製品の基礎原料であるエチレンの生産は、9月548千トン(前年同月比6.7%減)、10月575千トン(速報、前年同月比7.2%減)となり、引き続き減産の動きが続いている。汎用樹脂の生産についても、国内の需要減を映じて減産の動きがみられ、全体的に減少傾向となっている。
    在庫水準については、減少傾向にあるものの、全体ではやや過剰感がみられる。
  • 汎用樹脂の国内出荷については、需要減を映じて各樹脂共減少傾向となっている。主要樹脂別にみると、低密度ポリエチレンは主力のフィルム向けを中心として減少となった。高密度ポリエチレンは主力の射出向けを中心として減少となった。塩化ビニルについては、減少傾向が続いている住宅着工等の動きを映じて二ケタ減が続いている。汎用樹脂最大の需要を有するポリプロピレンは、全体として減少が続いている。ポリスチレンは主力の電気工業向けを中心として減少となった。
  • 汎用樹脂の輸出は、樹脂ごとにばらつきがみられるものの、中国の引き合いが好調なことを背景に全体としては底固い動きが続いている。
    汎用樹脂の東南アジア市況については、中国需要の回復等の理由により、総じて底を脱しつつある。

3.紙・パルプ

紙・パルプは低調に推移している。これは需要の減少を背景に出荷が低調であり、在庫が高水準であるなか、生産面においても、紙で一部の用紙を除き生産調整が続き、また板紙も低調に推移しているからである。

  • 紙の生産(前年同月比)は、一部の用紙を除き生産調整が続き、8月5.2%減、9月3.2%減となった。出荷は、8月1.9%減、9月1.7%減と前年割れが続いている。一方、在庫は、依然として高水準で推移しているものの、このところ増勢に歯止めがかかってきている。
    紙の生産を品目別にみると、新聞巻取紙は、底固い動きとなっている。
    印刷・情報用紙では、需要の減少を背景に減産が続いている。非塗工類は、微塗工紙は堅調に推移しているものの、全体では低調に推移している。塗工紙は、カタログ、チラシ向け等が減少していることから、低調に推移している。情報用紙は、複写用紙、フォーム用紙は依然として低調であり、またPPC用紙が減少に転じたことから、全体では減少傾向にある。 衛生用紙は、市況対策などから生産調整が続いているものの、このところ持ち直しの動きがみられる。
  • 板紙の生産(前年同月比)は、段ボール需要の減少などを背景に8月7.4%減、9月5.5%減と低調に推移している。出荷は、段ボール原紙、紙器用板紙ともに低調な荷動きが続き、8月4.5%減、9月3.2%減となった。こうした状況のなか、在庫は、ウェイトの高い段ボール原紙で増勢に歯止めがかかっているものの、全体では8月9.6%増、9月7.3%増となり、依然として高水準で推移している。
    板紙の生産を品目別にみると、段ボール原紙は、低調に推移している。
  • パルプの生産(前年同月比)は、製品需要の減少を背景として、8月8.6%減、9月8.0%減となった。
  • 紙、板紙の輸出入(数量ベース、前年同月比)をみると、輸出は、8月17.8%増、9月23.4%増となり、このところ増加している。
    一方、輸入は、国内需要の減少を背景に、8月15.9%減、9月19.7%減となり、このところ減少している。
  • 紙の市況をみると、紙、板紙ともに需給緩和を背景として、低下傾向が続いている。

4.一般機械

産業機械は不振が続いている。これは、受注が内外需の不振により低迷しているからである。工作機械は低調となった。これは、内需の大幅減により、このところ受注の減少幅が拡大しているからである。建設機械は不振が続いている。これは、出荷が建築需要の落ち込みを映じて引き続き低迷しているからである。

  • 一般機械の生産(季調済前月比)は、基調としては減少傾向である。8月2.8%減の後、9月は金型などの増加により2.7%増(速報)となった。増加した機種は、17機種中、8月には5機種、9月には11機種(速報)となった。
    機械受注(原動機・産業機械・工作機械のみ、金額ベース、前年同期比)をみると、8月36.4%減、9月24.8%減と大幅減が続いている。
    輸出入の動向(事務用機器を除く・円ベース、前年同期比)をみると、輸出は8月1.8%減、9月1.3%減と、2か月連続で減少となった。輸入は8月4.3%増、9月1.7%増となった。
  • 産業機械は不振が続いている。産業機械の受注(日本産業機械工業会調べ、金額ベース、前年同期比)は、8月33.4%減、9月23.0%減となり、10月に入っても低迷が続いている。需要者別にみると、内需はウェイトの高い電力業向けでボイラ・原動機に動きがみられたものの、自動車工業向けや鉄鋼業向けなどが大きく落ち込むなど減少が続いている。外需は、主力のアジア向けは引き続き低迷しており、9月は大型のプラント受注もみられず、化学機械や金属加工機械などを中心に大幅減となった。
  • 工作機械は低調となった。工作機械の受注(日本工作機械工業会調べ、金額ベース、前年同期比)は、8月13.7%減、9月16.2%減と減少幅が拡大している。需要者別にみると、内需は、設備投資意欲の減退により主力の一般機械工業向など多くの業種で大幅減となっており、10月に入っても低調に推移している。一方、外需は、北米向け、欧州向けを中心に引き続き好調なものの、その伸びは鈍化しており、9月は8.4%増にとどまった。
  • 建設機械は不振が続いている。建設機械の出荷(日本建設機械工業会調べ、本体・金額ベース、前年同期比)は、8月22.7%減、9月22.8%減となり、10月に入っても低迷が続いている。需要者別にみると、内需は、建築需要の落ち込みを映じてすべての機種で前年を下回り、18か月連続でマイナスとなった。外需は、欧州向け油圧ショベル、北米・中南米向けミニショベルなどは好調が続いているものの、主力のアジア向けは依然として大幅減が続いており、6か月連続でマイナスとなった。

5.産業用電気機械・電子部品

半導体集積回路は低調に推移している。これは、法人需要等が低迷しているため、出荷額が減少傾向にあるからである。コンピュータ関連機器は低調に推移している。これは、法人需要等が低迷しているため、生産額が減少傾向にあるからである。通信機器は低調に推移している。これは、通信インフラの整備の一巡により、生産額が減少傾向にあるからである。

  • 半導体集積回路は、低調に推移している。法人需要等が低迷していることから、出荷額(前年同月比)は、7月16.6%減、8月16.0%減と減少傾向にある。在庫率は16MDRAMを中心に8月1.18と高水準で推移している。DRAMの価格は、減少傾向には一服感がみられるものの、基調としては、低水準で推移している。
  • コンピュータ関連機器は、低調に推移している。ウインドウズ98等の販売により個人需要は底固いものの、依然として中小企業を中心に法人需要は低迷しており、生産額(前年同月比)は、7月14.2%減、8月13.0%減と二ケタ減が続いている。内訳をみると、パソコンは、7月25.7%減、8月13.42%減、9月は5.5%減(速報)と低調な動きが続いている。
  • 通信機器は、低調に推移している。通信インフラの整備が一巡していることから、生産額(前年同月比)は、7月21.0%減、8月23.8%減と減少傾向にある。内訳をみると、携帯電話は7月12.0%増、8月1.1%増、9月以降も底固い動きとなっているものの、電子交換機は8月35.1%減、9月は2.4%増(速報)となったが、基調としては低調な動きとなっており、ISDN、デジタル専用線に関連する搬送装置も7月29.4%減、8月32.0%減と大幅な減少となっている。

6.家庭電器

家電は、下げ止まり感があるものの、依然として低調な推移となっている。これは、国内出荷(台数ベース)と輸出は、総じて底固い推移となっているが、生産額については、下げ止まり感があるものの、依然として低調な推移となっているからである。

  • 家電の国内出荷(台数ベース)は、総じて底固い荷動きとなっている。
    AV家電をみると、総じて底固い荷動きとなっている。品目別にみると、カラーテレビは、平面ブラウン管型など新製品が浸透しつつあり、直近では回復傾向にある。VTRは、好調だったBS内蔵型に一服感があるものの、高画質型を中心に堅調な荷動きとなっている。ビデオカメラは、デジタル機種を中心に堅調な荷動きとなっている。CDプレーヤは、底固い荷動きとなっている。
    白物家電をみると、総じて底固い荷動きとなっている。品目別にみると、冷蔵庫は350l
    以上の大型が下支えしており、底固い荷動きとなっている。洗濯機は、8、9月と前年水準を若干下回る荷動きとなっている。電子レンジは、下げ止まり感があるものの、前年水準を若干下回る荷動きとなっている。エアコンは、不振だった昨年の反動もあり、基調としては9月以降も増加傾向にある。
  • 家電の輸出(台数ベース)は、総じて底固い推移となっている。カラーテレビは、ロシア向けの減少などから8月は前年を下回ったが、9月は前年を上回り、全体として底固い推移となっている。VTRは、アメリカや香港向けを中心に底固い推移となっている。一方、CDプレーヤは、メキシコや中国向けを中心に8、9月とも大幅に減少した。
  • 家電の輸入(台数ベース)は、カラーテレビがマレーシアや中国の伸びから8、9月とも前年を上回った。VTRは、マレーシアを中心に8月以降減少した。
  • 家電の生産額(前年同月比)は、AV家電、白物家電とも減少し、7月6.6%減、8月7.3%減となった。このところ、在庫過剰感が薄れつつあり、また、買い替え需要の高まりから、全体としては下げ止まり感があるものの、依然として低調な推移となっている。

7.自動車

自動車は低調に推移している。これは、完成車輸出が底固いものの、国内販売が低調なため、生産が低調に推移しているからである。

  • 自動車全体の国内販売(新車新規登録・届出台数、前年同月比)は、9、10月とも10.2%減で、19か月連続の前年割れとなり低調に推移している。車種別にみると、普通乗用車、小型乗用車は10月に二ケタ減となった。軽乗用車は10月の規格改定により多くの新型車が発売されたため、前年を大きく上回っている。トラックは大幅な落ち込みが続いている。
    輸入車販売では、国内市場の低調さを映じて、9月15.3%減、10月21.9%減と前年割れが続いている。
  • 自動車の輸出(完成車台数ベース、前年同月比)は、前年高水準の反動から、8月14.1%減、9月3.3%減となっているものの、基調としては底固く推移している。仕向地別にみると、北米向けは底固く推移している。欧州向けは前年高水準の反動から8月は二ケタ減となっているものの、基調としては堅調に推移している。中東向けは好調である。アジア向けは大幅な前年割れが続いている。南米向けはこのところ前年割れとなっている。
    自動車部品の輸出(日本自動車工業会々員11社分、ドルベース)は、部品の現地調達が進展していることから、海外生産用、OEM用とも減少傾向が続いており、8月23.8%減、9月16.1%減となっている。
  • 以上から、自動車の生産(完成車台数ベース、前年同月比)は、8月8.6%減、9月9.7%減と低調に推移している。車種別にみると、普通乗用車は8、9月と前年を上回っているものの、小型乗用車、軽乗用車、トラックは国内販売、アジア向け輸出の低迷などから前年割れが続いている。なお、軽乗用車は10月に入ってから高操業の生産となっている。

8.建設・住宅

建設・住宅は不振が続いている。これは、公共工事着工が大幅増加となったものの、建設業大手50社の受注額や住宅着工戸数が、引き続き減少傾向にあるからである。

[建設]

  • 建設業大手50社の受注額(対前年同期比)は、8月17.1%減、9月8.9%減と引き続き減少傾向となっている。受注の約6割を占める民間工事をみると、9月16.8%減となり、このところ減少幅が緩やかに拡大している。製造業向けは、主力の電気機械をはじめ、他の業種でも大きく減少となり、全体で減少が続いている。ウェイトのより大きい非製造業向けは、電気・ガス業が底固く推移しているものの、全体では弱い動きとなっている。受注の約3割を占める官公庁工事は、補正予算等の効果により、15か月振りに増加となった。海外工事は主力の東南アジアにおいて、引き続き受注元に慎重な動きがみられ、弱い動きが続いている。
    施工高は、7月9.1%減、8月8.4%減となった。また、未消化工事高は、21か月連続で減少となった。
    また、地方大手建設業者470社の受注は、補正予算等の効果が現れ、官公庁が大きく増加となり、全体でも7か月振りに増加となったに。
  • 建築の着工状況(床面積)をみると、着工床面積の約9割を占める民間建築の減少が大きく響いており、全体的に減少傾向となっている。内訳をみると、民間建築の大宗を占める居住用建築では引き続き減少傾向となっており、非居住用建築についても各用途別で弱い動きとなっている。
  • 公共工事着工(総工事費評価額)は、8月1.2%減の後、補正予算等の効果により、9月37.0%増と大幅増加に転じ、4?9月累計では0.3%減となった。
    民間土木工事着工は、8月12.4%減、9月9.6%増となった。

[住宅]

  • 住宅着工(戸数)は、8月11.4%減、9月14.0%減と21か月連続で減少となり、引き続き減少傾向となっている。また、9月の年率換算値は114万戸と低水準が続いている。利用関係別では、持家が19か月振りに増加となったものの、貸家、分譲については引き続き二ケタの減少を続けている。
  • 戸建住宅産業の最近の動きについては、構造別の着工戸数は木造、非木造ともに減少が続いている。建築単価については、1?当たりの工事費予定額で木造がこのところ緩やかな低下傾向にあり、1戸あたりの面積については全体で緩やかに縮小していたが、このところ横ばいとなっている。
  • マンション産業の最近の動きについては、着工は首都圏において一進一退の動きとなっているものの、他の都市部では大きく減少となっており、全体では8月14.8%減、9月26.5%減と7か月連続で減少となっている。新規契約率(首都圏)については、9月68.9%の後、10月75.8%と3か月振りに70%を超えたが、在庫については、10月も1万戸超となっており、水準的に依然高いものとなっている。

9.運輸・旅行

国内貨物輸送は不振が続いている。これは、国内生産活動及び消費活動の低迷を映じて、すべての輸送形態が減少傾向となっているからである。

旅行関連は低調に推移している。これは、団体旅行の落ち込み等のため、大手旅行会社の取扱額が減少傾向で推移しているからである。

  • 国内貨物輸送は、不振が続いている。国内生産活動及び消費活動の低迷を映じて、すべての輸送形態が減少傾向となっている。
    内訳をみると、一般トラック(前年同月比:トンベース)は7月9.9%減、8月は7.6%減と大幅な減少が続いている。特別積合せトラックは、宅配貨物は底固い動きであるものの、機械部品や日用品等の荷動きが不振であることから、8月4.4%減、9月4.1%減(速報)と減少が続いている。内航海運(貨物船)は7月2.6%減、8月11.8%減と不振が続いている。JR貨物は、豪雨による線路災害の影響もあり、8月20.3%減、9月20.4%減(速報)と大幅な減少となった。航空貨物は、8月0.9%減の後、9月は、天候要因等により0.6%増(速報)となったが、基調としては低調に推移している。
  • 国際貨物輸送は、低調に推移している。航空貨物の輸出は、貨物トン数(全国ベース)でみると、アジア向けが引き続き低迷していることに加え、米国向けのパソコン、自動車部品が低調なことから、8月5.0%減、9月6.4%減と減少が続いている。輸入は国内需要が弱いことから、8月7.7%減、9月8.1%減と減少が続いている。外航海運の貨物トン数は、輸出は8月4.9%減、9月3.4%増となった。輸入は8月6.2%減、9月9.3%減となった。
  • 旅行関連は、低調に推移している。大手旅行会社(鉄道旅客協会加盟13社)の取扱額(前年同月比)をみると、8月3.3%減、9月6.1%減と減少傾向で推移している。内訳をみると、国内旅行は安価な企画商品は堅調なものの、団体客やビジネス客の落ち込みにより、8月2.1%減、9月6.3%減となった。海外旅行は団体旅行の落ち込みや旅行単価の下落などにより、8月5.2%減、9月6.2%減と低調に推移している。主要旅客輸送機関の実績(人数ベース、前年同月比)をみると、JR旅客は、定期外は8月2.7%減となった。航空(3社)は国内線は8月2.5%増、9月2.2%増(速報)となった。国際線は8月3.0%増、9月8.2%増(速報)となった。

10.情報サービス

情報サービスは堅調である。これは、主力の受注ソフトウェアの売上高が引き続き前年を上回っているものの、伸びがこのところ鈍化しているからである。

  • 情報サービス業売上高(前年同月比)は、売上高の5割強を占める受注ソフトウェアの伸びがこのところ鈍化しており、8月0.1%減、9月0.4%減となっている。
  • 業務種類別にみると、
    • 受注ソフトウェアは、官公庁、金融業、流通業向けは引き続き好調であるが、製造業向けなどで投資抑制の動きが見られ、8月4.9%増、9月0.8%増と伸びは鈍化しているものの堅調である。
    • ソフトウェアプロダクトは、前年の反動などから、8月9.6%減、9月2.7%減となっているものの、基調としては底固く推移している。
    • 計算事務等情報処理は、8月0.1%減、9月3.2%増と底固く推移している。
    • システム等管理運営受託は、通信業、製造業のアウトソーシングの需要増により、8月10.6%増、9月14.7%増と好調に推移している。
  • 雇用状況は、高等技術者は不足感が続いているものの、全体的には不足感は緩和している。

11.リース

リースは低調に推移している。これは、企業の設備投資意欲の減退を映じて、リース契約額が、主力の情報関連機器を始めほとんどの物件で前年を下回り、減少傾向が続いているからである。

  • リースは低調に推移している。リース契約額(リース事業協会調べ、前年同期比)は、8月は10.6%減、9月はほとんどの物件で前年を下回り7.8%減となり、10月に入っても減少傾向が続いている。これは、中小企業を中心とする設備投資意欲の減退を映じたものである。
  • 物件別の最近の動向をみると、
    契約額の約4割を占める情報関連機器は、8月11.9%減と大きく前年を下回った後、9月は通信機の大口需要が見られたことにより5.9%減にとどまったが、電算機では引き続き設備の更新を抑制する動きがみられ、10月に入っても減少傾向が続いている。
    商業・サービス業用機械・設備は、高額の設備投資を控える動きが続いており、サービス業用機械設備の低迷に加え、商業用機械設備も振るわず8月8.6%減、9月8.8%減となった。
    事務用機器は、依然として、情報関連機器へのシフトによる需要減、物件価格低下などの影響により、8月16.5%減、9月14.4%減と減少が続いている。
    産業機械は、中小企業を中心とする設備投資意欲の減退を映じて、8月10.2%減、9月7.5%減と、減少が続いている。
    工作機械については、8月4.1%増の後、9月は29.5%の大幅減となった。
    土木建設機械は8月は前年低水準の反動により13.4%増となったものの、9月は14.4%減となり、依然として民間建築需要の落ち込みを映じて減少傾向にある。
    自動車は、8月14.5%減、9月9.8%減となった。
  • リース料率は、低い水準で推移しているものの、一部に引き上げる動きが見られる。

12. 電力

電力は横ばい状態が続いている。これは電灯と業務用電力は好調な伸びとなったものの、大口電力が生産活動の停滞状況を映じて9か月連続で前年実績を下回ったからである。

  • 電力需要(9社計、前年同期(月)比)は、8月0.2%増の後、9月は1.5%増と低い伸びが続いている。これは、電灯と業務用電力は好調であったものの、大口電力が生産活動の停滞状況を映じて前年実績を下回ったこと等による。
    用途別にみると、家庭用電灯需要は9月は5.5%増と大きな伸びとなった。これは、当月の気温が前年に比べて高めに推移し、冷房需要が増加したためである。なお、契約口数については、このところの住宅着工戸数の低迷を映じて伸び率は鈍化しつつある。業務用電力も同じ理由で、9月は4.5%増と高めな伸びとなった。小口電力のうち、低圧電力については、冷房、冷蔵需要の増加はみられたものの、生産活動の停滞の影響などから低い伸びとなった。なお、生産活動の停滞状況を映じて、小口電力のうち高圧電力Aは11か月連続、大口電力は9か月連続の前年実績割れとなった。
    7~9月期について地域別にみると、中国、四国、九州以外の6地域が前年実績を下回った。
  • 大口電力需要を自家発電を含め業種別にみると、電気機械を除く全業種で前年実績を下回っており、生産活動の停滞状況を裏付ける形になっている。鉄鋼は、粗鋼生産が前年実績を大幅に下回ったことから、10か月連続して前年割れとなった。化学は、苛性ソーダ、汎用樹脂などの生産が低迷していることから7か月連続の前年割れとなった。パルプ・紙は、洋紙・板紙の生産が前年を下回ったため、5か月連続の前年割れとなった。セメントは、内需の不振により生産が減少していることなどから、13か月連続の前年割れとなった。電気機械は、一部の電子機器等の生産が堅調に推移していること等により、プラスの伸びを続けている。輸送用機械は、自動車の国内販売の不振などによる生産減により、9か月連続して前年実績を下回ったが、一部車種で生産増となったため、9月は0.3%減とマイナス幅が小さくなった。非鉄は、アルミニューム圧延品の生産減等により、6か月連続のマイナスの伸びとなった。
    地域別にみると、9月は四国以外の全ての地域で前年実績を下回った。

13.広告

広告は低調に推移している。これは、企業の広告費削減の動きを映じて、売上高の減少が続いているからである。

  • 広告は低調に推移している。主要10社の売上高(前年同月比)をみると、企業の広告費削減の動きを映じて、8月4.2%減の後、9月は特に新聞広告の減少が大きく、6.9%減と減少幅が拡大した。
    媒体別では、ウエイトの大きいテレビは、機動的に運用できるスポットで需要の減少に伴って、料金単価の低下がみられる。雑誌は、創刊は活発なものの、主要媒体の女性誌で伸び悩みがみられる。新聞は、9月に二ケタの減少となった。4媒体以外は、折り込みチラシや屋外広告等の不振により減少している。
  • 広告量(前年同月比)の動向をみると、テレビはテレビ番組、テレビスポットとも減少が続いている。新聞は、カラー広告が底固い動きを続けているが、案内広告は低調な動きが続いている。
    出稿業種別にみると、情報・通信は、パソコン関連や電話、衛星放送が好調で、テレビ、新聞で堅調に推移している。飲料・嗜好品は、ウイスキー、ビール、健康飲料等が好調で、テレビ番組、新聞で堅調に推移している。一方、自動車・関連品はテレビスポット、新聞で、不動産・住宅設備は、テレビ、新聞とも大幅な減少が続いている。