緊急経済対策の進捗状況と今後の予定

経済企画庁
平成11年4月23日

緊急経済対策(抄) 進捗状況と今後の予定
  1. 金融システムの安定化・信用収縮対策
    1. 金融システムの安定化対策
 
  • 金融システムは、経済全体にとっていわば動脈と言うべき役割を果たしており、日本経済の再生のためにまず成し遂げるべきことは金融システムの再生である。
  • 大手行については、11年3月末までに不良債権問題の処理は基本的に終了した。今後とも、早期健全化法や金融再生法を効果的に運用することなどにより、預金者が完全に保護される13年3月末までに、揺らぐことのない強い競争力を持つ金融システムを再構築することとしている。
(1) 資本増強制度の実効ある運用
  • 金融機関は、抜本的な業務再構築に取り組みつつ資本増強を図ることによって、市場からの信認を高め、経営基盤を強化させることが強く望まれる。
  • 3月4日に大手行など15行が7兆4,592億円の資本増強を申請し、3月12日、金融再生委員会により承認された。これを受け、3月末に自力調達を併せ9兆6,100億円程度の資本増強が行われた。
  • 金融システム安定化対策の進展を反映して、金融システムに対する信頼が回復している。
  • 資本増強を申請する金融機関が実施すべき事項を定める承認基準等に基づき、資本増強制度の実効ある運用を図る。
  • 左記承認基準は11月に告示した。
(2) 検査監督行政の効果的な運用
  • 金融監督庁の事務ガイドラインを改正し、全ての金融機関に対し、① 信用供与の円滑化と資本増強、② 経営の効率化、③ 審査体制の強化を促すこととする。
  • 10年11月に事務ガイドラインを改正した。
(3) 金融機関の主体的な取り組み
  • 金融機関が速やかに体制整備を行い、資本増強に取り組むよう促していく。
  • 順次各金融機関の合併、子会社化、資本・業務提携など、実態に応じた対応が進んでいるところであり、金融機関の収益性や財務内容の改善が図られている。
  • 各金融機関は、自らの社会性・公共性を十分に認識しつつ、戦略的な業務再構築やリストラに主体的に取り組み、資本の充実等に関するそれぞれの方針に応じ、必要があれば、早急に臨時株主総会を開催することも含め、資本増強制度を効果的かつ十分に活用することが期待される。
  • 遊休資産の売却、海外拠点の削減・撤退、人員と人件費の削減が各銀行で発表された。資本増強を申請した15行の経営健全化計画では今後4年間で13.9%の人員削減と11.9%の人件費削減を行うこととなっている。横並び的な業務の再構築ではなく、明確かつ特色ある戦略による収益性の向上に加え、組織の抜本的改革が図られている。
  • 11年3月4日に資本増強を正式に申請した銀行について、金融再生委員会は同月12日までに審査・承認を終え、資本増強を行った。
(4) 情報開示の改善
  • 証券取引法上の情報開示において、連結財務諸表作成に当たっての子会社及び関連会社の範囲を拡大し、実質的な支配力基準・影響力基準を導入するとともに、税効果会計をこれまでの連結財務諸表に加えて個別財務諸表においても導入する。
  • 10年11月24日及び12月21日に証券取引法に基づく大蔵省令を改正して、連結財務諸表の子会社及び関連会社の範囲を拡大し、税効果会計を個別財務諸表にも導入することとした。
  • 金融機関については、早期に内外の信認を高めるために、1年前倒しで来年3月期より上記基準を実施し、米国証券取引委員会(SEC)基準と同様の基準によるリスク管理債権額についても実質的な連結基準により開示する。
  • 10年12月に銀行法に基づく総理府令・大蔵省令等を改正して、実質支配力基準等を一般企業より1年前倒しして本年3月期から導入するとともに、米国証券取引委員会(SEC)基準と同様の基準によるリスク管理債権額についても実質的な連結基準により開示することとした。
  • 金融再生緊急措置法に基づき、主要行については来年3月期から資産査定の開示を義務付けることとしており、債務者分類を基礎とした更に踏み込んだ情報開示が行われる。
  • 今後、各行において、法律に基づく適切な開示が行われる予定。
(5) 金融機関の財務状況等の把握の強化
  • 検査マニュアルの整備・公表や金融機関の財務状況等の継続的把握のためのコンピュータ・システムの開発、海外当局との人材交流等を通じて検査・監督手法の一層の充実を図る。
  • 4月8日に金融検査マニュアル検討会「最終とりまとめ」を公表した。今後、本「最終とりまとめ」を踏まえ、検査官宛の内部通達を策定・発出し、来検査事務年度(11年7月以降)より実施する検査から適用する予定である。
  • 民間からの幅広い人材確保に努めつつ、金融機関の財務状況等の把握のための体制整備を図る。
  • コンピュータシステムについては現在、開発作業中。
  • 海外当局との連携強化については、英国や米国の関係機関と人材交流を活発化している。
  • 金融監督庁に、内部モデルやデリバティブ取引に係る検査等を行うため昨年12月以降非常勤職員を活用している。また、11年度において、金融機関の財務状況等の把握のため金融監督庁において検査官87名、モニタリング担当17名を含む135名の増員、農林水産省において検査官13名を含む16名の増員等の予算措置を行った。
  1. 信用収縮対策等
    • (1) 信用収縮対策
  • 10年11月頃と比較して、企業の貸出態度に対する懸念は薄らいできており、また、信用保証制度の拡充の効果などから、企業倒産は大幅に減少した。ただし、中小企業については、資金繰りに対する懸念も若干改善がみられるものの、依然として厳しい状態が続いている。
  • 「中小企業等貸し渋り対策大綱」に盛り込まれた信用保証協会及び中小企業信用保険公庫による信用保証制度の拡充等の施策を強力に推進する。
  • 特別保証制度20兆円の枠のうち、既に、3月末までに14兆4千億円の保証承諾を行った。今後,必要かつ十分な額の保証枠の追加を行うこととするが、その具体的な規模等については、中小企業者の資金需要の動向を、引き続き注視しながら決定する。
  • 日本開発銀行等による中堅企業等向け貸し渋り対策の抜本的な強化を行うこととする(社債の大量償還に対応するための融資機能等の活用、長期運転資金の融資の本格化等)。
  • 10年12月に臨時国会で開銀法等が改正され、長期運転資金・社債償還資金融資が導入されるなど中堅企業等向けの貸し渋り対策は抜本的に強化されている。
  • 10年12月から11年3月の開銀の融資実績は前年同期比72.1%増と高い伸びを示している。
  • 中堅企業向け対策として、信用保証協会及び中小企業信用保険公庫による新たな信用保証制度の導入を行うこととする。
  • 先の臨時国会で「破綻金融機関等の融資先である中堅事業者に係る信用保険の特例に関する臨時措置法」が成立し、信用保証協会および中小企業信用保険公庫による新たな信用保証制度が導入された。
  • 北海道東北開発公庫における中小企業向け既往債権の金利の減免,信用保証協会の保証の活用を新たに行う。
  • 厳しい経営状況に置かれている中小企業を対象に、北東公庫の既往債権のうち5%を超えるものについて金利を軽減する措置を2月23日より実施(適用期間は10年12月12日から11年12月11日まで)した。
  • 中小企業信用保険法施行令を改正(11月26日施行)したことにより、北東公庫の融資について信用保証協会の保証を受けられるようになった。
(2) 資金供給ルートの拡充・多様化
  • 特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律(SPC法)については、その施行状況等を踏まえ、一層の制度整備の検討を行うとともに、本年12月から導入予定の会社型投資信託の投資対象について、その導入後の状況等を踏まえ、検討を行うこととする。
  • SPC法施行(9月)後、3月末までに6件のSPCが登録された。
  • 登録されたSPCには、不動産関連のもの、指名金銭債権関連のものがそれぞれあり、一定の成果がみられているが、このような施行状況等を踏まえ、一層の制度整備の検討を行う。
  • 会社型投資信託制度は導入されたばかりであり、実績はまだない。
  • 現在、金融審議会において、集団投資スキームに関する全般的な検討がなされている。
  • 金融業者の貸付業務のための社債の発行等に関する法律案の早期成立が求められる。
  • 4月14日成立し、4月中に施行される予定である。
  1. 日本銀行による金融政策の適切かつ機動的な運営
  • 金融システム安定化を進めていく過程で、信用収縮が生じる可能性があることから、日本銀行においては、これらの措置の実施や潤沢な資金供給等、金融政策を引き続き適切かつ機動的に運営するよう要請する。
  • 日本銀行は、10年11月13日の金融政策決定会合において、企業金融の円滑化に資することを狙いとして、(1) CPオペの積極的活用、(2) 企業金融支援のための臨時貸出制度の創設、(3) 社債等を担保とするオペレーションの導入を決定し、これらのオペを既に実施している。
       日本銀行は、11年2月12日の金融政策決定会合において、「より潤沢な資金供給を行い、無担保コール・レート(オーバーナイト物)をできるだけ低めに推移するように促す。その際、短期金融市場に混乱の生じないよう、その機能に十分配意しつつ、当初0.15%前後を目指し、その後市場の状況を踏まえながら、徐々に一層の低下を促す。」こととした。その後、このスタンスは維持されており、無担保コール・レート(オーバーナイト物)の金利が低下し、最近(4月上旬)ではゼロ近傍で推移している。
       また、ターム物金利(ユーロ円・TIBOR・3カ月物、3カ月物TBレート)の金利や長期金利も相当程度低下し、低水準で推移している。さらに、ジャパン・プレミアムも、ほぼゼロとなった。
       こうした状況を踏まえ、日本銀行においては、現在の金融政策の効果を十分見極めるとともに、自律的な経済回復が明らかになるまで、適切な金融調節の手法により潤沢な資金供給を行い、引き続き日本経済の回復に貢献する金融政策を行っていくことが求められる。
  1. 21世紀型社会の構築に資する景気回復策
    1. 21世紀先導プロジェクトの実施
 
  • 21世紀型社会の構築のため、未来を先取りするプロジェクトに積極的に取り組む。
  • ① 先端電子立国を形成するための2つのプロジェクト(3次補正:2,800億円程度、11年度:1兆2,300億円程度)、② 未来都市の交通と生活を先取りする3つのプロジェクト(10年度第3次補正:6,800億円程度、11年度:1兆3,100億円程度)、③ 少子高齢化対応、ダイオキシン対応を含む安全・安心・ゆとりの暮らしを創る2つのプロジェクト(10年度第3次補正:1兆100億円程度、11年度:8兆9,000億円程度)、④ 高度技術と流動性のある安定雇用社会の構築のための4つのプロジェクト(10年度第3次補正:3,100億円程度、11年度:1兆1,900億円程度)について、10年度第3次補正予算において2兆500億円程度(緊急経済対策における社会資本整備8.1兆円程度に含まれている)、11年度予算で12兆6,200億円程度措置した。
  • また、情報通信など多くの省庁に関連するプロジェクトを推進するため、バーチャル・エージェンシーも活用して対応している。
  1. 生活空間活性化策
 
  • 国民が、多様化した価値観をそれぞれに活かして、ゆとりとうるおいのある行動ができるよう生活空間の倍増に向けて生活空間倍増戦略プランを策定する。また、各地域自らが策定する地域戦略プランに対して、国としても最大限の支援を行う。
  • 11年1月29日に「生活空間倍増戦略プラン」を閣議決定した。10年度第3次補正予算及び11年度予算において、事業規模で概ね30.2兆円(国費14.3兆円)を措置した。また、地域戦略プランについては、11年度予算で、総額2,050億円の推進費を計上している。なお、同プランは、5月末までに、各地域から国に提出される予定となっている。
  • 整理回収機構や債権管理回収業法などの新しい不良債権処理の市場環境の基盤も活用する。
  • 整理回収機構は4月1日より発足。
  • 債権管理回収業法が2月1日に施行された後、10数社からの許可申請があり、4月中旬までに4社の許可業者が誕生した。
  • 経済波及効果の大きい住宅投資に関して、住宅市場の活性化と良質な住宅ストック形成の支援を図る。
  • 住宅投資を促進するため、11年度税制改正において、住宅ローン控除の実施など住宅税制の拡充を行った。
  • 住宅金融公庫において、基準金利等の適用される融資額を大幅に増額する生活空間倍増緊急融資等を平成10年11月より実施。平成11年度も引続き継続して実施する。
  • 住宅金融公庫の平成10年度第4回融資の基準金利が2.2%とし、第4回融資受付期間も3月26日まで延長した。
  • 住宅金融公庫の平成11年度第1回募集に適用される金利について、金利の引き上げ幅を大幅に圧縮し、募集開始日から、現行2.2%の基準金利を2.4%に改めることとした。
  • この結果、首都圏の3月単月のマンション発売戸数は過去最高となった。
  • 住宅金融公庫において、基準金利等の適用される融資額を大幅に増額する生活空間倍増緊急融資等を平成10年11月より実施。平成11年度も引続き継続して実施する。
  • 年金福祉事業団の住宅融資に関して、金利の引き上げ幅の大幅な圧縮、融資額の大幅な増額等、住宅金融公庫と同様の措置を講じるとともに、融資が利用しやすくなるよう使い勝手の良い金利(従来の35年型金利に加え、25年型金利及び2段階金利)を設定した。
  1. 産業再生・雇用対策
(1) 産業再生計画の策定(中小企業関連施策を含む)
  • 新事業の創出による良質な雇用の確保と生産性向上のための投資拡大に重点を置いて、「産業再生計画」を策定し、我が国産業の再生に全力を傾注する。
  • 11年1月20日同計画を閣議決定した。関連する予算としては、10年度第3次補正予算及び11年度予算において概ね10.2兆円を措置した。
  • また、生産性の向上による産業の競争力強化を目指し、官民が協力して、それぞれの役割分担に応じた総合的な検討を行うため、3月から、産業競争力会議を開催しているところである。
(2) 雇用対策
① 「雇用活性化総合プラン」を実施
  • 早急な雇用の創出及びその安定を目指し、1兆円程度の雇用対策を行うこととしており、その中核となる「雇用活性化総合プラン」に盛り込まれた施策を11年1月から実施している。目下、雇用情勢は依然として厳しい状況が続いているが、雇用創出に資する各般の施策とともに、本プランを効果的に推進することにより、雇用の安定を図っていく。
  • 中小企業における雇用創出、環境整備のための支援事業の創設。
  • 良好な雇用機会の創出を図るため、中小企業労働力確保法を改正し、11年1月1日から、創業、異業種進出(新分野進出等)を行うなど活力ある中小企業者が行う人材の確保・育成、魅力ある職場づくりの活動の支援を強化。1月から3月末までの申請件数は約1,700件(うち改正分約1,400件)。この支援により、約5万8千人の雇用創出効果が見込まれる(事業規模約400億円)。
  • 失業給付期間の訓練中の延長措置の拡充。
  • 民間教育訓練機関等委託先の拡大等による訓練定員の拡充等(別掲)。
  • 「緊急雇用開発プログラム」の実施期間延長。
  • 11年9月末まで延長。
    • 雇用調整助成金について、助成率の引上げ等の措置を実施するとともに、昨年12月から、本年4月の間に85業種を新規指定。この結果、指定業種は286業種となった。また、同措置を実施するなどにより、24万人の雇用安定効果が見込まれる(事業規模約700億円)。
    • 12月18日及び3月12日に関係政令等を改正し、緊急雇用安定地域等に9地域を指定。
  • 中高年労働者の失業なき労働移動・再就職支援対策の拡充。
  • 中高年労働者の失業なき労働移動のための、「中高年労働移動支援特別助成金」を11年1月1日から実施。これにより、約5万2千人の雇用安定効果が見込まれる(事業規模約300億円)。
  • 中高年非自発的離職者等を対象として、早期の再就職を図るための体系的な支援を行う「中高年求職者就職支援プロジェクト」も11年1月1日から実施(事業規模約500億円)。
  • 特定求職者雇用開発助成金の年齢要件の引き下げ(11年9月末まで 55歳以上→45歳以上)を実施し、これにより、45歳以上55歳未満で新たに対象となる者は、10年6月から11年2月までで、約10万人。また、同措置を実施するなどにより、33万人の雇用安定効果が見込まれる(事業規模約1,400億円)。
  • 民間教育訓練機関の活用も含めたホワイトカラー離転職者向け訓練の拡大など職業能力開発対策の拡充等
  • 労働者の主体的な能力開発を支援するため、「教育訓練給付制度」を10年12月1日より実施。11年度には、約33万人を対象とし、予算規模約273億円で実施する予定。
  • ホワイトカラー離転職者の再就職促進のため、生涯職業能力開発促進センター(アビリティガーデン)方式の訓練を11年4月時点で全国19ヵ所の職業能力開発促進センター等において実施中。
  • 民間教育訓練機関等に対する委託訓練については、11年3月末時点で約3.8万人の訓練委託先を確保。
  • 職業能力開発促進センターで夜間コースを導入。今後も継続して実施。
  • 雇用情勢に臨機に対応して、中高年の非自発的失業者に必要な雇用機会を提供できるよう「緊急雇用創出特別基金」を創設。
  • 雇用情勢の更なる悪化へのセイフティネットとして緊急雇用創出特別基金を創設(事業規模600億円)。11年1月30日から3か月間、沖縄県において発動。
  • その他
  • 「シルバー就業機会開発プロジェクト」により、3月末までに約11万人分の臨時的・短期的就業機会を確保。
  • 学生職業センター等における相談、紹介、就職面接会の開催(10年度で計227回開催。参加学生数約10万人)など、学卒未就職者等若年者に対する就職支援を実施。
  • 「産業雇用情報ネットワーク」の構築による経済団体と連携した求人情報等のネットワーク化を本年4月以降実施し、求職者が多様な求人情報産業雇用情報に迅速・容易にアクセスできるよう各都道府県の県庁所在地等に本年4月以降「ハローワーク情報プラザ」を設置。
  • インターネットを活用した求人情報(東京23区分)等の提供を本年3月29日より試行的に実施。
  • 公共職業安定所における土曜日、平日夜間開庁を本年2月より実施。(新宿所等3公共職業安定所)
  • 公共職業安定所に求職者自己検索端末を導入。
② 労働力需給調整機能の強化
  • 労働者派遣法の改正
  • 職業安定法の見直し等
  • 第143国会に改正案を提出。(継続審議中)
  • 第145国会に改正案を提出。(審議中)
③ その他
  • 労働移動に対応したポータビリティの確保を含め、確定拠出型年金について、公的年金制度改正に向けての全体的な検討作業とともに、その導入を検討する。
  • 11年1月19日、大蔵省、厚生省、通商産業省及び労働省から構成される確定拠出型年金制度準備会議を設置し、確定拠出型年金について、12年度からの導入を目指し、年金制度の一環として制度の具体化を図るための検討を進めている。
  1. 社会資本の重点的な整備
    • 事業規模8.1兆円程度(公共事業5.7兆円程度、施設費等1.8兆円程度、災害復旧0.6兆円程度)の社会資本の整備を進める。
  • 10年度第3次補正予算(一般会計)において、社会資本整備費3兆9,601億円を計上した。
  • また、11年度当初予算(一般会計)において、公共事業関係費について、前年度当初予算に比べ5%の伸びを確保(公共事業等予備費も含めて考えれば10%超の伸び)した。
  • 10年度第3次補正予算及び11年度予算を15カ月予算として切れ目ない執行を図っている。
  • 11年度当初予算の早期成立(3月17日)を踏まえ、11年度上半期における公共事業等の契約済額が、全体として過去最高の前倒しを図った10年度上半期末実績(約13.6兆円)と比較して10%を上回る伸びとなることを目指して、その積極的な執行を図ること等を閣議決定した(3月23日)。
  • 10年度第3次補正予算による社会資本整備の追加については、地方においても、12月補正予算で対応する自治体がかなりの数に上るなど、早期の予算措置が図られ、全ての自治体で予算対応済である(都道府県における予算計上額は2兆600億円)
  • なお、政府より、地方公共団体に対しても、11年度上半期における公共事業等の積極的な施行を図るよう要請した(3月23日)ところである。11年度上半期における公共事業等の施行については、今後、地方公共団体における施行を含めて進捗状況を調査する。これらにより、実質的な推進を促すこととする。
  • 「公共工事着工統計」、「公共事業前払金保証統計」などの統計によれば、公共投資については、補正予算などの効果により、堅調な動きとなっている。
  • なお、国の10年度2月末の公共事業等について特別調査を行ったところ、10年度第1次補正予算分及び10年度第3次補正予算分を含めた全体としての契約済額は18兆5,749億円、契約率は77.6%となっており、そのうち10年度第3次補正予算分の契約済額は7,198億円、契約率は19.3%である。
  • 北海道など特に厳しい経済状況にある地域や不況業種の実情に配慮し、地域経済の活性化にも資する即効性の高い社会資本整備の重点的な傾斜配分を行う。
  • 北海道開発事業費について、10年度第3次補正予算(一般会計)において2,407億円を、また、11年度予算(一般会計)において9,300億円を計上するなど地域経済へ可能な限り配慮するとともに、15ヶ月予算として切れ目ない執行を図っている。
  • 民間資金を活用する観点から、PFI(民間の技術力、経営力及び資金力を活用した新たな手法による社会資本整備)を推進するため、所要の措置を講ずる。
  • 10年度補正予算及び11年度予算を用いて、政府として我が国のPFIの考え方、実施プロセス、課題への対応等について、コンセンサスの形成、普及、啓発に努めるとともに、国・地方公共団体等におけるPFI事業の早期形成・実施の支援に係る調査等を行うとともに、「経済構造の変革と創造のための行動計画(第2回フォローアップ)」(11年1月29日閣議決定)において盛り込まれた、以下の内容の着実な実施に努めているところ。
    ① 第142通常国会に提出された「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律案(以下「PFI推進法案」)の早期成立が重要であるとの認識の下、PFIに係る所要の推進体制を整備する。
    ② 「PFI推進法案」の成立後、速やかに、PFI事業の実施のための「基本方針」を策定する。また、関係省庁は、可能な限りの多くの公共施設等について具体的事業実施のための指針を策定する。
    ③ PFI構想をより具体化するため、公共施設等の整備及び管理に関して、民間事業者に行わせることが適切なものについては、できる限りその実施を民間事業者にゆだねるとの基本理念の下、民間事業者の意向も踏まえ、各々の事業に適した官民の役割分担・責任分担の在り方、公共施設等の設置・管理に関する法律その他関係法について、個別具体的に検討を行う。
    ④ PFI事業の早期実現を図るため、PFI事業者に対し、必要な財政上及び金融上の支援措置を講ずる。
    ⑤ PFI事業における行政財産の使用許可について、許可期限等をPFI事業に適したものとするための措置を講ずる。
    ⑥ PFI事業に対する補助金については、現行の補助対象事業における国と地方の負担割合も踏まえつつ、財政資金の効率的使用や各々の事業の公共性・公益性の観点から、適切な財政措置を講ずる。
    ⑦ 地方公共団体が実施方針を定めるPFI事業について、地方債等による適切な地方財政措置を検討する。
    ⑧ PFI事業において有効な資金調達法であるプロジェクト・ファイナンスの本格的導入に向け、担保等に係る現行法制の見直しを含め、所要の制度整備を図る。
  • 総合経済対策(10年4月24日経済対策閣僚会議決定)において、政府系金融機関に創設されたプロジェクト・ファイナンスの考え方に基づく出融資制度について、新たな施設の追加、融資比率の弾力的対応の延長等の措置を講じた。
  • また、10年度においては、シンポジウム・セミナーを開催(11年3月から全国13ヵ所)するなどの普及・啓発活動を行うとともに、関係省庁において、所管分野についてPFI事業の早期形成のための調査等を実施(検討例:廃棄物処理・リサイクル・発電施設、観光施設、物流基盤施設、商業基盤施設、移動通信実験用サーキット施設、有料道路、公営住宅、公園、街路、美術館、スポーツ・レクリエーション施設、公共荷捌き施設、庁舎、等)。11年度においても引き続きPFIの普及・啓発、具体的事業の早期形成のための調査等を実施することとしている。
  1. 恒久的な減税等
    • 個人所得課税について、平成11年から最高税率の50%への引下げ等による4兆円規模の恒久的な減税を行うこととする。
    • 法人課税について、平成11年度から実効税率の40%程度への引下げを行うこととする。
    • 住宅建設・民間設備投資等の政策税制について具体案を得ることとする。
  • 恒久的な減税をはじめ、国・地方を合わせ、平年度9兆円を超える減税を行うこと(個人所得課税減税[最高税率の引下げ、定率減税、扶養控除額の加算]、法人課税減税[基本税率の引下げに伴う実効税率の46.36%から40.87%への引下げ、中小法人等に対する軽減税率の引下げ等]、住宅ローン控除の実施など住宅税制の拡充、情報通信機器の即時償却制度の創設等)を内容とする11年度税制改正を4月から実施している。
    (注)個人所得課税の最高税率の引下げ
    所得税50%→37%、個人住民税15%→13%
    法人課税の基本税率の引下げ
    法人税34.5%→30%、法人事業税11%→9.6%
  • 一定年齢以下の児童を持つ家庭及び老齢福祉年金等の受給者等に、事業規模0.7兆円程度の「地域振興券」を交付する。
  • 10年度第3次補正予算において、7,698億円を計上した。交付実施市(区)町村においては、3月までに交付実施のための補正予算を計上した。地域振興券の交付は、1月29日にはじまり、4月1日までの間に全市(区)町村で交付が開始された。
  • 今後、地域振興券の利用実態を調査し、その効果を分析することとする。
  1. 財政構造改革法の凍結
  • 10年12月、財政構造改革法の停止に関する法律が成立した。
  1. 世界経済リスクへの対応
 世界経済・アジア経済にとって、日本経済の再生は、引き続き重要である。また、世界経済リスクへの対応に際しての我が国の役割の大きさを踏まえ、密接な相互依存関係にあるアジアの支援策等(1兆円程度)を実施しており、既にコミットした新宮沢構想の具体策等のアジアの通貨・経済の安定のための取り組みを引き続き推進していく。
  1. アジア諸国の通貨危機等への対応等
  • 日本輸出入銀行の融資や円借款の供与等を行う。
  • 輸銀融資については、10年度第3次補正予算で財政投融資5,700億円を措置、新宮澤構想等一連のアジア支援策に順次充当された。
  • 円借款については、10年度第3次補正予算において、海外経済協力基金の事業費として一般会計270億円、財政投融資730億円をそれぞれ措置し、新宮澤構想に順次充当された。
  • 輸銀融資、円借款のいずれについても、新宮澤構想に基づき、アジア諸国の要請に応じ、韓国、マレイシア、フィリピン、タイ、インドネシアに対する支援を表明、着実に具体化が進んでおり、アジア諸国の経済回復に貢献している。
  • アジア通貨危機支援資金を設立し利子補給及び保証等を行う。
  • アジア通貨危機支援資金については、10年度第3次補正予算で、利子補給等分として75億円、保証分として3,600億円(拠出国債)、それぞれ措置。今年3月にアジア開発銀行に拠出、創設された。
  1. アジアの現地企業等に対する支援
  • 本年12月1日から中小企業金融公庫・国民金融公庫による本邦親企業経由の現地子会社向け融資制度を創設、商工組合中央金庫も、準じた措置。
  • 中小企業金融公庫等による本邦親企業経由の現地子会社向け融資制度については、昨年12月1日に創設後、貸付が実行され、アジア等へ進出している我が国中小企業の現地子会社の資金繰り円滑化に貢献している。
  • 日本輸出入銀行、海外経済協力基金、貿易保険、無償資金協力等のアジア諸国やアジアの現地日系企業等に対する資金支援の充実。
  • 輸銀融資については、10年度第3次補正予算で財政投融資5,700億円を措置し、その一部がアジアの現地日系企業支援等に順次充当された。
  • 貿易保険については、アジア諸国への引受を継続する等支援策を着実に実施している。
  • 無償資金協力については、第3次補正予算で約111億円措置、実施している。無償資金協力及び貿易保険については、アジア諸国の要請に応じ、順次供与しており、我が国事業参加機会の拡大に貢献している。
  • 特別の円借款の創設について早急に検討する。
  • 昨年12月、我が国企業の事業参加機会の拡大を図りつつ、アジア諸国等における経済構造改革等に資するインフラ整備等(物流の効率化等)を支援することを目的として、3年間で6,000億円を上限とする譲許的な条件(当面、金利1%、償還期間40年(うち据置期間10年))の下での特別円借款を創設した。現在、関係各国に対し本特別円借款の説明を行っており、また、一部の国については既に具体的な案件の検討を開始している。