第9回記者会見要旨:平成29年 会議結果

石原内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:平成29年6月2日(金曜日)18時25分~19時04分
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S101・103会見室

1.発言要旨

第9回経済財政諮問会議の概要を申し上げます。
本日は、まず、塩崎大臣から、総理が5月31日に発表されました「子育て安心プラン」について報告があった後、骨太方針の素案について議論を行いました。
諮問会議でのこれまでの議論を踏まえまして、今年の骨太の方針では、一億総活躍社会の実現に向けて、成長と分配の好循環を加速させるためには、人材への投資を通じた経済社会の生産性の向上が鍵であること、改革に当たっては、基礎的財政収支を2020年度までに黒字化し、同時に債務残高対GDP比の安定的な引き下げを目指すこと、「経済再生なくして財政健全化なし」との方針の下、デフレ脱却と経済再生、歳出改革、歳入改革という「3つの改革」を確実に進めていくことをお示しすることとなったわけです。
最後に、総理から、スピード感をもって骨太の方針を取りまとめるよう与党との調整を急ぐように指示がありました。
1週間、与党の皆様と調整、議論させていただいた上で、次回の諮問会議で諮問・答申を行いたいと考えています。
詳細については、事務方から説明させていただきます。



2.質疑応答

<債務残高対GDP比>

(問)債務残高対GDP比を安定的に引き下げるという御発言について、低金利や名目GDPの拡大でも債務残高対GDP比は下がっていくと思いますが、この2つのコントロールには限界もあるかと思います。その債務残高対GDP比を安定的に引き下げるために何が必要か、大臣のお考えをお聞かせください。

(答)それは、今、御質問の中にあったとおり、債務残高対GDP比を安定的に引き下げていくには、今のような、景気が拡大していくような、また、金利と景気の拡大との間に差があるというような、こういう経済状況をつくっていくことが重要なのだと思っています。その重要性を明確化する意味で、今回の骨太方針の文言の中に「同時に債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指す」というように加えさせていただいた、と御理解いただければと思います。

(問)同じく債務残高対GDP比について、これまでの骨太方針では、PBの目標達成の後に安定的に引き下げる、という文言であったものが、今回「同時に」となりました。その部分を巡って色々な解釈も出ていまして、担当大臣として、この部分をどのように解釈されていらっしゃいますか。目標が変わったのか、変わっていないのか、改めてお考えをお願いします。

(答)御質問を逆から言いますと、「PBを2020年度までに黒字化し」というものが落ちていたり、順番が変わっていたら、御指摘のような議論が出てくるのだと思いますが、「PBを2020年度までに黒字化し」ということを主文にさせていただいていまして、2020年度のPB黒字化目標の位置づけは何ら変わっていないというように私どもは文章の上で解釈させていただいています。
そして、先程の御質問にもありましたとおり、そういうことが可能である経済状況をつくっていくことが重要である。その重要性をより明確にする趣旨で、このような記述になっていると御理解いただければと思います。

<幼児教育・保育の早期無償化>

(問)今回の骨太方針に、保育や幼児教育の無償化なども早期に実現するというような形で盛り込まれましたが、財源についてはまだこれから検討ということです。今後、少し気の早い話かもしれませんが、なかなか大変な調整や議論になるかと思います。大臣としてどのようにお考えでしょうか。

(答)社会保障の分野についてはやはり不足米(たらずまい)があるのです。それを今の段階で明確にお示しするに至っていない、ということは事実です。そのような中で、人口減少、少子高齢化の中で女性の方々の就業率を8割まで持っていくという政策をとれば、安倍内閣になりまして保育士の方々の手当を上げたり、あるいは保育所の数もかなり増えていますが、更なるニーズというものが出てくる。ある意味では、やればやるだけまた更にニーズが出てくる。そういうものを、今日の塩崎大臣の御説明の中で、2年以内に具体的に解消していこう、と具体的にお話がありました。待機児童の解釈が変わりましたが、そういう広い待機児童のところまでやっていこう、とありました。それもある意味では、教育に対する投資ですよね。教育に対する投資、人に対する投資を通じて、女性の方が働く就業率が上がっていくということは、高齢化社会、就業者数が減る中で大きな力になるわけですから、経済社会の生産性の向上につながってくるものだと確信しております。こういう政策が入っているというように御理解をいただければと思います。

<債務残高対GDP比>

(問)石原大臣がおっしゃられていた債務残高対GDP比の引下げ案を同時に行うの「同時に」とは、何と同時になのでしょうか。これまでは、債務残高対GDP比を2020年度以降は安定的に引き下げていくという目標だったと思いますが、今回は2018年度からに前倒すという理解でいいのでしょうか。

(答)2020年度までにPB黒字化を目指すということは何ら変わっていないわけです。明記してあります。黒字化目標というものは、先ほどの質問の中にあったように何ら変わっていない。その後に「同時に」というのは、「同時に債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指す」。グロスで減っていかなければ意味がない、これも当たり前と言えば当たり前ですが、加えた。それは何故かというと、ここの部分については総理も国会でずっと答弁されています。債務残高対GDP比が安定的に引き下げられるような経済状況、すなわちアベノミクスでやってきた雇用環境、所得環境が改善して、有効求人倍率にしても1.48、全ての都道府県で1倍を上回り、正社員の方でも0.97、こういう状況なわけです。賃金も間違いなく、4年でおよそ8%上がっているわけです。そういう状態がなければ、PB黒字化を目指す、債務残高を減らす、と言っても、言うだけであって結果が出てこない。そういうことを包含して今回こういうような記述になっている、というように御理解いただきたいと思います。

(問)前倒すということではなくて、意義の、引き下げの重要性。

(答)前倒すという意味が分からないのですが、前倒すと誰が言ったのですか。

(問)「同時に」というのはいつからなのかなという、2018年度予算の編成方針なのに。

(答)全然違います。何度も言うように、PBの黒字化目標は何も変わっていません。2018年度というのは中間評価期間です。質問の意味が少し分からないのですが、そのように、私の説明のとおり素直に読んでいただければ何ら問題はないのではないでしょうか。


3.新原内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明

第9回経済財政諮問会議の概要を申し上げる前に、本日議論のあったPBの議論について、政府としての統一的な解釈を御説明します。
本日配付した骨太方針の素案に「基礎的財政収支(PB)を2020年度までに黒字化し、」と明記してあるとおり、2020年度のPB黒字化目標の位置付けについては、何ら変わっていません。むろん、後退もしていません。「同時に債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指す」と加えているのは、総理も国会で答弁されているとおり、債務残高対GDP比が安定的に引き下げられる経済の状況をつくっていくことが重要であり、その重要性をより明確にするという趣旨です。
それでは、会議の概要を申し上げます。
本日は、塩崎厚生労働大臣と加藤働き方改革担当大臣に御参加いただきました。最初に、5月31日に総理が発表した「子育て安心プラン」について、塩崎大臣から報告がありました。続いて、骨太方針の素案について、意見交換を行いました。 主な御意見等を紹介いたします。
民間議員から、「社会保障改革について、工程表の44項目を確実に実行する。社会保障関係費の増加について、5,000億円の目安を達成できるようフォローしていくことが大切である。Society5.0は、世界が直面する課題に取り組むものであり、日本がフロントランナーとして発信を行っていくべきである。政府の科学技術予算の拡充など、成長力強化に向けたメリハリのある予算編成をすべきだ。PB黒字の達成は財政健全化に必要な条件であるので、諮問会議でしっかりと議論していきたい。マイナンバーカードの普及はSociety5.0の切り札であり、普及度の数値目標の設定が必要である。地方の基金について、引き続きフォローしていきたい。」
別の民間議員から、「経済・財政一体改革は、いろいろな「見える化」につながった。EBPMの体制づくりにつながりつつある。2020年のオリパラに向け、ディープラーニングによる自動翻訳システムの開発・普及を盛り込んでいただき、感謝している。医療について、都道府県のガバナンスを効かせることに関する塩崎大臣の踏み込んだ発言があったことに感謝する。薬価について、費用対効果の評価をする組織の在り方に関しては、透明性の担保をお願いしたい。高い創薬力への構造変化のために、ゾロ新の薬価引下げについて記述していることに感謝する。ピカ新へのシフトは望ましいことだ。骨太方針は、教育や医療などの分野において、国民の安心やQOLを高める大きな方向性を示すものとなっている。国民に分かりやすいPR戦略が必要である。」
別の民間議員から、「夏のボーナス、最低賃金の引上げ、長時間労働の是正、処遇の改善などを通じた可処分所得の引上げが重要であり、ここを引き続きしっかり力を入れてやっていかなければならない。所得が伸びていくという期待感が高まれば、消費が活性化し、企業も価格の引上げがしやすくなる。経済界には処遇の改善について、是非実行をお願いしたい。所有者不明土地の有効活用のための方策について、長年解決できなかった課題であり、今回の取組を高く評価する。地方財政について、地方単独事業に自治体ごとの格差があり問題で、よく検証すべきである。薬価の抜本改革について、改革の工程表に位置付けていただきたい。」
別の民間議員から、「薬価制度への国民の信頼確保が大切である。こうした観点から、費用対効果を計測する組織体制は極めて重要である。Society5.0は経済活性化の鍵である。マイナンバーカードの普及は大事であり、いろいろな政策を組み合わせてほしい。日本の企業部門の貯蓄超過が諸外国と比べて高い。米英が1%、ドイツが3%、日本が5%となっている。安倍内閣の成果として収益が高まったことを反映しており、ただ、お金がたまっているということでもあるので、教育や投資にこういうお金を生かしていくことが必要である。」
総務大臣から、「地方財政審議会の意見が出ているので、踏まえていただきたい。マイナンバーカード普及のためロードマップを作ったので、取り組んでいきたい。基金については、自治体の調査を開始した。基金増だが、地方財政に余裕がある状況ではないと考えている。地方単独事業は自治体の状況をより詳細に把握したい。」
働き方改革担当大臣から、「労働生産性向上のため、総理をヘッドとした国民協議会をスタートしており、展開を図っていきたい。大学改革、教育改革が必要であって、リカレント教育を振興することを進めていく上で、産業界に対しても、新卒一括採用だけではなく、中途採用にも取り組んでいただきたい。」
財務大臣から、「平成30年度予算は経済再生と歳入歳出改革にしっかり取り組む。統計改革は各省ともしっかり取り組んでほしい。財務省もしっかりと取り組む。」
厚労大臣から、「薬価体系に費用対効果を反映するため、第三者視点に立った組織体制を検討する。診療報酬のレセプト審査について、医療職の活用拡大など、審査委員会の在り方も含め、広範な改革に取り組んでいきたい。」
官房長官から、「薬価改革は、今年から取り組み、効果が反映できるように取り組んでいただきたい。」これに対して、厚労大臣から、「しっかり取り組む。」
ここで、総理から発言がございました。
「本日は、骨太方針の素案について議論した。今年の骨太方針では、人口減少、少子高齢化の克服と一億総活躍社会の実現に向けて、成長と分配の好循環を加速させるためには、働き方改革や成長戦略の実行に加えて、人材への投資を通じた経済社会の生産性の向上こそが鍵となることを示したい。
改革に当たっては、基礎的財政収支を2020年度までに黒字化し、同時に債務残高対GDP比の安定的な引き下げを目指す。このため、「経済再生なくして財政健全化なし」との方針の下、デフレ脱却と経済再生、歳出改革、歳入改革という「3つの改革」を確実に進めていかなければならない。
石原大臣には、これまでの議論を踏まえて、与党との調整を進め、スピード感をもって骨太方針として取りまとめるよう御尽力いただきたい。」
最後に石原大臣から、「本日の御議論と、今後の与党での御議論を踏まえて調整した上で、次回の諮問会議で諮問・答申を行いたい」と発言がありました。
以上です。


(以上)