月例経済報告
平成13年3月
総論
(我が国経済の基調判断)
景気の改善に、足踏みがみられる。
・ アメリカ経済の減速から輸出が減少し、それに伴い、生産がこのところ弱含んでいる。
・ 失業率はこれまでの最高水準で推移し、個人消費はおおむね横ばいの状態が続いている。
・ 企業収益や設備投資は増加しており、自律的回復に向けた動きは続いている。
先行きについては、アメリカ経済の減速や設備投資に鈍化の兆しなど、懸念すべき点がみられる。
(政策の基本的態度)
政府は、経済を自律的回復軌道に確実に乗せるため、引き続き景気回復に軸足を置きつつ、我が国経済を21世紀にふさわしい構造に改革する。
政府としては、引き続き平成12年度補正予算等の着実な実施を図る。また、平成13年度予算について、その早期成立に努め、新年度における適切な執行を図ることとする。さらに、政府・与党緊急経済対策本部を発足させた。
なお、日本銀行においては、無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導目標を0.25%から0.15%に引き下げるとともに、公定歩合を年0.35%から年0.25%に引き下げた。
各論
1.消費・投資などの需要動向
設備投資は、製造業、非製造業ともに増加している。当面は堅調に推移すると見込まれるものの、先行きについては鈍化の兆しがみられる。
住宅建設は、おおむね横ばいとなっている。
輸出は、減少している。輸入は、緩やかに増加している。貿易・サービス収支の黒字は、減少している。
生産は、このところ弱含みとなっている。
企業収益は、引き続き大幅に増加している。また、企業の業況判断は、改善に足踏みがみられる。
雇用情勢は、依然として厳しい。完全失業率がこれまでの最高水準で推移し、求人の増加傾向にも足踏みがみられる。
3.物価と金融情勢
国内卸売物価、消費者物価は、ともに弱含んでいる。
4.海外経済
アメリカの景気は、昨年末に比べれば減速は緩やかになっているものの、株価下落などで先行きに不透明感がある。アジアでも拡大テンポに鈍化がみられる。
注)
<個人消費>
総務省「家計調査」の全世帯実質消費支出は、平成12年12月季節調整済前月比1.7%増の後、平成13年1月(速報値)は同1.4%減(前年同月比0.5%減)なった。
家計調査の全世帯実質消費支出(除く自動車、住居、仕送り金等)は、1月(速報値)は季節調整済前月比0.9%増(前年同月比1.1%減)となった。
経済産業省「商業販売統計」の小売業販売額は、1月(速報値)は季節調整済前月比2.2%増、前年同月比1.2%増と46ヶ月ぶりに前年を上回った。
チェーンストア売上高(日本チェーンストア協会調べ)は、1月は、前年同月比2.0%減(店舗調整後)(季節調整済前月比4.6%増(店舗調整前))となり、前年同月比減少幅に縮小がみられている。
大手旅行業者13社取扱金額は、1月は前年同月比で国内旅行が1.3%増、海外旅行が19.7%増となった。
家電小売金額(日本電気大型店協会調べ)は、12月前年同月比4.6%増の後、1月は同9.5%増となった。
商業販売統計の百貨店販売額は、1月(速報値)は、前年同月比2.5%減(店舗調整後)(季節調整済前月比2.7%増(店舗調整前))となった。
乗用車(含軽)新車新規登録・届出台数は、2月(速報値)は前年同月比0.2%減となった。
厚生労働省「毎月勤労統計調査」によると、平成12年11月から平成13年1月までの特別給与の合計(1月は速報値)は、前年同期比1.0%減となっている(平成9年度0.6%減、平成10年度7.8%減、平成11年度3.4%減(名目ベース))。現金給与総額は、事業所規模5人以上では、12月前年同月比0.9%減の後、1月(速報値)は同1.2%増(事業所規模30人以上では同2.8%増)となり、うちきまって支給する給与は、1月(速報値)同0.1%増(事業所規模30人以上では同0.7%増)、特別に支払われた給与は、1月(速報値)同12.9%増(事業所規模30人以上では同27.2%増)となった。実質賃金は、事業所規模5人以上では、12月前年同月比0.6%減の後、1月(速報値)は同1.2%増(事業所規模30人以上では同2.7%増)となった。
<設備投資>
10-12月期の設備投資を財務省「法人企業統計季報」(全規模全産業)でみると、前年同期比で7.1%増(うち製造業10.4%増、非製造業5.7%増)となっている。
日本銀行「企業短期経済観測調査」(12月調査)により設備投資の動向をみると、大企業の平成12年度設備投資計画は、製造業で前年度比16.4%増(9月調査比2.3%上方修正)、非製造業で同2.5%増(同1.0%上方修正)となっており、全産業では同7.6%増(同1.5%上方修正)となった。また、中小企業では製造業で同11.3%増(同5.8%上方修正)、非製造業で同7.2%減(同3.4%上方修正)となっており、全産業では同2.8%減(同4.0%上方修正)となった。
機械受注(船舶・電力除く民需)は、季節調整済前月比で12月は3.8%増(前年同月比13.5%増)の後、1月は11.8%減(同0.8%増)となり、基調は、今までは増勢が続いていたが、このところ一進一退の傾向にある。なお、1-3月期(見通し)の機械受注(船舶・電力除く民需)は、季節調整済前期比で6.4%減(前年同期比7.5%増)と見込まれている。
民間からの建設工事受注(50社、非住宅)は、12月は季節調整済前月比5.5%減(前年同月比18.5%減)の後、1月は同4.7%減(同31.5%減)となっている。
<住宅建設>
国土交通省「建築着工統計」によると、新設住宅着工総戸数(季節調整済前月比)は、11月に5.5%増となった後、12月は1.0%増、1月は4.6%減となった。また、公庫を利用した持家の着工(同)は、11月に8.4%増、12月に4.4%減、1月に24.8%減となった。さらに、共同建分譲住宅の着工(同)は、11月に3.3%増、12月に27.4%増、1月に34.1%減となった。
住宅金融公庫を利用した持家の着工(全体の新設住宅着工の約15%)の先行指標である公庫への融資申込み戸数(個人向けマイホーム新築資金)は、第2回募集(受付期間:8月7日-9月22日)に51,192戸(前年同回比42.1%減)となった後、第3回募集(受付期間:10月30日-12月22日)は、35,486戸(同4.5%減)となり、低水準にとどまっている。
<公共投資>
平成12年度の国の一般会計予算(補正後)をみると公共事業関係費は前年度比6.2%減となっている。また、同じく都道府県及び政令指定都市の9月補正後予算をみると、投資的経費は前年度比7.1%減となっている。
公共機関からの建設工事受注額(建設工事受注動態統計調査)は、前年の公共工事着工統計調査と比較して、12月は2.2%減(参考値)の後、1月は9.8%増(同)となった。同じく大手50社の受注額は、前年同月比で12月19.5%増の後、1月は2.7%減となった。また、公共工事請負金額(公共工事前払金保証統計)は、前年同月比で12月は0.7%減の後、1月は17.1%減となった。
<輸出・輸入・国際収支>
通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、前月比で12月2.2%減の後、1月は5.9%減(前年同月比4.7%減)となった。また、前期比で10-12月期は1.4%減(前年同期比3.2%増)となった。電気機器の輸出(数量ベース、季節調整値)は、前月比で1月11.1%減と2ヶ月連続での減少となった。
通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で12月2.2%増の後、1月1.3%減(前年同月比11.9%増)となった。また、前期比で10-12月期は4.0%増(前年同期比9.6%増)となった。機械機器の輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で1月2.2%減と3ヶ月連続での減少となった。
対ユーロ円相場(インターバンク17時時点)は、99年1月の発足時の134円台から2000年10月下旬の89円台までユーロ安が進み、以降、ユーロ高方向に反転している。
通関原油輸入価格は、5月の16,966円/klから12月は22,222円/klと上昇したが、1月は18,571円/klとなった。
対米ドル円相場(月中平均)は、12月の112.2円から1月は117.1円となった。
通関輸入価格(95年=100)は、12月の111.1から1月は110.0となった。
貿易・サービス収支の黒字は、1月は1,008億円(季節調整値)と前月比で4ヶ月連続の減少となった。
<生産・出荷・在庫>
1月の鉱工業生産指数(季節調整値、速報)は、輸送機械や電気機械等が減少したことから、前月比3.9%減となっている。
製造工業生産予測指数は、前月比で2月は輸送機械や一般機械等により2.7%増の後、3月は電気機械や一般機械等により1.4%減となっている。この見込み伸び率どおりに推移したとすれば1-3月期の生産は前期比1.7%減(速報値による試算)になる見込みである。
1月の鉱工業生産者製品在庫指数(季節調整値、速報)は、前月比0.6%増となっている。また生産財の在庫指数は、10月以降4ヶ月連続で増加している。
12月の第3次産業活動指数(季節調整値、速報)は、サービス業や卸売・小売業、飲食店等が増加した結果、前月比1.2%増となった。また10-12月期では前期比0.3%増となった。
<企業>
10-12月期の経常利益を財務省「法人企業統計季報」でみると、全規模全産業で前年同期比31.9%増となっている。大中堅企業では、製造業が27.6%増、非製造業が19.1%増となっている。中小企業では、製造業が68.5%増、非製造業は37.8%増となっている。
今回の収益改善の特徴をみると、企業の人件費抑制等のリストラ努力が挙げられる。業種別にみると、製造業では、変動費は収益の圧迫要因であるが、売上高が増加したことの寄与が大きく、特に平成12年4-6月期以降は人件費抑制も増益に寄与している。一方、非製造業では、平成12年1-3月期までは主に変動費を減少させることで収益を増加させてきていたが、4-6月期以降は人件費抑制の寄与が大きくなっている。
また、中小企業の動向を中小企業金融公庫「中小企業動向調査」(12月調査、季節調整値)でみると、売上げD.I.(「増加」-「減少」)は、10-12月期は「減少」超幅が縮小し、純益率D.I.(「上昇」-「低下」)は、「低下」超幅が縮小した。業況判断D.I.(「好転」-「悪化」)は、10-12月期は「悪化」超幅が縮小した。
<倒産>
東京商工リサーチ「倒産月報」によると、2月の企業倒産件数(負債額1,000万円以上)は1,460件(前年同月比2.3%増)、負債額は11,340億円(同4.9%減)となっている。なお、帝国データバンク「全国企業倒産集計」によると、1月の企業倒産件数は1,358件(同5.8%減)、負債額は9,696億円(同60.6%増)となっている。
<雇用情勢>
総務省「労働力調査」の1月の完全失業者数(季節調整値)は前月差3万人減の329万人となった。
厚生労働省「職業安定業務統計」の有効求人倍率(季節調整値)は、12月0.66倍の後、1月0.65倍となった。新規求人倍率(季節調整値)は12月1.15倍の後、1月1.11倍となった。
毎月勤労統計調査によると、所定外労働時間(製造業)は、事業所規模5人以上では12月季節調整済前月比0.7%減(前年同月比8.0%増)の後、1月は同1.7%減(同4.2%増)(速報値)となった。
厚生労働省「労働経済動向調査」によると、雇用調整実施事業所割合(調査産業計)は、7-9月期の20%から10-12月期は21%となり、7四半期ぶりに低下傾向に歯止めがかかった。
<物価>
日本銀行「卸売物価指数」の2月の国内卸売物価は前月比保合い(前年同月比0.4%下落)、輸出物価(円ベース)は前月比0.9%の下落(前年同月比0.2%上昇)、輸入物価(円ベース)は前月比1.8%の下落(前年同月比4.4%上昇)となった。
日本銀行「企業向けサービス価格指数」の1月の企業向けサービス価格は前年同月比0.3%の下落(前月比0.4%下落)となった。
総務省「消費者物価指数(全国)」の1月の生鮮食品を除く総合は、前年同月比0.5%の下落(前月比0.5%下落、季節調整済前月比0.1%上昇)となった。「消費者物価指数(東京都区部、中旬速報値)」の2月の生鮮食品を除く総合は、前年同月比1.1%の下落(前月比0.4%下落、季節調整済前月比0.3%下落)となった。
<金融>
無担保コールオーバーナイトレートは、2月は0.23%から0.28%のレンジで推移した後、3月上旬は0.14%から0.15%のレンジまで低下した。3ヶ月物ユーロ円TIBORは、2月は0.50%から0.37%に低下した後、3月上旬には0.25%に低下した。10年物国債流通利回りは、2月は1.4%台後半から1.3%台前半に低下した後、1.4%台前半まで上昇したが、3月上旬には1.1%台前半まで再度低下した。
東証株価指数(TOPIX)は、1月末の1,300ポイントから、2月中旬には一時1,237ポイントまで下落し、下旬には1,264ポイントまで上昇したものの、3月上旬には、一時1,193ポイントまで下落した。日経平均株価は、1月末の13,843円から、2月中旬には13,000円台前半で推移し、3月上旬には一時12,261円まで下落した。
対米ドル円相場はインターバンク直物中心相場、対ユーロ円相場はインターバンク17時時点の相場。
広義流動性は、2月(速報)は同3.3%増となった。金融機関(全国銀行)の貸出(月中平均残高)は、2月(速報)は前年同月比3.6%減(貸出債権流動化・償却要因等調整後1.6%減)となった。2月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債が200億円となった。また、国内公募事業債の起債実績は、7,607億円(うち銀行起債分ゼロ)となった。「企業短期経済観測調査」(12月調査)によると、資金繰り判断は、横ばいとなっている。金融機関の貸出態度は、横ばいとなっており、「緩い」超が続いている。国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、1月は前月比で短期は0.013%ポイント低下し、長期は0.012%ポイント低下したことから、総合では0.020%ポイント低下し1.886%となった。