第4章 識者の意見

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清家 篤
慶応義塾長

「少子化対策の恒久財源を確保し、長期的な取組を」

人口統計は一定の誤差はあっても、あらゆる経済予測の中では一番確実に予測できるものである。ということは、早く対応すれば対応が可能だということだ。日本で出生率が2を割ったのは、1970年代半ばだが、実はそのときから、次の世代は人口が親の世代より少なくなるということは確実だったことを考えると、もっと早く対策に取り組み始めるべきであった。しかし、まだ遅くはないので、速やかにこの問題をしっかりと考えて対策をとっていくことが何よりも大切だ。我々が手をこまねいて適切な対応ができなかったということになれば、これは後の世代の人に申し開きができない、その意味では今できることは全て、かつできるだけ早くしかも抜本的な対策を講じることが重要だ。

これまで、少子化対策には、それに対する幾つかの後ろ向きな考え方がその推進を阻害する面も否定できなかった。例えば1970年代ごろの少子化の始まった頃は、戦時中の「産めよ増やせよ」政策の悪い印象がまだ残っていて、人口政策というと反発があったように思う。一方、最近でもまだ、子育てというのは親がするもので、子育てを社会全体でというのは日本の伝統にかなっていないというような反発もみられる。

しかし、今はそういうことを言っている場合ではなく、我々の社会そのものの持続可能性が問われるような状況になっているわけで、できることは全てやるということが重要である。

そして、これは決して子どもを持ちたくないという人に無理に強制するものではない。日本では平均すると子どもを2人持ちたいという希望を持っている人もまだ多い。そういう人たちの子どもを幸せに産み育てる権利を保障するという意味で少子化対策を進める必要がある。

そのためには子育て支援のための一定の恒久財源を確保する必要がある。年金・医療・介護は、不況だろうが金融危機になろうが一方的に伸びてきた。それは年金・医療・介護は、年金保険、医療保険、介護保険という社会保険制度によって恒久財源がしっかりと確保されているからだ。しかし、子育て支援はそうした恒久財源がないので、財政が厳しくなったり、経済が厳しくなったりすると削られてしまいかねない状況であった。

そこで、2013年8月に報告書を出した「社会保障制度改革国民会議」では、年金・医療・介護・少子化対策、この4つを議論するという責務があったわけであるが、あえて提言の中で各論の筆頭にこの少子化対策を挙げた。これはまさに社会保障制度改革、特にその給付を充実すべき部分の1丁目1番地は少子化対策だということを明確に示すためだ。この少子化対策のために消費税の引上げ分のうち少なくとも7千億円を新たに使うように、さらにできれば1兆円を付加すべきであるというふうに述べている。

こうした恒久財源をしっかり確保していくということと同時に、企業が子育て支援をしていく、もちろんこれには同時に政府の支援も必要なわけだが、特に日本をリードしていくような企業には率先して子育て支援を充実していただきロールモデルになっていただくということが重要だ。そうしたことを進めることが企業のビジネスの上でも大いにプラスになる、あるいはそのこと自体が企業経営上も大切なことであるということである。

日本再生のために社会全体でどうやって子どもを大事に育てるのか、例えば子どもを育てること自体は楽しいのだということを再確認する、あるいは好事例を紹介することなども必要だろうし、そういう方策をどうやって日本全体で進めていくのかがとても大切だ。

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