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緊急経済対策の実施状況と今後の予定- 我が国経済の再生を目指して -

平成11年4月23日
経済企画庁

  • 緊急経済対策の総括的評価
    1. 緊急経済対策の効果
      緊急経済対策策定当時の我が国経済は、金融システムに対する信頼の低下や雇用不安などを背景として、いわば「不況の環」とも呼ぶべき厳しい状況の中にあった。
      小渕内閣は、発足以来、思い切った施策を果断に決定し、実行に移してきたところであるが、こうした状況から脱却するため、緊急経済対策を10年11月16日に策定し、精力的な国会審議を経て、12月11日には早くも10年度第3次補正予算が成立した。緊急経済対策の総事業規模は17兆円を超えるものであり、減税全体の規模を含めれば27兆円規模である。この過去最大の経済対策により、我が国経済はデフレスパイラルに陥る危機を脱した。
      また、緊急経済対策策定当時に懸念されていた金融システムリスクについても、破綻と認定された金融機関は速やかに国の管理の下に置かれる仕組みが機能し、定着した。今や、国民、市場は、我が国の金融システムを信頼し、それが、為替市場、金融・資本市場の安定に反映されている。我が国の大胆かつ迅速な経済運営は、我が国のみならず、世界の金融市場の安定化に貢献した。
      加えて、我が国は、アジア各国の通貨・経済の安定に積極的に貢献する等アジア支援策を実施してきており、これらの施策は、アジア諸国から高く評価されている。また、アジアの一部の国では経済回復の兆しが見られる。
    2. 経済の現状認識と経済再生の道筋
      11年度は、3年連続のマイナス成長を回避し、回復基盤を固める年であり、12年度に向けて我が国経済を回復軌道に乗せていくためにも、正念場の年である。
      最近の我が国経済は、民需が低調なため依然として極めて厳しい状況にあるが、金融システム安定化・信用収縮対策、公共投資の拡大、恒久的な減税や地域振興券の交付、各般の住宅対策による住宅投資の増加、金融緩和策等、各種の政策効果により、企業、家計のマインドがやや改善し、景気は下げ止まりつつある。また、アメリカ経済も、先行きにやや不透明感が見られるものの、景気拡大を続けていることは、我が国の景気回復にとって明るい材料である。
      しかし、マイナス成長を回避し、経済の回復基盤を固めるという視点からは、1 雇用・賃金の調整が続いて、景気の遅行指標である失業率も10年11月の4.4%から11年2月の4.6%へと上昇しており、また、中長期的な構造改革の必要性の中で、企業のリストラが引き続き行われていく可能性があって、家計の消費回復の妨げになりかねないこと、2 期待成長率が低下している中で、資本ストックの調整圧力が一層強まっていること等の懸念も存在する。
    3. 今後の課題と政策運営
      当面は民間需要の緩やかな回復のために、15ヵ月予算を含む緊急経済対策により、公的需要を中心として景気の下支えを図りながら、金融政策面でも適切な金融調節の手法により潤沢な資金供給を行い、引き続き日本経済の回復に貢献する金融政策を行うなど、機動的弾力的な経済運営を行う。
      さらに、景気回復の動きを中長期的な安定成長につなげるため、21世紀の多様な知恵の時代にふさわしい社会の構築に向けた構造改革を推進していく。このため、現行の経済計画に代わるものとして、「新たなる時代の姿と政策方針」を、今年の夏頃を目処に策定することとする。
      また、戦後の復興、石油危機、円高等幾多の困難をも乗り越えてきた実績を有する我が国産業界は、グローバル・マーケットでの生き残りをかけて、生産性の向上による競争力強化を図ることが重要となっている。こうした中、政府としては、産業競争力会議を開催し、その自助努力を支援していくこととしている。
      このような認識を踏まえ、当面は、雇用対策等セーフティーネットの充実と公共事業等の積極的な施行による経済の下支え、中長期的には、産業競争力強化や、少子高齢化、ダイオキシン問題等21世紀の諸課題への対応などを重視しつつ、今般、緊急経済対策のフォローアップを、以下のとおり行った。
      今後とも、政府としては、問題があればこれを克服し、我が国経済の再生を図っていく決意である。
  • 緊急経済対策の項目別評価
    1. 金融システムの安定化・信用収縮対策
      • (1) 金融システムの安定化対策
        • 1 3月の早期健全化法の枠組みを利用した資本増強の実施など金融システム安定化対策の進展を反映して、金融システムに対する信頼が回復している。
        • 2 資本増強を申請した15行が提出した経営健全化計画では、横並び的な業務の再構築ではなく、人員削減、人件費削減や、明確かつ特色ある戦略による収益性の向上に加え、組織の抜本的改革が図られている。また、金融再編については、合併、子会社化、資本・業務提携など、実態に応じた対応が進んでいるところであり、金融機関の収益性や財務内容の改善が図られている。
        • 3 大手行については、11年3月末までに不良債権問題の処理は基本的に終了した。今後とも、早期健全化法や金融再生法を効果的に運用することなどにより、預金者が完全に保護される13年3月末までに、揺らぐことのない強い競争力を持つ金融システムを再構築することとしている。
        • 4 また、金融機関に対し実効性ある監督を行っていくため、4月8日に金融検査マニュアル検討会「最終とりまとめ」を公表したところであり、11年7月以降に実施する全ての預金等受入金融機関に対する検査について、適用する予定である。
      • (2) 信用収縮対策等
        • 1 信用収縮対策
          10年11月頃と比較して、企業の貸出態度に対する懸念は薄らいできており、また、信用保証制度の拡充の効果などから、企業倒産は大幅に減少した。ただし、中小企業については、資金繰りに対する懸念も若干改善がみられるものの、依然として厳しい状態が続いている。中小企業の特別保証制度については、今後、必要かつ十分な額の保証枠の追加を行うこととするが、その具体的規模等については、中小企業者の資金需要の動向を、引き続き注視しながら決定する。また、中堅企業等向け貸し渋り対策についても、日本開発銀行等において、長期運転資金融資、社債償還資金融資等の導入等を実施している。政府系金融機関の融資実績も、高い伸びを示している。
        • 2 資金供給ルートの拡充・多様化
          特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律(SPC法)施行後、6件のSPCが登録され、一定の成果がみられているが、このような施行状況等を踏まえ、一層の制度整備の検討を行う。会社型投資信託の投資対象については、会社型投資信託制度は導入されたばかりであり、実績は未だないといった状況等を踏まえ、引き続き検討を行う。また、4月14日に成立した金融業者の貸付業務のための社債の発行等に関する法律は、5月中に施行される予定である。
      • (3) 日本銀行による金融政策の適切かつ機動的な運営
           日本銀行は、10年11月13日の金融政策決定会合において、企業金融の円滑化に資することを狙いとして、1 CPオペの積極的活用、2 企業金融支援のための臨時貸出制度の創設、3 社債等を担保とするオペレーションの導入を決定し、これらを既に実施している。
           日本銀行は、11年2月12日の金融政策決定会合において、無担保コール・レート(オーバーナイト物)を実質的にゼロに引き下げることとした。その後、このスタンスは維持されており、金利はゼロ近傍で推移している。また、ターム物金利や長期金利も相当程度低下し、低水準で推移している。さらに、ジャパンプレミアムも、ほぼゼロとなった。
           こうした状況を踏まえ、日本銀行においては、現在の金融政策の効果を十分見極めるとともに、自律的な経済回復が明らかになるまで、適切な金融調節の手法により潤沢な資金供給を行い、引き続き日本経済の回復に貢献する金融政策を行っていくことが求められる。
    2. 21世紀型社会の構築に資する景気回復策
      • (1) 21世紀先導プロジェクトの実施
        1 先端電子立国を形成するための2つのプロジェクト(10年度3次補正:2,800億円程度、11年度:1兆2,300億円程度)、2 未来都市の交通と生活を先取りする3つのプロジェクト(10年度3次補正:6,800億円程度、11年度:1兆3,100億円程度)、3 少子高齢化対応、ダイオキシン対応を含む安全・安心・ゆとりの暮らしを創る2つのプロジェクト(10年度3次補正:1兆100億円程度、11年度:8兆9,000億円程度)、4 高度技術と流動性のある安定雇用社会の構築のための4つのプロジェクト(10年度3次補正:3,100億円程度、11年度:1兆1,900億円程度)、について合計で、10年度第3次補正予算で2兆500億円程度、11年度予算で12兆6,200億円程度措置した。
        また、情報通信など多くの省庁に関連するプロジェクトを推進するため、バーチャル・エージェンシーも活用して対応している。
      • (2) 生活空間活性化策
        • 1 生活空間倍増戦略プランの策定
          11年1月29日に「生活空間倍増戦略プラン」を閣議決定した。
          10年度第3次補正予算及び11年度予算において、事業規模で概ね30.2兆円(国費14.3兆円)を措置した。
          また、地域戦略プランについては、11年度予算で、総額2,050億円の推進費を計上している。同プランは今後、5月末までに各地域から国に提出される予定となっている。
        • 2 土地・債権流動化
          整理回収機構は4月1日から発足した。債権管理回収業法が2月1日に施行された後、10数社からの許可申請があり、4月中旬までに4社の許可業者が誕生した。
        • 3 住宅投資の促進
          住宅投資を促進するため、11年度税制改正において、住宅ローン減税を実施している。また、基準金利等の適用される融資額を大幅に増額する生活空間倍増緊急融資を創設した。さらに、住宅金融公庫の10年度第4回融資の基準金利を2.2%とし、第4回融資受付期間も3月26日まで延長するとともに、11年度の第1回募集開始日から、引上げ幅を思い切って圧縮し、2.4%に改めた。この結果、首都圏の4月単月のマンション発売戸数は過去最高となった。
      • (3) 産業再生・雇用対策
        • 1 産業再生計画の策定(中小企業関連施策を含む)
          11年1月29日に同計画を閣議決定した。10年度第3次補正予算及び11年度予算において概ね10.2兆円を措置した。
          また、生産性の向上による産業の競争力強化を目指し、官民が協力して、それぞれの役割分担に応じた総合的な検討を行うため、3月から、産業競争力会議を開催しているところである。
        • 2 雇用対策
          • 「雇用活性化総合プラン」の実施
               早急な雇用の創出及びその安定を目指し、1兆円程度の雇用対策を行うこととしており、その中核となる「雇用活性化総合プラン」に盛り込まれた施策を11年1月から実施している。目下、雇用情勢は依然として厳しい状況が続いているが、雇用創出に資する各般の施策とともに、本プランを効果的に推進することにより、雇用の安定を図っていく。
               このうち、良好な雇用機会の創出を図るため、改正中小企業労働力確保法を11年1月1日から施行しており、この改正法に基づく新規雇用創出対策については、3月末時点で約1,700件の申請がなされている。また、中高年労働者の失業なき労働移動のための「中高年労働移動支援特別助成金」を11年1月1日より実施している。さらに、民間教育訓練機関等に対する委託訓練については、11年3月末時点で、約3.8万人の訓練委託先を確保したところであるが、今後とも、受講希望者のニーズに合った訓練委託先を確保していく。加えて、「緊急雇用創出特別基金」については、11年1月30日から沖縄県において発動した。
          • 労働力需給調整機能の強化
            労働力需給の調整について民間機関の活用を図る労働者派遣法及び職業安定法の改正案については、4月15日に衆議院において審議が開始されたところである。
        • (4) 社会資本の重点的な整備
             緊急経済対策関連の社会資本整備として、事業規模8.1兆円程度を措置した(国の10年度第3次補正予算を受けて、都道府県においては、社会資本整備の追加に係る予算2兆600億円を計上した)。
             また、11年度当初予算(公共事業関係費について、前年度当初予算に比べ5%の伸びを確保(公共事業等予備費も含めて考えれば10%超の伸び))が成立し、10年度第3次補正予算と併せて15ヵ月予算として切れ目ない執行を図っている。この結果、公共投資については2月の着工が前年度比で大幅増加となるなど、景気を下支えしている。なお、国の10年度2月末の公共事業等について特別調査を行ったところ、10年度第1次補正予算分及び10年度第3次補正予算分を含めた全体としての契約済額は18兆5,749億円、契約率は77.6%となっており、そのうち10年度第3次補正予算分の契約済額は7,198億円、契約率は19.3%である。
             また、3月23日、11年度上半期における公共事業等の契約済額が、10年度上半期末実績(約13.6兆円)と比較して10%を上回る伸びとなることを目指して、その積極的な施行を図ること等を閣議決定した。加えて、国から地方公共団体に対して、11年度上半期における公共事業等の積極的な施行を図るよう要請した。11年度上半期における公共事業等の施行については、今後、地方公共団体における施行を含めて進捗状況等を調査する。これらにより、実質的な推進を促すこととする。
             PFI推進については、政府として、我が国のPFIの考え方、実施プロセス、課題への対応等について、コンセンサスの形成、普及・啓発に努めるとともに、国・地方公共団体等におけるPFI事業の早期形成・実施の支援に係る調査等を行っている。
        • (5) 恒久的な減税等
             恒久的な減税をはじめ、国・地方を合わせ、平年度9兆円を超える減税を行うことを内容とする11年度税制改正を4月から実施している。
          地域振興券については、4月1日までの間に全市(区)町村で交付が開始された。今後、地域振興券の利用実態を調査し、その効果を分析することとする。
        • (6) 財政構造改革法の凍結
             10年12月、財政構造改革法の停止に関する法律が成立した。
    3. 世界経済リスクへの対応
      世界経済・アジア経済にとって、日本経済の再生は、引き続き重要である。また、世界経済リスクへの対応に際しての我が国の役割の大きさを踏まえ、密接な相互依存関係にあるアジアの支援策等(1兆円程度)を実施しており、既にコミットした新宮沢構想の具体策等のアジアの通貨・経済の安定のための取り組みを引き続き推進していく。
      • (1) アジア諸国の通貨危機等への対応
           日本輸出入銀行の融資、円借款の供与等や、アジア通貨危機支援資金等について、着実に具体化が進んでおり、アジア諸国の経済回復に貢献している。
      • (2) アジアの現地日系企業等に対する支援
           中小企業金融公庫等による本邦親企業経由の現地子会社向け融資や、日本輸出入銀行、海外経済協力基金、貿易保険、無償資金協力等のアジア諸国やアジアの現地日系企業等に対する資金支援を実施している。また、我が国企業の事業参加機会の拡大を図りつつ、アジア諸国等の経済構造改革を進めるための特別円借款を創設した。
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