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第4章 識者の意見

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白波瀬 佐和子
東京大学大学院人文社会系研究科教授
-「選択する未来」委員会 委員

「子どもに優しい社会の構築を」

近年の少子化の要因に大きく影響しているのは、出産タイミングの遅れである。子どもの数を規定する最も重要な要因は第1子の出産年齢であり、20代で第1子を産む/産めることが生涯の子ども数を増やす可能性を高める。そのためには、20代で子どもを産んでもキャリアをしっかり形成できるような雇用環境が整備されれば、働くことと家族をもつことが拮抗しない関係を作り出すことができるだろう。しかし、物事はそう簡単ではなく、ここに個人の選択の問題が出てくる。

近年、女性は高学歴化し、専門職に就く者も増えて、仕事へのコミットメントも高まった。それが、今の晩婚化・晩産化とも関連している。日本では依然、男性は仕事、女性は家庭という性別役割規範が強く、諸制度の前提として根強く存在する。女性にとっての結婚や出産に伴う機会費用の逸失利益が大きく、男性の長時間労働も大きな障害だ。変化する個々人の意欲や考え方と諸制度の基層にある既存の価値観や規範との間のギャップが、家庭と仕事の距離を縮めていかない。

このような現状に対する対策としては、若年層については既婚カップルを含めて、個々人が得意とし、スキルを高めることができるような就労支援を、企業とは独立したところで提供する機会を設けることが考えられる。多様な生き方を承認するためには、多様なキャリア像を想定して、就業支援のタイミングや方法を複線的/複層的に準備しなくてはならない。

子どものいるカップルについては、社会的な子育て支援の整備と男女双方のワークライフバランスの実現が重要だ。「仕事も家庭も」を、男女ともに実現できる体制を作ることが求められる。出産はひとりでは行えない。男女ともパートナーのあり方を柔軟に設定できるように、地域・社会でも支えていくことが、子どもをもつ働く親世帯を後押しする力となる。

また、親とは独立した「子どもの福祉」の充実が重要だ。親の社会経済的地位とは独立に、子どもの福祉を政策的に展開しなければならない。教育は次の世代を担う人材を育成するという観点からも非常に重要な投資であり、教育投資のコスト・リスクを社会的に分散させても進めていく価値がある。そして、単線的なライフコースではなく、複線的な人生を想定し、また遅く芽が出る子もいるので、再チャレンジの機会を複数時点、積極的に導入していくことが大切だ。

ここで目指すところは、「世代間と世代内再分配の連携」という考え方である。子どものいる世帯といない世帯の再分配という考え方は重要で、子どもを持つことが子どもを持たないことに比べて、経済的に不利益とならないよう政策を講じることが家族政策の中核になりうる。フランスの家族政策の根本にあるのはこの考え方である。

少子高齢化というと、引退層と現役層の異世代間の議論に偏りがちだが、同世代の中で階層性(格差)を抱えながら個々人が加齢していくので、結果的には世代間格差となって現れる。若者の中、女性の中、子どもがいる世帯の中で階層性が存在する。また、階層性というよりも差異性というところで、異なる強み・弱みをもった子どもがいる。このような違いを考慮した教育がこれからますます求められてくる。

最後に、結婚から出産、子育て、教育。この一連の流れには2つの軸があることに注意しなくてはならない。結婚から出産、子育ては、その役割を担うのが親であり、この部分は親の側の議論。働きながら子どもを育てる母親あるいは父親の役割をどうするか。一方で、教育を受ける、いかなる子も才能を伸ばしていける開かれた社会にするというところは、子どもが主役だ。この2つの立場は無関係ではないが、一元的に連動するわけでもなく、時として整合しないこともある。日本はこれまで常に親の立場から子どもを位置づけてきた。親を介して子の扶養支援を企業福祉という形で提供し、そうする力が日本企業にもあった。しかし、今は違う。親にとっての子どもであると同時に、子どもが何人いようがいまいが、子どもたちは我々にとって将来を担う大切な次世代である。公共圏において子ども世代、若年世代を積極的に位置づけていくことが必要ではないか。次世代の子どもたちを大切に育てる社会の実現が、結果として少子化脱却の鍵となる。

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