「日本経済2015-2016」刊行にあたって

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内閣府経済財政分析担当では、毎年「日本経済」シリーズを公表し、「年次経済財政報告」後の日本経済の現状に関する分析を提供しています。今回の報告書では、デフレ脱却・経済再生に向けて前進する我が国経済の動向を概観するとともに、少子・高齢化社会において成長力を高めていくための課題を明らかにしています。

第1章では、好循環の進捗状況を振り返るとともに、経済に与えるインパクトが年々強まっている高齢者の消費と就労について分析しています。分析を通して、①雇用・所得環境の改善など経済の好循環が着実に回り始めているものの、消費を始めとする支出面の改善テンポには鈍さがみられること、②高齢就業者や就業を希望する高齢者の就労が実現できる労働環境の整備を進めることの重要性、などを指摘しています。

第2章では、企業活動のダイナミズムの向上に向けた課題について、企業数の9割を占める中小企業に焦点を当てて分析しています。分析結果を踏まえ、①雇用創出力を高めるためには、企業活動を促し新規企業を増やしていくことのほか、M&Aや新しい事業展開を通じたダイナミズムの向上が重要であること、②大企業と比べ資金力に劣る中小企業にとって、起業や成長、生産性向上に向け、資金面での課題克服が重要であること、などを明らかにしています。

第3章では、我が国の対外的な稼ぐ力を分析しています。ここでは、財輸出、投資収益、サービス輸出について、その動向を確認した上で、稼ぐ力を一層高める観点から、①技術向上やサービス投入により輸出財の付加価値を高めること、②対外直接投資のリスク対比収益率を高めること、③インバウンド消費の拡大に向けてアジアの成長など現在の我が国の好機をいかしていくこと、の重要性を指摘しています。

本報告書の分析が日本経済の現状に対する認識を深め、その先行きを考える上での一助となれば幸いです。

平成27年12月

内閣府政策統括官
(経済財政分析担当)
田和 宏

※本報告の本文は、原則として2015年12月14日までに入手したデータに基づいている。

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