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第4章 識者の意見

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久慈 直昭
東京医科大学教授

「不妊治療に対する理解の醸成を」

近年我が国では、晩婚化の進展により高齢で出産する女性が増える一方で、不妊治療件数も増加している。たとえば体外受精の治療件数は最近では米国とほぼ同数に達し、人口比にすれば倍程度の不妊治療がなされている計算になる。

現在、日本において体外受精で出産する子どもは、全出生数の3%を超えているが、ヨーロッパでは5年前にフランスとデンマークが3%を超えている。これらの国では、高齢・少子化に対して何も取組を行っていないかというとそうではなく、むしろ人口に関する取組にとても熱心で出生率は高く、また婚姻・出産に対してタブー意識が少ない。

一方、仕事でキャリアを積みたいと考える女性を中心に、社会的卵子凍結(健康な人が将来に備えて卵子を凍結すること)に関心を示す人が増えている。2013年11月、日本生殖医学会は「未受精卵子および卵巣組織の凍結・保存に関するガイドライン」を策定し、社会的卵子凍結についてのルール作りを行った。ただ社会的卵子凍結を行う場合、凍結は28歳以下で行うことが望ましく、理論上一人の子どもを作るためには卵子を最低20個は凍結保存しなくてはならない計算になる。社会的凍結の問題点は他にも、20代で凍結をして40代まで子どもを作らなくなる女性が増える危険性があることや、自然妊娠できる人が出産年代を遅らすために体外受精という非常に人工的な方法で子どもを出産することなどがある。社会的卵子凍結は医師から考えても無制限に推奨できる技術ではなく、実際反対意見もある。

個人的には、人口問題に政府が積極的に取り組むことは良いことだと思っている。不妊症療を行っていて、患者さんからよく聞くのが、「仕事が休めない」という声である。不妊治療技術が向上しても、治療を受ける時間的余裕がなければ、治療の効果は出ない。たとえば人工授精を行う場合、最も簡単な方法は排卵日に合わせることだが、当日仕事を休まなければならない。ところが手術のように予定日を決めてできるものではないから、ある日急に休む、タイミングが合わなかったので数日後にもう1日余分に休む、となる。しかし、実際にはそう何日も連続で休暇を取得できるものではないので、女性は周囲の目を考え、不妊治療自体を諦めてしまう。特に若い患者さんの場合、負担の少ない治療で結果が出ることが多いが、仕事との両立の問題からあと一歩のところで治療継続を諦めてしまうケースが多い。不妊治療目的の休暇制度等があれば、周囲の目を気にせずに治療しやすくなるだろうし、なによりそういった社会的な仕組みを作ることは、出産を考える女性をサポートしていく上で一番のムード作りになるはずである。

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