第12回記者会見要旨:平成28年 会議結果

石原内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:平成28年7月13日(水曜日)18時40分~19時17分
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S101・S103会見室

1.発言要旨

第12回経済財政諮問会議の概要について説明します。
最初に、最低賃金についてと、今後の経済財政運営と経済財政諮問会議の取組について、議論させていただきました。
事務方から、最低賃金のこれまでの推移について説明し、今後の経済財政運営と経済財政諮問会議の取組については、榊原議員から、「子育て・健康・働き方改革」を一体的に推進すべき、「経済社会・科学技術イノベーション活性化委員会」を中心に、研究開発投資等を拡大し、イノベーションを活性化する具体的な制度改革を検討すべき、等々の御提言をいただきました。
その後、最低賃金については、とかしき副大臣より、これまで以上の最低賃金の引上げに向けて、関係省庁とも連携し、生産性向上等にしっかりと取り組んでいく、という発言、民間議員から、3%24円の引上げを確実にできるよう中小企業等への支援策を講じていただきたい、との発言がありました。
その他としましては、経済対策は民需を誘発するものを中心として大胆な国費の投入が必要である、第4次産業革命を推進すべき、アベノミクス版、税・社会保障、働き方改革をパッケージとして推進すべき、という御意見がありました。
続きまして、来年度予算の全体像について議論させていただきました。
まず、麻生副総理より平成27年度決算について報告があり、その後、事務方から、平成28年度内閣府年央試算について説明がありました。
続きまして、高橋議員から、平成29年度予算の全体像について、平成27年度税収「底上げ」1.7兆円の一部を財源として活用することを、政府としてしっかりとコミットすべきである、という提言がなされました。概算要求基準について、一億総活躍社会の実現に向けた施策等については、歳入歳出面のアベノミクスの成果の一部を活用して、別途、当初予算で要求できるようにすべき、との提言をいただきました。
その後、税収の「上振れ」と「底上げ」の活用の在り方について、経済対策において、政府研究開発投資の目標値の達成に向けた手当が必要、等々の意見が出されました。
ここで、総理から御発言がありました。総理の御発言のポイントのみ御紹介させていただきます。
最低賃金について。3%の引上げに向けて最大限の努力を払うよう、特に中小企業・小規模事業者への支援に遺漏なきよう厚生労働大臣、経済産業大臣に指示がありました。
経済対策についてですが、キーワードは「未来への投資」とし、重点事項は、一億総活躍社会の加速化、21世紀型のインフラ整備、中小企業・小規模事業者等への資金繰り支援、熊本地震等からの復興や防災対策の強化とする、との話がありました。
今後の経済財政運営については、働き方改革を始めとする構造改革と、総合的かつ大胆な経済対策を車の両輪として実行していきたい。
補正予算と来年度予算とを合わせまして、一億総活躍社会の実現に向けて、アベノミクスの成果の活用も含め、対応していく必要がある。同時に、消費税率引上げの延期の影響も点検しながら、歳出改革を着実に推進する。こうした点も踏まえ、来年度予算の全体像を取りまとめてほしい、という御意見が総理からなされたところです。
私からは、民間議員から御提案いただいた「2016年後半の経済財政諮問会議の課題」、「平成29年度予算の全体像」については、本日の議論を踏まえて、次回の経済財政諮問会議で取りまとめさせていただきたいと申し上げたところです。
私からは以上です。


2.質疑応答


<最低賃金引上げ>
(問)最低賃金の引上げについてですが、中小企業の方からすると、大臣も御懸念されているとおり、かなり負担が大きいという声もあると思います。その辺りは支援をしていくということだと思うのですが、実現性について、大臣はどのようにお考えでしょうか。

(答)途中経過と今後の見通しについてということだと思うのですが、6月14日に塩崎厚生労働大臣から、中央最低賃金審議会に対して、最低賃金について、年率3%程度を目途として、名目GDPの成長率にも配慮しつつ引上げ、全国加重平均で1,000円を目指すことに配意した諮問がされました。今月下旬に答申が出される予定です。そこでどうであるということが具体化してくるのだと思います。
中小企業への配慮という御指摘がありましたが、本日の諮問会議でも、総理から、3%の引上げに向けて最大限の努力を払っていただくよう厚労大臣、経産大臣にお願いしたいという指示があり、特に強く言われていたのが、中小企業・小規模事業者への支援に遺漏なきようお願いしたいということです。それが、平素から私が懸念している小規模事業者、特にマンパワーに依存する事業への配慮ということを総理もおっしゃられたと思います。今のところは、中央最低賃金審議会の審議の動向、答申を見て、その次にどのようなステップになるかというように推移していくと思います。


<消費税率引上げの景気判断条項>
(問)国・地方の基礎的財政収支の黒字化に関して、消費税率引上げの景気判断条項についてお伺いします。消費増税の最初の延期については、景気判断条項に基づいて延期がされたと思います。2回目の延期については、総理が景気判断条項を削除されましたが、実質的に新しい判断ということで景気判断に基づいて延期がなされたかと思います。秋の臨時国会で消費税率引上げ再延期の法案が提出され、審議されると思いますが、デフレ脱却と同時に財政健全化、消費税率を引き上げるという困難な作業を行う中には、二度の延期を踏まえますと、景気判断条項は、むしろ削除するどころか必須のものなのではないかという考えもできるかと思います。所管はともかくも、黒字化の目標にも影響する消費増税の引上げに関して、大臣は景気判断条項の必要性についてどのようにお考えでしょうか。

(答)これは、判断として景気条項が削除されて今日に至っています。今後についても、財務大臣が法案を提出されますので、これは予想であり当たるか外れるかはわかりませんが、景気条項というものは附帯されないのではないかと見ております。


<ヘリコプターマネー>
(問)最近、ヘリコプターマネーが大変話題になっていますが、政策として、ヘリコプターマネーは日本にとって良いもの、あるいは必要なものとお考えでしょうか。

(答)ヘリコプターマネーはフリードマンが提唱されたものですが、来日中のバーナンキ氏、私はお会いしていないのでわかりませんし、官房長官の会見から推察するに、ヘリコプターマネーについての議論が総理との間になされたという事実はないと承知しております。政策について実施をする予定のないものについてのコメントは差し控えさせていただきたいと思います。


<財政健全化目標>
(問)今回の諮問会議で、民間議員から、2018年度のPBについて、適切な対応を行うべきという提言がされています。このPBの目標に関して、内閣府の名目GDPの年率3%成長を前提に歳出の設定がされていて、過大ではないかという指摘も自民党にもあると思います。2015年度のPB赤字の半減目標についても、事前には、かなり厳しいのではないかという予測の方が多かったと思うのですが、結果的に目標が達成される見込みとなった要因について、大臣はどのようにお考えでしょうか。

(答)この点については、総理が再三再四申しておりますように、2020年の財政健全化目標は堅持するということになっております。「経済・財政再生計画」も、この健全化目標を達成するための具体的な道筋を定めたものであるということは御承知のとおりです。基本的な枠組みを変える必要はないと考えておりますが、今後、経済動向の変化といったものをしっかりと検証して、必要な見直しを行うということは必要なのではないか、現段階ではこのように考えております。


<最低賃金引上げ>
(問)最低賃金についてお尋ねします。最初の質問にも関連しますが、最低賃金の目標については、「ニッポン一億総活躍プラン」では名目成長率に配慮しつつという但し書きがついております。それで、今日発表された年央試算でも、2016年度の名目GDP成長率の見通しは下方修正されたという状況で、今年度については3%引上げに向けて最大限努力してほしいという総理の指示があったということですが、今後については、成長率によっては3%にこだわらないということもあるのか、それとも、あくまでも基本路線としては3%で、あくまで成長率は配慮するということなのか、その辺りの大臣のお考えを教えてください。

(答)総理は、厚労大臣と経産大臣に、しっかりとやれ、その際、中小企業・小規模零細事業に配慮しろということを言われています。このことから、3%を目指すということに何ら変更はないというように御理解をいただきたいと思います。


3.新原内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明


今日の経済財政諮問会議は、林議員が御欠席でございまして、鈴木経済産業副大臣に御出席いただいております。また、3つの議題のうち、(1)最低賃金部分、(2)経済財政運営部分に関係するため、厚生労働大臣が出張中でございますので、とかしき厚生労働副大臣に御参加をいただいております。
(1)と(2)の部分を併せて最初に議論を行いました。事務方から資料1、榊原議員から資料2について説明、あるいは問題提起がありまして、その後、意見交換を行っております。
主な御意見を御紹介いたします。
まず、最初の最低賃金と経済財政運営部分でありますが、経産副大臣から、「今回の経済対策では、経産省として第4次産業革命の第一歩を踏み出せるようにしたい。また、世界経済のリスクに対応し、中小企業対策に万全を期したい。」
とかしき厚労副大臣から、「今年度の最低賃金額改定については、6月14日に中央最低賃金審議会に対して、塩崎厚生労働大臣から諮問を行ったところである。審議会では、塩崎大臣が「経済財政運営と改革の基本方針」、いわゆる「骨太方針2016」などの政府方針をしっかりと説明して、調査審議を求めたところである。これらを踏まえた審議が行われるものと考えている。
これまで以上の最低賃金の引上げを実現するためには、中小企業を始めとした、更なる生産性の向上が不可欠であると考えている。
厚生労働省としては、助成金について、生産性向上に焦点を当てたものにつくり直すといったことで、現在、厚生労働省の経済系の政策ツールについて、総点検を行っている。また、下請等の中小企業の取引条件改善に向けて、大企業ヒアリングに協力するなど、生産性の向上ができるように、関係省庁とも連携して、しっかり取り組んでいきたい。」
総務大臣から、「子育てや介護など社会保障の多くは地方自治体を通じて提供されている。保育士や介護士の処遇改善に必要な経費は、地方負担分も含めて安定財源を確保するとともに、地方の声も聞いて進めるべきである。」
官房長官から、「経済対策に関して、民間議員ペーパーの中に、「効果の高い施策、未来への投資」という記述があるが、これを行うのは当然である。財源については、「前例にとらわれない」と書いてあるが、これは国費を思い切って投入するというお考えだということでよろしいか。」
これに対して民間議員から、「当面のGDPギャップを5~6兆円とみているが、イギリスのEU離脱は政治リスクなので、ぶり返して下押し圧力となることがあり得る。消費の押し下げも含めると、プラス1~2兆円の規模が必要と認識している。一時的に需要を埋めても仕方なく、大切なのは民間投資を誘発するものである。クルーズ船の岸壁や、あるいはコンテナ港湾の設備などは非常に日本の場合は遅れているので、こういうところも有力と見ている。ビッグデータやIoTも大事だと考えている。」
要は、国費を大胆に投入していただきたい、という御議論だったということです。
別の民間議員から、「未来への投資という総理の言葉は、重要なキーワードだと考えている。今回の補正予算だけでなく、今後の経済政策においても重要だと考えている。2つポイントがあり、1つは誰がやるのか。これは政府も民間でもあるはずだが、取り分けこの民間投資をどう喚起するかが大事である。2点目は、何のために、どこにやるのかということ。これは最終的には潜在成長力を上げていくことが重要である。日本の将来のために総理の強いリーダーシップを期待している。」
別の民間議員から、「大胆な国費投入と未来への投資は、生産性革命と潜在成長力の引上げに必要なことである。第4次産業革命は官民で進める必要がある。IoT、ビッグデータは企業の生産性を抜本的に拡大させる。先進国で蔓延している長期的な停滞を打破する突破口になる。第4次産業革命を成長戦略の柱とすべきである。」
別の民間議員から、「年後半の取組として強調しておきたいのは、消費のテコ入れ、底上げである。最低賃金の引上げ3%目途を掲げた初年度でもあるということで、何としても3%程度の引上げを実現していただきたい。そのために必要な支援を政府にはお願いしたい。」
次に、後半に移りまして(3)来年度予算の全体像についての議論でございます。
麻生大臣から資料3、事務方から資料4、高橋議員から資料5について、説明、問題提起がありまして、その後、意見交換を行いました。
主な御意見を御紹介させていただきます。
まず、麻生財務大臣から、「1.7兆円の税収増とあるが、既に28年度の補正で使っているということは頭に入れていただきたい。また、特殊要因もあるので、将来的なことを考えていくときには、安定したものを前提にする必要がある。もう一つは、歳出についても、2020年度のPB黒字化に向けて、予算編成過程でしっかりと予算要求内容を見る必要がある。」
これに答えて、民間議員から、「税の使い道をきちんと見ていくということは、大臣の御主張のとおりである。そのときに、体質改善や景気の改善という効果を見ていくことは当然である。また、補正予算で1.7兆円は使っているという大臣の側の指摘があったが、1.7兆全部を使えるとは思っていない。ただ、その中でも、このお金は前向きなところに使っていくべきだという意見であると理解してほしい。」
別の民間議員から、「一億総活躍は非常に重要な政策なので、これをどのように構造的に予算を使って実現していくかということを考えていかないといけない。」
別の民間議員から、「1.7兆円の税収増については、一億総活躍社会の実現に最大限活用すべきである。それから、科学技術については、第5次基本計画に入っている政府の目標、これはGDP比の1%ですが、これを実現するため、平成28年度補正予算、平成29年度当初予算で何らかの措置を講じてほしい。」
総理から発言がその後ございました。御紹介します。
本日はまず、最低賃金について議論を行いました。本年度は名目GDPの成長率にも配慮しつつ、全国加重平均で1,000円を目指す初年度であります。本年度については3%の引上げに向けて最大限の努力を払っていただくよう厚生労働大臣、経済産業大臣にはお願いをしたい。特に中小企業・小規模事業者の支援に遺漏なきようお願いしたい。3%の引上げに向けて最大限の努力という言い方です。
それから、民間議員から今後の経済財政運営と経済財政諮問会議の課題及び来年度予算の全体像について御提示いただきました。経済対策については、キーワードを「未来への投資」としたいということを言われまして、重点事項としては、第1に、実現段階に入る一億総活躍社会の加速化、第2に、21世紀型のインフラ整備、これは観光振興や農産物輸出促進に向けたインフラ整備やリニア中央新幹線の前倒しなどを図ること、第3に、イギリスのEU離脱に伴う不安定性などのリスクに備えた中小企業・小規模事業者などへの資金繰り支援、第4に、熊本地震等からの復興や防災対策の強化を図るという柱だてと紹介しておりまして、働き方改革を始めとする構造改革と未来への投資を目的とする総合的かつ大胆な経済対策を車の両輪として実行していきたいというように言われました。今後取りまとめる経済対策に伴う補正予算と平成29年度予算とをあわせて、一億総活躍社会の実現に向けた施策をしっかりと着実に実施していけるよう、アベノミクスの成果の活用も含め対応していく必要があると言われました。
この「あわせて」というのは、若干補足すると、一億総活躍社会の実現に向けた施策には構造的な問題に関する予算が多いわけです。来年度予算、当初予算でやっているものが多いわけです。補正予算で何でも積むのではなくて、しっかりと経済対策の中でも当初予算の動きを見込んで、それとこの補正予算をきちんと接続させて、あわせて議論していけという趣旨でございます。
同時に、消費税率引上げ延期の影響も点検しながら、2020年度の財政健全化目標の達成に向けた政策を着実に推進する。こうした点を踏まえて、来年度予算の全体像を取りまとめていただきたいということでございました。
最後に、石原大臣から民間議員から御提案いただいた2016年後半の経済財政諮問会議の議題、それから平成29年度予算の全体像については、本日の議論を踏まえ次回の諮問会議で取りまとめを行いたいとの御発言がありました。
以上でございます。

(以上)