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第2章 人口・経済・地域社会の将来像

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(6)財畜・投資と経常収支

●人口と経常収支、財政収支-人口のバランスと経済全体のバランスは密接に関係している

経済統計上、生産された価値と分配された価値は等しくなる。この関係は(1)式のように表され、この関係をより詳しく表すと(2)式のようになる。(2)式からわかることは、消費、貯蓄などの経済活動、国の財政状況、海外との経済取引等が結び付いていること、ただしこれらは恒等式なのでその関係は一方的ではなく相互に関係し合っているということである。

貯蓄・投資と経常収支に関する計算式

このような様々な経済活動は相互に複雑に絡み合っているものであるが、(1)式で表されるように、シンプルにとらえれば重要なのは消費と貯蓄である。消費や貯蓄の動きは、人口の総数や人口構成に大きく関わっている。それゆえ、人口の見通しは経常収支や財政収支の見通しとも密接な関係性を有する。

●経常収支の将来見通し

日本では、1980年代以降長きにわたって経常収支黒字を計上してきた。2000年代に入って以降もなお、工業製品の輸出などによる貿易収支黒字を中心として、経常収支の黒字が続いてきた。しかしながら、2011年の東日本大震災発災以降、原子力発電所の停止による燃料輸入の増加や生産拠点の海外展開などにより貿易収支の構造が変化してきており、それに伴い経常収支の黒字も縮小傾向にある。

今後の経常収支の見通しについては、様々な見方があり、黒字が続いていくという見方もあれば、赤字が定着していくという見方もある。経常収支は、貿易収支、サービス収支、所得収支、経常移転収支の合計、家計・企業・政府各部門の貯蓄・投資バランスの合計、資本収支と外貨準備増減の合計という3つの見方ができる。それぞれの要因をどのようにとらえるかによって将来見通しが変わってくる。

●貿易・サービス収支の将来見通し

経常収支のうち、大きな割合を占める貿易収支の動向について見てみる。前述の通り、東日本大震災後、福島第一原発事故を受けて、国内の原発が相次いて停止した後、一部を除いて再稼働できない状況が続いている。代替手段として、火力発電の割合が高くなっており、それに伴う燃料輸入の増加や近年まで高止まりしていた原油価格の影響を受け、輸入が大きく増加し、貿易収支の赤字要因となってきた。

また、2008年のリーマンショック以降、円高が進んだことにより、日本企業の製造拠点の海外展開が進んだことがある。これにより、海外で生産し、海外で販売する流れが作られ、日本国内からの輸出が減少することとなった。また、足下の円安により、国内回帰の動きはあるものの、アジアをはじめとした新興国との厳しい競争にさらされる環境にある。

今後の貿易収支の動向を見るにあたって、以下の点に留意する必要がある。一つは、足下で下落傾向にある原油価格の動向である。今後、原油価格が低い水準で推移するようであれば、原燃料輸入の減少やコスト低下による競争力の向上などが考えられる。また、足下で続く円安傾向は、日本製品の価格競争力を回復させるとともに、製造拠点の国内回帰を促す動きとなる。

さらには、近年増加している外国人観光客による国内での消費も挙げられる。アジア諸国の所得増、ビザ発行の条件緩和などにより、日本を訪れる外国人観光客が増加している。外国人観光客が日本国内で観光、食事、宿泊、買物などの消費活動を行うことは、外国人の直接購入として扱われ、貿易収支黒字の要因の一つとなる。

なお、対外資産からの投資収益である所得収支について見てみると、日本では、これまでの経常収支黒字の累積により対外資産が増加しており、それに伴い、所得収支の黒字は増加基調となっている。企業の海外展開は輸出の減少につながるという面もあるが、対外資産の増加でもあり、所得収支の黒字化要因でもある。所得収支の黒字は、貿易収支が赤字傾向でありながらそれを打消し経常収支が大きく赤字となっていない重要な要因である。今後、直接投資を中心とした海外での稼ぐ力を高めていくことができれば、黒字基調を続けていく可能性も考えられる。

●貯蓄・投資差額の見通し

マクロ経済学的に見れば、経常収支は上記(2)式のように、部門別の貯蓄投資差額の和としてとらえることができる。これは言い換えれば、これまで経常収支黒字が続いてきたのは、一般政府部門の赤字を民間貯蓄の黒字が上回ってきたためであると考えることができる。

資本蓄積は人口構成の影響を受ける。一つは、人口の高齢化が進むと、貯蓄率の低下が起こる。これは、若年者は将来の生活や子育てに備えて貯蓄を行う一方、高齢者は若年期の貯蓄を取り崩して生活することが多いため、人口に占める高齢者の割合が増加すれば、社会全体としての純貯蓄は低下するためである。

もう一つは、人口の高齢化が進むことにより、社会全体の投資が減少するということがある。例えば、人の数が減れば必要な住宅の量は減少する。また、それに付随するインフラ投資も少なくなる。あるいは、企業が投資をする際に、従業員の数が減れば、企業による資本ストック需要も減少することとなる。

このように民間部門の貯蓄(投資)の黒字幅が縮小した場合、政府部門の赤字幅が同じように縮小しなければ、経常収支は黒字から赤字へ急速に変化することになる。

図表2-6-1 部門別貯蓄・投資差額の見通し

●経常収支と資本収支-急激な変化下では経済や財政に強い圧力がかかる

国際収支統計では、経常収支、資本収支、外貨準備増減の和はゼロとなるため、外貨準備増減を捨象して考えれば、経常収支が赤字となると資本収支が黒字となる。これは、経常収支が赤字の状況では、財政や民間投資等の資金需要を確保するためには、海外からの資金が流入超過になることを意味している。民間部門の貯蓄の黒字幅が縮小する一方、政府部門の赤字幅は縮小しない場合、その赤字のファイナンスを海外の資金に頼る必要が出てくるということである。

このように、人口の総数や人口構成の変化は消費、貯蓄の動向などを通じて、経済全体のバランスに変化を生じさせる。急激な変化は経済活動や財政に強い変化の圧力がかかることを意味することから、できるだけそうした変化は緩やかであることが望ましいと考えられる。

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