第13回記者会見要旨:平成28年 会議結果

石原内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:平成28年7月26日(火曜日)12時10分~12時29分
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S101・S103会見室

1.発言要旨

閣議は特に御報告する件はありません。
第13回経済財政諮問会議の概要について説明申し上げます。
まず、事務方から中長期試算について説明した後、高橋議員から、2020年度の財政健全化目標は、厳しい道のりではあるが、達成可能であり、働き方改革、産業構造の転換、イノベーションの活性化による潜在成長率の引上げ、所得の拡大に比べて拡大した税・社会保障負担を若者に還元すること、「経済・財政再生計画」に基づく歳出改革を加速すべき等々の提言がありました。
また、麻生副総理から、平成29年度概算要求に当たっての基本的な方針についての説明がありました。
その後、塩崎厚生労働大臣から、保育士・介護人材の処遇改善や最低賃金引上げに向けた生産性向上等に取り組んでいく旨発言があった後、民間議員より、潜在成長率を引き上げるための構造改革や、官民戦略プロジェクト10といった成長戦略の推進が必要との意見、介護・子育てなどの公的サービスの生産性向上や港湾整備等、民間からの投資の呼び水となる投資が必要との意見、最低賃金引上げに向けた中小企業の生産性向上が必要、実質可処分所得を引上げるべき、働き方改革について包括的なパッケージとして取り組むべき等々の意見がありました。
意見交換の後、「平成29年度予算の全体像」及び「経済財政諮問会議の今後の課題・取組」について、それぞれ資料3、資料5のとおり、経済財政諮問会議として取りまとめさせていただきました。
ここで総理から発言がありましたので、発言のポイントの要約を説明させていただきます。
引き続き、「経済再生なくして財政健全化なし」を基本方針に、2020年度の財政健全化目標をしっかりと堅持していく。このため600兆円経済の実現に向けた取組と、「経済・財政再生計画」に基づく歳出改革を加速していかなければならない。関係大臣に対しては、本日取りまとめた「平成29年度予算の全体像」を踏まえ、今後取りまとめる経済対策を実施するための補正予算と29年度当初予算を一体として、将来につながる切れ目ない対応を進めるよう指示されました。また、歳出・歳入両面のアベノミクスの成果を活用し、一億総活躍社会の実現に向けた重要施策を推進するとともに、政策効果の高い施策への重点化や歳出改革等の具体化を進めるよう指示がありました。
本日は、本年後半の諮問会議において取組を進めていく課題についても取りまとめました。
私からは以上です。


2.質疑応答


<財政健全化目標>
(問)中長期試算について1点お尋ねします。今日出された試算だと、2020年度のプライマリーバランス(PB)の黒字化達成に向けては、高い経済成長と更に国民に痛みを伴うような可能性のある歳出改革が必須条件になるかと思うのですが、大臣としてPB黒字化の実現可能性について、どのようにお考えでしょうか。
(答)財政が厳しい状態にあるということは間違いないと思います。政府としては、先ほど紹介させていただいたように、総理は「経済再生なくして財政健全化なし」を基本にするのだと改めておっしゃっています。その上で2020年度の財政健全化目標を堅持するというように総理が明言されているわけです。
民間議員からもPBの2020年度の黒字化に向けて提案がありました。先ほど説明させていただいたところですが、今日の高橋議員の説明の中で、消費がGDPに占める割合は大きいですから、足元では財政・金融政策を通じた消費や投資の喚起、アベノミクスの成果も、かなりのものが税収の形で出ているとお話がありました。そういう成果を活用した成長と分配の好循環の実現、それと、これはいつもお話をさせていただいておりますが、構造改革をしていかないと潜在成長率は高まらないわけです。こういうことを取りまとめて2020年度に向けて、追加的な公需に依存しなくても済む力強い民需を誘発していく、経済成長を実現することが、今、御質問されたことに対する答えのような気がいたします。
「経済・財政再生計画」に基づく歳出改革を継続することはもちろんです。社会保障の分野についてはまだ分析は終わっていないのですが、当初の予定よりも多く切り込めていますし、歳出も失業率が低下したことによって生活保護費等々も下がっている。そういうものをしっかりと見据えて、歳出・歳入改革の努力を怠ってはいけませんし、公的分野の中でも産業化やインセンティブ改革、見える化といった取組を含めた改革工程表の着実な実施というものが、2020年度のPB黒字化につながるのではないかと考えています。
その前に2016、2017、2018で、2018年度の中間評価を踏まえた歳出改革の加速、それと忘れてはいけないのは2019年に消費税の増税があります。その時に軽減税率を導入しますので、この安定財源も確保するということをしっかりと政府としては踏まえて、改革、経済あるいは財政改革を一歩一歩着実に進めることが、今の御質問に答える唯一の回答ではないかと考えています。
(問)関連して伺います。大臣は6月2日の記者会見で2020年度のPB黒字化に関して、厳しい目標ではあるが、単年度なので十分達成可能と考えているという見解を示されたと思うのですが、その見解に変更はないでしょうか。
(答)中長期試算では、ベースラインケースと経済再生ケースと2つ示させていただいています。
経済再生ケースというのは、安倍内閣の進めている経済財政政策の効果が着実に実現することで、生産性の向上などによって日本経済のパフォーマンスを取り戻すと、政府が目標としている経済成長が実現するケースだと思っています。これは再三再四、国会で議論されてまいりましたが、アベノミクスの経済効果は、デフレではないという状況をつくり出すことはできた、しかしながら、デフレ脱却と言い切れるところまではまだ来ていない。
そのような中で、これもいつもお話させていただいていますが、雇用と所得環境は間違いなく改善して好循環が生み出され、企業の業績も上がっている、そういうものが引き続いて、まだ3年半しかたっていませんので、賃金については4巡目、5巡目、成長の姿につなげていく必要があるのだと思っています。
そういうことを考えますと、厳しいですが、しっかりやっていけば、需給ギャップの点も含めて十分に解消することは可能であると現在は考えています。


3.黒田内閣府参事官(総括担当)(政策統括官(経済財政運営担当)付)による追加説明


私の方から補足説明をいたします。
本日は、菅官房長官が御欠席でした。また、塩崎厚生労働大臣、加藤一億総活躍担当大臣に御参加いただきました。
本日は、中長期の経済財政に関する試算、「平成29年度予算の全体像」及び平成29年度概算要求基準、「経済財政諮問会議の今後の課題・取組」について、併せて議論を行いました。
事務方から資料1、高橋議員から資料2、麻生議員から資料4、事務方から資料5について説明・問題提起があり、その後、意見交換を行いました。
主な御意見等を御紹介いたします。
まず厚労大臣から、「厚労省として、一億総活躍社会の実現や社会保障制度改革に積極的に取り組みたい。保育や介護の人材の処遇改善について、財源を確保しつつ、予算編成過程で検討を行いたい。最低賃金について、骨太方針を踏まえ、中央最低賃金審議会で議論がされてきており、本日が最終回である。最低賃金との関係で生産性の向上が図れるよう政策対応を行いたい。」
民間議員から、「20日に政策コメンテーター委員会を開催した。「デフレからの完全脱却に向けて」、「潜在消費・投資の喚起」、「働き方改革、女性の活躍や少子化対策」について意見交換を行った。働き方改革や女性の活躍が大切というのは一致した意見であった。女性活躍に取り組むアベノミクスの評価の声もあった。潜在消費や投資の喚起について、社会保障の整備や不安除去が大切との声があった。」
次に、また民間議員から、「2020年プライマリーバランスの黒字化に向け、歳出改革と成長の両面から対応が必要だが、まずは公需に依存しない民需主導の実現が重要である。消費や投資の促進策とともに、中長期の構造改革が必要。構造改革としては、新たな事業の創出に向けた大胆な規制改革と、官民挙げて取り組むプロジェクト10が必要。2020年に向けて成長を軌道にのせていく必要がある。」
民間議員から、「財政はワイズ・スペンディングが大事。特別会計も含め、聖域なく見直していく必要がある。「130万円の壁」が問題となっている。食品やスーパーといった業界が対象となるまで手を打ってほしい。雇用保険料等の引下げは労働者だけではなく、賃金引上げに使うこととして使用者にもお願いしたい。中小企業の生産性を上げていく上で、人材不足が問題であり、地方銀行等の人材を活用すべきである。中小の賃上げにつながるよう、制度を作り上げ、パワーアップするとともに、作った制度が使われないということがないよう、周知徹底して使いやすいようにすべき。KPIを設定して、四半期ごとに報告してもらいたい。」
引き続き、同じ民間議員から、「子育て・介護は生産性の低い典型的な分野である。ここに、ICT技術を身につけたコンビニの人材を活用し、生産性を引上げてはどうか。成長率もいいが、可処分所得の引上げといった目標を設定すべき。テレビ会議等が行えるICTのインフラのレベルアップも大事である。そうすると、東京と地方の距離も縮まっていく。」
財務大臣から、「今治造船が、全長400メートルの船を就航予定だが、日本の港にはつけられず、韓国やベトナムに行ってしまう。日本のインフラ整備が遅れているためである。公共事業にも生産性の向上につながるものがある。」
日銀総裁から、「資料2の図表5について、税収が増えているのにGDPが下がっているというのは、少し違和感がある。経済統計の改善を進めていくことが大切だ。」
また、民間議員から、「働き方改革は、制度のみならず雇用慣行にも関わるので、パッケージとして包括的に考える必要がある。建設分野を始めとした、外国人就労者受入拡大の努力をしているが、今は労働者が働く国を選ぶ時代となっている。帰国後、日系企業で活用するなど、インセンティブを付与する包括的なパッケージを考えるべき。」
また、続いて同じ民間議員から、「経済統計には、R&DやM&Aがうまく織り込めていない可能性がある。港の岸壁の整備に加えて、その後背にある物流施設の整備や効率化により、どうやって早く出港できるかという競争となっている。そういうパッケージとして考えてほしい。」
厚労大臣から、「「130万円の壁」については、適用拡大がこの10月から行われるということであり、キャリアアップ助成金も進めることとしている。生産性向上を確実に実現し、賃金も保険料も払えるようにすることが大事だと認識している。労働移動の支援については、全面的にバージョンアップして進めていきたい。雇用保険の使用者負担についても検討している。」
総務大臣から、「テレワークについて、通常型に加えて、「ふるさとテレワーク」を進めており、良い成果が上がっているので横展開を図るなどテレワークをしっかり進めていきたい。」
民間議員から、「潜在成長率を上げるには、需要サイドの強化も大事だが、サプライサイドの強化をしっかりとやっていく必要がある。AIなどにより、金融・労働など全てが変わっていく。その波にしっかり乗っていく必要がある。」
また、民間議員から、「社会保障制度改革について、今後、高額医療費の在り方や、かかりつけ医以外で受診した場合の定額負担について、結論を出していただきたい。」
これに対して厚労大臣から、「高額医療費については、骨太方針を踏まえて議論していきたい。かかりつけ医とそれ以外の医療機関の役割分担について、その在り方を更に深めていきたい。」
以上の意見交換の後、「平成29年度の予算の全体像」及び「経済財政諮問会議の今後の課題・取組」については、それぞれ資料3、5のとおり、諮問会議として取りまとめをいたしました。
ここで、総理からの発言について、紹介いたします。
「今回の中長期試算では、2015年度の国・地方の基礎的財政収支の対GDP比を2010年度から半減させる目標を、歳入の改善等により、達成できるという見込みが示された。
引き続き、「経済再生なくして財政健全化なし」を基本方針に、2020年度の財政健全化目標をしっかりと堅持していく。
このため、600兆円経済の実現に向けた取組と「経済財政再生計画」に基づく歳出改革を加速していかなければならない。
関係大臣には、本日とりまとめていただいた「平成29年度予算の全体像」を踏まえ、今後とりまとめる経済対策を実施するための補正予算と29年度当初予算を一体として、将来につながる切れ目ない対応を進めていただきたい。
また、歳出歳入両面のアベノミクスの成果を活用し、一億総活躍社会の実現に向けた重要施策を推進するとともに、政策効果の高い施策への重点化や歳出改革等の具体化を進めていただきたい。
本日は、本年後半の諮問会議において取組を進めていく課題についてもとりまとめていただいた。
この方針に基づき、消費と設備投資の喚起や潜在成長率の引上げに向けて、国民生活の質の向上と可処分所得の拡大やイノベーションの活性化に取り組んでまいりたい。」

(以上)