第2章 人口・経済・地域社会の将来像

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(1)総人口

●将来推計-現状のまま推移した場合、100年後には現在の3分の1まで急減

国立社会保障・人口問題研究所は、「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」において、日本の将来推計人口を算定している。

将来推計人口とは、基準となる年の人口を基に、人口が変動する要因である出生、死亡、国際人口移動について仮定を設け、推計した将来の人口である。将来の出生、死亡の推移は不確実であることから、それぞれ中位、高位、低位の3仮定を設け、それらの組合せにより9通りの推計を行うことができる。

例えば、基準となる年の人口を2010年10月1日の総人口1億2,806万人とし、出生推移を中位(合計特殊出生率について、2010年に1.39の実績値が2013年まで推移し、その後、2024年までに1.33に下降、その後、2060年までに1.35まで上昇)、死亡推移を中位(平均寿命について、2010年には男性79.64歳、女性86.39歳が、2060年には84.19歳、女性90.93歳まで上昇)、国際人口移動については、日本人は2004年から2009年までの入国超過率の平均値を、外国人は1970年以降の入国超過数の平均値として算定する。

その結果に基づけば、総人口は2030年の1億1,662万人を経て、2048年には1億人を割って9,913万人程度となり、2060年には8,674万人程度になるものと推計され、現在の3分の2の規模まで減少することとなる。さらに、同仮定を長期まで延長すると、100年後の2110年には4,286万人程度になるものと推計される。

図表2-1-1 日本の将来推計人口

●将来推計-出生率が回復した場合、人口減少が収束して1億人程度で安定

仮に合計特殊出生率が回復し、将来的に人口減少が収束する状態に到達する将来像について推計してみる。

具体的には、出生の仮定だけ変化していくものとし、合計特殊出生率が2030年までに人口置換水準である2.07まで急速に回復し、それ以降も同水準を維持すると仮定する。なお、死亡の仮定は中位とし、国際人口移動の仮定は加味しないものとする。

その結果としては、2060年には総人口が1970年代前半の水準である1億545万人となるものと推計される。さらに、2090年代半ばには人口減少が収束し、2110年には1960年代後半の水準である9,661万人程度となり、微増・ほぼ横ばいになるものと推計される。

図表2-1-2 日本の将来推計人口(将来の人口減少が収束する場合)

●現在までの総人口の推移-2005年から死亡数が出生数を上回るようになった

戦後以降の現在までの総人口の推移をみると、まず1940年代は1947~49年に起きた第一次ベビーブームの影響により、総人口は大きく増加を始めた。

1950年代は、多くの先進諸国と同様に多産少死から少産少死へとシフトする人口転換が起きた。合計特殊出生率は3.65(1950年)から2.04(1959年)へ急激に低下し、出生数も年間234万人(1950年)から年間163万人(1959年)へ急激に減少した。一方死亡数は、長寿化に伴い年間91万人(1950年)から年間69万人(1959年)へ減少した。その結果、総人口は増加していった。

1960年代は高度経済成長の中、総人口は安定的に増加を続けた。合計特殊出生率は2.0~2.2程度で推移し、一方、死亡数は年間70万人程度で推移し続けた。その結果、総人口は1967年には1億20万人となり、初めて1億人を超えた。

1970年代は第二次ベビーブームの影響もあり、再び総人口が大きく増加し、出生数は1973年には209万人となった。しかし、合計特殊出生率が1974年に人口置換水準(親世代と子世代の人数が等しくなる出生率の水準。日本の場合は2.07)を下回り、70年代末には1.77(1979年)まで低下したため、出生数は減少することとなった。

1980年代においても総人口は緩やかに増加し続けた。70年代同様に、合計特殊出生率の低下に伴い出生数が減少し続けたが、依然として死亡数を上回っていた。なお、合計特殊出生率は1989年にひのえうま(1966年)を下回る1.57を記録した。合計特殊出生率が低下を続けた要因として、ライフスタイルに対する価値観の多様化や女性の社会進出に伴う未婚化・晩婚化の進行等が指摘されている。

1990年代から現在にかけて、総人口は2008年に最多の1億2,808万人となった。しかし、同年前後から死亡数が出生数を上回り推移するようになり、減少に転じた。直近の2014年は1億2,708万人となっている。合計特殊出生率は90年代以降も緩やかに低下を続け、2005年には過去最低の1.26となったが、その後は微増に転じ、直近(2014年(概数))は1.42となった。また、出生数は合計特殊出生率の低下に伴い減少を続け、一方、死亡数は65歳以上の高齢者の増加に伴い増加を続けた。そのため、死亡数が出生数を上回る結果となった。なお、直近の2014年(概数)には死亡数が127万人、出生数が100万人となった。

図表2-1-3 日本の総人口・出生数・死亡数の長期的推移
図表2-1-4 日本の出生数・合計特殊出生率の長期的推移

●普通出生率の国際比較-日本は最下位グループに属している

日本の出生率を世界と比較すると、2005-2010年平均の普通出生率は8.7で世界201か国のうち199位(下から3位)となっており、最下位のドイツ(8.4)やイタリア(9.5)と並び著しく低い状況である。

図表2-1-5 世界201か国における普通出生率(2005-2010年平均)

●総人口の国際比較-現在の日本は10位だが下降を続けている

世界人口における日本の総人口の順位は年々低下している。1950年は世界人口25.26億人のうち8,412万人(世界人口比3.3%)で世界5位に位置付けられていたが、1980年には世界人口44.49億人のうち1億1,706万人(世界人口比2.6%)で7位に後退し、直近の2013年は世界人口71.62億人のうち1億2,730万人(世界人口比1.8%)で10位まで後退している。

さらに将来の人口推計をみると、2030年は世界人口84.25億人のうち1億1,661億人(世界人口比1.3%)で13位、2050年は世界人口95.51億人のうち9,604万人(世界人口比1.0%)で20位と予想されており、そのとおりに推移した場合にはプレゼンスの低下は避けられない。

図表2-1-6 人口上位20か国の推移(1950,1980,2013,2030,2050年)
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