記者会見要旨

甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨(今後の経済財政動向等についての集中点検会合後)

  • 日時:平成25年8月28日(水)14:44~15:23
  • 場所:合同庁舎4号館6階620会議室

1.発言要旨

第3回、そして第4回の集中点検会合の報告をさせていただきます。メンバーはお手元の資料にあるとおりであります。
まず、第3回から御紹介を申し上げます。
景気との関係については、出席者から特段の言及はありませんでした。
それから、消費税引上げの判断についてでありますが、予定どおり引き上げるべきだというふうにおっしゃったのは井伊さん、石黒さん、永井さん、宮本さん、横倉さん、吉川さん、小室さんです。ただし、小室さんについては条件つきですね。
それから、引き上げるべき理由についてでありますが、井伊さんから、増税分を社会保障の質的充実に生かし、日本の実情に合った費用対効果を重視した医療制度にすれば、中長期的に大きなプラスであること、それから、プライマリ・ケア制度の整備が重要であることというお話がありました。
それから永井さんが、社会保障制度改革国民会議がまとめた改革を進める公的支援の財源が必要だ。その点でこの引上げが必要だという御主張です。
それから宮本さんは、景気との関係ばかりで論じるのではなくて、社会保障の機能強化と財政健全化の同時実現のためという視点から、消費税増税が必要であるという御主張であります。
横倉さんでありますが、社会保障の安定的な財源として、税収の増加を医療の充実に充てることが必要だという点を挙げておられました。
また、消費税を引き上げる際の対策として、石黒さんからでありますけれども、非正規労働者に対する社会保障を充実させ、国民の将来不安を払拭することや、低所得者層への対策を十分に行うこと、転嫁対策であるとか、あるいは外税化をすべきであること、さらに、労働法制の規制緩和を行うべきではないことという趣旨の発言がありました。
それから小室さんですが、消費税引上げの条件として、長時間労働の是正など労働スタイルの変換を促す施策を行うことというお話がありました。
それから吉川さんから、消費者、低所得者、高齢者への配慮を行うこと、そうした対応が必要だという意見がありました。
その他の意見でありますが、宮本さんから、支援型サービスの社会保障は、成長戦略と言える。社会保障・税一体改革の成長促進効果を引き出すべきであるというお話がありました。
それから工藤さんが、行政的な対策のない若者の無業者に対する就業支援を行い、支え手となる次世代を育てるべきだという発言がありました。
それから永井さんと横倉さんから、医療機関の消費税に関する負担の問題を解決すべきだという御主張であります。
それから吉川さんが、社会保障が充実をすれば、将来への不安も減って、消費者被害の減少につながるということもおっしゃっておられました。
その後に出席者間で意見交換がありました。
伊藤議員から、宮本さんと小室さんに対して、予定どおり引き上げるのがいいか、少し遅らせるとか、あるいは上げ幅を小刻みにするということについての質問がありました。
これに対して宮本さんから、「消費税率を小刻みに上げるのは望ましくない。国民が社会保障の充実を実感できるくらいの規模、それぐらいの規模として上げる必要がある。3%ぐらいは必要だ。充実を実感できるためには数千億円規模の予算が必要で、そのためにそのくらいの税率引上げが必要だ。」
それから小室さんですが、「団塊ジュニアの出産適齢期という意味では、もう残されている時間はそんなにない。消費増税を予定どおり行って、子育て支援をスピーディに行うことが重要だ。待機児童の問題があると、どうしても出産を1年、2年先延ばしにするとか、子供を欲しいと思っても出産時期をもうちょっと待とうと、今だったら待機児童の問題で働くのを辞めなければならないからと、そういう躊躇につながる。そうこうしているうちに、出産適齢世代を過ぎてしまうのではないか。だから、ここは大至急その対応のためにも消費税を上げるべきだ」というお話でありました。また、「ワークライフがバランスする社会に転換したということが明確になることが若者の行動を変えるために必要だ。」という趣旨のことをおっしゃっていました。
そこまでが第3回であります。
続いて第4回です。
景気の現状と見通しについて、消費税の引上げをすることに対して、現状の景気が十分いいとおっしゃったのは岩沙さんです。
それから岡本さんも、足元の景気情勢は悪くないということをおっしゃっていました。
懸念材料として、消費税を引き上げた場合の新車販売の減少や住宅着工への影響が挙げられていました。
それから石澤さん、岡村さん、小松さんですね、お三方は、規模の小さな事業者は、本格的な景気回復の実感は得られていないというお話をされていました。特に石澤さんは、円安による原材料等の価格上昇による経営の圧迫、それから社会保険料の引上げを指摘されていました。
それから鶴田さんは、中小企業の景況感は緩やかに改善しているけれども、先行き不透明感があるということでありました。
それから、消費税引上げの判断についてであります。
これにつきましては、状況は厳しいけれども、引き上げざるを得ないという意見が多くありました。小松さん、豊田さん、岡本さん、岩沙さん、鶴田さん、岡村さん、樋口さん、清水さんが、その旨の発言をおっしゃっていました。
引き上げるべき理由として、持続的な経済成長のために必要、それから引上げを見送るリスクが大きい、将来の問題解決に向けて糸口となる。
その際の経済対策として、「転嫁対策、駆け込みの反動減対策、資金繰り対策など地方も含む中小企業対策の充実が必要である」、「車体課税の抜本改革による自動車ユーザーへの負担の軽減が必要だ」、「低所得者対策が必要である」、「TPPや規制緩和など成長戦略の推進こそが重要である」、「下振れ防止のための景気対策が必要である」、加えて「中小企業者に使いやすい投資減税が必要である」等々の意見がありました。
それから小松さん、岡村さん、鶴田さんのお三方は、1%ずつの引上げについては、企業の事務負担が多く反対との主張でありました。
その他の意見でありますが、小松さんから、歳出の削減努力が大事だというお話です。
それから岡本さん、鶴田さん、岡村さんは、単一税率を維持すべきだという御主張です。
鶴田さんから、判断の際には、中小企業の景況や実態を十分踏まえてほしいということです。
それから樋口さんからは、最近の住宅の取引は、来年4月から税率が8%となることを前提としており、これを変更すると混乱をするというお話です。
それから、岩沙さんが、ローン減税などの対策もあって、消費税の引上げ後の住宅の落ち込みは限定的ではないかという趣旨のお話をされていました。
岩沙さんは不動産協会の会長、樋口さんは住宅産業協議会の会長さんです。
それから、石澤さんが、消費税引上げの必要性と価格転嫁の必要性を国民に十分に説明すべきだという御主張です。
チェーンストア協会の清水さんは、消費税引上げをこれほど丁寧に議論している国はほかにない、総理に一任をするということであります。賛成も反対もしないという話がありました。
その後に、出席者間の意見交換の時間をとりました。
伊藤元重議員から、石澤さん、岡村さんへの質問であります。中小企業の場合、小刻みな引上げには反対なのか確認をしたいと。鶴田さん、全国中小企業団体中央会の会長は、書面で「小刻みに上げるのは反対」と出しておられましたので、書面による記載のない石澤さんと岡村さんへの質問が行われました。
全国商工会連合会の会長の石澤さんでありますが、1%ずつの引上げは事務的に煩雑であり、マイナス面はある。しかし、今の状況の中では、二度の引上げ、3%、2%という引上げについては、一度目は何とか切り抜けても、二度目のときには耐え切れないのではないか。よって、小刻みな引上げを検討してもよいというようなお話であります。
日本商工会議所会頭の岡村さんは、1%掛ける5の引上げ方法については、価格変化への対応の事務量が莫大だと。よって反対ということです。
以上です。

2.質疑応答

(問)小松ばね工業の小松社長が、会合終了後のぶら下がりで、「中小企業は、増税されても社員の賃金をすぐ上げることはできない。増税分の負担を社員に負担させることが心配だ」というようなことをおっしゃっていたのですけれども、こういったお話をお聞きになっての御感想と、その増税分を企業側なのか、それとも社員側なのか、これは誰がどういうふうに負担すべきだというふうに大臣はお考えでいらっしゃいますでしょうか。
(答)税金というのは、その製品を購入するユーザーが負担をするということです。ですから、ここはスムーズな転嫁が進むように、きちんとした対策はとるべきであると。つまり、その分を飲み込めとか買いたたきということについては、これは厳しくチェックをすると。
ただし、その際、全国中小企業団体中央会の鶴田さんだったと思いますが、自分たちは、その種のことができなくても声を上げられないのだと、元請等に対してですね。ですから、そこはしっかり監視する体制を敷いてほしいというような御要望がありました。
加えて、消費税を引き上げていく中で、物価目標2%と相まって両方で物価が上がっていくわけであります。でありますから、タイムラグはあるにせよ、賃金がそれに早く追いついて、あるいはそれを超えて上がっていく必要があると。
ですから、一番最初に企業収益が上がる事業者が、その利益をきちんと関連事業者とか従業員に還元をすると。もちろん、全て還元をしてほしいとは申し上げていません。自身の競争力強化、株主への対応等々も当然ありますけれども、そこそこの部分は、従業員の賃金あるいは下請代金に反映をさせるということを通じて、物価の上昇を乗り越えていくような体制、つまり賃金の上昇、下請代金の上昇、そういうことを通じて好循環が生まれてくるわけであります。それを促進できるような環境整備を政府が懸命に努めることだと思っております。
(問)第4回の会合で、確認なのですが、上げざるを得ないというお立場の方は、9名中8名という理解でよろしいでしょうか。
(答)そうです。
(問)それと、あと上げざるを得ないというのは、予定どおりの増税に賛成をされたという理解でよろしいのでしょうか。
(答)1%ずつについて、1%ずつでやってほしいという主張はなかったと思います。
石澤さんが、3%、2%で上げていく場合、最初の衝撃は倒れないで踏みとどまっても、その1年半後に、もう2%が来たら、立っていられなくなるではないかと。よって、1%ずつ上げることを検討してもいいというような表現だったと思いました。
(問)3回目、社会保障の会において、予定どおり引き上げるべきとおっしゃった方のお名前をもう一度、すみません、確認をさせてください。
(答)井伊さん、石黒さん、小室さん、小室さんは条件つきですね。永井さん、宮本さん、横倉さん、吉川さんです。
(問)それから、永井委員と横倉委員から、医療機関の負担増に対応すべきというふうな意見がありましたけれども、甘利大臣はどのようにお考えでしょうか。
(答)国民会議で社会保障改革が議論されました。そこでは、いろいろ効率化とか重点化というのがありますが、当然充実する部分もあるわけであります。消費税を使って充実をさせていく部分、これは今日2回の会合の中でも、国民が社会保障の充実を実感できないと、消費税引上げに対する理解が深まらないのではないかということとも共通をしていることだと思っております。
(問)先ほど清水信次さんの発言で「総理に一任」という御紹介があったのですけれども、もう少し、ほかの発言、いろいろな発言があれば紹介していただきたいのですが。
というのは、チェーンストア協会は以前、消費税引上げに対して凍結してほしいという意見書を出していたり、1%ずつの引上げについては、すごくコストがかかるということで、反対する声が多いのですね、業界内に。その辺のところを言わないで、一任というだけなのでしょうか。
(答)清水さんの話は割と毎回そうなのですが、戦後の政治の流れについて、あるいは戦中の思いから始まりまして、ずっととうとうと述べられています。そういう苦労の上に今日があって、こんないい社会ができているのだと、当時から比べれば、といった話にだんだんなってきまして、そして、協会としてはいろいろあるけれども、反対運動はさせなかったと、自分としては。自分の思いとして、これだけ丁寧に消費税の判断の環境づくりをしている国というのは、ほかにはないと。よって、総理に一任しますというようなお話だったのです。
(問)3回目の社会保障の会の方なのですけれども、NPOの「育て上げ」ネットの工藤さんは、引上げそのものについては何か是非はおっしゃっていなかったのでしょうか。
(答)なかったです。
(問)2回の会合で、それぞれ補正予算に対して、やってほしいと要請された方のお名前を教えていただきたいのですが。
(答)補正予算というか、対策が必要だという方はかなりいらっしゃいました。
対策が、税で必要という方と、予算で必要でという方、あるいは両方という方は、かなりいらっしゃったかと思います。ちょっと、誰が補正予算の必要性に言及を具体的にしたかというのは、ちょっと確認していません。
(問)あと税の関連で、法人減税についての言及をされた方というのは、どなたかいらっしゃいましたでしょうか。
(答)法人税減税は、全国中小企業団体中央会の鶴田さんが、中小企業の軽減税率に配慮してほしいと。実効税率が下がるようにというような話は、資料でも出されていました。あと、日本商工会議所の岡村さんも、成長戦略の関係で。
(問)岡村さんも、中小企業向けということで言及されていたと。
(答)そうですね。
(問)資料で、トヨタ自動車社長、豊田社長が、対策として自動車取得税の廃止をはじめとする車体課税の抜本的な見直しという対策を勧めていたのですけれども、それは政府として、そういう対策を検討する予定でしょうか。
(答)自動車取得税については、対応が終わっていると思います。それ以外について、消費税率引上げ前と引上げ後の変化が極力平らになるように、自動車と住宅に関しては各種対策をとると。具体的な対策は、現在検討中であります。
(問)今日で33名の方のヒアリングが終わりまして、予定どおり引き上げるべきだという方が、条件つきなども含めて、大体七、八割ぐらいになるのかなというふうに思うのですけれども、この結果については、大臣はどのように、今のところ受け止めていらっしゃいますでしょうか。
(答)なかなか、なるほどという視点の発言が結構出るなということで参考になりました。今日、ワーク・ライフバランスの小室さん、女性起業家ですね。その方の、なぜ消費税かということは、団塊ジュニア世代が子供をもうけようという意思があっても、それが政策のおくれによって、その意思が生かされないということになりかねない。だからこそ、もう時間が迫っているということは、なるほどと思いました。とにかく、社会の活力は人口減と真っ正面から向かい合わなければならないと。その際に、待機児童ということが、会社を辞めなければならなくなるのではないか等々の心配ごとにつながってくると、産みたいと思っても実際の行動に躊躇がなされると。それが、来年、再来年、あと何年と待っていくうちに、適当な時期を逃してしまうというような御指摘は、なるほどなと思いましたし、それから、直接、消費税とかかわりはないのですけれども、とにかく残業をなくす。これは、正規・非正規の議論の際の中で、残業をなくすということは生産性を上げることにつながる。つまり、その時間内に終わらせるために、どうやって自分の行動をチェックするかということを退社後によく考えるようになる。だから、無駄な残業がこの国の生産性を落としていると。それをなくせば、雇用も増えていくというようなお話でありました。
御主人が役人でいらっしゃって、遅く帰ってくる原因は国会にあるということで、私は、毎日9時過ぎまで残業代をもらわない仕事をしておりますというお話をしたのですけれども、そこから正さなければいけないのかなと思いました。
(問)賛成、反対の数というのは、増税の判断には関係ないかとは思うのですけれども、賛成の意見がかなり多数を占めているということです。それについては、大臣としては想定どおりというところなのか、それともちょっと予想よりもかなり増税が理解されているという受け止めでいらっしゃるのか、そのあたりの御見解をお伺いできればと思います。
(答)総理からの御指示もありまして、なるべくバランスよく人を入れようと、内閣府と官邸と相談いたしました。いろいろな立場の人、その中でも賛成の人と反対の人。ですが、やはり反対者の方が少ないなということは実感いたしました。
(問)長くなる中、別件で大変申しわけないですけれども、1点だけお願いします。
シリア情勢の悪化で、本日、東京市場でも平均株価が大幅に下落していますが、これに対して大臣の受け止めをお願いします。
(答)化学兵器使用疑惑から、アメリカが軍事行動を検討していると。そういう政情不安になりますと、油価は上がりますし、為替に、どこの為替が頼れるかというところへ寄ってくるわけです。普通は、この種の事態だと、ドルが強くなるはずですけれども、逆に円高になっているのが、そこがよく分からないですけれども、そうしたことが株価や通貨、金融情勢への影響が出てくるということは、過去の経緯からしてなかなか避けられないと思います。これから各国が、そうしたシリアの行動、それが事実であるとするならば、許されざる行動に対して、どう自省と反省を求められる仕組みを作れるかということを、しっかり注視していきたいと思っています。
(問)朝の番組で、浜田先生が、消費税を1年延期しても景気が上向かなかった場合でも、その時はあらゆる対策を講じた上で引上げを断行すべきだとおっしゃっていたのですけれども、何か受け止めはございませんか。要は、財政のもやもやを吹き飛ばすには、やはり1年たったら、そのときは断行しなければならないとおっしゃっていたのですが。
(答)たしか浜田先生は、経済環境がまだそこに行っていないから反対ということをおっしゃっていました。私の記憶ですと、4%以上の成長が踏み切る判断だと。しかし、1年たってそれに達しなかったら、それはそれでやるのだという、ちょっとどういう意味なのかよく分かりません。
(問)この会合なのですけれども、結局、消費税引上げ容認が七、八割というのは、要は、麻生大臣と甘利大臣を前にして、なかなか、甘利大臣はまだいいのですけれども、麻生大臣を前に「反対」と言いづらい雰囲気がなくはないかなという気がするのですけれども、その辺、いかがでしょうか。
(答)私は、和んだ環境、場を作るのに、相当、心を砕いておりまして、何でも言えるような場にする努力はしておりますから、遠慮なくおっしゃっておられるのではないでしょうか。
(問)では、その辺は心配ないと。和やかな雰囲気でやっていらっしゃると。
(答)はい、極めて和やかでございました。

(以上)