「日本経済2014-2015」刊行にあたって

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内閣府経済財政分析担当では、毎年「日本経済」シリーズを公表し、「年次経済財政報告」後の日本経済の現状に関する分析を提供しています。今回の報告書では、2014年4月に実施された消費税率引上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けて大きく変動する経済の動向を概観するとともに、人口減少下での成長力強化に関する分析を行い、経済財政政策運営上の今後の課題を明らかにしております。

第1章では、消費税率引上げ前後の景気動向を振り返るとともに、デフレ脱却に向けた進捗状況を分析しています。分析を通して、①景気は、雇用・所得環境の改善に支えられ、緩やかな回復基調を持続しているものの、消費税率引上げや輸入物価の上昇等による物価上昇の中で個人消費に弱さがみられること、②景気回復の波及テンポには、企業規模や地域、所得階層の別に差がみられること、また、③デフレ脱却に向け設備投資や賃上げにみられる前向きな動きを持続していくことの重要性などを指摘しています。

第2章では、成長力強化・デフレ脱却に向けた雇用・賃金面の課題を分析しています。分析結果を踏まえ、①労働生産性や交易条件の改善を背景に実質賃金の上昇を実現すること、②多様な働き方を広げていくことにより労働参加の促進を図るとともに労働力の効率的な活用を図ることの重要性を明らかにしています。

第3章では、我が国産業の稼ぐ力を内外で高めていくための課題に焦点を当てています。ここでは、①アジア新興国の台頭等を背景に我が国産業の稼ぐ力が変化する中、輸出財の付加価値を高めていくとともに、観光や知的財産といった強みを活かしつつ、サービスでも稼ぐ力を高めていくこと、また、②企業所得の増加や国内拠点の再評価の中、研究開発や人的資本形成、経営組織改革等の分野への無形資産投資を促進し、生産性や収益性を高めることの重要性を指摘しています。

今年は、日本経済にとって経済の好循環を拡大させていく上で正念場となる年です。景気回復と持続的な成長力の向上に向け、国内労働力の更なる活用や付加価値を生む力の向上など構造的な取組を進めていくことが一層重要となっております。

本報告書の分析が日本経済の現状に対する認識を深め、その先行きを考える上での一助となれば幸いです。

平成27年1月

内閣府政策統括官
(経済財政分析担当)
田和 宏

※本報告の本文は、原則として2014年12月26日までに入手したデータに基づいている。

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