第3章 人口・経済・地域社会をめぐる現状と課題

[目次]  [前へ]  [次へ]

第1節 人口をめぐる現状と課題

Q2 どうして日本では少子化が深刻化しているのですか。

A2

●少子化の変遷

戦後の日本は経済成長による所得水準の向上、国民皆保険・皆年金など社会保障の充実、医療技術の向上等により豊かな生活環境が整ってきており、1960年頃からはそれまでの多産少死から少産少死への人口転換が進み、1975年前後までの合計特殊出生率は人口置換水準前後の2.1前後で推移してきた。

1971~74年の第二次ベビーブーム以降、第一次オイルショックによる経済的な混乱や、人口増加傾向を受けて静止人口を目指す考え方が普及したこと等により、生まれる子どもの数が減少し続けるようになり、1975年に合計特殊出生率は2.0を割り込む1.91にまで低下した。低下し続ける合計特殊出生率は1980年代初めにやや回復したものの、80年代半ばから再び低下し続け、人口置換水準からのかい離も大きくなっていった。

図表3-1-2-1 出生数・合計特殊出生率・人口置換水準の推移

●80年代以降の少子化の要因

<非婚化・晩婚化・晩産化>

少子化に影響を与える要因として、非婚化・晩婚化及び結婚している女性の出生率低下などが考えられる。1970年代後半からは20歳代女性の未婚率が急激に上昇したほか、結婚年齢が上がるなど晩婚化も始まり、1980年代に入ってからは、30歳代以上の女性の未婚率も上昇しており、晩婚と合わせて未婚化も進むこととなった。

年齢別出生率を見ると、1950年・70年は20代半ばでピークを迎える山型の曲線を描いているが、次第にそのピークが推移していき、出産年齢が上昇するとともに、出生率の高さを示す山が低くなっていくなど、出生率の低下と晩産化が同時に進行していることがわかる。また、1980年代以降は、晩婚化・晩産化により、20代の出生率が大幅に下がり、30代の出生率が上昇するという出生率の山が後に推移する動きがみられるようになった。

図表3-1-2-2 年齢別出生率の推移
図表3-1-2-3 年齢別未婚率の推移

さらに、デフレが慢性化する中で、収入が低く、雇用が不安定な男性の未婚率が高いほか、非正規雇用や育児休業が利用できない職場で働く女性の未婚率が高いなど、経済的基盤、雇用・キャリアの将来の見通しや安定性が結婚に影響することから、デフレ下による低賃金の非正規雇用者の増加などは、未婚化を加速しているおそれがある。

<女性の社会進出・価値観の多様化>

1985年に男女雇用機会均等法が成立し、女性の社会進出が進む一方で、子育て支援体制が十分でないことなどから仕事との両立に難しさがあるほか、子育て等により仕事を離れる際に失う所得(機会費用)が大きいことも、子どもを産むという選択に影響している可能性がある。

また、多様な楽しみや単身生活の便利さが増大するほか、結婚や家族に対する価値観が変化していることなども、未婚化・晩婚化につながっていると考えられる。

●少子化への取り組み

1990年の「1.57ショック」により厳しい少子化の現状が強く認識されるようになったものの、最初の総合的な少子化対策である「エンゼルプラン」がまとめられたのは1994年、少子化社会対策基本法が制定されたのは2003年であった。1970年代から整備された高齢者向け社会保障制度に比べて、少子化対策は非常に遅れをとっている。

少子化社会に関する国際的な意識調査によれば、「あなたの国は、子どもを産み育てやすい国だと思いますか」の質問に対して、日本では4割以上が「そう思わない」と回答しており、国際的に見てその割合は相当に高い。

図表3-1-2-4 子どもを産み育てやすい国だと思うか
[目次]  [前へ]  [次へ]