第5回記者会見要旨:平成31年 会議結果

茂木内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:平成31年4月10日(水曜日)18時13分~18時52分
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S101・103会見室

1.発言要旨

それでは、経済財政諮問会議の概要について御報告いたします。
本日は、最初に夏の骨太方針の策定に向けて、一つは「社会保障制度改革」、もう一つは「ジョブ型の雇用時代の人的資本投資」について、そしてそれが終わってから、御案内のとおり、日本時間で言いますと明日の未明にEUの首脳会合も開かれるということですが、「英国のEU離脱の動向」についても議論を行いました。
「社会保障」につきましては、新経済・財政再生計画の着実な実行・推進が不可欠であり、特に2点ありますが、一つは、地域医療構想の実現に向け、効率的・効果的な医療・介護サービス供給体制の構築や、医療・介護費の地域差の縮小に取り組むべき、もう1点、次世代型行政サービスの推進のため、全国保健医療ネットワークの本格稼働を実現すべきと、こういった意見がありました。
また、二つ目の「ジョブ型雇用時代の人的資本投資」につきましては、これは特に就職氷河期世代と言われる人たちに対して、地域ごとに対象者の状況把握を進め、KPIなどを掲げて不安定就業者を着実に減少させていくこと、そして、民間事業者の協力も得て取組の加速化を図るとともに、官民一体、地域横断でノウハウの共有や新規能力開発プログラムを充実させる、などを内容とする就職氷河期世代の支援のための実行プログラムを打ち出すべき、こういった意見があったところです。
総理から私に対しまして、この夏までに厚生労働大臣や総務大臣、経済産業大臣、その他関係閣僚の協力も得て、就職氷河期世代の方々の活躍の場を更に広げるための3年間の集中プログラムを諮問会議で取りまとめるよう指示があったところです。
最後に、「英国のEU離脱の動向」について議論を行いました。今後の見通しにつきましては、まず未明の会議がどういった結論になるかもはっきりしておりませんので、不確定な要素が多分にありますが、関係閣僚と連携しつつ、国際経済情勢の動向に引き続き注視しながら、マクロの経済運営に万全を期してまいりたいと考えております。
総理からの締めくくり発言につきましては、お聞きいただいたとおりです。
詳細については、また後ほど、事務方から説明させていただきたいと思います。


2.質疑応答

(問)就職氷河期世代の件ですけれども、3年間の実行プランの中には、不安定就業者の方々を半減するということも含まれると理解してよろしいでしょうか。


(答)半減ですか。


(問)はい。民間議員の先生方、そのような御提案を今日されていますけれども。


(答)先ほど申し上げたように、この就職氷河期世代、今30代の半ばから40代の半ばを過ぎようとしているということであり、待ったなしの課題と言いますか、この人たちの活躍の場をどう見つけていくか。今、非正規の労働であったりフリーターであったり様々な形で就職の状態が安定していない人たちを安定化させていく、そういった意味で、まずは、地域ごとに対象者がどれくらいいるのか、また、その状況がどうであるのか。この把握を行った上でKPI、ここの中には当然、数が入ってくる可能性もありますが、今決めているわけではありません。そういったものについても、しっかり目標・計画を決めて不安定就業者を着実に縮小させていくことが必要であると考えております。夏にはまとめますが、今のところでどれだけにするかが決まったということではありません。


(問)民間議員の方の提案の中には、無業者の働いていない方も含まれるという御提案内容だったと思いますが、就職氷河期の時に就職できなかった方の中には、それがきっかけとなってひきこもりになってしまった方もいらっしゃるかと思うのですけれども、今回、このような世代の中でのひきこもりのような方も含まれているという認識でよろしいでしょうか。


(答)含んでおります。この就職氷河期世代、あまりそういった呼び方が良いとは思いませんが、30代の半ばから40代の半ばを過ぎた方は1,700万人弱ぐらいの人数になり、だいたいこの中に仕事に就いていない方、またひきこもりの状態にある方、こういった方もいらっしゃいます。それから、今フリーター的な活動をされている方もいる。それから、もちろん正規の方でしっかり仕事をしている人というのは多いのですが、非正規で就業の状態が安定していない、こういった方もいまして、数で言いますと、この非正規の方の方がフリーターや無業者より多いわけです。いずれにしても、先ほど申し上げたように、対象者としてはそういった方々も含めて、それぞれの方の事情というのを聞かないと、新卒として22歳で就職する人とは違うわけですから、それぞれがこれまでにたどってきた人生や経験、いろんなものを踏まえ、また、そういった中で置かれている環境といったものも踏まえて、きちんとそのアドバイス、コンサルティングも含めて様々な対応をする。例えば場合によってはそういった人たちに対して、実はこういう研修プログラムがある、また、こういうのを受けてみたらどうだ、といったアドバイスをしたり、逆にその出口、つまり就職といったことも視野に入れながら、どういった取組をしていくかということを考える必要があるのではないかと思っております。ドバイスをしたり、逆にその出口、つまり就職といったことも視野に入れながら、どういった取組をしていくかということを考える必要があるのではないかと思っております。


(問)就職氷河期世代の方々の存在というのは、かねてずっと認識されていたことだと思いますが、なぜこのタイミングで待ったなしの対応になっているのか、なぜ政府が今本腰を入れなければならないのか、ということについて御見解をお願いします。


(答)この課題、第一次安倍政権で、再チャレンジ、これに取り組んでいた時以来の課題ということですが、今、全世代型社会保障改革、ここの中で、誰もがいくつになっても活躍できるような社会を作っていく。そういった中で、今、特に雇用の問題に取り組む、この3年間で進める最初のプログラムの中で雇用という問題がある。そうなってきますと、雇用の中でも、例えば65歳以上の方々、これが人生100年時代を迎える中で、どういった形で意欲のある方々が働き続けられるような環境を作っていくか、といった課題もあるわけです。これまでも議論してきましたが、大きな課題として、この就職氷河期の方々は、ボリューム的にも大きいですし、社会的にも、この人たちがやはりこれだけ雇用情勢が良い中であってもしっかり仕事に就けていないということであれば、これは全体として、経済的にも社会としても損失である。そういったことで、早急に取り組む必要がある課題ということで今回取り上げた次第です。




3.多田内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明

平成31年第5回経済財政諮問会議について、概要を報告いたします。
先程、大臣からもありましたように、今日は3つの議題でした。
最初に、「社会保障」について中西議員から資料1、「ジョブ型雇用時代の人的資本投資」について柳川議員から資料2の説明があり、各議員から意見が出されました。
主な御意見を御紹介いたします。
まず、厚生労働大臣から、一つ目の社会保障についての御発言です。資料についての御説明でした。2040年を展望し、本年夏を目途に「健康寿命延伸プラン」と「医療福祉サービス改革プラン」を策定すべく作業を進めている。
その際、一億総活躍、イノベーション、社会保障の枠組みを超えた他分野にもウィングを広げた連携強化の3つの視点を加えて、攻めの姿勢で考えていく。このため、先月から農業や住宅などの関係業界との政策対話を行う場を始めた。
2040年に向けて今回新たに目標を設け取り組む。健康寿命を男女ともに3年以上延伸し、75歳以上とするとともに、医療福祉分野の生産性を全体として5%以上向上させる。
これにより、将来の総就業者数を増やすとともに、少ない人手でも回る医療福祉の現場を実現する。
健康寿命延伸については、ナッジの考え方など個人の行動変容を促す新たな視点を取り入れていくとともに、特定健診とがん検診の同時実施など好事例の横展開を進める。
保険者インセンティブについて、配点基準のメリハリ強化とともに、成果指標の導入拡大も検討する。
医療福祉サービス改革については、ロボット、AI、ICT等の活用を進める。特に介護分野では、業務仕分け、元気高齢者の活躍の場の創出、ロボット・センサー・ICT活用による介護現場の革新を行い、魅力を発信する。
それから、地域医療構想については、今日の民間議員からの指摘を受け止めて、次の社会保障について議論頂く場において説明をさせていただく。こういった御発言がありました。これが社会保障についてです。
それから、人的資本の方について、これも資料について御説明がありました。
前回の諮問会議においても議論があったと伺っているが、厚生労働省としてはSociety 5.0時代に向け、個人のステップアップを後押しし、人口減少の中で労働市場全体での人材の最適配置を進めていく。
技術革新に対応したリカレント教育の推進、職場・仕事の「見える化」や、中途採用拡大に向けた企業への働き掛けの強化などに取り組む。
前回、総理から御指示のあった就職氷河期世代については、再チャレンジ施策や経済の好循環に伴い、フリーター等の数は相当程度減少しているが、一方で、支援を必要とする方々が現存するのは事実。
これらの方々は、企業に評価される職務経歴が少ないまま、既に40歳代後半になる方もおられる中、安定した職業に就けない、収入が低い、将来のセーフティーネットが弱い、といった課題に直面している。
このため、厚生労働省として、「就職氷河期世代 就職実現総合プラン」を取りまとめ、「対象者の状況に応じた能力開発メニューの充実」などの施策を展開し、安定した就職への道筋を付けるとともに、生活支援の充実、社会保険の適用拡大等によるセーフティネットの強化に取り組む。
この方々が社会の担い手として活躍するには、企業の理解が不可欠。厚生労働省としても全力で取り組んでいくので、経済界にも、再チャレンジに取り組む方々を、是非、積極的に受け入れていただけるよう働き掛けていきたい。
次に、総務大臣です。社会保障の関係で、次世代型行政サービスの推進に関連して、マイナンバーカードと健康保険証との一体化を進めることが重要だ。これにより、転職などで保険者が変わっても新たな保険証の発行を待たずに医療機関で受診できるとともに、過誤請求や保険者の未収金の防止や、なりすましの防止、高額医療費の限度額認定証の発行等の削減などの効果が期待される。
また、医療分野におけるデータの正確性・信頼性が向上することで効果的な保険事業の実施などにも貢献できるとされている。
引き続き、関係府省庁とともに連携し、2020年度からマイナンバーカードが健康保険証として利用できるよう取り組む。こういった御発言がありました。
次に、もう一つの議題の就職氷河期世代の人生再設計に関して、地方部では、農林水産業や建設業をはじめ、人材不足が指摘されており、持続可能な地域社会作りのためにも担い手確保が必要です。
就職氷河期世代の就業安定化も重要な課題であり、一方で地方に担い手確保のニーズがあることから、これらをマッチングさせた地方での就業促進が非常に有益だ。職業訓練、就業相談、住まい等の生活環境の整備等に関する情報をワンストップで包括的に提供していくことなど、この世代の方々の意識を地方に向けていくことが一層重要だと考えている。こういった御発言がありました。
続いて、経済産業大臣です。社会保障の方についての御発言です。
保険者機能の強化については、全世代型社会保障の重要な柱として、3月20日の未来投資会議で疾病・介護の予防・健康インセンティブの強化をテーマに議論した。私からは、産業構造審議会における検討成果をまとめ、提案を行った。従来の医療・介護制度は病気や要介護になってからの対応が中心だったが、今後は公的保険制度の中でも予防・健康づくりに傾斜をかけるべき。同時に、ウェアブル端末やデータを活用した優れた民間サービスを積極的に活用すべきと申し上げた。総理からは、国民健康保険における「保険者努力支援制度」の抜本的強化と配分のメリハリの強化、介護の予防については、「介護インセンティブ交付金」の抜本的強化などについて、具体的な検討を進めるとの締めくくり発言があった。厚生労働省とも協力して、今年の夏に取りまとめる成長戦略の実行計画に向けて具体的な検討を進めていきたいという御発言でした。
閣僚としては最後に、麻生副総理・財務大臣から御発言がありました。今後の社会保障を取り巻く環境を考えると、必要となるサービスを効率的に提供していくことが重要な課題であるとのことでした。本日議論になった、過剰な病床の削減や調剤報酬などの公定価格の適正化、医療・介護の保険者向けのインセンティブ施策のメリハリ強化などをしっかり進めていく必要があるとのことでした。こうした取組も含め、社会保障制度の持続性を確保するため、今後、給付と負担の見直しも含めた社会保障全般にわたる改革に取り組んでいかなければならないと考えているといった御発言がございました。
以下、民間議員です。
厚生労働省からの資料に関連して、社会保障の生産性向上について2040年まで見て5%改善していくと言うが、これをどうやって高めるか。AIが使える分野は多く、これにより人手も削減できると。そのためにはデータの共有が重要で、プライバシーもあるが、どうするか考えるべきだと。レセプトを医者が使えるようにするのは比較的簡単なのではないか。
調剤薬局について、院内外の価格差があるために、病院には薬剤師が集まらず、調剤薬局が増え過ぎるというのは問題ではないかという指摘。
それから、就職氷河期についてのチャレンジは、とにかくこれをクリアしていくことが言わば天下分け目の戦いではないかと。これがうまくいけばジョブ型雇用が進んでいくと考えている、といった話がありました。
別の民間議員です。就職氷河期の問題は、これまで企業として、この民間議員のペーパーにあるような捉え方を真剣にしてこなかったのは事実であると。企業として社内失業の戦力化、キャリア採用の強化などは試みとしてやってきている。あるいは、企業としての取組としては進めてきているが、2000年代のITバブルの崩壊、リーマンショックによる影響など、世代の問題として重要となっていると。企業としては、これまではどちらかと言うと、ひきこもりの問題に焦点が行っていたように思う。やる気がある人の非正規の問題をどうするかも重要。これからしっかりと挑戦していきたいと思っているので、また関係大臣とも議論をしていきたい、といった御発言がありました。
別の民間議員です。社会保障改革については、法定外繰入の早期解消、データヘルスの推進、住所地特例制度の見直し、予防・健康づくり、普通調整交付金の改革、ACPの周知・取組を進めるべき。
それから就職氷河期については、助成金支給の見直しをすべきという御発言でした。
別の民間議員です。社会保障の問題は喫緊の課題であり、期限を区切って、スピード感を持って取り組むことが重要だ。とりわけ地域医療構想の実現、次世代型行政サービスにおけるデジタル化を通じた生産性の向上が重要だという御発言がありました。
以上が「社会保障」、それから「人的資本投資」についての意見の御紹介です。
次に、三つ目の議題として、英国のEU離脱の動向について、資料5を私の方から説明させていただき、その後、各議員より意見が出されました。
主な御意見を御紹介したいと思います。
まず、麻生副総理・財務大臣です。
2016年6月に英国の国民投票でEU離脱が決定した後に、市場が変動した際には、G7議長国として財務大臣・中央銀行総裁の共同声明を発出し、市場の安定化を図ったところ。ブレグジットを巡る不透明な状況も踏まえつつ、緊張感を持って注視し、必要に応じて適切に対応する。ただ、現時点では、よく状況が分からないと、こういった御発言がありました。
日銀総裁です。
金融市場の観点から見ると、最近の国際金融市場は総じて落ち着いており、ポンド、英国株は、年明け以来、上昇傾向にある。これは安心材料である一方、合意なき離脱のリスクが、そのマーケットで織り込まれていないとも言える。合意なき離脱は、市場への影響、それを通じて家計への影響は大きく、今晩の会合の状況も踏まえ、予断を許さないと考えており、この問題の帰趨、市場への影響を、日銀としても注視していきたい、といった御発言でした。
民間議員の一人です。ブレグジットについて、EU側の意見は、来年3月まで延ばすと。要するに、イギリス側の期限を何度も小刻みに延ばすということではなく、来年3月まで延ばすということだと。メイ首相は期限を短く切って、短期のプレッシャーで進めていきたいと、こういうお考えを持っているようだが、もし、このEU側の提案のとおり来年3月までということになり、メイ首相が合意すれば、上手く行かないことの責任を自分たちで背負いたくないという考え方の人たちも多いブレグジット派もその考え方に乗り、意外に早くまとまるかもしれないと考えていると、これは個人的な観測として御発言がありました。
別の民間議員ですが、経団連や企業もブレグジットの動向はしっかりと注視していると。現時ではガイダンスを出せるような状況ではないが、個別企業としてはそれぞれ対策が進められていると認識をしている。ただし、コストも掛かっており、正直に言えば、その悲鳴が上がっているということも事実だと。政府においては、引き続きEU側、英国側ともしっかりと対話を進めてもらいたい、といった御発言がありました。
以上で意見交換が終わり、最後に総理から締めくくりの御発言がありました。私の方からは以上です。



(以上)