第5章 地域別の人口・経済データ

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●人口指標の作成方法

人口指標は、人口1,000人当たり出生数である普通出生率とした。普通出生率とは、市区町村毎の年間出生数を、人口総数で除して算出した、人口1,000人当たり出生数のことを指す。なお、出生数は、人口規模の小さい自治体の出生数の短期的な影響をならすため、1980年、1990年、2000年、2010年の前後5年間の平均出生数を使用した。((備考)出生数:厚生労働省人口動態統計、人口総数:総務省国勢調査(1980、1990、2000、2010年))

●過去から現在の人口指標の推移

人口指標の推移

1980年から2010年までの10年ごとの人口指標をみると、1980年は全国的に人口指標10以上と普通出生率が高い地域が大半であったが、1990年までの10年間で全体的に出生数は急激に低下し、多くの地域の人口指標が10未満となり、2010年になると更に出生数は低下していった。

また、2010年時点の人口指標(普通出生率)が10以上の市区町村は全国で137自治体あり、そのうち、九州・沖縄ブロックは54自治体、東海・北陸ブロックは34自治体とその割合は高い。自治体における子育て支援の具体的な取組として、児童医療費無料化や子育て支援センター設置等を行い、第3子以降の幼稚園保育園無償化や補助を行っている静岡県長泉町、生後6か月から預かる保育所を開設し、土曜日も含む週六日、朝7時から夜7時まで預かるなど子育て支援に力を入れている富山県舟橋村、交通アクセスの良さにより最先端企業等の立地が進み、住宅地や商業地等の形成に伴い人口が増加している熊本県菊陽町、企業誘致により小さくとも活力ある比較的財政の豊かな村として発展している鳥取県日吉津村、塩田跡地の整備により商業、観光施設が立地し、県下随一の経済発展、人口が増加している香川県宇多津町などがあげられる。

●経済指標の作成方法

経済指標は、年間生産数量に品目ごとの農家庭先販売価格を乗じた「農業産出額」と製造業の事業所における年間の製造品出荷額、加工賃収入額、その他収入額等を計上した「製造品出荷額等」、卸売業の事業所における年間の有体商品の販売額の合計を表す「卸売業年間商品販売額」、小売業の事業所における年間の有体商品の販売額の合計を表す「小売業年間商品販売額」、株式会社(有限会社を含む。)、合名会社、合資会社、合同会社及び相互会社並びに会社以外の法人の事業所数を集計した「事業所数」、株式会社(有限会社を含む。)、合名会社、合資会社、合同会社及び相互会社並びに会社以外の法人の従業者数を集計した「従業者数」、個人の市町村民税の所得割の課税対象となった前年の所得金額(分離課税の対象となる退職所得を除く)を納税義務者数で除した「課税対象所得(納税義務者数一人当たり)」、基準財政収入額を基準財政需要額で除した「財政力指数」の8つの統計データを構成要素として合成し算出した。

なお、構築した経済指標には、漁業や建設業、観光業等に関する要素は反映されていないため、地域経済を表す試行的な指標である。

図表5-1 「経済指標」を構成する要素

●過去から現在の推移

経済指標の推移

1980年から2010年までの10年ごとの経済指標をみると、1990年は1980年と比較して経済指標50以上の市区町村の割合が増えており、全国的に経済状況が上向いている傾向がみてとれる。2000年は1990年と比較して経済指標50未満の割合が増加し、同60以上の割合も増加しており、全国各地域間で経済格差が広まったものと推測される。2010年は2000年と比較して経済指標50未満の割合が更に増加しており全国的に経済が冷え込んだことを示しているものと思われる。

2010年に経済指標が55以上の市区町村は全国で525自治体あり、そのうち関東ブロックが187自治体、九州ブロックが107自治体を占めている。特徴的な市区町村としては、人口増加に伴い小売業販売額が1975年から約60倍となっている宮城県富谷町、人口増加に伴い小売業販売額が1975年から約25倍となっている茨城県守谷市、金属加工をベースに各種機械装置の組立てを行う新事業分野を積極的に開拓した企業を有する福岡県筑紫野市、ショットピーニング加工用コンディションドカットワイヤーで世界シェア3割を獲得する企業を有する愛知県弥富市、酪農が盛んで2006年度の生乳生産額1位の北海道別海町、果実類の農作物の栽培が盛んで2006年度のサトウキビの生産量が全国1位の沖縄県宮古島市、江戸時代から伝わる筆(熊野筆)の製造を産業の中心として「筆の都」として栄えてきた広島県熊野町、「希少糖の里」として知られる香川県三木町などがあげられる。

また、経済指標が上向いている主な要因を分析したところ、上向く要因として小売業が多数を占め、直近では50%超となっている。一方、工業、農業の位置付けは大きく変わっておらず、サービス業その他は、上向く要因として少数となっている。

図表5-2 経済指標が過去ないし全国平均より上向いている地域の主な要因

人口規模別の経済指標をみてみると、人口規模5~10万人の市区町村においては、経済指標が良好に推移している。他方、人口規模20~50万人及び50万人以上の中規模~大規模の市では、相対的に不調である。また、人口規模5千人未満の小さな町村においては、2000年以降厳しい経済状況となっている。

図表5-3 人口規模別経済指標の平均値
図表5-4 人口規模別経済指標の平均値の変化(1980年を1とする)

●人口・経済の両指標が高い市区町村及び都道府県

2010年における人口指標が高い地域(上位2割)、かつ、経済指標が過去ないし全国平均よりも上向いている地域(経済指標が55以上の地域)は206市区町村あり、これは人口指標の高い地域の約6割を占めており、また経済指標が過去ないし全国平均よりも上向いている地域の約4割を占めている。 つまり、出生率の高い地域ほど経済は上向いており、経済が上向いている地域ほど出生率が高いことを示しており、人口と経済の相関性の強さがうかがえる。

人口指標が11以上かつ経済指標が65以上の市区町村数は、1980年が0、1990年が31、2000年が35、2010年が21となっている。1990年における上位の市区町村では、茨城県つくば市や千葉県成田市、浦安市など人口が10万人を超える自治体が入っていたが、2010年では、10万人を超える自治体はなく、人口約8.4万人の愛知県日進市が最も規模が大きく、その他は概ね人口5万人前後、あるいは3万人前後の市区町村が占めている。

図表5-5 人口指標が高く、経済指標が高い市区町村

また、各都道府県における出生率(人口千対)を人口指標とし、一人当たり県民所得を経済指標とした場合の1980年から2010年までの10年毎の推移をみると、全体的には、人口指標は1980年から90年にかけて大きく低下し、その後は2010年まで微減傾向となっている。一方、経済指標は1980年から2000年までは伸びていたが、2010年にかけては低下している。

人口指標・経済指標ともに常に上位にある都道府県は、静岡県・愛知県・滋賀県・広島県の4県である。1980年は茨城県・栃木県をはじめ関東ブロックの地域が上位の割合を占めていたが、2000年以降は石川県・福井県・三重県など中部ブロックで人口200万人未満の比較的中規模の県が上位に入ってきている。2010年になると、東京圏への人口流入などを背景として、東京都、千葉県、神奈川県がトップ3を占めている。

図表5-6 人口指標が高く、経済指標が高い都道府県

●人口・経済が上向いた市区町村

2000年から2010年にかけて、経済指標が改善した市区町村は375ある。また人口が増えた市区町村は465ある。それぞれの一覧表を掲げる。

図表5-7 2000年から2010年にかけて人口が増加した市区町村
図表5-8 2000年から2010年にかけて経済指標が上昇した市区町村
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