参考1 「選択する未来」委員会報告

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I 基本的な考え方

1.人口、経済、地域社会の課題に一体的に取り組む

(概観)

この30年ほどの間に、日本の出生率1は大幅に低下した。1984年の1.81から2005年には1.26まで低下し、その後も1.3~1.4程度の水準で推移している。この少子化を主因として、2008年をピークに総人口は減少を始めるようになり、すでにピークから約80万人減少した(2013年12,730万人)。高齢化率は、1984年9.9%から2013年には25.1%まで上昇した。経済状況は、この30年ほどの間、大きくアップダウンした。バブルの発生と崩壊、1990年代後半のアジア通貨危機と国内の金融危機、2000年代初めから半ば頃の緩やかな回復、慢性的なデフレ、リーマン・ショック、東日本大震災などを経験した。1人当たりGDPは、1980年度2,123千円(OECD諸国中17位)から1994年度3,958千円(同3位)まで約1.8倍増加し、その後微増・微減を繰り返した(2012年度3,707千円、同10位)。

そうした日本全体の動きのなかで、地域毎にみると、人口は、1980年代後半から1990年代初めにかけて東京圏への流入が続き、その後一旦その傾向は収まったが、2000年代に入ってから再び流入が増加している。北海道、東北、中国、四国、九州、沖縄などの遠隔地から流入して故郷へ戻らない流れが増している。出生率は、東京、大阪、神奈川など人口規模の大きい地域で特に低い。東京都は、出生率がもともと低位であったが、一段と低下し、2005年には統計が得られる最低水準の1.00まで低下し、その後も1.1程度で推移している。一方で、滋賀、福岡、沖縄など出生率が上昇し、出生数も増加している地域もあるがその数は少ない。

経済面では、北海道、東北から北陸、山陰にかけての日本海側、近畿、四国の南部などの地域が総じて厳しい状況が続いている。また、それぞれの地域内において好不調のばらつきが大きくなっている。5万人前後ないし10万人前後くらいの人口規模の街では経済を何とか維持しているところが多い。もう少し規模の大きい、30万~40万人、50万人以上の街では緩やかな悪化が継続している。1万人未満の町村の多くは厳しい状況に直面している。市区町村毎の経済規模を考慮せず、それぞれの好不調を単純に全国平均すると、1990年から2000年の10年間は0.6%増だが、2000年から2010年の10年間は▲0.3%の悪化となり、最近時の不調な地域の増加が目立つ2

市区町村単位で経済状況と出生動向の関係を調べてみると、30年ほど前は両者の間にはほとんど関係性はみられなかったが、近年はプラスの相関性が認められる。すなわち、ある程度活発な経済を維持できている地域では、若者の数は減少せず子どもの数は増えており、また逆に、若者や子どもが住みやすい街として選ばれているところの経済は相対的に良好ということができる。普通出生率が高い地域のうち6割は、経済指標が過去ないし全国平均より上向いている地域である。また、経済指標が過去ないし全国平均より上向いている地域のうち4割の地域は、全国のなかで普通出生率が高い地域上位2割に含まれる。

(人口、経済、地域社会の課題に一体的に取り組む)

このように全体的な動きとしては、地域経済が行き詰まり、若者は東京圏などに流出し、さらに地域社会は疲弊し、一方で子育てしづらい環境の人口規模の大きな地域を中心として日本全体として少子化が進行するという悪循環に陥っていると言わざるを得ない。しかし、マクロ経済の大きなアップダウンにも関わらず、地域毎にみた場合には、経済を維持し、若者は減少せず、子どもが増えているところもある。そうした地域は、ほんの極く僅かということではなく、中山間地域や離島を含めて相当数にのぼっている。ここに活路が見出され得る。

アベノミクスによってマクロ経済を安定的な成長軌道に乗せることは先ず最優先されるべき課題である。そのうえで、現在の日本の状況、すなわち、人口急減・超高齢化に向けた流れが着実に進行し、力強い持続的な経済成長をなかなか実現できず、地域社会の疲弊が続く状況を好転させるためには、人口、経済、地域社会の課題に対して一体的な取り組みを講じていくことが何よりも重要と考えられる。少子化対策の抜本的な拡充、家族が生活していく基盤となる就労機会の確保、正規・非正規の二極化の解消、経済全体の高付加価値経済への転換、地域における内発的で持続的な経済活動と働く場の創出、地方への人の流れの促進などの課題にトータルに取り組んでいくことが求められる。

そうしたアプローチによる改革・変革に向けた取組が相乗効果を生み出すことができれば、すでにいくつかの地域が活路を見出しつつあるように、歯車が好転し始める可能性は十二分にある。

その際、以下のような視点が重要である。

(「未来」を「人口」に結びつけて描く)

「人口」とは、一定の地域や一国に住む人の数のことである。「人口」というものの捉え方は、自分自身と、家族や親族、職場や学校、いま住んでいる地域や生まれ育った郷里、日本という国や、いろいろな出来事があった過去や、次世代が暮らす未来、それらを時間的、空間的に結びつける概念と言える。

ある地域を選び、就労し、結婚して家庭を築き子どもを産み育てることは個々人の意思に基づき、個々人の根本的な権利に関わるものであり、「人口」を政策として取り上げるに際してはその点を常に念頭に置いた姿勢が求められる。そのうえで、「人口」の課題に向き合うことで、次世代が暮らす「未来」を描いていくという視点を持つことが望まれる。

人口急減・超高齢化の克服には、子どもの数の増加が必須の課題となる。人口が減り続ける社会はいずれ消失することになり、どのような未来も描くことはできない。子どもの幸福を最大化し、子どもを産み育てやすい社会、産み育てたくなる社会作りを進めることを、未来への投資として積極的に位置付けていくことが重要である。

(「つなぐ力」と「開くこと」を重視する)

経済や地域社会の改革・変革を図るのは「人」であり、人を大切に育てることが基盤にあらねばならない。その際、特に、「つなぐ力」を伸ばしていくことを重視すべきである。

日本のなかには様々な優れた人材、技術、資源や手法などがある。改革・変革に必要なのは、それらを新しい観点を取り入れながら、つなげていくこと、あるいはつながっていくことである。例えば、いくら個々の要素技術が優れていても、それだけでは国際競争に勝てない。それら上手く全体化、社会化することによってはじめてビジネスの場で競争力を得ることになる。日本はこの部分が弱く、逆にこの弱点を克服できれば新たな展望が得られるであろう。

また、日本の教育は、基礎的な個々の学力の習得においては優れていると評価されるが、全体状況をとらえて焦点にアプローチしていく思考力や判断力、コミュニケーションをとりながら問題を解決していく力など(ここでは「汎用的なスキル」という)が弱いとされる。個々の分野での素養、基礎学力に、「つなぐ力」が加われば大きな力が発揮される。

新しい観点を取り入れながらつなげる、つながっていくという意味では、「開くこと」もとても重要である。ビジネスの世界におけるグローバル化への対応は言うまでもない。世界のなかの様々な優れた人材、技術、資源や手法などにつながっていくことである。地域社会においては、かつてある程度上手くいっていた地域ほど保守的な傾向があり、そうした地域こそ新しい人材や技術、手法を受け入れ、新しいものと既存のものをつなぐ努力が求められる。

また、つながり、開こうとするとき、「情報」がカギになる。情報に関する技術革新をもっと上手く使いこなし、経済社会の隅々に浸透させることができれば、開いてつながっていく力は格段に強化されるはずである。

(「選択肢」を広げる、「多様さ」を活かす)

望ましい未来像を描こうとする際、個々人の幸福、効用(ユーティリティ)や暮らしの心地よさ(アメニティ)といった要素は、基本的な考慮要素である。そういう意味で、現代の日本人は、経済や社会の状況が大きく変わっていく一方で、少しずつしか変わらない制度、仕組み、慣行や意識等のなかで、無意識的に窮屈な生き方を選択することが多くなっているのではないかという視点も重要である。

もっと「選択肢」を広げ、「多様さ」を活かすべきである。

例えば、高等学校卒業後くらいの若い頃から働き始め、働くことを経験した後に学び直しをする。全く違う分野での学びや就労に挑戦してみる。東京や海外で仕事を経験した後に、地方で自ら仕事を起こす。子育てを終えて学び直したうえで、新しい仕事で働き始める。縁のない地域に飛び込んで、地域活動に従事する。

自らの責任と判断により選択する機会を多く持つことができるようになれば、就労、結婚、出産、子育て等の希望もかなえられやすくなる。それは、自分自身の効用や心地よさを高めることにつながる。個々人が個性や能力を伸び伸びと発揮でき、多様さが活かされることは、地域社会、ひいては経済全体の活力につながる。学びの機会と働く機会を中心にして、もっと「選択肢」が広がっていく必要がある。

2.数値的な目標、目安と時間軸

(人口急減の克服に係る目標、目安)

現状のまま何もしない場合、人口急減・超高齢化が招来し、経済社会全体が負の連鎖に陥り、地域社会が衰退していくことは避けられない。人口急減・超高齢化を克服し、人口が50年後においても1億人程度の規模を有し、将来的に安定した人口構造を保持することを目指すべきである。1億人程度とする意味は、以下のとおりである。

一つは、若者の希望がかなえられることが大切だということである。現在と50年後の中間点くらいまでに、もし希望通りに9割の若者が結婚して2人超の子どもを産み育てる状況が実現したとすれば、人口減少のスピードは大きく緩和され、50年後の人口は1億人程度となり、その後人口の減少は収まると推計される。

もう一つは、人口構造が安定することの重要性である。もし50年後に1億人程度の人口規模が維持されると仮定した場合、その時点の人口構造は65歳以上が3分の1、65歳未満が3分の2となり、年齢階層数と年齢階層別の比率がほぼ等しくなって、人口の不均衡はほとんど解消される。この場合、不均衡が続く場合に比べて格段に様々な課題に対する解決の道筋がつけやすくなる。

目安となる数値として、以下のようなものをあげることができる3

先ず、年少人口である。目標に沿って人口が推移した場合、2020年代初めには、年少人口の減少は止まる。50年後、年少人口比率は、現状のままでは10%を割り込むが、2020年代以降微増に転じた場合には15~16%となり、現在よりも子どもが多く、少しずつ子どもの比率が高まっていく社会になる。高齢化率は、目標に沿って人口が推移した場合、2040年代後半に34%程度でピークとなった後に低下を始める。すなわち、社会全体が若返ることになる。

現在62%である生産年齢人口比率は、人口急減・超高齢化の下では減少が収まることはなく将来的に50%を下回ることになるが、人口急減・超高齢化を克服することができれば、50%を下回ることなく、2040年代半ばには緩やかな増加に転ずることになる。さらに、元気な高齢者の活躍促進が加われば、社会の活力は十分に維持されるだろう。

人口減少数は、現状のままでは、2020年代初めに年60万人減、2040年頃には年100万人減に達する。人口減少は急激であり、かつ終わることがない。もしも2020年代初め頃の人口減少数が、年30数万人程度に抑えられた場合には、2040年頃の年60万人減がボトムとなり、その後は減少数が小幅化する。50年後にも年40万人程度は減少するが、さらにその一世代後、今世紀中には横ばいに転じ、人口減少は収束する。

人口の変化には時間がかかるが、人口の構成と規模は一体的、動態的に確実に変化していく。上述のような目安に照らして、2020年頃までにトレンドが変わり、2040年頃にピークやボトムを抜けるような変化が認められれば、50年後においても、人口は1億人程度の規模を有し、将来的に安定した人口構造が保持される方向に向かっていると言えることになる。

また、人口、経済、地域社会を巡る課題に一体的に取り組んでいくに際しては、以下のような目安をあわせもって取り組んでいく必要がある。

(少子化対策の倍増)

少子化対策(家族関係支出)については、2020年頃を目途に早期の倍増を目指す4。トレンドを変える大きな変化を生じさせるためには、大胆に踏み出すべきである。出産、子育て支援は未来への投資であり、次世代につけ回しせず、現世代で負担していく。社会保障の柱としてしっかりと位置付け、その上で、医療、介護をはじめとする効率化・重点化、資源配分の重点の高齢者から子どもへのシフト、社会保障制度全体として受益と負担の均衡のとれた制度に再構築するための骨太な検討などにより、必要な財源を確保していく。

また、支出の質の改善を重視することが大事である。出生率の回復に成功した諸外国に倣いながら、従来からの少子化対策の枠組みにとらわれることなく、広がりのある切れ目のない支援への拡張、保育サービスのメニュー拡大などの現物給付の重視や教育支援の充実等を図る。

子どもを産み育てるのは若い世代、生まれ育つのが子どもである。若い世代と子どもが、明るく伸び伸びと産み育て、生まれ育っていく社会作りという視点から関連施策の拡充を図っていく。

(イノベーション創出による成長力強化)

経済については、50年後においても実質GDP成長率1.5~2%程度を維持する経済を目指す。現役世代人口の減少ペースが強まる2030年代、2040年代には経済に対する下押し圧力がかかることが予想される。人口減少下、経済が停滞する場合には、2040年代にはマイナス成長に陥り、そこから脱することが難しくなるおそれもある。2020年代までに、このような下押し圧力に耐えられるよう、イノベーション創出による成長力強化を図ることが極めて重要である。その上で、上述のように2040年代に生産年齢人口比率が低下から緩やかな増加に転ずるなどの変化が生じてくれば、1.5~2%程度の成長を維持していくことができるだろう。

そうした成長力の強化を目指す上で、重要な課題は、年齢、性別にとらわれず、地域や職種を越えて、個々人の個性と能力が十全に発揮できる社会作りである。例えば、女性の活躍促進として、管理職割合を3割とするとともに、事務職や販売業への職種、業種の偏りを改善しながら、いわゆるM字カーブを解消する取組を進め、30代~40代の女性の就業率を5%程度引き上げること(約95万人増)、高齢者の活躍促進として、働きたい希望年齢まで働けるようにしながら、65歳以上の就業率を3%程度引き上げること(約96万人増)などが当面の目安となる5

(東京一極集中の回避と地域経済の回復)

東京一極集中については、この30年程の間に東京圏に在住する人口の総人口に占める割合は約24%から約28%まで4%上昇し、特に2000年代に入ってからこの10年程で2%上昇している。こうした集中の加速を回避することが急務である。

一方、地域経済については、冒頭でみたように、この10年程の間に全国の市区町村の平均で年▲0.3%ずつ経済指標が悪化してきている。地域の疲弊、東京一極集中の加速、少子化の深刻化の悪循環は、この10年程の間に強まった。ただいまのところ悪化はさほど大きな数字ではない。不調が目立つ比較的人口規模のある都市や小さな町村等における努力が足し合わさり、0.3%ずつ改善を図ることは、歯車を好転させる目安となる。

(2020年代初めまでにジャンプ・スタート)

現在の日本が直面する人口、経済、地域社会を巡る状況は非常に厳しく、かつ、時間が経つにしたがって厳しさを増していくことが予想される。子どもが減少し、若い人が減少すればするほど、少子化の進行は一層速くかつ大幅になる。それに伴って人口減少が進めば進むほど、経済や地域社会の課題は一層深刻化する。遅延すればするほど取り戻すことは困難になる。2020年代初めまでが勝負と考えるべきである。

マクロ経済の安定を前提として、2020年代初めを目途としてジャンプ・スタートすることが重要である。ジャンプ・スタートとは、少子化対策の倍増、生産性の飛躍的向上、地域経済の好不調の拡大の解消等を一体的に推進するということである。困難な課題だが、デフレ脱却とあいまって、様々な停滞や守りの姿勢を改革・変革していくことによって成果に結び付けていかなければならない。

(2030-2040年代-厳しい状況をしのいでブレない)

仮にジャンプ・スタートできたとしても、人口、経済、地域社会の関係が好転し始めるには時間がかかる。単発的な取組で効果が生じるものでもなく、効果を見極めながら、改革・変革に向けた取組を続けていくことが重要である。

そのためには、人口、出生率や地域社会の状況は様々な要因によって左右されるため、政策の効果を評価することは簡単ではないが、指標等を工夫して分析、検証し、効果を見極めながら、人口減少による経済への下押し圧力等に耐えつつ、取組を継続し、進化させていくことができるかどうかが極めて重要になる。

(2050-2060年代-次世代につないでいく)

50年後、本報告が描こうとしている未来が訪れているならば、さらにその次の世代の未来への展望も明るく開かれたものであろう。そうした未来へとつないでいくためには、いまから始めなければならない。

3.いくつかの具体的な取組提案

いまやれていないことに大胆に着手して、改革・変革にモメンタムを付けること、また、身近に感じられて人々の理解や参加のすそ野が広がるような取組を進めることが重要である。そうした観点から、以下、いくつかの具体的な取組提案をあげる。

(1)人口-やれること、やるべきことはたくさんある

これまでの少子化対策は就労に際しての子育て支援に集中しているが、結婚、出産に係る支援や子どもを産み育てたくなるような環境整備など、取り組むべき課題は多岐にわたっており、少子化対策の倍増に踏み出しながら、できるかぎりの取組を進めるべきである。

○地域の実情に応じた対応強化

地域それぞれの実情に応じたきめ細やかな対応が望まれる。小さな町村、中規模な地方都市、大都市、東京圏等、地域によって抱えている課題は異なっている。また、実情に応じた努力をしている地域では、成果につながる地域も出てきている6。地域の実情に応じた対応強化を図るため、2015年度以降に向けて国の支援を充実する、地域における自治体、民間団体等の連携協力などの取組が必要である。

○妊娠、出産に関する知識普及

妊娠、出産に関する科学的知見への理解浸透が重要である。知識、理解の不足がライフプランニング上の適切な判断を損なっている可能性があり、教育や様々な場を通じて理解浸透を図る7。不妊治療のための休暇取得が許容されるくらいの理解浸透が望まれる。結婚、就労、出産、子育て等の選択に伴って生涯収支にどのような影響が生じるかといった情報提示に取り組む。

○企業による子育て支援、若者支援の促進

2015年4月の改正次世代育成支援対策推進法施行を踏まえた企業の行動計画などのなかで、若者支援、結婚・出産支援、子育て支援、ワーク・ライフ・バランスにおける優良な取組が積極的に位置づけられ、それら取組の見える化が進められる必要がある8

○教育への社会的支援

乳幼児期の後につながる支援として、教育への支援を位置付けることが重要である。例えば、政府支出による支援以外にも、2015年末に終了する教育関連贈与の非課税措置の延長・拡充9など、高齢世代から子ども・孫世代への資産の移転を促していくことも側面支援として考慮されるべきである。

(2)経済-多様さを育て、異能・異才も受け入れ、活かす

一人ひとりの個性と能力がもっと多様なかたちで活かされるよう、働き方改革などを進めていくことが重要である。ユニークな個性を大事にする。若者、女性、高齢者の活躍の場を職種、業種などの偏りを改善しながら促進する。地域社会に働く場を創出し、人の交流を促進する。

研究開発やビジネス化の最先端の場でも、多様な個性と能力を尊重する視点がもっと強調されるべきである。多様さを育て、異能・異才も受け入れ、活かすことが、イノベーションの創出につながる。多種多様な草の根のイノベーションこそが成長力の源泉となる。

○学びの機会の多様化

基盤となるのは人材育成。公的教育に限らずに学びの機会の多様化、選択肢を増す取組や、家庭の状況にかかわらず教育が受けられる支援等が必要である。

○異能、異才の発掘、育成

多様な個性を尊重する。そのなかで、異能、異才を見出し、育てるような視点からの取組を推進する10

○個性的な研究開発やビジネス化の促進

大学発ベンチャーや産学官連携等において、個性的な研究者、開発者がもっと報われ、インセンティブが湧くようなルール、慣行へと変えていくという視点が重要である。

○女性、高齢者の活躍促進

女性の活躍を量的に増やすだけでなく、活躍の領域を拡大11する。プロダクト・イノベーション12にもっと女性の視点を取り込んでいく。女性の就労拡大を抑制する効果をもたらしている制度や慣行等は積極的に見直していく。

高齢者については、働きたい希望年齢まで働ける環境整備が先ず重要である13。高齢者と子どもがふれあい、交流する場の拡大や、また、高齢者が伸び伸びと活躍できるよう、個人年金的な仕組み作り、資産活用の選択肢の拡充や、自助・共助・公助のあり方の見直しなどの取組を幅広く推進する。

(3)地域社会-新しい地域のあり方を目指して

従来の地域活性化ではない、新しいコンセプトで取組を推進することが重要である。地域のなかに成長・発展の種を見出して、内発的で持続性があり、外部と交流し、外部の良さを取り込みながら発展していくモデルの構築が目指されるべきである。若者、女性が活躍でき、子どもを産み育てやすく、壮年層や高齢世代の理解や協力があって、外部の新しい視点も取り入れながら、地域の活力を生み出していく。

○従来の姿にこだわらない取組推進

現状にこだわっていると行き詰まる可能性が高いと認識すべき。従来の街の在り方を見直して、思い切って集約・活性化に取り組む。多層的に外部との連携、協働に取り組む。コンパクトシティ14の形成や地域間連携のためのネットワークなど支援策の拡充、公的資産15のマネジメント、地域おこしのノウハウや知見の共有・展開、地域経済の中核を担う中堅企業等の活躍等を積極的に推進する必要がある。また、東京圏においても、少子化対策や介護政策等において思い切った取組が求められる。

○「新しい絆」を起点とした取組推進

地域社会には、ビジネスを通じて地域の発展に貢献できる事業の種がたくさんある。そうした種を大きく育てるには、地域金融や寄付等による社会的投資等を通じた資金循環の構築や、営利・非営利を越えた法人、事業の在り方の検討が必要である。これらの取組は、一言でいえば、「新しい絆」の創出である。

○ICTを利活用したブレイクスルー

ICTは、地理的な不利を解消する有力な手段である。地方には良いものがあっても、売り方が分からない、紹介できづらいなどがボトルネックとなっている。しかし、ICTを上手く利活用すれば、コストをかけないで効果的に外部とつながり外部を取り込むことも可能である16

(4)政策の検証や評価

人口、経済、地域社会を巡る課題に対する取組を着実に継続し、進化させていくためには、政策の検証や評価が重要になる。

○人口急減・超高齢化の克服の効果を定量的に提示

人口構造が安定的なものになる場合や、成長力の強化が実現する場合のマクロ経済等へのプラス効果や、遅延する場合のマイナス効果を定量的に提示することによって、政策を進める費用対効果の目安を得ることができ、また、取組の必要性に対する理解浸透を図ることができる。

○少子化対策の評価

少子化対策に即効性を期待することは難しい。それだけに、粘り強い取組を推進できるよう、慎重かつ能動的に検証、評価していくことが重要である。地域において合意が得られる場合には、人口の自然増減数や社会増減数の動向に照らして検証、評価する取組も望まれる17

○地域の資金循環の定量的な提示

内発的で持続的な地域経済を実現するためには、地域内の資金循環及び地域外との資金の流出入を定量的に把握、分析して対応を検討することが重要である。そうした取組は先進的な地域18で出てきており、普及拡大に取り組むべきである。


1 合計特殊出生率(人口統計を用いて一人の女性が一生の間に産む子どもの数を擬制的に推計したもの)をいう。なお、人口1,000人当たりの新生児数を普通出生率という。
2 工業統計、商業統計、農業統計等から得られる市区町村別の経済指標を一本に合成して時系列比較している。
3 年少人口比率は0~14歳人口/総人口、高齢化率は65歳以上人口/総人口、生産年齢人口比率は15~64歳人口/総人口。
4 OECDの社会支出統計(Social Expenditure Database)では、2009年度の家族関係社会支出(出産・子育て支援として制度に基づき行われる現金給付及び現物給付の合計)対GDP比は、スウェーデン3.8%、フランス3.2%、OECD平均2.3%に対し、日本は0.96%。なお、国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2011年度の家族関係社会支出対GDP比は1.35%。また、家族関係支出の対高齢関係支出は、スウェーデン0.36、フランス0.26、OECD平均0.36に対し、日本は0.12。また、OECDの税制上の措置を含んだ家族給付に関連する公的支出(Family Database)対GDP比は、フランス3.98、スウェーデン3.75、OECD平均2.61に対し、日本は1.48。
5 2013年の就業者数を基に推計。
6 参考資料集14 内閣府が行った調査(2014)では、少子化対策担当部署の設置、人員の増員、関連予算の増額等を行っている地方公共団体は、過去10年間で出生率に改善傾向が認められている。
7 参考資料集15 妊孕性の知識の国際比較(2013)では、日本は先進国の中で最低となっている。
8 企業の積極的な次世代育成支援の取組について、新たな特例認定制度を創設。次世代育成支援対策の実施状況の公表が義務付けられる。なお、現状では、企業におけるワーク・ライフ・バランスに関する情報開示は十分に進んではいない。(7月18日第8回「選択する未来」委員会資料8,6ページ参照)
9 世代間の資産移転を後押ししつつ贈与された資金の有効活用を促す仕組みとして、平成25年4月~平成27年12月31日までの3年間の措置。(10月28日第12回委員会参考資料3,7ページ参照)
10 例えば「異能(inno)vation」プログラム(総務省)、「異才発掘プロジェクト」(東京大学、日本財団)などがある。(10月28日第12回「選択する未来」委員会参考資料3,14ページ参照)
11 女性の就業者数は増加傾向にあるものの、職業別では事務、販売、サービス関係の職種に就く女性の割合は変わらず、大半を占めている。(10月28日第12回「選択する未来」委員会参考資料3,15ページ参照)
12 既存の製品の延長線上にはない、革新的、画期的な製品を生み出すこと。
13 内閣府が行った世論調査(2014)では、「何歳まで働くのが望ましいか」との問に対して、「年齢で一律に捉えるべきではない」(32.3%)、「66~69歳」(30.3%)、「70~74歳」(12.3%)などの結果が出ている。
14 都市の中心部に居住と各種機能を集約させた人口集積が高密度なまちを形成すること。中心部とは、例えば合併前の自治体の拠点など複数の拠点も対象となる。
15 本報告では、国、地方自治体等の公的主体が行政目的等のために保有する土地、建物、施設、設備等の固定資産を対象とする。
16 例えば、デジタルメディアをフル活用し、地域自らがメディアを保有し、収益を生み出しながら世界に直接発信することが可能である。
17 平成23年度時点で、19道府県が出生率あるいは出生数目標を設定している。
18 例えば、水俣市や島根県の例があり、資金が域内で循環せずに域外へ流出している構造が明らかとなっている。
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